【連載】中山淳雄の「推しもオタクもグローバル」第27回 なめらかな転進―3年で4社を渡り歩くNFTエキスパートがフィナンシェで新たな挑戦

中山淳雄 エンタメ社会学者&Re entertainment社長
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Web3やDAOといった「新しい用語」が市場を席捲している。それらを理解しようと藻掻くけれども、その実、どんな人がどんな経験をもってそれを推進しているかという“実態"に触れると、20世紀からビジネスをしてきた人間にはどうもカオスや危うさを感じる。でもそれはもしかすると20世紀のフレーム自体が劣化していて時代に追いつけなくなっているのではないか、そんな気もしている。今回はそうした“実態"の片鱗を感じさせる北出凜太郎さんに取材した。北出さんはいわゆる「会社組織を代表する偉い人」という肩書やキャリアをもっていない。創業者でもない。だが“なんかNFT詳しいし、聞くとだいたい答えが返ってくる"という感じの人だ。そんな彼がどんな変遷をたどって現在に至ったかを知ると、この業界の“実態"がより深く見えると思う。


 

■4年目で飛び込んだベンチャーで出会ったVtuber・NFT事業

――:自己紹介からお願いします

フィナンシェの北出凜太郎と申します。いまエンタメ案件でコミュニティマネジメントやNFT事業周りの担当をさせていただいております。広告代理店のあとに、クレイオでThe NFT Recordsという音楽NFTマーケットプレイスに関わり、現在はフィナンシェで仕事をしております。


――:今回はNFTのエキスパートとして北出さんに登場してもらいました。最初は京都の広告代理店ですよね。その時代はNFTとは関係のないお仕事をされてたのでしょうか?

そうですね、僕は神戸出身なんですが、2015年に京都の龍谷大学経済学部を卒業後、3年間そのまま京都の広告代理店に勤めていました。そのときは京都だけあって、振袖袴などの伝統工芸の会社さんの仕事が多い会社だったのですが,その中でWeb・デジタル周りのプランナーをしてました。もともと3年でやめると宣言していたこともあり、そのまま2017年に退職して立ち上げから関わる形でベンチャー企業にジョインしたんです。FeelLiveという会社ですが最初はだいぶ苦労しました。

畑が違う人間たちを集めた会社を、と意気揚々と立ち上がったんですが、最初半年間はほぼ仕事がなくて、、、4人で始めたところが早々に2人抜けてしまって、社長と2人でなんとか営業してまわっていました。


――:まだ社会人4年目なわけですもんね。よく辞めなかったですね。

白髪がめっちゃくちゃ増えました(笑)。自分たちはディレクションもできる、プロデュースもできる、企画もできる、と意気込んで起業したのに、残高は、、みたいになってしまって。本当に「なんとか食いつないでいた」感じです。大見え切って退職してきたし、社長と2人だったということもあったのと、ここで辞めるのは逃げるみたいだなと思い,なんとか続けてましたね。

幸いなことに、ジリ貧のなかで芸能関係からVTuberのコンテンツ製作やテレビ局から歌番組の演出への技術提供の仕事などを頂いて、徐々に余裕がでてきました。今はそういったところから得意分野になったCG制作やエンタメ系の映像制作を生業とした会社になってます。


――:そもそも社会人3年目で社長の園田さんに惹かれて飛び込んだ理由はなんだったんですか?

実はもともと知り合いだったわけではなく、紹介なんですよ。出会って2時間ほど話して、その場で誘われたので転職を決めちゃいました。危なっかしいですよね。ただその苦労もあったし、その後何度か転職はしてるんですが、現在も委託的に一緒にやっていて、園田さんとは今も頻繁に連絡とりあっていますね笑。


――:いつから東京に出てきたのですか?

音楽番組での3Dホログラム技術演出をしたり、Vtuber制作したり、デジタルプロモーションなどをやってたのですが、こういう案件ってお客さんがほとんど東京だったんですよね。それで月に何回も往復する交通費を考えると、もう拠点つくったほうがいいよねということで、2019年に東京に出てきています。

 

■2021年世界初の音楽NFTマーケット「The NFT Records」誕生

――:Feel Liveをやめて、それでクレイオに入社されるんですか?

いえ、実はFeel Liveで東京に出てきた後は2020年にホットリンクというSNSマーケティング支援会社に転職しています。元々はFeel Liveのお取引先様でしたけど、コンテンツ面に力を入れたいからと誘っていただいてる内に自分が逆に移ってしまえば制作面でFeelLiveとも協業もできるし、ということで、円満にホットリンクに入社してます。そこからはしばらく映像制作を中心にSNSでのコンテンツ制作の仕事をしていました。

ホットリンクはある程度規模の大きい会社だったので、人生はじめて「賞与」ももらって感動した記憶があります。それまでの会社ってそういうのがなかったんですよ・・・笑


――:ベンチャー、ボーナス出ないですよね笑。では17年にFeel Live、2019年に上京、20年ホットリンク、そして21年にNFTビジネスのクレイオ、という順番なのですね。

ホットリンクにいた時からNFT自体にはエンタメやコンテンツとの相性が良いと考えていて、クレイオのNFT事業(当時はプロジェクト)には個人的にボランティアワークとして関わっており、2021年9月にクレイオに入社しています。

「クレイオ」の法人化が20年4月にされて、The NFT Recordsという音楽のNFTサービスも立ちあがったので、正式に21年の9月に入社しました。NFTってコミュニティサービスの側面もあるので前職までのSNS周りの経験も生かせましたね。


――:クレイオの親会社は、ゲーム系投資会社でも有名なアエリア社ですよね。その前身の会社の時代からNFTプロジェクトが進んでいたということなんですか?

もともとは2019年にできていた有名人からパーソナルな動画メッセージをもらえる「セレブレイトメッセージ株式会社」という会社がクレイオの前身となります。そして、1プロジェクトとしてNFT事業が始まった流れなんですよ。またプロジェクト自体も元々は同じアエリアの子会社であるサクラゲート社からスタートし、前述のセレブレイトメッセージ社へ事業譲渡を行い、エンタメのDX事業会社としてクレイオに社名変更を行う形でプロジェクトが進みます。

そうして、アーティストがNFTを販売できる「The NFT Records」が加わって、2つの事業でクレイオが立ちあがるわけです。音楽専門のNFTマーケットプレイスとしてはこれが世界初でしたので、プレスリリースでもその様に打ってましたね。


――:アエリアって「捉えがたい」会社なんですよね。ゲーム産業からみると。2000年代にゲームポットやアクワイア、ジー・モードなどのゲーム系で家庭用・PC・モバイル全部に張っていきながら、2013年に全部売却してゲーム事業からほぼ撤退してます。それが2015年からは「アイ★チュウ」「A3!」などのリベルエンタテイメントの買収に始まり、2018年にはサイバードまで買収。ゲームも不動産もITサービスもやる「よくわからない会社」という印象です。

創業者がソフトバンクにいらっしゃった方なんですよね。そういう出自からきているのだと思います。

 


――:実際どのくらいのアーティストがNFT化取り組むものなんですか?あと曲は、NFT用にオリジナルなものが多いんですかね?既存の原版だとNFT販売しにくいですよね。

当初は20組くらいでしたかね。最初は1組1組、レーベルや事務所と交渉して出していったんですが、より広く短期で拡大させる狙いなどやNFTの本質としてまだメジャーでない人からも次のスターが生まれることを願って途中からインディーで自由に出品できるような仕組みにしていきました。

楽曲はおっしゃる通り、すでに出版してしまっているものは難しくて、基本的には新曲の限定先行販売やオリジナルの楽曲か、もしくはカバー音源で出すことが多かったですね。もちろん既に出している旧譜を再活用として販売したり、未公開のアー写や映像などとセット売りするなどは実施していましたが。


――:JASRACとNextoneに契約されているものは出せませんよね?

いや、実はちゃんと2団体と包括契約も結ぶ形で進行してました。それぞれと話し合って2団体に登録された楽曲も既定の著作権料を払ってカバー楽曲で使わせてもらうという仕組みも整えていました。


――:NFT楽曲マーケット、JASRACからも許諾されているんですか!?それってすごいことだと思います。よく、こんな新規の商流を許諾できましたね。YouTubeのときも包括利用許諾契約でいろいろな苦労があった話を聞きますが、、、。

既存の配信・ダウンロードの枠組みを使っていたと記憶してます。ですので二次流通とかも、普通に新たにダウンロードされたとみなして、その度に手数料を申請します。そこらへんの処理は全部TheNFTRecords側で処理するので、アーティストの負担にならないようになっていたはずです。

この辺りはレーベルの方々からも信頼していただいてた一因にはなっていましたね。


――:なるほど、それは賢いやりかたですね。あと、他の日本のマーケットプレイスも同様ですが、基本的にはプライベートチェーン(特定の管理者が存在し、ネットワーク参加に承認が必要なブロックチェーン)ですよね。

そうですね、日本ではプライベートチェーンの形が多いです。理由としてはいくつかあるのですが、パブリックチェーンの場合、「暗号資産やウォレットを含めた購入方法が既存のファンなどには複雑である」「会社として会計処理のルールがない」などがステークホルダー様から聞いた記憶です。

プライベートチェーンだと買い切り型のコンテンツ販売のような形になるケースが多く、ユーティリティ(そのNFTをつかって何らかの権利や行動に移せるような“使用用途")も中々生み出しにくかったんですよね。だからそのままの形だとちょっと市場には刺さりにくく、買い手も売り手も広がりにくいというのはありました。

やはりBAYC(猿のアバターで有名になったNFTアート)やAzukiのようにGenerative NFT(パーツ毎に分けたデータをランダムに組み合わせて生成した画像をブロックチェーン上に唯一無二の作品として保持したデジタルアイテム)スタイルで、コミュニティをつくったり、ユーティリティをもたせてホルダーメリットや流動性を高めないと広がらないと痛感しましたね。そうしたトライアンドエラーを重ねながら最適な形を探っていく、というのがありましたね。


――:The NFT Recordsは2021年のNFTバブルの追い風は受けなかったですか?

そこは残念ながら、、。2021年発のサービスでしたが、プライベートチェーンだと、NFT市場全体ではものすごい額のお金が飛び交っていてもあくまでそれはイーサリアムなどのパブリックチェーンの話だったのでNFT Recordsだけでなくプライベートチェーン全体だと思いますが中々流れてこないんですよね。やはり市場流動性が担保されていないと、そこに投機的にお金をかけるユーザーも集まってこないというか。

とはいえ、プライベートチェーンだから悪いとかそういうことは一切思っていなくて、現にNBA Top Shotで使われているFlowの様なチェーンもありますし、その辺は用途や目的によっては有りだと思ってますね。

NFT Recordsにおいてで言うと、コンテンツ販売文脈を1つ目のフェイズとして今後は「デジタル音楽パッケージのNFT化」という文脈で展開をしていく形ですね。


――:暗号資産の雑所得計上の問題もありますし、日本のNFTマーケットはほとんどプライベートチェーンベースですし、日本は規制が厳しいですよね。

その辺りは今まさに国もですし、企業も整備に取り掛かっているようなフェイズだと思うのでこれから最適な形が出来上がっていくんじゃないかと思っています。

そこが整ってくると、今よりもさらにNFTなど含めたブロックチェーンを活用したビジネスが加速していくと考えています。

 

■コアなファンコミュニティで応援の形をDAO化するフィナンシェ

――:そして北出さんはこの22年3月からフィナンシェで働かれてるんですね。

はい、フィナンシェはトークン発行型のクラウドファンディングとNFT事業として、プロジェクトごとにトークンを発行しています。有名なところだと『キャプテン翼』にも登場する「南葛SC」が実際に葛飾区にあり、Jリーグ入りを目指してクラブトークンを発行しました。トークンの購入量によって、デジタルカードがもらえる、ユニフォームがもらえる、など特典が違い、そこでトークン購入のためのお金を使って南葛SCも活動資金にあてて成長していくためのものです。作家の高橋陽一先生自身が代表理事を務めてもいる団体で、ここが4000万円超の調達をしました。


――:だいたい個人はいくらくらいからフィナンシェの各プロジェクトを支援できるんですか?

そこら辺はプロジェクトのターゲット毎に変えるケースが多いのですが、基本的には最低額1万円くらいで設定してます。そうしたなかで100万円以上の金額を支援する人もいる、といった感じです。ですので「南葛SC」もコミュニティのフォロワーも2,000人以上集まった、ということだと言えます。


――:この図がしっくりきます。現状のトークンエコノミーって「プレミアムなファンクラブ」という感じなんですよね。1万円って最初からプロジェクトを支援する内金として考えるとなかなかの金額で、そのくらい団体・アーティスト・プロジェクトにコミットするというハードルを越えているわけですから、その後も応援してくれる「コアファン」と言えますよね。

そうですね、ゆくゆくはポイント制度でファン同士のスコア化であったり、長くファンを続けていくことでそのクラブの中でのステータスが確立されるような「より深いファンエンゲージを引き出す仕組み」にもなればと思います。


――:フィナンシェはgumiファウンダーの國光さんが設立したことで有名ですが、いつごろからあるのでしょうか?

会社自体は、2019年1月に設立されていますが、実は現経営陣4人が「ブロックチェーンで一緒に何かやろう」と集まり2017年末からプロジェクトはスタートしていると聞いてます。そして2019年にサービスが形になったタイミングで株式会社フィナンシェが創業した形と聞いてます。


――:こうしてみると2021年がNFT元年と言われますが、2018年にすでに各社がラッシュのように法人化しているんですよね。まさに17年末のCryptoKittiesが火をつけて、その後有象無象に色んな会社さんが、ブロックチェーン技術を使ってコミュニティ運営やトークン販売、基盤づくりなどの事業化がされています。

2018/4 Double Jump Tokyo設立(GumiとDLE出資)
2018/5 Gaudiy設立
2018/7 HashpPort設立
2018/8 Play Mining設立
2019/1 1SEC設立
2019/1 フィナンシェ設立
2019/5 Avex Technology設立


――:設立してからこれまでの3年半で、どのくらいのプロジェクトをつくってきたのですか?それぞれのプロジェクト規模はどのくらいでしょうか。

だいたい160-170プロジェクトくらいでしょうか。各プロジェクトは前述のように4000万円いったようなものが数件、基本的には数百万円~数千万円の規模ですね。1件ごとに数百名~数千名のサポーターがいるような状態です。

サッカーの本田圭佑選手や長友佑都選手も出資しているだけあって、スポーツ系が7-8割で、在籍メンバーはスポーツのコミュニティ運用を中心に、これからエンタメ系のプロジェクトやNFT事業が増えていくということで、僕も含めて数名が新規事業チームの様な形でやっています。


――:あくまで募集金額と二次流通の数%のマージンの商売で考えると、規模もプロジェクト数もまだこのレベルだと黒字化までは難しい印象ですね。それでも60名強のチームというのは確実に国内最大級のNFT事業者と言えますが、、、北出さんが現在関わっているのはどういうプロジェクトなのですか?

こちらの『SUPER SAPIENSS(スーパーサピエンス)』といって3人の映画監督『踊る大走査線』の本広克行さん、『SPEC』の堤幸彦さん、『ストロベリーナイト』の 佐藤祐市さんの映画監督3人が原作づくりから映像化の全プロセスをトークン発行で集まったお金でやっていこうというプロジェクトです。プロデューサーには國光の“生涯唯一の上司"(國光がGumi創業前に入社していたアットムービー社長)の森谷雄さんで、最初のプロジェクト資金はコルクの佐渡島庸平さんとのWebtoon制作資金になるというものです。トークンが売り出されて、4500万円の出資が集まりました。

私の役割としては、こうして1人でも多くの夢をかなえる「プロジェクト≒コミュニティの立ち上げ」、「フィナンシェとしてのNFT事業の確立」、その先に「フィナンシェとして今年の目標でもあるIEO(トークン上場)していく目標のなかでFT(暗号通貨)とNFT、そして今発行しているプロジェクト毎のトークンと連携していくこと」などが求められています。

 


――:IEOするんですね!では「南葛SCトークン」「スーパーサピエンストークン」とか個別に分断されているものが「フィナンシェトークン」として市場連動していくものができるわけですね。それは期待値が高いですね。


弊社はコインチェック株式会社様とIEOによる資金調達実現に向けた契約を締させていただいており、上場に向けて現在準備を進めているところです。IEOにより既存もですし、これからも含めたあらゆるステークホルダー様方に対して今のプロジェクトトークンの価値がさらに高くなったり、サポーターにインセンティブがあったりといったところの戦略立てもしていければと考えています。

もちろんその一方で、IEOを行う上でのガイドラインなどもしっかりと設計して慎重に進めていくことも念頭に置いて進めています。

 

■なめらかな組織づくりとJob型労働の面白さ

――:思うんですけど、北出さんの転進の仕方も含めて「会社組織やプロジェクトの進め方自体が、いま根本的に変わってきているんじゃないか」と思うんです。そもそもクレイオもNFTありきで会社つくってるわけじゃないですし、フィナンシェだって色んな会社とのコラボで出来上がっている。なんだったら、驚いたのは、フィナンシェは現在「オフィスがない」んですよね。社員60名以上いる状態で。

はい、登記住所はありますが、皆で集まってという「オフィス」という形あるものはないですね。以前はオフィスを使っていた時代もあるのですが。連絡もミーティングもすべてリモート。こういうインタビューしていただく際や来客での会議の時にはちょっと困ります。笑会社として契約している場所もあるのでその際はそうした場所を使う様にしていますね。


――:一定金額の労働対価をコミットして、社保年金全部面倒みてもらう「会社雇用」という状態自体が変容していくような気もしてるんです。北出さんも大学卒業後8年で5社目、でも初期のFeel Liveはまだ手伝ってるし、途中でクレイオが設立前からなんとなくボランティアのような形でNFT事業に絡んできた。いまオフィスのないフィナンシェで働きながら、他の委託的な事もやっている。なんかこういう「なめらかさ」自体が、Web3やDAO的なものに向かう途上にあるような気がしています。

たしかに、そうですね。The NFT Recordsは元々は会社法人という形を前提としない「プロジェクト」で始まってますし、フィナンシェもプロジェクトベースで考えるとサポーターとオーナーが共創していく、その中にフィナンシェも入って創り上げていくという形で考えると法人の敷居できれいに切り分けられない、それぞれの専門分野を活かして作る、というのは今のWeb3系の企業の特徴かもしれません。

とはいえ、個人的には、ですがWeb3.0はこうあるべきだ!みたいなのってナンセンスだなと思ってて、むしろWeb3.0って時代?みたいなものだと思ってて平成はこうあるべきだ!令和はこうあるべきだ!なんて言わないじゃないですか?笑 その時代の中で何ができるか、を考えていければと思ってますね。


――:そうなんです、こういう「新規事業をするから会社を立ち上げよう」ではなく、「数人で半分遊びのプロジェクトに、近しい人を巻き込みながらワイワイとサークルのようにDAOが出来て、うまくいきそうなら法人化する。DAOで手伝っていた人たちは、法人化とかIEOでこれまで手伝っていた分がトークンとして株式上場時のように思ってもみない利益を得る」みたいなものが、この業界特性に合っているのかなとも思うんです。そういうなかで、20世紀の法人・会計基準・法律がなんとか過去の枠組みにあわせて、それを定義しようという苦慮も感じ取れます。

今後のNFT業界のトリガーは従来までの新規IPを0ベースで創出するだけではなく、それこそ誰もが知っているようなポケモンやドラゴンボールといったような超大手のIP(知的財産)のものがNFT業界に入ってくることだと思うのですが、確かにハードルが一番大きいのは「監査法人」ではないかと思うんです。版元さんと話すと仮想通貨が会社の会計基準に合わないからとNFT化を控えたり、特にパブリックチェーンベースのものに手を出すことに躊躇されるんですよね。

前述の「日系企業はなぜプライベートチェーンでプロジェクトを進めるのか」という話にもつながりますが、上場している会社さんほど市場変動性とかトークン購入に対する消費者にとっての価値担保とかを気にしてしまうので、「人気のある既存IPをとりいれたプロジェクト」にすると安全性の面からも、版元さんの嗜好からも、プライベートチェーン化しないと進められない。この点が先ほど申し上げたプライベートチェーンそのものを否定するわけではない、と発したところに繋がりますね。

しかし、そうなると、いわゆる「市場に出ていない」ので外資の投機マネーも入らないし、転売期待値もないので買い手も増えない。本当にファンのなかでより大きく支援したい一部の人が高めのお金をコミットする、という「広がらない」商圏になってしまいがちという状態になる可能性が高くなります。

――:難しいですよね、皆IPは広げたいとは思うけど、今の9割以上のお金が「もっと儲けたい」という投機マネーのユーザーが主体で回している。そこを外して市場化しようとすると、むしろ既にコアユーザーになっている人たちしか気づかないし、二次流通もない単なるコレクションで1万円以上のプレミアムな金額を払っているだけになる。むしろセーフティなようで、このほうがお金儲けに走っているようにも見えるんじゃないか、という気もしてきます。

大手企業がIPをNFT化してますが、まさにその「一部ファンへのデジタルグッズのプレミアム販売」にしかなっていない。コアファンの声が大きいので踏み込めないけど、踏み込まないと広がりもしないしメリットもない。「ファンから見て何のためにやるの?」が正当化できるロジックがないので、大手は皆横並びでほかの挙動ばかりを伺う情勢になってしまっています。


――:この先どうなっていくと思いますか?

日本って右ならえ右の文化なので、いまのままでいくと「永遠のガラパゴスの中で日本内のみのNFTマーケットで小さく深く掌握していく」となるか、もしくは「プライベートチェーンからパブリックチェーンに飛び出して、グローバルにも勝負していくか」の2極化していくなかで、大手が後者に飛び出していけばあとからどんどん追随してくる、とは思いますね。

弊社もそこに先駆けられるようにいくつか進めようとしているNFTプロジェクトもありますし、前述のSUPER SAPIENSSでもNFTのプロジェクトが進行中なので、そうしたところから日本のエンタメから世界に浸透する物が1つでも多くなる様にという意識は持っておきたいなと考えてます。

今NFTとかって特に「お金儲け」とか「流行り」の要素が強い側面はあると思うのですが、ケースによっては経済的なインセンティブの側面が重視されるケースはあると考えつつ、前述した様に既存の大きなIPはそうしたお金儲けに見えることなどを嫌うので色々なプロジェクト毎、あるいはプロダクト毎に1つ1つしっかりと組み立ていくことが根幹であると思っていますし、そうした物が1つでも多く増える世の中であって欲しいなと願います。

 

会社情報

会社名
Re entertainment
設立
2021年7月
代表者
中山淳雄
直近業績
エンタメ社会学者の中山淳雄氏が海外&事業家&研究者として追求してきた経験をもとに“エンターテイメントの再現性追求”を支援するコンサルティング事業を展開している。
上場区分
未上場
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フィナンシェ

会社情報

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フィナンシェ
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