【サイバーエージェント決算説明会】「第2四半期は非常に好調だった」(藤田社長) ネット広告とゲーム成長 ABEMAも有事に強さ見せWAU大幅増、収益化進展
サイバーエージェント<4751>は、4月22日、第2四半期(2020年1~3月)の連結決算を発表し、同日、機関投資家・証券アナリスト向けの決算説明会をオンラインで開催した。ここでは質疑応答などはなく、会社側からの説明のみだった。発表した決算は、売上高が1291億円(前年同期比10.1%増)、営業利益が124億円(同45.3%増)、経常利益が125億円(同46.1%増)、最終利益が33億円(同1837.4%増)と大幅な増益を達成した。
決算説明会に臨んだ藤田晋社長(写真)は、「非常に好調な四半期だった。巣ごもり消費への需要がABEMA(旧AbemaTV)にプラスに働き、そのWAU(週次アクティブユーザー数)が大幅にベースアップした。広告も長年仕込んできた取り組みが花開いた。またゲームについては、主力タイトルの周年イベントが重なったことに加えて、新規タイトルが好調な立ち上がりをみせた」と好調な決算を振り返った。
そして、最も気になるのは、新型コロナウイルス感染症の影響が出てくるであろう、次の第3四半期(20年4~6月)の動向だ。ゲームとメディアはともかく、ネット広告については、3月から新型コロナの影響を受けていると明かした。「(広告需要は)明らかに減退」しているものの、その影響度合いについては「現段階で言えることは少ない」とした。
ただ、2020年9月通期の業績予想は、売上高4650億円(前期比2.5%増減)、営業利益280~320億円(同9.2%減~3.8%増)、経常利益280~320億円(同8.2%減~4.9%増)、最終利益80~100億円(同372.1~490.1%増)と据え置き。計画を立てた時点では「新型コロナウイルスの影響は予想だにできなかった」が、保守的に業績予想を立てていたことが良かったという。
続いてセグメント別の状況を見ていこう。
■ネット広告
ネット広告事業は、売上高が同9.2%増の727億円、営業利益が同23.7%増の67億円と増収増益を達成した。売上高と営業利益ともに過去最高を更新することに成功した。ナショナルクライアントと呼ばれる大型クライアントの開拓に注力してきたが、新規顧客開拓とともに、新しい広告主との取引を伸ばす戦略が奏功し、好調に推移したという。「構造改革で取り組んでいたことが花開いた」。
新型コロナウイルの影響については、3月から出稿のキャンセルや手控える動きが徐々に出てきたという。具体的に数字として現れてくるのは、次の四半期からとなる。リモートワークで営業を行っており、検索エンジン周りなどベースとなる広告に影響は少ないが、大きなキャンペーンを控える動きが強いとのことだった。具体的な規模については、現段階ではまだ言えないとのこと。
■ゲーム事業
ゲーム事業は、売上高が同12.4%増の448億円、営業利益が同39.8%増の104億円と過去最高を更新した。藤田社長は、過去の決算説明会で、ゲーム事業の売上高が350~400億円で推移するなど伸び悩み気味である旨を述べていたが、今回、これまでの上限を一気に抜いてきた。ポジティブ・サプライズといえる内容だった。
『グランブルーファンタジー(グラブル)』や『プリンセスコネクト!Re:Dive(プリコネR)』、『バンドリ! ガールズバンドパーティ!(ガルパ)』など主力タイトルで行われた周年記念イベントが好調に推移した。
さらに、サムザップが2月27日にリリースした新作『この素晴らしい世界に祝福を!ファンタスティックデイズ(このファン)』も好スタートを見せた。この四半期では、1ヶ月強の貢献だったが、大きなインパクトを与えたようだ。
藤田社長は、『このファン』について「非常に良いスタートを切った。足元も順調だ」とコメント。また、『グランブルーファンタジー ヴァーサス』についても「かなりの本数が出た」と述べた。
下期以降では以下の新作を予定している。『プリンセスコネクト!Re:Dive』(配信中)のほか、『ウマ娘 プリティーダービー』『シャドウバース チャンピオンズバトル』『NieR Re[in]carnation』と「期待できるタイトルが続々と控えている」(藤田社長)。
■メディア事業
メディア事業は、売上高が同18.8%増の138億円、営業損益が42億円の赤字(前年同期は43億円の赤字)だった。昨年12月にサービスを終了したPC版アメーバピグの売上がなくなったものの、2桁の増収を達成した。けん引役となったのは、当然、ABEMAだ。新型コロナウイルスと巣ごもり需要でアクティブユーザー数が伸びており、広告収入や、課金収入が伸びているそうだ。
「ABEMA」のWAUは、昨年後半は1000万近辺で推移していたが、新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要を取り込むことに成功し、さらに20~30%のベースアップを果たしたという。
引き続き「有事」での強さを見せた。新型コロナウイルスの感染拡大で、ニュースへの需要が大きい。チャンネルや放送時間の拡大に柔軟に対応できるため、政府関係者の重要な会見が始まったらすぐに生放送を行った。また全国の都道府県の知事の会見にもチャンネルを増やして対応した。
また、視聴者数の伸びに伴い、サブスクプション(月額課金)の「ABEMAプレミアム」による売上も拡大している。有料会員数は同1.7倍の67万6000万人と拡大を続けた。藤田社長は「足元でも順調に伸びており、年内に100万人を超えたい」と改めて述べた。「ABEMAプレミアム」のプロモーションを強化し始めたことも有料会員の増加に一役を買った。
このほか、周辺ビジネスも着々と成長している。「競輪チャンネル」を開設して以来、公営ギャンブル「WinTicket」の販売も開始したが、2020年1~3月では前四半期比で倍増となる35億円を記録した。「巣ごもり需要もあって急拡大している」という。
■今後の事業方針
最後に今後の事業方針に触れて説明会を終えた。ABEMAを中心とするメディア事業について、中長期的な柱として育てるべく、引き続き投資を行うとともに、収益化の動きを強化していく方針だ。
また、現在の柱であるネット広告については、すでに触れたように、これまで実施してきた構造改革の効果が出てきたという。「コロナ禍」で一時的な減退が予想されるが、「これを乗り越えたら収益を伸ばせる体制になっている」と自信を示した。
同様にゲーム事業についても、主力タイトルの運用強化と新規ヒットの創出を図っていく考え。新作が好調に推移していることもあり、「新しいタイトルをヒットさせることに自信がついてきた」と成熟化の進むスマホゲーム市場で成長を目指していく。
(編集部 木村英彦)
会社情報
- 会社名
- 株式会社サイバーエージェント
- 設立
- 1998年3月
- 代表者
- 代表取締役 藤田 晋
- 決算期
- 9月
- 直近業績
- 売上高7202億0700万円、営業利益245億5700万円、経常利益249億1500万円、最終利益53億3200万円(2023年9月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 4751