国立大学法人東北大学、NeU、FOVE、VR視聴時の視線情報と脳活動の同時取得が可能な一体型デバイスを開発
国立大学法人東北大学、日立ハイテクノロジーズのジョイントベンチャーNeU、FOVEの3社は、FOVEの持つ視線追跡型VRヘッドマウントディスプレイ(FOVE 0)にNeUのNIRS脳活動計測センサー(HOT-1000)をビルトインした、VR視聴時の視線情報および脳活動の同時取得が可能な一体型デバイスの共同開発を発表した。
VR体験中の脳血流、心拍、視線のトラッキング・占有率、瞬目、瞳孔径といった複数生体指標を分析することで、仮想空間内の興味関心や集中・注意を可視化・数値化することが可能になるという。NeUは本デバイスを活用した新たなニューロマーケティングサービス(サービス名 NeU-VR)を、企業ユーザーを対象に11月より開始する。また、10月16日より始まる「CEATEC JAPAN 2018」NeUブース(小間番号:B010)にて本デバイスを展示・初公開する。
VR(ヴァーチャルリアリティ)の活用はコンシューマ向けのエンターテインメント分野のみならず、ものづくりでの設計シミュレーションや遠隔コミュニケーションなどさまざまな分野で広がりを示しており、仮想空間における人々の行動や興味関心に対するマーケティングニーズも今後ますます高まっていくと考えられる。
しかし現実の世界とは異なるVR体験中の生体情報の把握には制約も多く、心拍などの簡便な単一指標のみの計測に留まるか、特別に仕立てた複雑な機器を用いた特殊な実験環境の構築が必要だった。NeUは世界初の視線追跡型家庭用VRヘッドマウントディスプレイを開発したFOVEと協業し、脳活動と視線情報の同時計測を可能とした一体型デバイスを開発。PCとヘッドマウントディスプレイだけのシンプルなシステム構成で、高精度な視線情報および脳活動の一括計測を実現したという。
■システムの具体的内容
NeUは脳血流計測を軸としたニューロマーケティングサービスを展開しており、既に50社以上の受注・検証実績をもっている。ヒトの共感や作業記憶を司る前頭前野の脳血流を計測することにより、広告や商品などへの興味関心や記憶の定着を評価するノウハウを強みとしている。その経験と実績を活かし、今回のNeU-VRの開発となった。
NeU-VRは、視線追跡型VR再生装置と、脳の前頭前野をカバーするNIRS脳活動計測センサーが一体型となった専用ヘッドマウントディスプレイ、およびPC上の専用アプリケーションよりサービスを提供している。VR体験中の脳活動、心拍および各種視線情報(視点座標・瞬目・瞳孔径)の同時計測が可能となる。
また、視線や瞳孔径などの生体指標からも、被験者の好みや集中度などが類推できることも知られている。NeUはこれら複数の生体指標を組み合わせることで、VR視聴中の興味関心や没頭度を精度高く可視化、客観化が可能になると考えているとのこと。
■サービスの対象・用途
サービスの対象としては、第一に企業のデザイン設計の範囲での活用を見込んでいる。たとえば、施設や住宅のデザイン、各種ショールーム、クルマのデザインなどがあげられている。従来のモックアップモデルや試作などでのデザイン確認が、容易さと製作時間の短縮を目的に幅広くVR化している。後からアンケートなどで振り返る主観評価から、見たものに対してそのタイミングでどう脳が活動しているかという直感的反応を可視化・数値化して客観評価することで、更にその後の改善に有用な情報を得ることが出来るとNeUは考えているそうだ。
次に、VRコンテンツの評価もその用途として想定があるようだ。エンターテインメントはもちろんのこと、ものづくりでの確認や作業環境の再現など、VRによるシミュレーション体験は、多様さを増している。これらVRコンテンツ体験者の脳活動および視線情報を分析し、興味関心や集中・注意を明らかにしている。「NeU-VR」は、このようにマーケットリサーチやものづくりの領域においてVRの役割をさらに高め、役立てるサービスになるとしている。
■サービスの開始、今後の展開
NeUが提供するニューロマーケティングサービスメニューとして、調査設計・データ取得・解析まで一貫して提供する。サービス開始時期は、11月初旬を予定しております。価格については、案件に応じた個別見積となっている。NeUおよびFOVEは、今後も両社のもつ技術を活かし、世の中に新たなインパクトを与える機器・サービスを開発していくという。