スマートフォン端末の機能を活かした直感的な操作方法、説明を必要としない明快さ、老若男女だれもが楽しめる万国共通のルールなど、ゲームの間口を広げるジャンルとして、スマートフォンアプリ市場において注目されているハイパーカジュアルゲーム。
gamebizでは、各社のハイパーカジュアルゲームにスポットを当てたレビューやインタビューを掲載するコーナー「ハイパーカジュアルゲーム道(ハイカジ道)」を展開している。
今回は、9月28日に開催された、モバイルアプリのビジネス・ソリューションをグローバルで展開するironSourceと、そのパブリッシングを担うソリューションであるSupersonic、そしてモバイル広告効果測定ソリューションを提供するAppsFlyerによる共同ウェビナー「Supersession ハイパーカジュアルゲームに関するインサイト」のレポート記事を、全3回に分けてお届けする。
ハイパーカジュアルゲームにおけるヒット作の作り方や、1つのコンセプトをビジネスへと成長させる方法など、日本のゲーム企業がグローバルでも活躍できるような知見を深めるための本ウェビナー。
2回目は、ironSource Japan ジェネラルマネージャーの峯秀一郎氏によるセッション「ハイパーカジュアルゲームトレンド」。
▼第一弾「ハイパーカジュアルゲームで成功するための道のり」の記事はこちら
https://gamebiz.jp/news/334137
「ハイパーカジュアルゲームトレンド」
ハイパーカジュアルゲームにおけるマーケットトレンドという視点で話を進めた峯氏。
まず今年1~8月までのゲームカテゴリのトップダウンロードチャートトップ30を紹介し、「ハイパーカジュアルゲームはすでに定着しており、チャートの半分をハイパーカジュアルゲームが占めている」と説明した。
次に「ハイパーカジュアルゲームのマーケットトレンドは5つに分類できる」とした峯氏は、各トレンドについて説明していった。
■ランナー2.0
まずはランナー2.0。「ランナー系自体は、かなり昔からカジュアルゲームの領域にあったジャンル。3D空間を左右上下にフリックしてキャラクターを動かし、無限に走り続けるというものだが、これをベースに二次的なメカニックを追加し、キャラに変化をもたらすことでゲームのクオリティを出す要素があるため」と峯氏は、2.0と呼ばれる理由を解説した。
ユーザー体験としてのプログレッションの強い感覚が同ジャンルの特長の1つで、峯氏いわく「キャラが継続的に成長、変化することでユーザーも飽きずらくなる。作る側としても、ゲームの構成に奥行きを持たせることができる」とした。
「ダイナミックなリズムで増減することも特長」と峯氏。資源を集めて、最大化させるというものがモチベーションになり、また障害物に当たると資源を失うなど、ユーザーに対して適度な緊張感、興奮を提供しているとのことだ。
そして、複数のメカニックも特長の1つで、「単純にランナーという形で資源を集めるだけでなく、それを利用して加速、ショートカットなどできるプラスαのメカニックを増減する資源に関連させることができる」と峯氏。「これが同ジャンルのメリットであり、ランナー系はまだまだ人気がある」と続けた。
▲ランナー系の中にも群衆系、女性向け、正反対系といったトレンドに分けられる。
▲2倍や1/3など集めた資源が増減するマルチプライヤーゲートは他カテゴリへも影響を与えている。
■シミュレーション
シミュレーションも、ハイパーカジュアルゲーム以前から存在するジャンル。峯氏は「目新しいものではないが、ハイパーカジュアルゲームにおけるシミュレーションと考えた場合、3パターンに分けられる」という。
・マルチステッププロセス
(ケーキを作ったり、木を削るなど物の完成度の高さを目指す職人系)
・ロールプレイング
(警官になってスピード違反の車を検挙するなど専門職になりきる)
・ASMR
(上記2つと異なり、勝ち負けでなく感覚的な気持ち良さを追求)
シミュレーションに関して、「最近はソーシャルメディアのトレンドから着想を得ることが多い」と峯氏。
ソーシャルメディアで数百万回再生されている動画などを元に、プロトタイプを開発してマーケタビリティのテストをした場合、良い結果が得られやすい傾向にあるとのこと。このように「ある程度コンセプト自体が実証されている」(峯)ことが同ジャンルの人気の理由のようだ。
上のトップチャートを見ても、「トレンドを元に作ったゲームは、トレンドが去っても意外と100位以内に入っていたり、数ヵ月に1回はランキングにあがるなど、トレンドベースで作ったゲームも程度完成度が高ければ長期的に収益化できると思う」と峯氏は語った。
▲ソーシャルメディアで流行ったフィジェットを題材にした3つのゲームが同日にトップ3にランクインした事例を紹介。
▲トレンドを追って、いかに早くマーケットに出せるかが重要になってくる。
■ミニゲーム
「去年からの流れはあるが、どれか一つのテーマ、メカニックをベースに色々なミニゲームを集めて作るもの」と峯氏が説明したこのジャンル。
ミニゲームにおいては、メカニック、もしくはゲームの選択が非常に重要になってくるそうだ。例えば「テーマを選ぶにしても特定の言語、国籍、年齢、性別に限らず、広く一般に受け入れられているテーマを採用するのが成功の秘訣」と峯氏。
また、組み合わせるミニゲームに関してもテストする必要があるとのこと。
峯氏は「ハイパーカジュアルゲームは、ユーザーの飽きとの戦い。いかに飽きさせないでプレイしてみらうか。組み合わせるミニゲームも操作性やタッチが違うものを採用しつつ、ただ違い過ぎてもダメなので似せる等色々な形でうまく組み合わせる。そうすることで、リテンションやプレイ時間などのKPIを改善できる可能性がある」とコメントした。
■意思決定
物語系で選択肢を選んで進めていくジャンルが意思決定。こちらはユーザーが自らの意志で選択した結果によってゲームの結末が変わってくるという、ある種ユーザーに決定権をゆだねているジャンルのゲームで、パズルやシミュレーションで組み合わせて使うケースが多いとのこと。
意思決定を用いるメリットは、「奥行きや物語性が得られる。単純に操作するだけでなく、選択肢でユーザーとのインタラクションを増やせる」と峯氏。
また、「選択肢を出して、それによってシーンを変える事はそれほど難しいものではないので、パズルやアドベンチャーなど違うジャンルとの掛け合わせがしやすい」(峯)とも。
ただし、「これは個人的な主観だが」と前置きした峯氏は、「どうしてもUS、欧米マーケットがメインになるので、テキストベースでの意思決定要素となると英語になる。日本のデベロッパーだとハードルが高いかもしれないので、テキストではなく簡単なイラストなどを使って選択させると良い」とアドバイス。
マネタイズ方法についても「一風変わったものが実装できる」いう峯氏は、「例えば通常2択の所を3択にして、3択目は動画広告でアンロックできるなど、今までにないマネタイズの方法も実装できるかなと思う」と語った。
■一人称視点
最後のジャンルは一人称視点。代表的なものとしては、FPSと呼ばれるものだったり、モバイル以外だとアドベンチャー、RPG、レースゲームなど、昨今のクオリティの高いコンソールゲームにおいて、基本的に一人称視点で操作するものが定着している。
では、モバイルゲームでそれを表現する場合はどうすればいいか? 峯氏は主に2つの方法があるとした。
「1つはVRのように宙に浮いて見える手、武器自由に動かすもの。もう1つが基本的なFPSと同じ武器固定視点。一人称視点はハイパーカジュアルゲームでも新しめの要素なので、まだまだポテンシャルがあると考えています。とくにハイパーカジュアルゲームだと、今まではゲームに触れてこなかったユーザーをいかに広く取り込むかがマーケタビリティの主眼だった。それが、一人称視点の場合はテーマを選ぶ事によって、PCやコンソールでゲームを遊んでいる人たちもうまく取り込める可能性があり、そのマーケタビリティやゲーム内のKPIで通常のハイパーカジュアルゲームとは違う結果が得られる可能性がある」(峯)
最後に峯氏は、「ランナー系のトレンドは非常に強い。特にこれからハイパーカジュアルゲームに参入を検討している場合、ランナー系はジャンルとして確立されており、側の部分で個性を出していくような形になるので、コンセプトの着想プロセスを考慮した場合、他ジャンルと比較して開発しやすいので、今後も注目すべきかなと思う」とコメント。
また、今回紹介された5つのジャンルについて「幅広いトレンドとそれぞれの優位性を理解し、自社開発チームの強みもいかせるものを採用してほしい」という峯氏。
「例えば、ASMRは高いアートスキルが求められるので、プランナーとエンジニアしかいなければ結構難しいと思うし、その逆のケースもある。自社チームの強みを考慮したうえで、それぞれのトレンドの優位性を理解して、どういったトレンドを追っていくのか決める必要がある」と加えた。
そして「ハイパーカジュアルゲームの中でも、まだまだ採用されていないジャンル、コンセプトは無数にある。イノベーションを恐れずリスクをとって、どんどんテストしていくのが重要」とまとめた。
~「ハイカジ道」の過去記事はこちら~
https://gamebiz.jp/news/tag/17082