コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は、9月4日~6日の期間、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて、国内最大のゲーム開発者向けカンファレンス「コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス 2019」(CEDEC 2019)を開催した。
本稿では、9月5日に実施された講演「非サウンド系ツールから攻める!サウンド業務効率化の方法」についてのレポートをお届けしていく。
本セッションには、ノイジークローク第1制作部チーフサウンドデザイナーの金井琢真氏と、同じく第1制作部部長の蛭子一郎が登壇。サウンドに関わる作業効率化の手法について、「Reaper」「XYplorer」「Listary」などのソフトを使った作業効率化の方法について紹介が行われた。
【登壇者】
●金井琢真
ノイジークローク第1制作部チーフサウンドデザイナー。2016年、ノイジークロークに入社。サウンドデザイナーとして、コンシューマー、モバイル、VRゲームなど、様々なプラットフォーム向けの効果音制作、実装を行っている。
●蛭子一郎
ノイジークローク第1制作部部長。学生の頃、自宅にあったパソコンで音楽制作、ゲームプログラミングを独学で覚える。バンド活動(作曲&ベースを担当)を中心に活動してきたが、その後ゲーム・CM等のBGM・効果音を制作するようになり、2008年よりノイジークロークに所属、現在に至る。元コンシューマゲームのプログラマー、最近の趣味はUnityを使ったゲーム制作。
■非サウンド系ツールでデータ操作を効率化
まず蛭子氏が、ノイジークロークについて簡単に紹介。
本講演を行うに至った経緯として、まず様々なクライアントから仕事を受けていく過程で、作業範囲や開発環境、データの管理方法が違うことに苦労した背景があったという。そこで、一般向けに公開されていて、複数のプロジェクトで使える便利ツールを調査。作業に定着したソフトウェアと、効率化する方法についてまとめたと話した。
続いて、金井氏が「非サウンド系ツール」について説明。非サウンド系ツールとは、エクスプローラーやランチャー、スプレッドシートといったサウンドツール以外のすべてのこと。効果音制作といっても、ファイル名管理やサンドデータ管理など、作業範囲は広いため、色々なソフトを使う必要がある。作業効率が改善するツールとして、金井氏は「Listary」、「XYplorer」、「foobar2000」の3つのソフトを紹介した。
●Listary
多機能なランチャー。ソフトからファイルを開いたり、保存作業を効率化できる。
●XYplorer
多機能ファイラー。ファイル名やパス名を一気にコピーできる機能、探索機能があり、ファイル名管理やサウンドリスト管理が効率化できる。
●foobar2000
2000年代から存在する音楽再生プレイヤー。音データを管理する機能が豊富で、タグを編集することもできる。「Masstagger」、「File Operation」といった便利な機能がある。
・Masstagger
拡張機能の1つ。「Guess values from filename」という機能で、ファイル名からタグデータに変換することができる。親ディレクトリも変換が可能。
・File Operation
タグデータをもとにコピー・移動・リネームできる。フォルダ構造込みで、ファイル操作が可能。
ここから金井氏が、ここまでに挙げたソフトを組み合わせた作業例について紹介していく。
●ボイスリネーム
ボイスIDが何らかの事情でずれた際には、前述した「XYplorer」を使用。全ボイス名をリストへコピペし、ファイル名に対応したボイスIDを表示。そこから項目名の編集で正しいIDをコピペすることで簡単に解決できる。金井氏は「XYplorer」を組み合わせることで、大量のデータ操作も楽にできると振り返った。
●ボイス加工
従来の方法であれば対象のボイスデータのピックアップを手作業で行っていたが、「XYplorer」と「foobar2000」を組み合わせることで作業時間の短縮が可能になった。まずは加工するボイスをまとめて選択し、ファイル名にフォルダ名を記入。DAWで加工し、ファイル名からフォルダ名を再構築することで解決できる。
■「Reaper」を使えば単純作業の時間を削減可能!
続いて、金井氏はサウンド系ツールである「Reaper」を紹介。Reaperは拡張性が高く、スクリプトの量が豊富なため、使用することでニッチな作業でも効率化を図ることが可能になる。
Reaperを使用した事例として、金井氏は「足音の差し替え」と「レイヤーの効率化」について説明する。
●足音の差し替え
ここでは、同じキャラクターにおいて足音を初期はWAV貼り付け、後期はMIDIで制作してしまい、音が変わってしまったパターンを想定する。解決案としてまず、AudioをMIDIに変換するスクリプトを使用。それからMIDIノートを対応ノート番号にアサインしていくことで、手作業でやらなくて良い部分を短縮することができるそうだ。
●レイヤーの効率化
足音や紙が舞う音、跳弾音など、大量の音を使う効果音制作も効率化が可能。「free item potitioning」で複数の波形をひとつにまとめ、各波形ごとの要素をランダマイズし、シャッフルしていくことで手軽にイテレーション(反復)ができる。
金井氏はこれらのツールを導入して良かった点について、ケアレスミスの軽減や単純作業の時間削減に繋がった点を挙げる。最後に、「手軽に誰でも試せるので、何かしらの役に立てばと思います」と会場に呼びかけ、セミナーは終了の時間を迎えた。
(取材・文 ライター:島中一郎)