【インタビュー】「バーチャルキャスト」を開発したインフィニットループに聞く 安心と安定を求めてたどり着いた「モノビットエンジン」とは
北海道を拠点とするインフィニットループは、4月にドワンゴと共同で「バーチャルキャスト」を発表した。バーチャルキャストは、バーチャルキャラクターになってVR空間のスタジオをリアルタイムで配信し、コミュニケーションできるVRライブ・コミュニケーションサービスだ。
同サービスの開発のきっかけはどのような背景があったのか、インフィニットループの代表取締役社長 松井健太郎氏にインタビューを実施した。
同サービスの開発のきっかけはどのような背景があったのか、インフィニットループの代表取締役社長 松井健太郎氏にインタビューを実施した。
■「バーチャルキャスト」の前身は「趣味」から始まった化学反応
インフィニットループ
代表取締役 社長
松井 健太郎氏
——本日はよろしくお願いいたします。まずは自己紹介と会社紹介をお願いいたします。
松井氏:札幌と仙台に拠点がありグループ全体で200人程が働いている会社です。特徴的なのは、そのほとんどがエンジニアということです。元々はソーシャルゲームを作っていて、『ブラウザ三国志』のプログラム部分を作ったのも弊社です。「ブラウザ三国志」は現Aimingの椎葉社長とコタツを囲んで作っていましたね。
——VR事業も多岐に行っている印象がありました。
松井氏:元々VRは部活動で始めていたんです。また、社員のガス抜きの意味合いもありました。弊社はサーバーサイドに強い会社です。そのため地味な内容が多いです。すると派手なことをしたくなるのか、VR機材を買って欲しいという要望がきました。仕事ではないけど、遊びで開発をしていたのです。それがVRとの出会いですね。
——2016年に「あいえるたん」のお姫様抱っこのデモを公開していたのを覚えています。
松井氏:そうです。当初は事業というより遊びでした。そのうちVRが行けそうなったのでVRチームができて「みゅみゅ」をVRチームにアサインしました。
——やりたいことをしていたら仕事になったのですね。バーチャルキャストの前進となるサービスはかなり前からあったとお聞きしました。
松井氏:元々「みゅみゅ」がニコ生の生主だったこと、あいえるたんのモデルが弊社にあったということが化学反応を起こしたのです。そこでどんどん遊びが広がってできたのがバーチャルキャストです。元々サービスを狙って作ったわけではないのです。
——それは意外なお話です。
松井氏: 仕組みとしては、2017年初頭からあったのですが、VTuberブームによってプロダクトの評価がガラッと変わりましたね。
——時代が追いつてきたんですね。
松井氏:そうですね。ただ「みゅみゅ」は、当初からおもしろいと信念を持って作っていました。そういう意味では彼には未来が見えていたと思います。ただ経営者側からすると偶然の産物でした。
■開発期間は2ヶ月間、加速させた「モノビットエンジン」の採用
——ドワンゴ社と「バーチャルキャスト」の開発を行うタイミングいつだったのでしょうか。
松井氏:ドワンゴ社からはプロジェクト進行のGOサインは2018年の1月にいただきました。そのタイミングから開発をスタートしました。
——かなり最近の話ですね。しかし、巨大プラットフォーマーとのプロジェクトを進めるとなると、様々な課題が生まれそうですね。
松井氏:そうですね。ただドワンゴ社と一緒にやることで、サーバーの負荷がかかり、大改修が必要になるのはわかっていました。最初のバージョンでは他のリアルタイム通信エンジンを利用していたのですが、通信の制限やその改善で発生する課題がありました。
そこでモノビット社代表の本城氏と面識があって相談したところ、モノビットエンジンを利用すれば、解決できそうだとわかったのです。モノビット社はVR分野でも実績と知見があるうえ、製品サポートの厚さも重要なポイントでした。
サービスに人気が出て、負荷が出て、止められないサービスになったときに安心感がある企業と組みたい。そうなった時に安心して深いところまで付き合えるパートナーが必要だったのです。
——通信の話が出ていましたが、負荷の問題があったのでしょうか。
松井氏:当初、別の製品を使ってましたが、目に見えてカクついていました。その状態でスタジオ内に複数のキャラクターを追加するのは厳しいなと。さらにサービスが拡大したときの負荷に耐えうるか、現在の6人という上限が外せるかどうかなどのサービスの未来を検討した際にモノビットエンジンという選択肢しかないかと。モノビットエンジンには同時接続数にかかわらず定額で、開発サポートがつくプランがあり、コスト面と開発面の両面で安心でした。
——新しく、規模の大きなプラットフォームのサービスなので、通信の負荷は怖いですね。モノビットエンジンを導入するにあたって、戸惑った点はなかったのでしょうか。
松井氏:それがなかったんです。開発チームは2018年2月に立ち上げ、そのタイミングで「バーチャルキャスト」はリファクタリングのため作り直しをするなど、2ヶ月間程で開発しましたが、新しい通信エンジンの導入で手間取るということもなかったのです。リアルタイム通信エンジンの「Monobit Unity Networking2.0」 とそのアセット「VR Voice Chat」の組み込みやすさもありましたが、細かな組み込みの際の不明点があるときには、モノビット社のエンジニアがすぐに回答をしてくれました。それが開発の加速にもなったと思います。
あと、元々自社のサーバー運用がLinuxであったという利点もありました。使い慣れた環境と自社が選んだクラウドサービスで利用できるのは非常に優位な点です。公開前の新バージョンを先にいただいて、それを使うこともあったのです。さらに新バ−ジョンでは要望していた機能が追加になることがあって大変助かりましたね。
それに元々モノビット社はコンテンツ開発もしているので話も早かったですね。そこの知見があるのは頼もしいです。現在でもサービスのバージョンをあげるなどの際には相談窓口があるのは、安心できますし。
——今後の「バーチャルキャスト」の展開を教えてください。
松井氏:今、同時接続数が6人なので、こういった人数の上限を上げていきます。あと「バーチャルキャスト」内の背景やアイテムも今はプリインストールだけですが、ニコニ立体にアップして自分の好きなアイテムを空間に持ち込みめるようにと、考えています。
——バーチャルキャストを中心として大きなエコシステムができそうですね。それを作るためには?
松井氏:ユーザーさんが色々な領域で参加するエコシステムを作りたいんですよね。その意味でドワンゴ社は圧倒的に知見があります。プラットフォーマーでもありますし、ニコニ立体のような機能があったのも素晴らしいと思います。
先程スピード感の話がありましたが、ニコニ立体を1から作っていたらできないことです。また、サービスが進化・拡大を続けるさなか、弊社の考えるスピード感で製品のアップデートとサポートを提供するモノビットエンジンチームの協力も必要です。
そのような中で、サービスを多方面からユーザーさんが参加できるようにして、開発した私達も驚くような化学反応が見れたら良いなと思っています。
——ありがとうございました。
なお、GTMF2018にて、インフィニットループ社とモノビット社によるセッション『VRライブ・コミュニケーションサービス「バーチャルキャスト」でのモノビットエンジンの採用事例と最新情報』が行われる予定だ。
http://www.monobitengine.com/info/913/
会社情報
- 会社名
- monoAI technology株式会社
- 設立
- 2013年1月
- 代表者
- 代表取締役社長 本城 嘉太郎
- 決算期
- 12月
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 5240