【連載】中山淳雄の「推しもオタクもグローバル」第11回 新進気鋭のメタバース企業MetaTokyoが提示するWeb3.0の未来

中山淳雄 エンタメ社会学者&Re entertainment社長
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メタバースといえば、2021年を象徴するバズワードである。もともとセカンドライフの2003年、VR元年の2016年など何度も取りざたされてきた概念であるが、2021年10月にOculus擁するFacebookが社名をMeta(メタ)に改名したことで、いよいよ全世界的にメタバースへの取り組みが本格化する。そうした中でいち早く「MetaTokyo(メタトーキョー)」を22年2月1日に公表したParadeAllの鈴木社長に話を伺った。


■文化都市東京をグローバルに発信していくメタバース企業MetaTokyo
――:自己紹介からお願いいたします。

ParadeAllの鈴木貴歩(たかゆき)と申します。タイトー、MTV Japanやユニバーサルミュージックなどで働いてきて、キャリア全般を音楽×Tech×エンターテイメント(エンターテック)の業界で過ごしてきました。2016年からエンターテック会社として独立したのがParadeAllで、今月に弊社とFracton Venturesさん、アソビシステムさんと合同で立ち上げたMetaTokyo株式会社のCEOにも就任しております。

――:音楽業界のエンターテックといえば鈴木さんですよね。関西大学やVIPOアカデミーなどでも教鞭をとられています。そもそも鈴木さんがメタバース事業に関わられたのはいつごろからですか?

2020年後半のNBA Top Shot立ち上げ辺りから注目し始めて、自社では20年3月から音楽xNFTの事業支援を立ち上げました。スティーブ・アオキ(NFTコレクションが約4億円で販売)や3LAU(アルバムをNFT化して13億円で販売)などミュージシャンのNFT活用事例も目立ち始めていて、NFTと音楽の相性の良さをそのころから感じていて、アソビシステムの中川社長に何かできないかと話を持ち掛けたところからです。

最近の音楽マーケティングはストリーミングにのせてじわじわ普及し、プレイリストで拡げるのが定番だったんですが、そんなストリーミングも海外ではもはや普及しきって頭打ちになってきています。これからはメタバースやNFTというツールを使ってDtoF(ダイレクトにクリエイターからファンに販売する)で流通していく世界がオルタナティブになってくのではないか、という構想がありました。

――:なるほど。NFTブームに反応が早かったのは、確かに少人数で機動的に作成ができるアーティストやミュージシャン達でしたね。そうした中で今回の3社の役割などお伺いできますか?

Fracton VenturesさんはWeb3領域でのビジネスを展開しており、アソビシステムさんはきゃりーぱみゅぱみゅ、中田ヤスタカ、新しい学校のリーダーズなど、東京カルチャーを代表するアーティストやクリエイターをグローバルに向けて広げてきました。Web3の専門家集団としてのFractonとコンテンツとしてのアソビシステム、そして私自身のエンターテックのノウハウを注ぎ込んでサービスをつくっていくのはとても相性がよいのではないか、と合弁会社を立ち上げました。

――:メタトーキョーは今後どんな事業を展開されるのでしょうか?

最初に掲げた事業の方向性、ミッションとしては3つあります。

1.  デジタル上での文化都市の創出
2. NFTを活用した日本からグローバルへのデジタル文化創出
3. 東京発のクリエイターエコノミーをWeb3.0で実現

現在はこのうちの最初の取り組みとして、Decentralandというメタバースの一定区画を買い取って、発信と経済の拠点をつくっています。会社でいうとまだ10名足らずで動かしていますが、これから建物やエフェクトなどをどんどん作っていけるエンジニア・デザイナーを増やしたり、この発信場所を使って様々な企業・作品とのコラボもしていこうというところです。世界各国からユーザーが集まっているので、マーケティングしたいナショナルクライアントなどともどんどん提携していくつもりです。

――:東京らしさ(アソビシステムさんが入っている点では特に原宿らしさかと思いますが)を世界に発信していくということですね。

はい、これからメタバースは今後乱立していくなかで、我々はメタバースにおける森ビルさん・東急さんのような、文化発信源でかつその価値向上にコミットできる存在を目指したいです。また②でもあるのですが、すでにNFTで“日本っぽい"アートって結構売れてるんですよ。このAzukiさんのコレクションって侍、忍者のモチーフでアメリカ人が展開しているのです。すでに5400人に累計で105,000ETH(300億円)分の取引(22年2月15日時点)がされていて、プロジェクトの収益としてはなかなかのサイズになっています。でもこうした価値ある「日本的文化」作品を、きちんと日本人のクリエイター自身がどんどん生み出していけると考えています。

▲1万アイテムが5400人のオーナーによって所有される総額300億円のTeamAzukiコレクション


――:メタバースというとなんでもかんでも3Dというイメージがありますが、このPCのWebでみている作品って結局は2Dなんですよね。基本的にデジタルで、いやむしろアナログであっても、メタバースという言葉はつかえますよね。

メタバース体験とはVRゴーグルをつけて3D空間に入る体験だけじゃないんです。そもそも「何か自分がアバターで違う存在になれるもの」というところまで抽象度を落とすと、「地元じゃできない派手な格好で渋谷や原宿に繰り出す若者」も究極的にはメタバースで遊んでいるようなものです。自分の肉体・土地を超えて、リモートでアバターによってつながる、という意味ではすでにアバター的な遊び方は十分に普及しているんです。


■Decentralandというメタバースで何が起きているのか
――:MetaTokyoとして1つのメタバースをつくるわけではなく、すでに多くのユーザーが集まっているDecentralandという「メタバースプラットフォーム」の中でのサービスを展開されました。こちらはどういった背景なのでしょうか。

見てもらうと早いと思います。Decentralandは誰でもはいれる空間で、VRゴーグルがなくてもWebでもこのように中身にはログインできます。自分のアバターをもって中に入ってみると…この右手の建物が、MetaTokyoのスペースです。2022年1月7日から1997年創刊の「FRUiTS」で当時掲載されたストリートスナップをNFTで販売し、3日で完売しました。

▲鈴木氏のアバターでMetaTokyoのポップアップミュージアムの前
 

▲2階にあがると、雑誌FRUiTSを背負ったキャラクター達がクラブで踊っている

――:こちら、すでにCoinCheckさんが提携されたThe Sandboxなどもあるなかで、どうしてDecentralandを選ばれたのでしょうか?

Decentralandは30万人のアクティブユーザーがいると言われるメタバース空間で、まだまだ成長余地があるし、かといってすぐになくなってしまうような規模でもない。月間ユーザー規模でいうと、RobloxやMinecraft、Fortniteなどが1億人超の大規模。そこにVR ChartやAxie Infinityなど数百万人規模のものがあり、その次に30万人のDecentralandと3万人のThe Sandboxといったところでしょうか。

このDecentralandが売り出している9万区間の土地は2019年時点で一販売はすべて終わっています。ですので、現在流通している土地はすべて購入者の転売による二次市場です。当初は1区画数万円からのオークションでの販売でしたが(つまりワールド全体で10~20億円といった販売額)、現在は数十万~数百万、高い区画はそれ以上の相場観になっています。

――:過去に総額10億円程度で売り切れた9万区画の土地が二次流通を経て、現在総額100億、下手すると1000億相当で二次・三次流通されているということですね。

計算上はそうなります。弊社もそれを一部買い取って、そこにこのMetaTokyoのポップアップミュージアムを設計して建てました。みてもらうと、「普通の建物」とは全然違いますよね?中でなにやっているかがスケルトンになっていて、消防法も建築基準法もいりません。メタバース空間のなかでの建物というと、リアルの世界の建築士では考えられないような独自の派生形態があるのではないかと思っています。すでにメタバース建築士という職業もあり、弊社はメタバース・クリエイターの第一人者、MISOSHITAさんに建築をお願いしています。弊社のCMVO(Chief MetaVerse Officer)にも就任していただいています。

 

――:このミュージアムは人を集める目的かと思いますが、どうやってマネタイズを考えられてますか?“VR建築士"や社内デザイナーを稼働させてますし、ここまでもなかなかお金はかかってますよね?

このミュージアムで展示している写真は1/7に写真NFTとしてFoundationで販売を行い、7点全てが3日間で完売しました。MetaTokyoの取り組みとしては日本のIP/エンタメの発信と経済を生む活動を同時に行える事が強みです。

またミュージアム内の特別な空間に入れたり様々なサービスが優遇される「デジタル住民票」であるMetaTokyo PASSも提供していて、初回限定100枚(1枚0.033ETHで1万円程度)は5時間で売り切れました。偽物もすでに出ています。100枚限定なのに、950枚売られていたりします。こういうのはOpenSeaに通報してBanしてもらいます。

他にクリエイターとのコレボレーションや、ブランドのマーケティングの支援や様々な形のコラボレーションも想定しています。今は「人が集まる空間と体験をつくる」ところが優先事項です。24時間稼働してる"非同期"な空間が日本発のビジネスとして大きな可能性があると考えています。

――:しかし売り出したMetaTokyo Passがあっという間に売り切れたり有望ですね。驚くのは、「VIPパスでどんなベネフィットがあるか」があくまで予定なのに、すでに売れ切れてしまうという「期待値」でビジネスがなされている点です。

そうですね。コミュニティの皆さんからMetaTokyoへの期待値が表れています。そうした約200名のコミュニティメンバーの皆さんとのつながりはとても大事で、積極的に意見や協力をいただきながら一緒にMetaTokyoをどう発展させるかを考えていく、仲間になっていただきたいです。


■メタバースが目指す脱GAFA、Web3.0の世界
――:30万人のDecentralandはどういうロジックで価格が上がっているのでしょうか?ユーザーの国籍などもわかりますか?

基本的に「これから上がるから」買っている人も多いでしょう。現在は結構価格はすでに上がっていて、MetaTokyoのビル1棟を建てようと思うと、高い場所で億超えという区画もありますし、1区間の価格をみても数百万円といったところでしょうか。高いとはいいながら、まだリアルの土地よりは安い。ということで購入されています。

ユーザーの国籍などはわからないんですよね。というか誰も気にしていない。Decentraland自体はアルゼンチンで開発されたものですが、どこに法人があるのかということもあまり気にされておらず、こうした無国籍性も今のメタバースの特徴でしょうか。

――:このMetaTokyoさんの隣のビルはどなたのものなんですか?

豚のマークが書いてあるのははらぺーさんの建物ですね。MetaTokyoがこの土地を買っているという事実もわかりますので、このエリアはより開拓されると思って、よりよい買い手が集まる、ということもあります。MetaTokyoの位置するFashionStreetはカナダ投資会社Tokens.comが116区画をまとめて240万ドルで購入したことが話題になっていたところです。こうした巨額のバイヤーが現れると、またその土地の性質が変わったりもします。

▲Decentralandの土地で売り出しがされているものが水色の部分


――:MetaTokyoとしては自前で1からメタバースをつくろうとは思わなかったんですか?

ブロックチェーンのイーサリアムは「ワールドコンピューター」とも言われています。みんながその機能を活用して、自分たちだけで全部作る必要はない。プラットフォームを自前でもつよりは、Decentralandや他もメタバースの上で建築、運営を行い、ある種「MetaTokyo」はコミュニティの概念と捉えています。

――:現在Decentralandのみならず、いろいろな空間がメタバース化を模索しているのでしょうか?

すでにFortniteでもそうした機能が実装されていて、この動画などは、渋谷の街をユーザーが再現していて、16歳の高校生が7か月かけてGoogle Earthで寸法を一つ一つ図りながら東急や109のビルをすべて再現しています。この労力たるや、恐ろしいものがありますよね。この場所の広告スペースを売ることも1つですし、実際にいま渋谷にこうした所有物をもっている企業群も音楽・映像のコンテンツIDのように著作権収入を得ていく未来も十分に考えられます。ネイバーやテンセントなどもメタバースへの進出を発表していますし、他の企業もどんどんこういうものをつくっていくでしょう。

▲1人の高校生が7か月かけてFortnite内に再現したShibuya


――:今後、皆が一斉にメタバースを展開していくと、今後どんな世界になっていくのでしょうか?

これまでWeb1.0(ホームページの時代:皆がデジタルの空間にアクセスする)→Web2.0(SNSの時代:ユーザー同士がプラットフォーム上で交流する)ときて、Web3.0はGAFAとは違った可能性を持っています。GAFAは何億人というサイズの人間を大量に集めて、そこに広告を付けて収益化します。マス向けのビジネスで多くの人をどれだけ集めるかというビジネスでした。

NFTがマスに広がらなくても大きな売上をあげているのは、小さなアートギャラリーのような少人数ながら共感者たちでまわしているエコシステムがあるからです。きちんと価値を理解した少人数の顧客とサロンのようにつながり、その限られた空間のオーナーシップは所有者がが100%コントロールする。それがクリエイター自身だったりします。

どこがメタバースの覇権を握るのか、どこがユーザーを何億人抱え込んでいて、そこで広告収益をいくら立てているのか、といったマス向けビジネス的な価値観ではない"オルタナティブ"な世界がこれから出現するのではないかとも思います。

――:MetaTokyoとしては今後どんな取り組みを募集していきますか?

世界で活躍して経済圏を作りたい、クリエイター、IP(企業)はどんどん声をかけてください。日本のオーセンティシティを理解しながら海外でもビジネスを行う数少ないプレイヤーとして掛け合わせの可能性は大きいと思います。

まだメタバースでどんな事をやったら分からない、というクリエイターや企業の方も多いと思いますので、気軽に相談してください!

 

▲MetaTokyo社CEOの鈴木貴歩氏

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