コンシューマ、アーケード、スマートフォンと幅広い分野で最前線を走るセガゲームス。また、エクストリームといえば他社のゲームプロジェクトに技術スタッフを送り出す「デジタルクリエイタープロダクション宣言」を推進しており、双方非常に良い協業関係と言える。
今回の記事では、セガゲームスで数多くの作品に携わる田中氏と、エクストリームのソリューション事業本部長としてスタッフを提供する奥冨氏の対談をお届けする。長きに渡りゲーム業界を見てきた2人だから分かる業界の変遷、そして現在のゲーム業界について、興味深い話を聞くことができた。
◼︎ふたりの経歴から振り返るゲーム業界の今昔
――本日はよろしくお願いします。まずはお二人の現在の業務と経歴について教えてもらえますか?
田中氏:セガゲームスのオンライン研究開発部の部長を担当しています。オンライン研究開発部は文字通りオンラインゲームを専門に開発する部署で『ファンタシースターオンライン(PSO)』シリーズや『野球つく!!』『パシャ★モン』といったスマートフォンタイトルにも関わっています。ほかにも『龍が如く ONLINE』を現在制作中です。私自身はそれらの開発を統括する立場ですね。
私はずっとセガに在籍していて、もう24年になります。メガドライブやセガサターンの時代からセガのゲームに携わっています。最初のゲームはセガサターンの『サクラ大戦』でしたね。最近のタイトルですと、『戦場のヴァルキュリア』の1作目でディレクターを務めました。転機となったのはやはり『PSO2』で、そこからオンラインゲームを中心に見るようになったのです。
奥冨氏:私の経歴という意味では、25年前はタイトーで、セガハードのサードパーティとしてソフトを開発していました。だから私もメガドライブやセガサターンはとても思い出に残っています。現在の仕事はクリエイターをお客様先へ常駐させて、開発のお手伝いをすることです。エクストリームには300人程度のクリエイターがいますが、御社には10人ほどが参画しています。お付き合いも長く、重要なお客様です。
――お二人が、ゲーム業界に入った当時のことを振り返ってもらえますか?
田中氏:当時はセガもまだハードを出していて、メガドライブを中心に世界で活躍を見せている時期でした。それだけでなくアーケードもトップシェアを誇っていて、いろいろなことにチャレンジしている会社でした。ハード事業こそなくなりましたけど、チャレンジ精神は今も健在で、そのおかげで私もセガ一筋で働けています。
奥冨氏:私が最初にタイトーに入ったとき、社内ではアーケードゲームの開発が盛んに行われていました。それを家庭用ハードに移植する動きも当然ありましたが、ファミコンやスーパーファミコンではスペックの問題が出てきます。そんなときに現れたのがセガサターンで、タイトーはかなり早いタイミングで参入したのを覚えています。当時のアーケードメーカーはどこもセガサターンに関心を持っていましたよね。
田中氏:家庭用ハードの技術が飛躍的に向上した時期でしたからね。それにファンからの関心が高かったのは、当時のタイトーさんの作品に名作が多かったのも要因だと思いますよ。
――90年代はコンシューマゲームが活気づいていた時期ですが、ゲーム業界にいて凄さを実感したことはありましたか?
奥冨氏:凄さといえば容量との戦いですよね。映像も音楽も質が上がってきて、それをどうやって収めるかは苦労していましたし、本当に収めてしまうプログラマーの力には驚きました。
田中氏:今ではハードディスクに格納できますからね。あと、ディスクではなくロムの時代だとデータを焼き込むロムライターなんていうのもありました。ライターにロムを装着してデータを焼くんですけど、装着する位置が少しでもずれるとデータの転写ができなかったり。その後CDにメディアが変わってきたら、データの焼き込みに1時間かかったりしましたね。
奥冨氏:今振り返るとかなり大変でしたけど、ものを作っている感覚は今以上にありました。
田中氏:若いころ、今みたいな環境で仕事をしたかったと思うことはありますよ(笑)。
――では、今のゲーム業界に対してはどんな印象をお持ちですか?
田中氏:大雑把な言い方をすると、集約している面と多様化している面の両方があると思います。集約しているのは有名なシリーズにはたくさんの人と予算を集めているということです。ただセガゲームスを含め多くの会社さんは、スマートフォンを中心に新しいタイトルへの挑戦も欠かさない印象です。ブランドに頼らず、毎年新しいゲームが出ている多様性もあります。集約と多様化のバランスに苦労しているのが現状なのかと思います。
奥冨氏:スマートフォンによってできることが増えたぶん、挑戦するチャンスも増えましたよね。
田中氏:そうですね。それに作る側の人間も、シリーズタイトルだけだと飽きが来ますし。逆に新しいチャレンジばかりでも、すべて上手く行くとは限りません。強いブランドを大事にしつつ、新しいことにも手を伸ばすバランス感覚は本当に大切です。
奥冨氏:ゲーム業界全体を見るとスマートフォンのゲームが多くなってきましたが、エクストリームの技術者の声を聞くとコンシューマへのこだわりが根強いです。そういう意味では御社はコンシューマにも積極的ですし、エンジニアにとっても魅力的な会社です。
――その集約と多様化によって、業界にはどのような変化が生まれたと感じていますか?
奥冨氏:売れるゲームと売れないゲームがはっきりと別れたことは間違いありません。
田中氏:生半可な作りでは手に取ってもらえず、スマートフォンであってもコンシューマ並みの開発費がかかるようになってきましたね。チャレンジのしがいがあるとも言えるんですけど…。エクストリームさんのスタッフにコンシューマへのこだわりがあるというのは、とても興味深いですよね。
奥冨氏:仕事の内容としては依然としてスマートフォンが多い一方で、「一度はコンシューマもやってみたい」という憧れの気持ちを持っているみたいです。子供のころコンシューマで育ってきた世代なのも大きな要因だと思います。
田中氏:ゲーム業界に興味を持つ人って、小学生のころからゲーム好きなのが普通ですもんね。
◼︎ユーザーの予想を超える「斜め上」を目指したい
――そんな現在のゲーム業界で働くにあたって、求められている能力はどんなものだと考えていますか。
田中氏:実際にスタッフを見るときのポイントとして、コミュニケーション力はやはり大事にしています。単に話が上手いということではなくて、朴訥でもいいから自分の意見を言える人、自分の考えを持っている人が活躍している印象です。
奥冨氏:実力のある技術者を提供するのが我々の仕事なので、技術はあって当たり前です。そのうえで、人間としてきちっとした行動を取れることが重要です。お客様とともにゲームを作ることになるので、話が上手いとかではなく、挨拶ができるとか、基本的なところを重視しています。
田中氏:確かに、エクストリームさんから来るスタッフの方々は社会人としてのマナーができている印象があります。だから気持ちよく仕事ができるんです。
奥冨氏:ありがとうございます。でも、ゲームは一人で作るのではなくチームで作るものですから、当然のことだと思っています。
田中氏:弊社のスタッフに徹底させているのは、人を区別しないことです。社内のスタッフかどうかは特に関係なく、エクストリームさんのような外部からのスタッフも大切にして、ときにはリーダーになってもらうこともあります。だからこそ、垣根なく話をしてくれる人はこちらとしてもありがたい存在です。
――社員一人ひとりが自立しているイメージですね。
奥冨氏:そうですね。弊社の場合は他社で働くことがほとんどなので、どんな場面、どんな状況でも即戦力になれるよう努めています。社内での教育だけでなく、技術の共有なども積極的に行っています。
――普段開発しているタイトルでは、どのようなことを意識しているのですか?
田中氏:『PSO』シリーズの開発チームによく言っていることで、「新しい感動を届けていきたい」というのがあります。昔からセガは「斜め上を行く」なんて言われていて、90年代にモデムを積んだドリームキャストと、そこから生まれた『PSO』はその象徴だと思っています。「斜め上を行く」と言われるのはとても光栄なことですし、普段作っているゲームでも予想を超えることができないか、意識しながら開発しています。
奥冨氏:私たちとしては、各エンジニアが希望するプロジェクトに参加できるように考えています。特定のシリーズに関わりたい人もいれば、ジャンルにこだわりがある人もいます。幸いにも取引しているメーカーさんも多いので、エンジニアの要望は叶えられていると思います。
田中氏:実際『PSO2』ファンの人が開発チームに来て、力を発揮してくれています。エクストリームさんのスタッフは技術力だけでなく提案力もあって、どこを改善すべきかを積極的に提案してくれるんです。
奥冨氏:中には、ちょっと言いすぎてしまう人もいるんですけどね(笑)。
――ゲームの在り方が多様化しているのと同じく、クリエイターの在り方も多様化していると思います。その中で皆さんはどのようにクリエイターを応援していきたいと考えていますか?
田中氏:エクストリームさんはクリエイターの集め方でもかなりの工夫をしていますよね。
奥冨氏:クリエイターこそプロダクションに所属するべきであるというのが弊社の考え方で、各メーカーさんの足りないところへ的確にスタッフを供給できる集団を目指してます。すべての要望に応えられるよう、個性的なメンバーが揃っていますね。
田中氏:昔は社内にいるプランナーとデザイナー、プログラマーで完結するゲームも多かったですけど、今はそうもいきませんからね。特にイラストを含めたグラフィックの部分では、外の才能の力を借りることが多いです。
奥冨氏:規模も大きくなったから、自社だけで完結するのは難しいですよね。
田中氏:ときには数百人のスタッフが必要になりますからね。しかし常時数百人が必要ではなく、仕込みのときは数人で始まります。人の流れがある以上、外部のスタッフを頼るときは必ず来ます。そういった人たちも積極的に活用していきたいと思っています。
――最後に、読者に向けてのメッセージがあればお願いします。
田中氏:『PSO2』はもうすぐ6周年を迎えて、これからもまだまだパワーアップするところです。今後の展開にも楽しみにしてほしいです。ほかにも『龍が如く ONLINE』をはじめ、未発表のタイトルも制作中です。
たくさんのスタッフの想いが詰まっているので、まずは私たちが作ったゲームを手にとってもらいたいですね。この記事が私たちに興味を持つ契機になってくれたら嬉しいです。そして優秀な才能を持つ人、これから成長する原石は常に求めています。ゲームを作る仕事は大変ですけどやりがいもありますので、ぜひ門を叩いてもらいたいです。
奥冨氏:エクストリームに入ってもらえれば御社をはじめ、様々なゲーム会社のプロジェクトに参加できます。多彩な作品の開発に携われるのは弊社ならではの利点です。技術者としてのスキルを上げるという意味でも、プロダクション企業で活躍する道も選択肢の一つに入れてもらいたいですね。
――ありがとうございました。
©SEGA
会社情報
- 会社名
- 株式会社セガ
- 設立
- 1960年6月
- 代表者
- 代表取締役会長CEO 里見 治紀/代表取締役社長執行役員COO 内海 州史/代表取締役副社長執行役員Co-COO 杉野 行雄
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高1916億7800万円、営業利益175億3900万円、経常利益171億9000万円、最終利益114億8800万円(2023年3月期)
会社情報
- 会社名
- 株式会社エクストリーム
- 設立
- 2005年5月
- 代表者
- 代表取締役社長CEO 佐藤 昌平
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高102億1700万円、営業利益10億9700万円、経常利益14億4800万円、最終利益10億3400万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 6033