ドリコム<3793>は、7月31日、第1四半期(2019年4~6月)の連結決算を発表するとともに、アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。発表した決算は、売上高22億5300万円(前四半期比QonQで18.7%減)、営業利益1億2800万円(同0.6%増)、経常利益1億5100万円(前四半期6600万円の赤字)、最終利益1億2200万円(同3億4000万円の赤字)だった。営業利益は2四半期連続の黒字となり、経常利益と最終利益も念願の黒字転換を果たした。
決算説明会に臨んだ内藤裕紀社長(写真)は、「長らくenzaへの投資が続く中、赤字が続いていたが、前期の第4四半期からドリコム側のenza事業が黒字化した。そして今回、BXD側のenza事業も黒字化した。ユーザー数だけでなく、プラットフォームの流通金額が拡大基調を迎えており、売上の上振れが利益につながっている状況だ」と振り返り、enzaが収益化フェーズを迎えたことを明かした。
続く第2四半期(19年7~9月)については、売上高21億4700万円(QonQ4.7%減)、営業利益7200万円(同43.8%減)、経常利益4900万円(同67.6%減)、最終利益2800万円(同77.1%減)となる見通し。『アイドルマスター シャイニーカラーズ(シャニマス)』の周年イベントなどがないものの、引き続き黒字をキープする見込みだ。「夏は売上が伸びやすい時期でもあるが、大きく見込むこともできない」と保守的な予想であることを示唆した。
既存アプリの収益改善に加えて、enzaの拡大を目指した投資で一定の成果が出てきたが、今後は売上の拡大を伴った収益拡大を目指すことも明かした。「アプリの運用改善を行っても利益を大きく伸ばすことは難しい」状況で、今後の利益成長には売上の拡大を伴う必要があるという認識だ。引き続きenzaの拡大に注力するととともに、「IP」を活用した新作2タイトルをリリースして収益を伸ばす考えを示した。
■周年タイトル好調で黒字キープ
まず、決算を見る前に、前四半期(2019年1~3月)の状況を見ていこう。第4四半期の業績をあらためて見ると、売上高がQonQで16.2%減の27億7300万円と減収になった一方、営業利益が前四半期の1億2600万円の赤字の赤字から1億2700万円の黒字に転換した。不採算アプリへの対応を行いつつ、アプリの選択と集中を進めた結果、売上が低下したものの、費用削減やenzaの成長で営業黒字となった。ただし、経常損益と最終損益の赤字は残った。
続いて、第1四半期を見ると、売上高がQonQで18.7%減の22億5300万円、営業利益が同0.6%増の1億2800万円だった。売上の減少はほとんどが開発売上になる。これは製作委員会などに納入したアプリの開発売上で、同額の費用を計上している。このため、この売上が減っても利益への影響はほとんどないという。費用は増減がほぼ同じのため、営業利益は横ばいとなった。
ただし、既存ゲームの主力IPゲームが5周年を迎え、国内外で安定した人気を獲得したことで、既存ゲームの営業利益が伸びた。これは5月に5周年キャンペーンを実施した『ONE PIECE トレジャークルーズ』とみられる。その一方、ドリコムのenza向けは収支均衡だったとのこと。下のグラフで、サービス別の営業利益の推移を示しているが、既存ゲームが伸び、enzaが低下したことが確認できる。
■BXDの持分法投資損益が黒字、経常利益の黒字転換に貢献
「enza」については、ドリコム側だけでなく、バンダイナムコエンターテインメントとの合弁会社BXD側でも黒字転換した。BXDの利益については、持分法投資利益3500万円が営業外収益に計上されるため、経常利益から反映されることになる。前四半期まで持分法投資損失を計上していたが、一転して収益貢献してくるようになった。
日々の改修を重ね、「課金率や継続率などKPIがネイティブアプリ並みに改善した」うえで、アプリやPCブラウザへの提供などマルチタッチ戦略とプロモーションを行ったことでユーザー数が一気に伸び、収益が大きく改善したという。特に『アイドルマスター シャイニーカラーズ』アプリ展開と周年イベントが伸びに拍車をかけたように見える。
なお、「enza」では、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』や『ドラゴンボールZ ブッチギリマッチ』、『プロ野球 ファミスタ マスターオーナーズ』など合計6タイトルを配信している。新作として、バンダイナムコエンターテインメントより、新作『NARUTO X BORUTO PROJECT:TRI』が2019年中にリリースとなる予定。
■新作2タイトルを開発中、新しい事業展開へ
今後の事業方針は、既存アプリの収益改善と「enza」の収益化がこれまでの方針から変更し、「enza」をさらに伸ばすとともに、新作2タイトルをリリースして、売上とともに利益を拡大させる方針とした。新作はいずれもIPタイトルで、2020年3月期中のリリースを目指す。上期はちょうど開発が佳境に入っているという。
ただし、クオリティ重視で開発しているため、リリース時期が流動的なうえ、版元との関係もあるため、具体的な時期やタイトルは明言しなかった。場合によってはリリースから一定期間経た後に発表となるケースもある、とした。
なお、収益改善を行なってきた既存のアプリについては、引き続き改善を図っていく。「アプリの運用改善を行っても、売上と利益を大きく伸ばすことは難しい」ため、安定した売上と利益を稼ぐことのできる収益基盤と位置づけていく考え。このほか、ゲーム以外の領域での主力サービス創出に注力する、とした。
(編集部・木村英彦)
会社情報
- 会社名
- 株式会社ドリコム
- 設立
- 2001年11月
- 代表者
- 代表取締役社長 内藤 裕紀
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高97億7900万円、営業利益9億300万円、経常利益7億9300万円、最終利益1億400万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3793