【セミナー】ディライトワークスの新卒社員がボードゲーム制作を通して学んだことを披露…探索型協力ゲーム『CHAINsomnia』を作った面々が登壇
ディライトワークスは、2月15日、同社内にて、キャリアの相談や情報交換を行えるイベント「肉会(MEAT MEETUP)Vol.9 フレッシュなお肉と新入社員」を開催した。
「肉会(MEAT MEETUP)」は、ディライトワークスでの仕事に興味を持った人に参加してもらい、情報交換や交流、キャリアの相談を行えるイベント。 通常は社会人を対象に開催しているが、今回は就職活動中の学生を対象に行われた。
本講演では、2018年4月にディライトワークスに入社した新卒社員が登壇し、クリエイター育成の一環として行われたボードゲーム制作の秘話を語るほか、就職活動中や、入社後のエピソードを紹介した。本稿では、その内容をお届けしていく。
【登壇者】
ディライトワークス株式会社
第2制作部 Fate/Grand Order Studio
Fate/Grand Order ゲームデザイナー
青山奨氏
ディライトワークス株式会社
第4制作部 運営セクション
プランナー
田谷由壮氏
ディライトワークス株式会社
アート部 DELiGHT Art Works
アーティスト
角谷希和子氏
ディライトワークス株式会社
第4制作部 開発セクション
プランナー
下見幸穂氏
進行
ディライトワークス株式会社
第4制作部 運営セクション
運営ディレクター / プロジェクトマネージャー
間泰樹氏
■ボードゲーム制作課題を通しての学びとは
イベントが始まると、まずは司会・進行を務める間氏と、2018年4月にディライトワークスに入社した新卒社員である青山氏、田谷氏、角谷氏、下見氏の計5名が登壇。それぞれに自己紹介を行った。
この日、司会・進行を務めた間氏は、普段は新規開発タイトルの運営ディレクターや北米版『Fate/Grand Order(以下、FGO)』プロジェクトマネージャーをしているという。加えて、新入社員の研修プロジェクトで進行や管理など、主に彼らのサポート役を担っていたことから今回のイベントに登壇したという経緯があったようだ。
そして、新卒社員の面々にはクリエイター育成の一環として、ボードゲーム制作が題材として取り上げられたという。この日は残念ながら登壇できなかったメンバーも含めて5人で探索型協力ゲーム『CHAINsomnia~アクマの城と子どもたち~』(以下、『CHAINsomnia』)を作り上げたわけだが、その中でリーダーを務めたのが青山氏、ゲームのレベルデザインやシステムを担当したのが田谷氏、デザイナーの角谷氏、PMとして進行管理を担っていたのが下見氏であったとのこと。
▲会場には、実際に商品化された『CHAINsomnia』の現物が展示されていた。こちらは11月24・25日に開催された「ゲームマーケット2018秋」で販売され好評だったほか、3月10日よりディライトワークスの公式オンラインストア「DELiGHTWORKS STORE」や、同日に開催される「ゲームマーケット2019大阪」 のディライトワークスブースでも再販売される予定。
しかし、そもそも何故、ディライトワークスでは「ボードゲーム制作」が新卒社員の研修題材となったのか。それは、ひとえに同社の理念である"ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。"ということから来ていて、ゲーム創りを「最初」から「最後」まで体験してもらうためであるという。ここで言う「最初」からとは、「無」から作り上げることを指している。スタート前に決まっていたのは、「ボードゲームを創ること」「面白いゲームを創ること」のみ。そこに、「制作の際は、社内の先輩からのサポートや、ゲームデザイナーのカナイセイジ氏と、ボードゲームカフェ「JELLY JELLY CAFE」の代表である白坂翔氏に指導してもらえる」という環境のみが用意されており、ゲームの企画や内容、バランス調整、デザインなどは全て新卒社員の手で作られている。
入社したばかりで基礎研修と並行して、ボードゲーム制作がスタートした当時を振り返って田谷氏は「まだまだ覚えることも多い中、短い期間に新人のみで「無」からゲームを作り上げると聞いたときは驚きました」とコメント。また、青山氏も「チーム制作課題というのは学校でもよくありましたが、実際に商品を作って売るところまではできない経験だったので「(入社したばかりで)やらせてもらえるんだ!?」という驚きがありました」と振り返った。未知への挑戦ということもあり、中には「本当に売れるところまで作れるのかな?」という不安もあったという。
▲こちらが実際のスケジュール。4月の半ばには制作が始まり、約3ヶ月の間でゲームのシステムが完成している。
上記の研修スケジュールを見ると分かる通り、6月以降は配属先も決まっていることから、通常業務をこなしながらボードゲーム制作も行っていた。 現在もFate/Grand Order Studio(以下、FGO Studio)でゲームデザインを担っている青山氏は「自分としてはマルチタスクが苦手だったので、最初は業務の整理など上手くいかないこともたくさんありました」と話す。青山氏はFGO Studioでの仕事を始めてから、『FGO』は多くのクリエイターがチームで作り上げているタイトルであるため、コミュニケーションを含めてどのように作っていけばよいかが大切だということに気付いたという。その時、自分自身のタスクを管理できていないことが原因で、上手く進行できていないことを感じ、自分にできることとできないことがある中で「何を1番先にしなければいけないか」という優先順位を考えながら仕事をすることで困難を乗り越えてきたというエピソードを語ってくれた。
▲そんな時期に重ねて進行していた『CHAINsomnia』の制作過程を公開。こちらの線画やパッケージイラストは角谷氏によるもの。
そうして無事、9月にはデータ入稿して商品が完成した。通常、開発者としてはここまでが主な業務となるところだが、同社ではさらに「ゲームマーケット2018秋」への出展にまで彼らが直接関わっている。この「売る」という部分が冒頭にも紹介された「最後」まで、の部分になる。当日は販売ブースでレジを担当していた下見氏は「お客様の顔を直接見ることができ、思い出深く良い経験になりました」と話す。商品は昼過ぎには完売になるほど好評だったとのことだが、その後も「再販はありますか?」と聞かれることも多く、その度に期待を感じられたのが凄く嬉しかったと振り返った。
また、展示スペースから聞こえる「可愛い」というお客様の感想に安堵したと話すのは、同じくレジを担当していた角谷氏。GMとしてお客様にゲームのルール説明などを行っていたという青山氏は、「自分たちが創ったゲームを自分たちで説明し、実際に目の前で遊んでいただいて、面白いとその場で言葉にして言っていただける」ということが嬉しかったと感想を述べた。入社前は、開発者≒デスクワークというイメージを持っていたこともあり、お客様と接することができる場まで設けられたことで商品を売ることに対する気持ちをより深く理解できたようだ。
イベント前日は「売れなかったらどうしよう」という不安で一睡もできなかったという田谷氏も、いざ蓋を開けてみると昼には完売という結果も得られたほか、自分が作ったゲームでお客様に喜んでいただいているという事実が何よりも嬉しかったと語った。
最後に間氏は、次回以降の新人研修で何をするかはまだ検討中ではあるが、いずれにせよ同社の理念である「ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。」ということを体験していただけるような内容にしていきたいと話を締めた。
■DWに入社を決めたポイントとは
続いては、数あるゲームメーカーの中からディライトワークスへの入社を決めた理由についてそれぞれが言及。
理念である「ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。」という言葉に心を打たれたことが決め手になったと語る青山氏は、学生の頃から常に「"面白い"とは何だろう」と考えていたという。そもそも、人それぞれに面白さの定義は異なるため、自分が面白いと思ったものも他の人にとっては面白くないかもしれない。"面白さ"を解明することは難しいと感じていたところに、企業理念として「面白さ」について考え続けることを掲げているディライトワークスのような会社であれば、その本質を理解できるのではないかと思い入社を決めたのだとか。先ほども議題に挙がったボードゲーム制作課題では、自分ひとりで考えた面白さを詰め込むのではなく、より多くの人の面白さを取り入れることによって多くのフックができ、受け入れてもらえる人の幅も広がったと振り返った。
田谷氏も「どこまでもゲームの面白さを追及する姿勢」に惹かれて入社を決めたのだという。『CHAINsomnia』では、その姿勢に習い、面白いと感じる難易度の調整にこだわってきたと話した。本作は1~4人で遊べるゲームとなっているが、当時は田谷氏がその全てのケースで細かいところまで調整に尽力していたと間氏も評した。
また、角谷氏は説明会に行った際に、自身の好きなゲームに携わったクリエイターが在席していると知ったことがきっかけになったとのこと。同じ職場に尊敬できるクリエイターがいることは、働くうえで大きなモチベーションに繋がっているようだ。
最後に下見氏は、社内の雰囲気を入社のポイントとして挙げた。実際に面接を受けた際の質問やその場でのやり取りなど、社員の方の雰囲気が凄く良かったという。下見氏は、この先長い時間働くことになるので、人間関係は凄く大事と話す。来場者の面々には、面接時は緊張しているかもしれないが、社員の方の雰囲気を見て「この会社でこの人と働きたい」と思える会社を見つけて欲しいとアドバイスを送った。
ここで間氏から下見氏へ、社長面接でどのようなことを聞かれたのかという質問が飛ぶ。 下見氏は、ゲーム会社では「あなたはこれからどういうゲームを作っていきたいですか?」という聞かれることは多いが、庄司社長はそこからさらに「今後どういうクリエイターになりたいですか?」と、一緒に掘り下げていくような質問をしてもらったのが印象に残っているという。そこで「ウチはこういうゲーム会社だから、こういうゲームを作って欲しい」という方針ではなく、今から一緒にゲームを作っていく社員ひとりひとりの個性や意見を取り入れて開発をしていける環境が整った会社だと感じたと語ってくれた。
■実際に入社してみての感想
最後のお題は「実際に入社してみての感想」について。
これに、『FGO』という大規模なゲームを開発しているだけあり、尊敬できるクリエイターが多い感じたと答えたのは青山氏。自身にとっては知識の宝庫であると話す。さらに、自分にまだまだ力がないと感じることもあると謙遜する青山氏だったが、間氏曰く、既に青山氏が立案した企画が実装されたこともあるのだとか。青山氏は、先ほどボードゲーム制作で学んだこととして話した通り、ここでも自分ひとりではなくデザイナーやプランナーなど、周りのメンバーの方々と力を合わせることが改善や機能追加に繋がっていると話をまとめた。
また角谷氏は、入社前から妥協しない会社だという印象はあったが、本当にその通りだと感じたとコメント。その分、認めてもらえることが嬉しく、周りも優しいメンバーばかりのため相談にも乗っていただけるなどサポートもあり、働きやすい職場であると感想を述べた。
最後に下見氏は、良い意味で想像していたものとは違ったと話す。ゲーム開発者である以上、休日出勤や残業が付きものになると覚悟をしていたが、今は定時に帰宅できる働きやすい環境であることを実感したという。疲労やストレスは面白いゲームを創るうえで敵になるとの考えから、会社全体として働きやすい仕組みを作り上げようと努力しているのだとか。ただ、例外としてお客様が面白いと感じられないような状況、例えばゲーム内で障害が起きたといった際にはいち早く対応するため業務が延びることもあるが、基本的には社員のプライベートを大事にするという方針のようだ。
本イベント後半の懇親会では、「フレッシュ」というテーマにあわせて子羊と仔牛の肉料理が中心に振る舞われた。参加者たちは「ラムチョップのグリル」 や「仔牛肉のグリル」を楽しみながらスタッフと交流や情報交換を行って有意義な時間を過ごしていた。
また、今後のイベントについても開催告知が行われた。詳細は以下の通り。
▲3月10日に開催される「ゲームマーケット2019大阪」にて『CHAINsomnia』が再販されることが決定した。また、同日よりディライトワークスの公式オンラインストアでも数量限定で販売されるとのこと。
イベント名:肉会(Meat Meetup)Vol.10 集まれ!未来のゲームプロデューサー
開催日時:2019年3月8日(金)20:00~
開催日時:2019年3月8日(金)20:00~
イベント名:ディライトワークス春の新卒採用まつり
開催日時:2019年3月30日(土)11時~17時
開催日時:2019年3月30日(土)11時~17時
(取材・文 編集部:山岡広樹)
【バックナンバー】
・【肉会vol.1】「ディライトワークスとはレストランである」「1日の業務はまるでMMORPG」という話も飛び出した塩川氏&加藤氏の講演をレポート
・【肉会vol.2】FGO PROJECT流のマーケティングとは…『Fate/Grand Order』における人を動かす”3つのマ法”&”コウホウ支援”を紹介
・【肉会vol.3】大団円に仲間を導く「プロジェクトマネージャー」のやりがいとは…ディライトワークスのPMのとある一日も公開
・【肉会vol.4】『FGO』企画立ち上げから現在の運営まで…ディライトワークスに欠かせない”プロデュースワーク”を庄司氏、石倉氏、塩川氏が熱弁
・【肉会vol.5】ディライトワークスのディレクターに必要なのは”予想”を裏切ること!?…『FGO』を海外展開するうえでのこだわりポイントも
・【肉会vol.6】『Fate/Grand Order』におけるプランナーの役割、魅力とは…現場のゲームデザイナー&シナリオスプリクターによる講演をレポート
・【肉会vol.7】直良有祐氏が自身のアートディレクション法を伝授…「アート」と「グラフィック」の違いなど現場のリアルな声をお届け
・【肉会vol.8】塩川氏が率いる開発スタジオ「DSS」で得られる「挑戦」「結果」「成長」とは…ディライトワークスでの働き方&やりがいが明らかに
会社情報
- 会社名
- ディライトワークス株式会社
- 設立
- 2014年1月
- 代表者
- 代表取締役 庄司 顕仁