【Sp!cemartゲームアプリ調査隊】リリース1週間でセルランTOP10入りを果たした新進気鋭の放置型RPG『AFKアリーナ』、国内ヒットの背景を分析


スマートフォンゲームの日々の運用とその効果をリサーチし、ゲーム関連企業へマーケティングデータを提供するSp!cemart(スパイスマート)。ゲームアプリの運用情報をいつでもウォッチできる「Sp!cemartカレンダー」や、毎月発行しているレポートを提供している。

なかでもカレンダーは、セールスランキング上位のモバイルオンラインゲームのゲームシステム・運用施策をダッシュボード形式のWEBツールとして提供。ゲーム内プロモーション施策の効果測定やセールスランキングと運用効果の相関関係を時系列で分析できる。
 

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本連載記事ではSp!cemart協力のもと、カレンダー機能を用いた、ランキング上位タイトルの直近のゲーム内施策を分析。今回はLILITH GAMESの『AFK アリーナの施策をピックアップしていく。
   
(以下、Sp!cemartゲームアプリ調査隊より) 
 

【調査箇所】新進気鋭の放置型RPGの出来栄えは



■『AFK アリーナ』
提供:LILITH GAMES
リリース日:2020年6月30日

【調査箇所:2020年6月30日〜7月9日】

『AFKアリーナ』は、全世界4500万ダウンロードを突破し、世界のアプリ売上ランキングでも上位に入るスマートフォン向けの放置型育成ファンタジーRPGです。壮大な世界観と7つの種族の物語を軸にして、ハイクオリティなアニメーションを多数収録しています。バトルは基本的にオートで進行し、任意のタイミングでスキルを発動できるという、いわゆる一般的な放置型のRPGのそれとなります。

すでに国内では、App Storeの無料ダウンロードランキング1位を1週間継続、セールスランキングでも最高8位を記録するなど大ヒット中。

アプリ調査会社のApp Annieによると、ワールドワイドの2020年1月のモバイルゲームの売上ランキングでは、『AFKアリーナ』が前月から42ランクアップの2位に急上昇しました(関連記事)。全世界で売上2位を記録するほどの、驚異的なスピードで成長しています。



出典:App Annie

提供会社のLILITH GAMESは、中国・上海のゲーム会社。同社では、すでに国内で古代文明をテーマにしたリアルタイム・育成型戦略シミュレーションゲーム『Rise of Kingdoms -万国覚醒-(以下、ライキン)』をリリースし、スマッシュヒットを記録しています。『ライキン』は利便性と演出が他作品よりも秀でて、中毒性の高いゲームジャンルにさらに磨きがかかっており、クオリティの高さで話題を呼んでいます。一方で『AFKアリーナ』もApp Storeの評価が★4.4(4.8万件 - 2020年7月9日現在)と高いです。

そして昨今、放置型RPGが軒並みヒットしています。『放置少女』をはじめ、『ロストディケイド』や『魔剣伝説』など、セールスランキングTOP30入りを何度も経験しているタイトルばかりです。なお、ランキングTOP100に目を移すと、大ヒットまでは言えなくとも、さまざまな放置型RPGが人気を博しており、その多くが中国系アプリです。

例に漏れず『AFKアリーナ』もそうですが、放置型RPGのなかでも“最新作”だけあって、ローカライズやゲーム内容のクオリティに関しても申し分ないです。中国系アプリとは思わせない丁寧な作り、独自性のあるグラフィックなど、目の肥えた国内ユーザーも納得する出来栄えになっています。

新進気鋭の放置型RPG『AFKアリーナ』は、なぜ国内で人気を得ることができたのでしょうか。本稿ではランキング推移とゲーム内施策を一覧で閲覧できる「Sp!cemartカレンダー」を用いり、『AFKアリーナ』のリリース前後の施策を中心に深掘りしていきます。まずはリリースまでの流れを見ていきましょう。

 

【事前プロモ】TVCMでは女優の川口春奈さんを起用


【リリースまでの流れ】
■ 2020420 公式Twitterを開設
同年428 事前登録開始日を告知
同年518 事前登録を開始
同年628 TVCMを放映開始
同年630 正式リリース

以上が『AFKアリーナ』におけるリリースまでの主な流れです(プレスリリースの情報をもとに作成)。上記の施策以外にも、公式Twitterでキャラクター情報を公開したり、キャンペーンの達成状況を投稿したりと、さまざまなアクションが間接的に同作のプロモーションに寄与していました。

Twitterを中心に展開していたデジタルマーケティングでは、定番のフォロー&RTキャンペーンを事前登録開始前後、TVCM放映開始前後、というように途切れることなく行い認知度を上げていました。

▲『AFKアリーナ』のTVCMでは、女優の川口春奈さんを起用。隙間時間でもゲームが楽しめるという“放置型RPG”の特色を活かしたクリエイティブになっています。

なお、キャンペーンの賞品には、Amazonギフトカードや登場声優のサイン色紙を中心にプレゼントしていました。国内知名度が皆無のオリジナルタイトルのため、賞品内容は適しているともいえるでしょう。

事前登録期間は約1ヵ月半、デジタルマーケティングではTwitter施策を中心に露出をはかり、リリース直前には女優の川口春奈さんを起用したTVCMを放映開始……。同社の『ライキン』同様の施策・スケジュール感と似ているのが特徴です。当然、同じ会社であるからというのが理由ですが、『ライキン』における成功体験を踏襲しているようにも思えます。海外発のオリジナルタイトルを国内で仕掛ける際の定石のように。

 

【リリース前施策】レアリティの高いキャラを多数配布


ここからはリリース直後の施策について言及していきます。基本的なゲームの流れは、放置型RPGのそれです。キャラクターを育成し、地図上のマス目を進行し、クエストを踏破していくことにあります。キャラクターは24時間休むことなく延々と通常の敵を倒し続けるため、次にログインした際には、倒した敵の数に応じた経験値などが入手できます。

▲こちらはホーム画面など。中国系の放置型RPGは、画面UIが複雑だったり、ボタンが多かったりしますが、本作に関しては比較的スッキリした印象です(これでもゴチャゴチャしているという声も挙がっていますが、とても綺麗なほうです)。

▲本作のバトルでは、キャラクターの位置関係も勝敗に影響していきます。基本的に近い敵から狙っていくため、前列に盾役を配置したり、攻撃力の高いキャラクターをスムーズに移動できるような場所に置いたりなど、バトル前に戦略を練られるのも本作ならでは。また、キャラクターのスキル(必殺技)は、豊かなアニメーションで表現されており一見の価値あり。

さて、本作のマネタイズは、有償アイテムのダイヤの販売です。ダイヤは主にガチャやショップなどで使用します。ダイヤのラインナップは以下の通り。

【ダイヤのラインナップ】
・ダイヤ 有償300+無償300個(610円)
・ダイヤ 有償680+無償680<初回おまけ>1,220円)
・ダイヤ 有償1280+無償1280個(2,440円)
・ダイヤ 有償1980+無償1980個(3,680円)
・ダイヤ 有償3280+無償3280個(6,100円)
・ダイヤ 有償6480+無償6480<初回おまけ>12,000円)

 

▲初心者応援パック(写真右)は、それぞれ購入回数1回まで。ダイヤをお得に獲得できるほか、育成アイテムが充実した詰め合わせになっています。また、高額商品にはエリートクラスのキャラクターも入手可能。

本作にはガチャ(ゲーム内の名称は月桂冠の酒場)も存在します。ガチャでは、そのままユニットとして使える「キャラクター(英雄)」が排出されます。なお、レアリティはコモンクラス(排出率51.69%)→レアクラス(排出率43.70%)→エリートクラス(排出率4.61%)の順です。

金額感は、ガチャ1回でダイヤ300個(303円相当)、10連でダイヤ2700個(2,727円相当)です。一応天井施策は用意されており、ガチャを利用するごとに宝箱ボーナスが増加し、一定数貯まると宝箱からさまざまなアイテムがもらえます。なかには、陣営英雄選択カードなるガチャチケットも存在。

▲ガチャ画面。現在ガチャには、有償アイテムのダイヤを使用したものから、友情ポイントやガチャチケットを使用するものまで3種類存在します。なお、英雄ウィッシュリスト(写真右)では、ガチャでエリートクラスが排出されると、より高い確率でウィッシュリストの英雄が当たるという、言わば、自身でピックアップ対象のキャラクターを設定できる感覚です。

【調査期間:2020年6月30日~7月9日】※再掲


上記は「Sp!cemartカレンダー」で確認した本作のApp Storeランキング推移。事前プロモーションも奏功してか、無料ダウンロードランキング(青色)は1位を継続、セールスランキング(オレンジ色)も垂直立ち上がりを見せて、最高8位にランクインし、現在もTOP30圏内を維持しています。まだリリースして1週間ほどですが、継続率の高さもうかがえます。

【リリース直後に実施していたゲーム内施策】
・事前登録キャンペーン報酬の配布
・リリース記念30連ガチャチケットのシリアルコード配布
・コラボキャラクター「大自然の巫女・ナコルル」登場

ゲーム内施策では、育成アイテムはもとより、エリートクラスの英雄が手に入る機会を多数設けていました。事前登録者数50万人を突破した記念に「森の春姫フレイラ」を全員プレゼントしたほか、7日間連続ログインボーナスやゲームシェアなどを通しても、エリートクラスの英雄を獲得できました。

▲事前登録特典の「森の春姫フレイラ」(写真左)と、ゲームシェアを行うことで貰える「斉天大聖 孫悟空」(写真右)。バトルの編成が5体までを考えると、30連ガチャチケットのシリアルコードと合わせて、序盤で全員エリートクラスにバトルの布陣を固めることもできます。

また、リリースと同時に往年の格闘ゲーム「サムライスピリッツ」シリーズの人気キャラクターたちが参戦。ゲーム内には、「大自然の巫女 ナコルル」と「神夢想一刀流 橘右京」が登場したのですが、実は少々ユニークな取り組みを行っていました。
 


▲「大自然の巫女
ナコルル」(写真左)と「神夢想一刀流 橘右京」(写真右)


本来、2体とも購入することで手に入ります(それぞれ12,000円※現在は期間限定で50%OFFの6,100円)。ですが、ゲーム内ではイベント期間終了となる91日まで、お試しとして利用できる仕様なのです。

どちらも高額商品のため、なかなか手が伸び辛いものですが、お試し期間を通して愛着もわき、イベント期間終了までの過程で購入の機会が訪れるのではないかという、運営側の視点として一定の効果があるのかもしれません。

なお、ナコルルに関してはゲーム内イベントを通してアイテムを一定数集め、交換することでも手に入ります。ナコルルの人気は非常に高いため、入手経路を増やしているうえに、ゲーム内コンテンツのプレイ促進にもつながるなど、リリース時からコラボキャラクターを通したさまざまな恩恵が得られたのではないかと思います。
 

【今後】本作で描かれるコラボキャラの参戦に期待


冒頭でもお話したように、すでに放置型RPGでは複数のヒット作が生まれています。隙間時間で遊べる同ジャンルは、日本ユーザーのライフスタイルにも合致し、アプリストアのランキングでも賑わせています。

そのなかでも最新作にあたる『AFKアリーナ』は、コンテンツやマネタイズにおいては定石を踏んでおり、ゲームのグラフィック・演出(アニメーションなど)に高い評価を獲得しています。キャラクターも絵本のような淡い色合いで他作品とも差別化し、バトル中は基本的に自動ですが、バリエーション豊かな攻撃方法は見ているだけでも楽しめます。

また、すでに日本ユーザーにも反響のあるコラボ施策を展開できており、アライアンスやマーケティングを通して、もう一段階、次のステージにあがれるのではないでしょうか。

余談ですが、前述したコラボキャラクターであるナコルルと橘右京のゲーム内再現度もクオリティが高いです。SNKタイトルは年齢層の高いゲームユーザーにも訴求できるため、今後も関連タイトルの参戦に期待が持てますし、新しいコラボキャラ参戦時にはまた大きなスパイクが見られると思います。


「Sp!cemartカレンダー」では、各ゲームのイベント情報をランキング推移と共に閲覧できます。自社はもとより、競合他社の施策一覧を取りまとめた分析などにもご活用できます。ぜひ、ご興味がある方はお問い合わせページからご連絡ください。

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■執筆 <株式会社スパイスマート>
スマートフォンゲーム内運用に関する調査・分析を行うリサーチ事業とコンサルティング事業を展開しており、「Sp!cemart」というサービス名称で各種ソリューションを提供。

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株式会社スパイスマート
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会社情報

会社名
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設立
2015年7月
代表者
代表取締役 久保 真澄
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Lilith Games(リリスゲームズ)
https://ancient.lilith.com/en/

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