【インタビュー】23歳のCOOが見るNFTの未来 リードエッジコンサルティング中屋敷将大氏に聞く、その可能性

NFT……非代替性トークンは、ブロックチェーン技術を用いたデジタル証明書のことで、デジタルアートやツイート、果ては小学校の夏休みの自由研究など、どんなものにも価値を付けることのできるものとして、話題となっている。NFT……非代替性トークンは、ブロックチェーン技術を用いたデジタル証明書のことで、デジタルアートやツイート、果ては小学校の夏休みの自由研究など、どんなものにも価値を付けることのできるものとして、話題となっている。

そんな、NFTに関連したサービスを提供する、株式会社リードエッジコンサルティングの取締役COOの中屋敷将大氏にインタビューを実施。23歳で現在の役職に就いた若き経営者に、自社のNFTサービスの紹介やNFTの展望について、話を聞いた。



株式会社リードエッジコンサルティング取締役COO
中屋敷将大氏


■あらゆるモノを資産に変える、NFTの可能性

――:まず初めに、簡単な自己紹介からお願いします。

株式会社リードエッジコンサルティング取締役COOの中屋敷将大と申します。現在の役職に至った経緯としては、代表取締役社長の庄司貴之との出会いがきっかけです。大学在学中にフリーランスのエンジニアとしていくつかの企業様をお手伝いしており、仕事をこなしていくなかで、個人的に興味を持っていたマーケティングの部分をお手伝いしたり、自分でも事業運営にチャレンジするように変化していきました。

大学卒業後からの進路について考えていた時、庄司と出会いました。彼と話した際の考え方やミッションに共感し、一緒に進んでいきたいという思いから、今まで運営していた事業を全てリードエッジコンサルティングの方に譲渡する形で、現在の立ち位置に至ります。


――:学生の時からフリーランスや事業運営と、凄いバイタリティで動いていらっしゃいますね。

原点としては、学費を稼ぐことがきっかけになっています。自分は早稲田大学出身なのですが、仕送りがほとんどなく奨学金も取れなかったため、自力で250万円ほど稼がなければいけない状況だったんです。通常のバイトでは到底稼げない金額なので、どうやって稼ぐかを考え、フリーランスのエンジニアや事業経営といった道に進むことにしました。


――:なるほど。では、大学での専攻はやはりエンジニア関係だったのですか?

実は全く関係のない、文学部哲学コースの出身です。専門は17世紀のラテン哲学で、自分たちで読書会を行ったりなど、哲学に3年間浸かっていました。一方で、エンジニアとしての勉強も独自で行っていた形ですね。


――:そういった学生時代の経験があったからこそ、現在の役職に就くことができたわけですね。続いて、リードエッジコンサルティングについての紹介をお願いします。


まず、現在の仕事の行動理念からお話したいと思います。代表取締役の庄司は上場審査に関連した仕事をメインで行っているのですが、株式会社FYカンパニーというフィットネス事業を運営する会社の代表取締役でもあります。そこで庄司は、フィットネス競技選手の厳しい状況を知ったと話ていました。

彼らはアスリートなので、厳しい食事制限やトレーニングを行うのですが、現状ではプロライセンスを取ったとしても必ず賞金が得られるというわけではなく、自分で仕事を取らなければいけません。

このような、可能性を持っている人や目標に向けて努力している人たちに向けて、そのポテンシャルを資産に変え、経済的に支援できる環境を作りたいという理念から、リードエッジコンサルティングは第二創業として、昨年の12月あたりに新たにスタートしました。

私自身、経済的なものさしでは測れないような面白い才能や、多彩な分野に興味を持った人に出会った経験が多々あり、お金で苦労する気持ちも非常によくわかるので、この志には非常に共感し、是非とも実現させたいと思いましたね。


――:具体的には、どのような試みを行っているのでしょうか?

お話しした内容を体現するために、「あらゆるモノを資産に変える」というミッションを元に活動しています。ここで言うモノは、マテリアルだけでなく無形価値の可能性でもあり、ミッションを実現するため、3つの事業を中心に多様な挑戦を行っています。

ひとつ目は、「価値あるモノを届ける」ことで、マーケティング・クリエイティブ事業として動いていますね。素晴らしい能力を持った人でも、その意義をわかってくれる人や信じてくれる人に届けないと価値として見出されないため、その人たちを繋げるお手伝いをしています。

ふたつ目は、「価値あるモノを生み出す」、デジタルコンテンツ事業です。IPコンテンツを作る事業部でして、素材の持つ価値を組み合わせてアレンジ・プロデュースして、より良いものができることにコミットしたいという思いで動いています。

3つ目に、「価値あるモノを保証する」こと。素材の価値を保証して流動性高く取引し、デジタルの領域に広げるため、NFTプラットフォーム事業を取り扱っています。


――:NFTのサービスを始められたのは、いつ頃からでしたか?

NFTというワードに着目し始めたのは、2021年の始めころでした。そこからリサーチを始め、実際にサービスを開始したのが5月末~6月初めですね。
2019年頃、ブロックチェーンゲームが話題になっていた時期に、ブロックチェーン企業をお手伝いさせていただいていまして。事業様とお話する際にNFTを話題として出すんですが、具体的な先のイメージが浮かびにくく、理解をあまり得られない時期だったので、歯がゆく思っていました。

そのような経緯を得て、デジタルアーティスト・ビープル氏のNFTデジタルアートが75億円で落札されたり、TwitterのCEOであるジャック・ドーシー氏の最初のツイートが競売にかけられるなど、NFTが一般の目に触れるようになったり、今が実現する機会なのかなと考え、準備を始めました。


■リードエッジコンサルティングが提供する、NFTサービス「NCOMIX」



――:現在、運営されている事業のひとつである「NCOMIX」について、詳しくお聞きしたいと思います。

NCOMIXでは、漫画家やイラストレーター、アーティストなどの有名クリエイターによる作品のデジタル所有権・NFTを購入できます。さらに、今後は作る過程も資産化したいと考えていまして、制作動画のアップロードなども行っています。

これはブロックチェーンの特質でもありますが、ネットワーク上にある決まった規格でトークンが発行されるので、相互運用性・流動性がとても高いサービスとなっています。NFTを購入して、そのデータを他のサイトで販売するという場合も、同じ規格上でのやりとりになるので、どのように売買されたかが全てトラッキングできるのも特徴ですね。


――:NCOMIXは、NFTの販売所のようなイメージでしょうか?

そうですね。NFTは簡単に言うと「シリアル番号付きのトークン」で、データそのもののことではありません。デジタルデータがNFTという異質なものに変化すると勘違いしている人が多いのですがそうではなく、デジタルデータの所有権を証明するもの、イメージとしては土地の証明書のデジタル版ですね。

なので、現実に存在する物品をNFTで証明して売ることもできるし、権利を行使して物品を受け取ることも可能となっています。


――:NFTは今後、人々にどのような影響を与えていくのでしょうか?

NFTはDtoCの領域に近い概念だと考えていて、自分はNFTのことをデジタルDtoCと呼んだりすることもあります。DtoCがECサイト等と違うのは、作られる過程やモノに秘められたストーリーが確認できる点ですね。モノの持つ世界観に感化されたり、それに関連したコミュニティへ参入することが、購入した人のアイデンティティを表現する証になると考えており、このようなDtoCの事情がNFTでも起こるというのが自分の仮説です。


――:今後のNCOMIXの展開としては、どのようなことを予定していますか?

マーケットプレイスを作成していく予定です。先ほど述べた通り、どのような過程で作られたのかという、モノのもつストーリーや世界観などをできるだけ可視化し、そこに共感するような熱量が高い人を作るのが大事だと考えています。

モノに関連したコミュニティが盛り上がっていたり、特定のインフルエンサーがプロモーションしている、作成されるまでのストーリーが良いといった、過程要素が積み重なった結果、モノに対する熱量が高まります。なので、クリエイターの熱意や製作過程にフォーカスし、付加価値として魅せられるようにできればと思っていますね。

また、「オークションを特別な使用にしたい」といった、細かい要望にも対応できるようにしたいとも考えています。モノの持つ個性や可能性を最大化するために、必要なことを全て提供できるような会社になれるよう、まずはプラットフォームを仕上げていきたいです。


■NFTの領域における、今後の改善点とは



――:NFTのサービス運営を行うなかで感じた課題や、界隈における問題点などはありますか?

マーケットプレイスの問題として注視しているのがクレジットカード決済で、円決済にしてしまうと、視覚的な意味でインパクトが大きいため、値段が高く見えてしまうんです。であれば、ウォレットの仕組みを取り入れればいいとも考えるのですが、そもそも取得方法はどうするのかなど実施する部分が多くあるため、作業工程が難しくなってしまいます。

とはいえ、解決策は徐々に生まれているのが現状です。「メタマスク」という有名なウォレットのように、他媒体の使いやすい仕組みを参考にしつつ、自分たちのサービスを作っていくために思案している最中ですね。


――:NFTのユーザーへの認知や普及といった面で、難しい部分はあるのでしょうか?

一般ユーザー向けの普及は、難しいと感じている部分です。NFTを知らないという人に対してどのような形で認知してもらい、実際に購入していただくかといった点や、初心者の使い勝手の問題は、これからの改善点だと考えています。できるだけNFTを購入するユーザーが感じてしまう壁を取り除きたいですね。


――:購入するユーザー自体が増えれば、NFTを作るクリエイター界隈も盛り上がりますね。

確かにそうですが、キュレーションの面で問題があると感じています。「オープンシー」という大きなマーケットプレイスがあり、シンプルでニュートラルな形で検索できる、良いプラットフォームなのですが、有名な人物やプロジェクトが一方的に持ち上げられやすく、新しいスターが生まれにくい仕組みになっているんです。実際に挑戦し、失敗してしまった例も聞いています。

NFTがこれから活性化していくために、新しいスターやIPが台頭できるような仕組みを、人為的に作っていく必要があると考えています。NCOMIXでは、「ここにいるアーティストならば、今後売れるかもね」と信頼してもらえるよう、ブランドとして確立することを狙っていますね。


――:ここまで聞いた感じですと、かなり明確に問題点が判明している状況なのですね。

NFTの領域がバブルのように急成長し、様々な媒体で取り上げられる分、課題も明確です。これから既存のEC事業者のようなデジタル販売におけるマーケティング方法がを熟知している人たちがNFTに参入すれば、また違うフェイズに入るとも予想しているので、その先頭を走れればいいなと考えています。


■現在のNFT市場の現在の状況とその移り変わり


――:現在の市場の状況は、どのようになっているのでしょうか?

そちらについては、3つのキーワードでまとめられます。ひとつ目は「アートの高額商品」、ふたつ目が「コレクティブ」、3つ目が「IPの参入」です。

ひとつ目の「アートの高額商品」は徐々に盛り上がっていて、NFTの資産性が認識されてきた証明だと感じていますね。物の交換や価値の保存といった、リアルでしかできなかったことが、デジタル上でも可能になったエポックメイキングな出来事だと思っています。

ふたつ目の「コレクティブ」なのですが、現在非常に盛況(※)です。クリプトパンクスのドット絵や動物のアートなどが代表的な例ですね。

※取材は9月上旬


――:確かに、NFTと言われてパッと浮かぶのはそのような作品ですね。

なぜここまで高額のアートやコレクティブが盛況なのか、ネットが無かった時代、ネットのある現在、Web3.0となる新しい時代の3つに分類して、個人的に分析してみました。
ネットが無かった時代、自分の承認欲求を満たすための道具は、車や時計でした。しかし、物品の購入はディーラーとの直接取引など、匿名性の高い場所で行われるため、自分の周りのコミュニティにしか広がりません。つまり「承認欲求は低いけれど匿名性は高い」という時代です。

ネットの時代に移行すると、SNSを通じてコミュニティが大きく広がっているため、承認欲求は集まるものの、匿名性はとても下がってしまいます。その危険性を認知している人は、「承認欲求は得られるけれども、匿名性が担保できない」ので、二の足を踏んでいる状態になってしまいました。

ではWeb3.0の新しい時代はどうなのかというと、「匿名性が高い状態で、承認欲求が満たせる」ようになると予想しています。前述した通り、NFTの取引はすべてパブリック上のネットワークで行われるので、誰が買ったか、いくらで買ったかというのが明確であり、SNSで○○を購入したという報告が、ブロックチェーン上でできるんです。これは誰にでも見られるので、すべての人から承認欲求を集められますが、アドレスしか個人情報は出ないため、匿名性も担保できます。

このように、高額のアートやコレクティブのNFTが購入される理由は「承認欲求をいかにリスクなく獲得できるか」という時代になっている、という形で説明できると考えています。


――:時代の移行に合わせて承認欲求と匿名性、どちらも担保できるように変化し、それに適応したNFTが台頭したということですね。

そのとおりです。最後に3つ目の「IPの参入」ですが、最近になってようやく増えてきたフェーズという認識ですね。個人的には戦略や市場への理解があやふやなまま失敗し、そのまま撤退してしまうことを懸念しています。だからこそ、IPの持つ特性や市場に対する理解を深め、橋渡しできるようなマーケティングやコミュニティを作っていくことを、弊社でお手伝いできたらと考えています。


――:せっかく強いIPを持っているのにも関わらず、すぐ撤退してしまっては、非常にもったいないですよね。

適当にやってみて、うまくいかなかったから撤退という流れがありえると思うんです。成功する要素を抑えたうえでポイントを教授できる人が必要不可欠なので、それを実現できる開発とマーケティング、コミュニティを備えた、弊社のサービスを提供できればと思っています。


■今後の展望とメッセージ

――:今後の展望をお教えいただければと思います。

現在NFTの領域にいるユーザー層と、新しく入ってくるユーザー層、彼らが国内・海外のどちらから来ているのかを把握する必要があると考えています。今後作成するマーケットプレイスでは、国内の人に扱いやすいサービスを提供しますが、国外にある弊社の子会社を活用して海外に向けたプロモーションも強化し、ふたつの軸からユーザーを引き込むために思索しています。

また、もうひとつの方向性として考えているのが、現状足りていない「作る」部分を強化する方針です。例えばデジタルアートや音源リミックスのように、ユーザーを魅了し購買意欲を刺激するようなものを作るため、デジタルに特化した形のプロダクションが必要だと考えています。

NFTの領域で新しいアーティストやコレクターを生んでいく循環のひとつとして、デジタルプロダクションは不可欠なピースなので、今後はそこにも着手できればと思います。


――:最後に、NFTを買ったことない方にメッセージをお願いします。

NFTの領域には、凄く面白い世界が広がっています。非常に多彩なクリエイターが作品を出し、コミュニティには熱狂的な人たちが集まる界隈です。世界中の人たちとボーダーレスにNFTを通じて交流できるので、一歩足を踏み入れてみてほしいです。

まずは、メタマスクを作ってみるところからですね。調べれば簡単に出てくるので、知っているとやってみたということの大きな壁を、勇気をもって飛び越えていただければと思います。飛び越えた先にはとても面白い世界が待っています。


――:ありがとうございました。