【CEDEC 2019】働き方を変えるにはまずはトップから! ディライトワークスが実践するリモートワークによる"働き方デザイン"の全貌が明らかに!

9月4日~6日の期間、CEDEC 2019が、パシフィコ横浜で開催された。2日目にあたる5日、ディライトワークスによる講演「デザイン部署から始める働き方デザイン」が行われた。

本講演では、ディライトワークスデザイン部署で副GM(ゼネラルマネージャー)を務める、今井仁氏が登壇しン「デザイン部署から始める働き方デザイン」の内容を掲載する。


▲登壇した今井仁氏。

このセッションでは、今井氏が所属するデザイン部署内において行なわれてきた働き方の改革を例にしながら、現場主導の働き方のデザインを実現するため、取り組んできたチャレンジの内容を紹介している。



▲本セッションのアジェンダ。

働き方デザインを推進していくうえで、今井氏はまず役職が上の人間から実践していくのが効果的だとしている。ここからは同じくデザイン部署のGMである直良有祐氏のワーキングスタイルに起きた変化を紹介するのだが、その前に今井氏はひとつの年表を提示した。

それは、2000年以降にゲームに関連するハードウェアに起きた変化をまとめたもので、2008年のiPhone3Gの登場により、携帯端末でのネイティブアプリ開発が進んだことで、ゲーム開発に特別な機材が必要なくなったことが大きな影響を与え、さらに2016年のiPad Proの登場は、デザイナーにとっての革命が起きたと今井氏は語っている。



その革命の様子を1枚に収めたものとして、以下の写真を紹介している。


▲撮影されたのは島根県出雲市。車中にGMの直良氏が着席している。

車中の直良氏は、膝に上にiPad Proを置き、イラスト制作の作業を進めている。このように、持ち運び可能なiPad Proでの作業が可能になったことで、直良氏はいつどこにいてもデザイナー業務にあたれるようになった。

デジタルだけでなく、紙媒体への入稿用のデータまで、すべてがiPad Proで完結させられる。メールやチャットによる連絡、他者の制作物への添削も可能なので、これだけでほとんどの業務が可能になっている。



場所を選ばずに仕事ができるようになり、フリーアドレス化を実現したことで、直良氏の業務環境においては、大幅な低コスト化にもつながった。

社内に席を用意するとなれば、デスクや椅子といった座席周辺器具。デスクトップPCやそれに付随するデバイス各種など、多くのコストがかかることに対し、iPad Proであれば端末ひとつでそれが済んでしまう。



こうした結果を見てもわかるように、デザインの過程においては特別な環境はすでに不要になっている。


▲写真では、直良氏が畳の上のクッションに寝そべりながら、iPad Proでデザイン作業をしている様子が写っている。

ここまでのまとめとしては、業務のiPad化が可能なのは、上流過程であるアートコンセプションだからであり、ハイエンドアセットの制作ともなれば、スペックの都合上デスクトップPCに分がある。


▲また、注意点のひとつとしてiPad ProもデスクトップPCもどちらも必要になってしまうようであればコストの削減は不可能。全てをiPad化できることに意味がある点には留意しておこう。

そして、こうした働き方デザインをトップであるGMが実践することにより、成果物のクオリティや生産性を担保できると証明するに至っている。環境を変えるためには、できるだけトップに近い人間から実践していくべきであると、直良氏は言及している。



次に、入社から間もない社員を例にしながら、働き方デザインの別ケースを紹介している。今井氏は、5月初頭にグラフィック部の男性社員から、7月に子供が産まれるため育児休暇が欲しいが、入社から間もないせいで育児休暇制度の対象外となっている旨を相談された。

その相談を受けた今井氏は、グラフィック部を中心に急ぎ対応を行なった。アート部、グラフィック部ともに働き方デザインに前向きであったことや、相談してきた社員は勤怠もよく将来的にはリーダーとなりうる人材であったこともあり、育児と業務を両立できる形を全体で模索する運びとなった。



▲ここでは、5/16に代表へ上程となっているが、ゴールデンウィークだったこともあったため、実際には5/9の時点では決定できていたと、今井氏は見積もっている。

そこで採用された方式がリモートワークだった。ノートPCとVPNを手配し、業務のベースはリモートワークに変更。事前に決まっているミーティングのときのみ出社してもらうという形にした。


▲さきほどのケースとは異なるが、この場合はオフィスに座席とデスクトップPCも残している。

こうして、実際に働き方デザインに乗り出したことによって、他部署もサポートしてくれることが判明し、良い事例を作りだすことに成功した。

また、今回のリモートワーク対応により、育児休暇を申請した社員のモチベーション向上にもつながったと今井氏は考えている。実際に、その社員から送られてきたメッセージを公開し、その気持ちの変化を紹介している。



▲復帰後は今まで以上に業務にあたりたいというコメントから、モチベーションが上がっている様が見て取れる。

さらに、その社員からの報告には続きがあり、育児とリモート業務を両立していくなかで時間に対する価値観に変化が生じ、時間の使い方が以前よりも上手くなったことも告げられていた。


▲就労環境の変化により、社員の意識も変化するという良い例となっている。

次に、自身で働き方デザインに乗り出した、研究開発部の對馬氏の事例をもとに、リモートワークをするGMと副GMの関係性について、今井氏は言及していく。



GMの直良氏と副GMの今井氏は、アートのクオリティや社員のスキルを見るのは直良氏、組織運営の諸々は今井氏が担当するという形で役割を分担し、互いの得意な領域を担当するようにしている。ただし、決裁権はGMと副GMで同じにしてあるそうだ。



働き方デザインによりフリーアドレス化したことにより、直良氏はどこでも業務にあたれるようになったが、この距離がデメリットとなってしまうケースもある。

部にとって重要な判断が必要なときであれば、顔を合わせて話をしたいということもある。しかし、フリーアドレスゆえにすぐに直良氏がつかまらないことも多々あるそうだ。



解決策として一番単純なのは、今井氏が自ら出雲に出向くという方法。直良氏の業務のiPad化によって削減されたコストを考えれば、出雲との往復にかかるコストはさほど痛手にはならない。



次に、GMと副GMが同じ出張に出向くなど、行動を共にするという方法。特に、海外のカンファレンスなど長期間の出張ともなれば、話し合う時間は多くなる。重要なポストの人間がふたりも会社を離れることには多少のリスクもあるが、離れた会社と連絡する手段はあるので、大きな問題にはなりにくい。



▲距離をとることによって生まれるメリットをまとめたスライド。顔を合わせて話をする時間を大切にしようという意識も生まれ、より密度の高い話ができると今井氏は語っている。

現状で抱えている課題としては、働き方デザイン自体はまだまだ始まったばかりであり、さらに自分から動いていかないといけないこと。さらに、自分の時間を削るために家を空けることも増え、家族との時間が減るという弊害も……。



働き方デザインの進め方について話し終えたところで、今後のチャレンジについても言及している。タブレット端末による業務の割合を増やしていくこと、リモートワークを実現していくことで、TOKYO 2020の目標でもある交通量削減に協力していきたいとのこと。




さらなるチャレンジとして、GM直良氏と通話をつなぎ、その場でのリモートセッションに挑戦し、直良氏とともにこれまでのセッション内容を振り返った。このとき直良氏は、出雲のスタジオでセッションのスタートを待ちながら、業務にあたっているところだった。




▲実際に業務をiPad Proに移行したあとの成果についてまとめたスライド。

最後に、現場手動で働き方をデザインすることで、ゲーム業界の発展本セッションの目的を振り返りながら、今井氏による講演は終了した。



 
​(取材・文 ライター:宮居春馬)
 

 

CEDEC2019公式サイト

ディライトワークス株式会社
https://delightworks.co.jp/

会社情報

会社名
ディライトワークス株式会社
設立
2014年1月
代表者
代表取締役 庄司 顕仁
企業データを見る