各社が取り組むハイパーカジュルゲームと海外市場の可能性とは…アカツキ 、芸者東京、ポノスが登壇したセミナーをレポート


パブマティックとSocialGameInfoは共同で、7月9日、スマホゲーム開発ディレクター向けセミナーアカツキ 、芸者東京、ポノスが語るハイパーカジュアルと海外展開の可能性とは!?…「スマホゲーム最新動向オンラインセミナー」を開催した。

本イベントはWEB上での開催となり、ポノスの村山章氏、芸者東京の田中泰生氏、アカツキの佐藤恵斗氏と、ハイパーカジュアル分野を展開しているキーマンとパブマティックの廣瀬道輝氏が登壇。


ハイパーカジュアルゲームの参入時期や経緯はそれぞれ異なる3社。各社どのように考えているのか。本稿では、そのセミナーの模様をレポートする。
 
 

■アプリ内ビディングによるマネタイズの潮流とは

 
▲登壇社一同
 
まず冒頭に、パブマティックからはヘッダービディングに関する講演が行われた。パブマティックはSSPサプライサイドのアドテクベンダーで、世界各国にて展開しているグローバル企業。
 
 
 
▲提供しているSDK「OpenWrap SDK」ではアプリ内ビディングによる幅広いマネタイズが可能だ。
 
ざまざまなジャンルにてマネタイズ協力を行っているパブマティックではヘッダービディングにおける市場動向について話された。ヘッダービディングでは日本国内でもアプリ内ビディングの流れがきており、今後注目されていく分野だと言える。
 
 
廣瀬氏によると、従来のウォーターフォール型と呼ばれる形からアプリ内ビディングが導入された形が現在の動きだと話す(上図内中央)。従来に比べ、一斉に買い付けが行われ、より適正化が図られるといったものだ。
 
そして、”NEW NEW WORLD”と掲げるものが、さらにアプリ内ビディングを並行して行われていくものだ。実際に実現可能かと言うと、WEBプロモーションではこちらがスタンダードな手法となる為、アプリでも実装されていくのではと廣瀬氏は考えを示した。
 
 
ここで、ウォーターフォールとアプリ内ビディングの特徴についても触れられた。従来のウォーターフォールだと収益の機会損失や工数過多などのデメリットが挙げ、アプリ内ビディングではこれらのデメリットが緩和されると話した。最適化の負担が少なくなる点については日々の運用が肝となるゲーム内マネタイズにおいても相性が良いものだと考えられる。
 
 
メリットが話されたのちに、実際に導入するにはどういった手順があるかも紹介された。ハイパーカジュアルゲームにおいてはメディエーションSDKの検討から入る。各広告事業社から提供されているSDKによって利用できるアプリ内ビディングが決まる訳だが、Mopub社のように複数展開している事業者もいる。こちらを活用することで先ほどの”NEW NEW WORLD”といった運用方法も今後進んでいくのではと話した。
 

■『にゃんこ大戦争』『Ball Action』を通じて感じた”海外で挑戦すること”

 
次にポノスによるライトニングトークも行われた。ポノスではいくつかのゲーム事業を行なっており、今回は二つのゲーム事業の海外展開を中心に話された。一つは日本版が今年8周年を迎え、2014年より韓国版をスタートとして海外展開を行っている『にゃんこ大戦争』。二つ目は、ハイパーカジュアルにおいては昨年に参入し、『Ball Action』についてとなる。
 
ポノスでは『にゃんこ大戦争』でもカジュアルゲームにおいても海外を中心に展開している方針だという。
 
▲『にゃんこ大戦争』は4言語にて150カ国以上にて配信されており、5400万DLに至るという。
 
ポノスでは昔からカジュアルゲームを開発しており、スマホになってからはリリース時から全世界配信を行っていたそうで、『にゃんこ大戦争』においてもリリース当初から日本語と英語を搭載したバージョンで全世界配信をしていたそうだ。
 
しかし、『にゃんこ大戦争』では運用型のゲームにシフトしていく中で、日本語版のアップデートを優先することになり、一度全世界配信を停止し、日本語版のみの配信に切り替えたそうだ。
 
その後に再び全世界配信を行うことになったそうだが、この時の経験で海外のユーザーがどのような嗜好性があるかなどを体感でき、後のテストマーケティングにもつながったそうだ。
 
結果として、レッドオーシャンになる前に展開できたのは大変良かったと村山氏は振り返る。また、オンライン広告についてもインハウスにて取り組んでおり、運用ノウハウも積み重なっており、ハイパーカジュアルにおいても活かされていると言う。
 
 
その経験から、海外に出るといのは大変そうではあるが、見えることもたくさんあるので、まずはチャレンジすべきだと村山氏は話す。今では日本にいながらでも海外へターゲティングを行えるので、リスクが抑えられる環境になってきており、市場はレッドオーシャンではあるが、戦える可能性はまだまだ高いと説いた。
 
また、ハイパーカジュアルについては、『Ball Action』は昨年の夏にリリースされ、USのアプリストアにて5位を獲得しており、今でもマネタイズが実現されているという。
 
 
村山氏は課金型のゲームとハイパーカジュアルゲームでは、オンラインプロモーションの捉え方が異なると考えているそうだ。ハイパーカジュアルにおいては、オンラインのプロモーションが外部施策というものでなく、事業軸として重要な要素になっていると話す。シンプルにいうと、大量のユーザーを広告で獲得することで初めて実現する事業構造だからだ。
 
ハイパーカジュアルゲームのユーザーは課金型ゲームに比べてLTVは低くなってくるので、ビジネス規模としてはユーザーが一定量が必要になってくる。事業規模として行うには、いかに低コストでユーザーを多く獲得できるかが重要になってくる。また、一方でLTVとCPIのバランスもチューニングした上で展開していく必要があるとも話した。
 
▲『Ball Action』についてもテストマーケフェーズを行なった後に広告を本格的に展開するようにしている。
 
チューニングにおいては、テストマーケティングにおいて、CPIとスケーラビリティ、LTVのチューニングを行なっているそうだ。
 
このように戦略的に調整していくことがハイパーカジュアルゲームの事業モデルになり、この点は自身たちで手を動かすことでノウハウを貯めていく必要があり、根気が必要になる事業だと話した。
 
 
最後に、運用していく上では、独自のサイクルを確立することが大事だとも話す。ハイパーカジュアルゲームの手法については多くのイベントでも公開されているが、実際に真似するだけでうまくいくわけではないと話す。自身で行うことで独自の手法を確立することが大事だと話した。
 
 

■Buddyが掲げるグローバル市場で大事なことは”仮説をアップデート”

 
 
アカツキの佐藤氏からはカジュアルゲームスタジオ「Buddy」の立ち上げ経緯と目指していることについて語られた。
 
昨年秋より立ち上げられた「Buddy」はアカツキのカジュアルゲームに特化したスタジオとなる。
 

Buddyが立ち上がった経緯としては、スマホゲームが成熟期を迎えてきており、その中でガチャ以外の課金トレンドの高まりや、カジュアルジャンルへの回帰などが起こっていることに、佐藤氏が市場を見ていく中で感じたからだと話す。
 
カジュアルゲーム制作の中でも、Buddyではコミュニケーションの創出を意識していると話す。仲間同士の共闘や競争によるコミュニケーションを大事にしたゲームを将来的に作っていきたいと考えているそうだ。
 
 
ここでは「Buddy」の考える海外展開戦略について語られた。佐藤氏は、グローバルに受け入れられるゲームを追求することと世界に届けるマーケティングノウハウをいかに蓄積するかの2点の重要性を挙げた。
 
また、これら二つはハイパーカジュアルゲーム市場においても合致している戦略だと考えているそうだ。
 
そして、グローバル市場でたたかっていく上で大事にしていることは「仮説をアップデート」していくことだと話す。
 
ただ闇雲にカジュアルゲームをつくるだけでは宝くじと同じだと話し、過去にヒットしたゲームを見た際にもなぜ流行ったのか?今後のトレンドはどうなるか?大事な要素は何か?を常に仮説を磨き続けることが大事だと説いた。
 
 
ここで佐藤氏からは具体的な仮説や考察が紹介された。その一つに説明不要のルールがあるということを挙げた。ハイパーカジュアルゲームは動画広告からの流入がほとんどになり、最初の数秒やスクリーンショットでいかに魅力を伝えるかが重要になる。その際に、”どういったゲームか?”“どういったルールか”を瞬時に伝えることが大事であり、日常で行われていることをモチーフにしたゲームが受け入れやすいと話した。
 
 

▲日常系と同様に、職業系と言えるジャンルにておいても「やったことないけど、知っている、やってみたい」という全世界で共通したルールがあるからこそ人気を博しやすいのではと話した。
 
操作方法についても同様であり、カヤックの『PARK MASTER』を例に挙げ、”「P」は「止まれ」”という共通ルールがあるからこそ理解度が深まっていると評した。
 
 
▲ただ、物体をdrowするだけではルールや操作がうまく伝わない可能性が高い。

また違う観点だと、ヒットしているゲームの特徴として色使いがあると言う。ハイトーンで鮮やかな色の画面も、もし仮に白黒にしてみるととたんにワクワク感がなくなる。このことから、色使いにおいてもデザインを追求することの重要性も語った。
 
 

また、佐藤氏も実践している方法として、自身が制作しているタイトルのスクリーンショットを、ヒットしている画面に横に並べることで、受け入れられるハイパーカジュアルゲームとして違和感のないかを確かめるという。
 
 
これらの事例を挙げながら、スピード感を大事にしながらも自信が磨き上げた仮説を至極の一本として作り出すのがハイパーカジュアルでは大事なことだと話した。
 
 
 
 

■目指すべきは普遍的な面白さを作り出せるピクサー

 
 
芸者東京の田中氏からはグローバル市場において芸者東京はどのように考えているかが話された。
 
芸者東京では、グローバル市場として特に意識はしていないというのが本音だと話す。その背景としては、今の時代はどの地域からでもコンテンツが享受できるので、文化が均一化されており、面白い作品を作れば受け入れられるからだそうだ。文化による価値観に相違はもちろん今後もあるが、その違いも楽しめる時代にきていると話す。
 
アニメや映画におけるNetflixの台頭と同じように、ハイパーカジュアルにおいても動画広告配信業者がプラットフォーム化されており、そこに面白いゲームがあれば受け入れられる土壌があるので、特にグローバル展開というものを意識していないと話した。
 
次にゲーム作りにおいては、ハイパーカジュアルにおいては普遍的に面白いものを作っていく分野だと考えており、面白いものを真剣に考えれば受け入れてもらえるものだと感じており、それをチームで制作することが大事だと話す。
 
チームにおいても完全分業を行うわけでなく、誰がどのプロジェクトに関わって良いと言うようにしているそうだ。企画においてもプランナーだけが行うだけでなく、フラットに参加できるようにしていると話す。
 
田中氏が目指しているのはピクサーだと話し、一人の圧倒的なクリエイターが手がけるのでなく、複数のクリエイターがヒットを出せるような体制を理想としていた。
 
当たり外れがあるアニメ業界においてもピクサーが成功しているように、ハイパーカジュアルにおいても普遍的な面白さが求められていると話し、そういった体制を構築するには、今後はチームでの競争力が大事だと話し講演を終えた。
 
講演後はQ&Aが設けられ、チームビルディングの話題や指標設計の話などが挙げられた。
 
最後に、今後のハイパーカジュアルゲームの可能性という話題については、そのやり方が変われどもゲーム自体が廃れることはないので面白いものを提供できるかどうかだと話し、ハイパーカジュアルというものはゲームジャンルではなく、あくまで事業モデルの一つに過ぎない。常に世の中に求められているゲームを提供する姿勢が大事だとしてセミナーは締めくくられた。
株式会社アカツキ
http://aktsk.jp/

会社情報

会社名
株式会社アカツキ
設立
2010年6月
代表者
代表取締役CEO 香田 哲朗
決算期
3月
直近業績
売上高239億7200万円、営業利益26億7600万円、経常利益28億3400万円、最終利益12億8800万円(2024年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3932
企業データを見る
ポノス株式会社
http://www.ponos.co.jp/pc/

会社情報

会社名
ポノス株式会社
設立
1990年12月
代表者
辻子禮子、辻子依旦
決算期
11月
上場区分
非上場
企業データを見る