【年始企画】「3PILLARS」の裏で積み上げてきたクオリティー向上と海外展開の成果を土台に19年はよりインパクトのあるヒットを狙う…KLab森田専務取締役インタビュー
スマートフォンゲームアプリ業界の最前線で働く方々に話を伺う年始恒例企画「ゲームアプリ市場のキーマンに訊く2018-2019」。これまでは市場動向の振り返りと展望をメインとしていたが、今回は、各社の個別の状況にフォーカスし、2018年の取り組みや課題、そして、2019年の展望について語ってもらうことにした。
今回は、『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜』のグローバル版や、中国の崑崙ゲームと共同開発した『BLEACH 境・界-魂之觉醒:死神』などを海外市場に配信し、国内のみならずワールドワイドで積極的な展開を見せるKLab(3656)にインタビューを実施。
同社の専務取締役CCOの森田英克氏にインタビューを行い、ゲームアプリ市場とKLabの展開を振り返ってもらうとともに、2019年の展望を聞いた。
――:まずはスマートフォンゲーム市場全体を振り返ってみて、2018年はどのような年でしたか?
日本だけではなく世界的に見て、ユーザーに支持されるゲームが段々と変わってきたという印象です。
今までとは違うものや、新しい体験ができるゲームに人気が集まり、ゲームチェンジャーになりうるようなタイトルも出てきたところが一番大きいと思います。クリエイティブのレベルもこの1年でまた上がりました。
――:近年、海外、特にアジアのゲームがストアのランキングでも上位にランクインしていますが、その要因はクリエイティブのレベルが上がったから?
国内のソーシャルゲームのルーツはMobageやGREEで提供されていたモバイルブラウザゲームだと思うんですけど、そこからスマートフォンのネイティブアプリに移行する流れで、ここ数年は日本のゲームの型が固定化してきていたのかなと。
そこに新しい要素として、日本のルーツとは異なる海外ゲームが合流してきて、お客様も遊ぶものを精査している段階なのかなと思います。
少し新しい要素だったり今までとは違う体験がある海外のゲーム対して、お客様が評価し始めているところが大きな理由ではないでしょうか。
――:海外ゲームが日本市場に進出してくることに対してはどうお考えですか?
KLabは日本の市場だけを見ているわけではありません。グローバルに向けてゲームを作り、プレイしてもらいましょうというスタンスです。我々も海外市場に進出しているんですから、海外メーカーが日本市場にゲームを出すことも必然ですので、特に何も思ってはいません。
――:続いて、2018年のKLabの取り組みについてお聞かせください。
2018年、我々が注力した取り組みで一番成果があったと思うのは、グローバル展開です。
『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』は2014年から、『BLEACH Brave Souls』のグローバル展開に関しては2016年から行っていましたが、加えて、2017年末から2018年にかけて『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜』のグローバル版を様々な地域に展開しました。英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、繁体字中国語、アラビア語、ブラジルポルトガル語の8言語に対応しています。セールスも日本と同等、またはそれ以上のところまで持っていけました。
業界的にはあまりマーケットとして認識していなかった中東でも『キャプテン翼』はしっかり成果を出せました。
それからフランスや香港など単体で見るとあまり大きいマーケットと思われていない地域でも、文化圏にマッチしたコンテンツを出すことでユーザー数も多く、無視できないサイズのセールスになり、モバイルゲームのマーケットは世界中にあるんだなということが実体験として得られた年でした。
――:御社が2018年にリリースした新作タイトルの手応えはいかがでしたか?
リリース時期の調整などで2019年にスライドになったタイトルもありましたので、2018年は『幽☆遊☆白書 100%本気(マジ)バトル』(関連記事)と、『BLEACH 境・界-魂之觉醒:死神』(関連記事)の2タイトルでした。
『幽☆遊☆白書 100%本気(マジ)バトル』は8月28日にリリースし、10月に300万ダウンロードを突破するなど、想定以上の反響と成果があったと感じています。
一方、中国大陸でリリースした『BLEACH 境・界-魂之觉醒:死神』は、初動でAppStoreのランキングでトップ30入りを果たしましたし、現在も上位をキープしており人気アプリの仲間入りができたかなと思っています。また、台湾・香港・澳門向けの繁体字版も昨年末にリリースすることができ、初動は好調に推移しています。
『BLEACH 境・界-魂之觉醒:死神』は中国の崑崙ゲームと共同開発したタイトルですが、日本企業と中国企業が良い形で協業してゲームを作って、しっかりヒットに繋がり、海外企業と組んでゲームを作る上で良いモデルケースになりました。
今回のケースをモデルに色々な会社さんとアライアンスを組み、KLabの得意なIPの魅力を引き出すプロデュース力と、海外メーカーの得意とする日本とはテイストの異なるゲーム作りを組み合わせて、今までとは違ったタイトルを生み出していきたいです。
――:『禍つヴァールハイト』を始めとした新作タイトルの開発状況はいかがでしょうか?
『禍つヴァールハイト』は、ゲームの完成度としては、ほぼ仕上がっています。リリース時期をスライドした理由として、CβTでのフィードバックを取り込んでより完成度を上げようと判断しました。
『ラピスリライツ ~この世界のアイドルは魔法が使える~』や『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルALL STARS』もリリースに向け鋭意開発中ですし、バンダイナムコエンターテインメントさんと開発している『テイルズ オブ クレストリア』もリリースに向けて突き進んでいますので、2019年にご期待ください。
――:2018年は、東京ゲームショウを始めとするイベントに積極的に参加されたという印象も受けました。
TGSは2017年から出展していますが、2018年の新しい取り組みとしてはビジネスデイでKLab Sound Teamのライブを実施しました(関連記事)。クリエイターが輝ける場所を作りたいという想いからです。
また、KLabGamesが単独イベントを開催するのではなく、TGSやAnimeJapanへ出展することについては、対世間という考え方があります。ゲームファンに対し、ファンサービスとしてイベントを行うという意味合いがあり、KLabGamesのことを知らない方たちに対して我々の会社、ブランドがどういう存在なのかを発信し、認知を広めていくブランディング活動の一環として捉えています。
なぜブランディングに注力するのかというと、ゲーム市場が成熟して競争が激しくなっていく中で、お客様が遊ぶゲームを選ぶ判断材料のひとつとして、信頼のある会社のタイトルであることが重要ではないかと考えているからです。これは家庭用ゲームやアーケードゲームのビジネスでも同様だと思うんですが、知っているものなら安心して手に取ってくれるし、知らないものはどうしても最初から評価としてプラスがつかない。
これは普遍的なプロダクトマーケティングの考え方に基づいていて、ブランド力をしっかり築くことによって、どの作品もお客様に手に取ってもらえる可能性を高めていくということに対して投資しています。
――:2019年のスマートフォンゲーム業界はどのような年になると予想されますか?
今年に限らず、根本的にはやはりおもしろいゲームが売れていくと思っています。
ただ、世界的なトレンドでいうと、リアルタイムの対人戦ゲームが人気を集めたり、日本のアニメテイストのクリエイティブのゲームがアジアを中心に人気になったり、色々なトレンドがあると思うので、一概に2019年はどうなるとは申し上げにくい部分ではあります。
今までにない価値をしっかりと出していけるかどうかが、ゲームメーカーとしてはすごく重要なポイントなのかなと思っています。
――:KLabにとって、2019年はどういう年にしたいとお考えですか?
2019年は、KLabGames設立10周年の年になります。10周年イヤーという形で色々な取り組みをしていこうと考えています。
既存のタイトルを盛り上げる取り組みはもちろん、KLabGamesの認知度もしっかり上げていき、また先程お話した新作も10周年の記念すべき節目年に出ますので、ハイクオリティーに仕上げて、世界中で遊んでもらえるタイトルを目指したいと思っています。
10周年を迎えるにあたり、実は2016年~18年の3年間取り組んできたことがありました。我々は「3 PILLARS(※)」というコンセプトを掲げてやっていますが、それとは別に内部では”ゲームのクオリティーをしっかり上げていく”、”海外でも売れるものを作る”という2つのテーマにも力を入れていました。
※「Japanese IPs」「Global Growth」「Original Creation」
2015年あたりのタイトルで少し苦戦したこともあり、2016年に全体的に戦略を見直しました。ヒット率2~3割では戦えませんので、それをもっと上げていくように1つ1つのゲームの品質を上げる取り組みをしっかり整備していこうと。
また、海外タイトルが進出してきて、国内市場だけではパイが狭くなる、ということは当時からある程度予測はしていました。
日本だけで勝負すると海外メーカーにシェアを奪われ業績が伸びないリスクにさらされますが、我々は海外のマーケットで売上を出すことによりトータルでプラスになれば問題ない、という考え方で準備してきました。
そこから『うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live』や『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜』、『幽☆遊☆白書 100%本気(マジ)バトル』と、KLabGamesブランドとして3年間で3タイトルをリリースしました。
どれも想定以上のセールスとなり、ゲームのクオリティーを上げるということに関しては取り組んできたことが結果として出せました。
海外展開に関しても、『キャプテン翼』や『BLEACH』が日本版と同等以上に売上を出せたり、『うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live』、『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』もずっとチャレンジし続けて、申し分ない形になるまで持ってくることができました。
これは、たまたまではなく、メンバーみんなが課題に対してクリアしようとする意志を持って3年間コツコツやり続けてきた結果なので、2019年はその土台の上に、新しいタイトルを乗せて、今まで以上にインパクトのあるヒットを狙いたいです。
――:それでは最後に読者に向けてメッセージをお願いいたします。
先程お話したように、この3年間、裏では本当に地道にコツコツ積み上げてきたものがありつつ、KLabGamesは10周年の節目の年を迎えます。2019年は、既存タイトルも新作タイトルも、世界中のファンの皆様が喜んで、そして盛り上がれる取り組みを行っていきます。
特に新作に関しては、世界中で遊ばれるように良いゲームにしたいと思っていますので、2019年のKLabGamesに是非ご期待ください。
(C)Yoichi Takahashi/SHUEISHA
(C)Yoichi Takahashi/SHUEISHA/TV TOKYO/ENOKIFILM
(C) KLabGames
原作/冨樫義博「幽☆遊☆白書」(集英社「ジャンプコミックス」刊)
(C)Yoshihiro Togashi 1990年-1994年 (C)ぴえろ/集英社
(C)KLabGames/AXEL GameStudio Inc.
(C)Tite Kubo/Shueisha, TV TOKYO, dentsu, Pierrot
(C)KLabGames (C)GameArk
会社情報
- 会社名
- KLab株式会社
- 設立
- 2000年8月
- 代表者
- 代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3656