ブシロード<7803>は、この日(7月6日)、今後の舞台に関する記者会見をブシロード本社で実施した。これはブシロードの舞台に関する方針を発表する記者会見で、ブシロード代表取締役会長の木谷高明氏が登壇し、『少女歌劇 レヴュースタァライト』と「We are RAISE A SUILEN〜BanG Dream! The Stage〜」などの展開を発表した。記者会見終了後には、ネルケプランニング代表取締役会長の松田誠氏との対談も行った。
まず、第1部は「ブシロード舞台に関する今後についての会見」だった。ブシロード主催の舞台について今後どのように実施していくか、今後の舞台について、木谷氏が会見を行った。
■『少女歌劇 レヴュースタァライト』
『少女歌劇 レヴュースタァライト』については、7月12日18時より、初のオンライン公演を開催する。新型コロナウイルスの感染防止のため、出演者とスタッフの抗体検査を行いつつ、ネルケプランニングが作成したガイドラインとソーシャルディスタンスの確保など、稽古段階から可能な限り配慮した感染対策をとっている。
本作としては初めての配信となるが、舞台パートとライブパートの2部制とし、キャスト等によるトークショウやメイキング映像も配信する予定だ。本来は7月3日に新作の舞台を行う予定だったが、今回はエピソードゼロとして新しい物語とライブとなる。
当初は、スタジオライブの延長と考えていたが、スタッフとキャスト陣の熱意によって、これまでにない、まったく新しい舞台作品に仕上がった。オンライン配信ならではの映像演出をふんだんに取り入れているほか、表題曲も初披露する。みていただくと「なるほど」と新しさに納得できるものとなっているという。
■舞台「We are RAISE A SUILEN〜BanG Dream! The Stage〜」
舞台「We are RAISE A SUILEN〜BanG Dream! The Stage〜」は、7月15日~19日に天王洲 銀河劇場で開催する。本公演を実施するに当たって様々な取り組みを行う。ライブ動画配信サービス「PIA LIVE STREAM」を使ったライブ配信がその一つだ。千秋楽以外の全公演を定点カメラで配信する。そして、千秋楽についてはライブビューイングを行う。全国各地の劇場で楽しんでほしいとのこと。
なお、こちらもコロナウイルス感染症対策を実施しており、キャストとスタッフの抗体検査を実施した。稽古中からソーシャルディスタンスの確保など感染対策も行った。劇場の定員数も調整しており、考えられる限り、できるだけ安全に行う。
■舞台「アサルトリリィ」
舞台「アサルトリリィ」プロデューサーの岡田氏(写真)が登壇し、9月公演のタイトルが舞台「アサルトリリィThe Fateful Gift」に決定し、9月3日から公演することを明らかにした。
会場を定員1300人の東京建物Brililia Hallに変更する。定員の1/2の定員で開催することで、新型コロナウイルスへの対策を行いつつ、当初と同じ規模でできるという。
追加公演を行うことも決定した。
ただし、開演時間を変更する。平日夜については、19:30から19:00に早める。これは公演の途中、換気を行う時間をとるためだ。
チケットは、一次先行と二次先行が終わったが、7月11日から26日まで特別抽選の申込みを受け付ける。更に8月8日からは一般販売も行う。一般販売では先行で販売していない回も含めて、すべての公演を用意するそうだ。ただし、こちらについては受付順となる。
また、開演時間と場所を変更するため、チケットの払い戻しも受け付ける。昨今の情勢も鑑み行けない人にも対応する。7月11日から31日まで受け付ける。
公演の模様は、初日と千秋楽を含む複数回を有料で配信する。こちらの詳細については後ほど発表する予定。様々な事情で会場まで来られない人は、ぜひ配信を見てほしいとした。また公演に先立ち、1月に上演した舞台の模様を7月下旬と8月上旬に無料で配信することも決定。事前に視聴してから行くと、より楽しめるはずだ。
「今後の舞台について〜ネルケプランニング松田誠×ブシロード木谷高明対談〜」
第2部では、ネルケプランニング代表取締役会長の松田誠氏がゲストとして登場し、木谷氏と対談を行った。両社は、『少女歌劇 レヴュースタァライト』で協力関係にあるが、2人の付き合いは、『ギャラクシーエンジェル』のキャストオーディションで出会って以来、18年になるなど長いそうだ。対談では、ファンから寄せられた質問に答えつつ、今後の舞台に関して展望を語った。
女性役者を中心とする舞台の今後の展開について
松田氏は、男性の役者がメインとなる公演が多かったこともあり、女性の来場者が9割を占めているという。こうしたなか、女性が役者として舞台に立ち、男性ファンを集められるような企画を行いたいと考えていたところ、木谷氏から『少女歌劇 レヴュースタァライト』の話を持ちかけられたという。
松田氏は、「チャレンジングでとても面白い企画だと思った。男性が来場できる舞台を作りたいと思っていた」と振り返った。記者も他の2.5次元の会社に取材した際、「男性は発散目的が多いのか、じっと鑑賞するような舞台は合わないのかもしれない」といった男性ファンの取り込みに否定的な声をよく聞いていた。その意味で、『少女歌劇 レヴュースタァライト』は稀有な成功例であった。
木谷氏は、男性が舞台演劇に行かない要因を複数あげつつ、いわゆる「食わず嫌い」だった部分が大きかったのでは、と指摘した。演者やライブが目的で来ていた人が演者の生の演技や観客との相互作用、ストーリー、舞台演出など、舞台ならではの魅力に気づいて、少しずつ来てくれるようになったとした。
それに対して松田氏は、「世界的に見ても、演劇の男女比はそんなに変わりはない。世界的に見ても、日本のように女性の比率が多いのは珍しい。男性にも見に来てほしい」と述べた。
また女性演者が出演することで、男性以外の新しいファン層の開拓もできたという。「かわいい女性の役者が演じている舞台をみたい」という女性ファンも多くなってきたとのこと。宝塚歌劇団などでは女性がかっこいい役を演じているが、『少女歌劇 レヴュースタァライト』ではかわいらしさとかっこよさを追求したことで新しい需要を開拓できたとみているという。
新型コロナウイルスが落ち着いた後も舞台の有料配信は継続するのかどうか
松田氏は、「舞台は生で見るのが一番いい」としつつも、二次的な副産物といった扱いだった配信の意味や価値を見直す動きが出ているとコメントした。劇場から遠くに住んでいる人など来場できない人に届けるための仕組みとして重要になりつつあるという。
木谷氏は、ギャラクシーエンジェルの舞台をやった時、同じ作品を何度も見にくる人がいて不思議に思い、理由を聞くと、「同じ作品でも1回1回、少しずつ違っているから」と言われたそうだ。「各回のちょっとした違いを楽しむ。足を上げたら靴が飛んでいったというアクシデントも一つの味になる」。例えば、劇場で1回生で見て、それ以外を配信やライブビューイングで観劇するのもひとつの楽しみ方になる。
木谷氏は、サザンオールスターズの無観客配信ライブのチケット購入者が18万人だったことや、BTSのリアルタイムライブ公演の同時アクセスが75万人を超え、興行収入が30億円を突破した事例などを紹介した。松田氏は、リアルな舞台と配信が両立していく世界になっていくのでは、との見方を示した。
『少女歌劇 レヴュースタァライト』が演劇パートとライブパートを組み合わせた構成になっているが、演劇パートを長くする考えはあるのか
木谷氏は、少しずつ演劇パートの時間を長くしていると答えた。同作については、通常の舞台に比べて密度の濃い舞台作品になっているという。短い時間で情報量の多いコンテンツに慣れた人が多いため、シナリオ量からすると公演の時間が短くしているという。舞台からキャストが去るとき小走りで去ることが多く、メリハリを効かせた演出となっているという。従来の舞台に慣れた人にとっては目まぐるしく感じられることもあるそうだ。
また、舞台やライブの今後については、松田氏は、新型コロナウイルスの影響で中止と延期が相次いだものの、7月に入ってから少しずつ再開する動きが出ていると答えた。会場の座席数の半分程度を使用するなど制限はかけているものの、「やっと再開できるようになって嬉しい」と心境を語った。そして会場を埋め尽くす状況を半ば当たり前の感覚で見ていたが、この間、ファンのありがたみをあらためて感じたという。
木谷氏も中止になった公演のグッズを通販で販売すると、「サポートしたい」ということで通販などでグッズを購入してくれるファンが多いと明かした。また、ブシロードグループの新日本プロレスでは大阪城ホールで3500人を入れて興行を行う。会場の収容人数は1万2000人なので1/3程度しか使わないのだが、それでも「興行をやれることは大きい」。
『少女歌劇 レヴュースタァライト』の今後の展開
『少女歌劇 レヴュースタァライト』については、木谷氏は、あくまで原作である舞台を中心に展開していく考えを示した。これを受けて、松田氏は、一般的な2.5次元がマンガやアニメ、ゲームが原作となっているのに対し、本作は舞台が原作になっているのは嬉しいし、誇らしいと語った。
木谷氏から7月12日からのオンライン公演の見どころを聞かれると、松田氏は、オンライン舞台でしかできない演出を多く取り入れていることをあげた。木谷氏も同意し、「映像として観ることを前提とした演出が取り込まれており、新しいエンタメになっている。ディレイ配信もあるが、ぜひリアルタイムで見てほしい」とアピールした。
最後に、松田氏は、「舞台公演が少しずつできるようになってきており、ようやく長いトンネルを抜け始めている。お客さんを会場のキャパシティいっぱいにいれることはできないが、エンタメも舞台もなくならない。配信という新しい形もあるので、お客さんとの絆を深めたい」と挨拶した。木谷氏も「ピンチはチャンス。世の中の新しい習慣や発明はこういうときにこそ生まれる。いまをチャンスと捉えて新しいことに取組んでいきたい」と述べて会見を締めくくった。
会社情報
- 会社名
- 株式会社ブシロード
- 設立
- 2007年5月
- 代表者
- 代表取締役社長 木谷 高明
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 売上高462億6200万円、営業利益8億8200万円、経常利益18億9800万円、最終利益8億400万円(2024年6月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 7803