QCPlay社から配信されている『最強でんでん』。本作は6月8日に配信を開始された育成&アドベンチャーゲームであり、クスっと笑えるギャグ要素満載のスマホゲームアプリとして、GooglePlayの無料ランキングでは首位をとるなど、リリース当初から話題をよんでいる。
そんなQCPlay社だが、高品質なオンラインゲームの提供を掲げており、その成功の裏にはThinking Data社の分析ソリューションを活用したユーザー分析が多大に貢献しているという。
昨今の競争激化の中、どのようにして大きな反響を得るようになったのか。
本記事ではQCPLAY社が講演したセミナーを紹介する。同社がどのような考えでゲームを手がけているかをレポートしていく。
世界でヒットした『最強でんでん』を手がけるQCPlay社
まず冒頭にCOOの曾祥朔氏からQCPLAY社のこれまでについて話された。
QCPlay社は2012年に創業されたゲーム会社。世界でもトップレベルのカジュアル放置ゲームを手がけており、これまでに『ダンジョンズ&ガンボル(G&D)』、『アレスウイルス』といった作品をリリース。
“「高品質なオンラインゲーム」の開発を目指して”を掲げており、全世界にタイトルを配信している。同社作品のユーザー数は延べ6000万人を超え、DAUも300万人以上に至るそうだ。
そんなQCPlay社からのヒットタイトルの一つが『最強でんでん』。中国では2018年にリリースがされ、日本でも2022年に配信され話題にも挙がった。
本作は、美少女キャラや豪華声優陣など、最近の流行り要素は一切なしの育成&アドベンチャーゲーム。
主人公のカタツムリこと「でんでん」が、滅亡してしまった地球を救うべく100年前にタイムスリップさせられることから始まる。滅亡前の各国を探索し、弱くて小さなカタツムリから最強のカタツムリへと進化を遂げていくことで、数々の強敵を倒し物語を進めていくことができる。『最強でんでん』に登場する"グロかわ"キャラクターも魅力のひとつ。
ゲーム本編でも課金を推してくるなど、そのシュールな世界観もユーザーから反響を得ている。
しかし、ゲーム自体は自由度の高い放置ゲームとして、カジュアルゲーマーからコアゲーマーまで遊ぶことできる内容になっている。
育成要素や探索要素なども十分に用意されており、ネタゲームと思いきや懐の広い遊びやすいゲームになっている。
曾祥朔氏からはゲームの品質にこだわることを大事にしていると話し、開発と運営の一体化を行うことで、よりスピーディに多元化していくことを意識しているそうだ。
『最強でんでん』のヒットした理由…研究と運用が一体となったチーム体制
曾祥朔氏によれば、創業当初から研究開発部門と運用オペレーション部門は一体化させているそうだ。
事実、『最強でんでん』でも3点のメリットが挙げた。
『最強でんでん』は企画・研究開発チームがプロジェクト開始から2週間でプロトタイプを完成させ、すぐに運用チームがユーザーに提供することで、サービスの反響を検証できたそうだ。
QCPlayでは、テストプレイヤーを外部に委託するのではなく、自社のサービスを利用しているユーザーや公式サイトにいるユーザーにてテストプレイを実施している。
全世界に数十万人のユーザーがいるので、高頻度で長期間のテストも可能になり、リテンションやマネタイズの調整も最適化できると話す。この点も一体化だからこそ実現できる体制のようだ。
2点目に、ユーザーデータからのアルゴリズム設計においても優位性が挙げられた。テストプレイによる検証から、ユーザー規模がどのくらいの規模になるのか、レベルデザインなどもどのくらいの高さにしていくかを推定し、運用チームと研究開発チームが一体となって、設計していくそうだ。
例えば、コアなユーザーではゲームのコンテンツ表現やゲームロジックを注目し、ライトユーザーにはクリエイティブに注目して、コンバージョン率を検証していく。
ユーザーの規模やユーザー層に応じての検証になるが、運用チームと研究開発チームが共に行うことで実現できているようだ。
3点目に、データの目標設定を行うことも重要だと曾祥朔氏は語る。
例えば、ゲームタイトルのデータを測定した後、研究開発チームは、次のテストでゲームをどれくらいの大きさにするか、ARPU値をどれだけ上げるか、決済率をどれだけ上げるか、運用チームは、市場のターゲット、どんなユーザー層を狙うか、年齢層、チャネルがあるかなどをそれぞれ提案するそうだ。
それぞれが目標設定を提案していくことで、最終的には両チームが自然に最適化していくと話した。
適切な判断を下すのに最適なThinking Dataの分析ソリューション
創業時から研究開発と運用の一体化を重視しているQCPlay社だが、どのように分析を行っているのか。
以前は自社で用意した製品データプラットフォームを開発していたそうだが、現在はThinking Data社の分析ソリューションを利用しているそうだ。
その採用の背景では、データプラットフォームにおける研究開発力の限界から、自社プラットフォームでは業務の効率や精度が満たすことができず、Thinking Data社の分析ソリューションを採用するに至ったという。
同社のデータプラットフォームは、社内のデータプラットフォームと比較して、データのフィードバックが早く、データの構造や次元設計が細かく分かれており、比較的多くのユーザーモデルに対応でき、データダッシュボードが使いやすいなど、適時性、利便性に優れていると曾祥朔氏は評価する。
Thinking Data社の分析ソリューションを活用することで、よりデータの精緻化を考えることができるようになったそうだ。
ここで、実際にどのように活用・分析しているかもいくつか紹介された。
まずは、「ユーザーの階層化分析」。ユーザーの階層化のポイントとして、”サーバー”、”ゲーム進行”、”商品選択”の3つに着目しているそうだ。
『最強でんでん』の制作にあたっては、サーバーのプレイヤーの規模を検証結果から合理的に設定した結果、1つのサーバーでのプレイヤー同士の単純なやり取りなどの活動に考慮する必要性があったそうだ。
そこでプロジェクトチームは、本番前にまず2,000人のサーバーと8,000人のサーバーを開いて比較し、さらに4,000人のサーバーと6,000人のサーバーを開いて比較するというテストを行ったそうだ。
この際、費用対効果も考慮しなければいけない。新しいサーバーを導入すれば、追加のサーバー費用が発生するので、その点も加味して、検証比較を行なっていった。
続いて、”ゲームの進行”とは、ある時点でユーザーがどこで、何のために、何人くらいで遊んでいるかを測ることを指す。このデータでは、リリースの進捗管理、キャンペーンの運用調整などに関連するものになる。
最後に”商品選択”では、プレーヤーごとの商品に対する興味を観察し、そのユーザーの嗜好性に応じても層別化していったそうだ。
続いて、「課金ユーザー行動分析」についても触れられた。
有料ユーザーの行動層別化の基本原理はよく知られており、ユーザーのタイプによってニーズやヘイトとなるポイントが異なる。
例えば、重課金者が不満に思っている例では、チャージに時間がかかること、宝箱を買っても使い道のない資源がカバンの中にたくさんあること、といったものが挙げられる。
▲課金やチャージ傾向を表すレポート例
これは、UIフローの全体構造に無理がある、リソースの消費速度が遅く、操作手順が煩雑、消費経路が一元化されていないなどの原因が考えられるので、それに応じて大幅な改修を行っていくようにしているそうだ。
他にも、ユーザーの行動例もいくつか紹介された。
メインクエスト未完了の場合は、なぜ遊べなくなったのか、データを突き詰めて、アイコンを大きくしたり、ヒントを出したりする必要がある。
また、アリーナには勝てないユーザーが多いとした場合、どのように対処するのか。
アリーナコンテンツであれば、バランス調整なども挙げられるが、『最強でんでん』では、アリーナのランキングをそこまで気にしないユーザーが多く、一般的なユーザーもアリーナを気にしていないことが多いそうだ。
そこで『最強でんでん』ではミニゲームを多く加えることで、別の楽しみ方を提案していったという。
ミニゲーム実装当初は、効果的かは不明ではあったそうだ。ユーザー行動データにて遊びが好きだからまずは入れてみたと話す。まずは実装してみて、その後に分析も進めたそうだ。
他にも、デイリークエストについても分析を行い、多くのプレイヤーがほぼ1日15分でデイリークエストをこなしていくことが分かったが、他にも面白い行動をすることがわかったという。
興味のある項目の下にコメントを残して去るユーザーや、デイリークエストをこなした後に、役に立たないアイテムが役に立つというジョークを話し、他のプレイヤーに指摘されるのを期待するなどして、ふざけるプレイヤーもいる。
デイリークエストきっかけに、ユーザー間のコミュニケーションが発生していることが分かったので、チャットチャンネル機能を追加して、プレイヤーのアクティビティを高めることにしたそうだ。
また、分析結果から、プレイヤー毎のゲームの目的も見つけることができたそうだ。
プレイヤーはゲームをそれぞれで楽しんでいるのであって、開発者がデザインしたものである必要はない。自分たちで楽しみをつくるプレイヤーがほとんどだ。
ただ、ゲームの目的の発見は、ユーザー毎に多様であり、追い続けるのは難しい。かつては運用の経験、勘などの担当者の属人性に依存していたが、分析ソリューションによってこのステップが簡易化されることで、データ分析によって新しいプレイヤーの行動を発見し、そこにシステムを順次追加することで、長期的に運用ができるようになったそうだ。
リテンションの観点で言うと、新規ユーザーや初心者のゲーム進行デザインは、各社苦労していることが多い。
ただ、新規ユーザーが継続しなければゲームとして成立しなくなるので、初心者向けのプロセスを用意する必要がある。
プロセス設計は難易度が高い作業だが、Thinking Dataの分析結果からプロセスを設計すれば、その点も容易になると話す。
そして、ゲーム内通貨の消費傾向もデータとして重要だ。
プレイヤーがどれだけゲーム内通貨をストックしているか、どれだけ消費しているか、なぜ使わないのか、といった消費傾向も重要となる
消費のサイクルは、最初にプランナーから設計されるが、実際のプレイヤー動向は、想定モデルと一致しているか検証する必要がある。Thinking Data社の分析ソリューションでは迅速なフィードバックにて検証・修正ができるのも大きいと話した。
ここまでで挙げたように、ユーザー行動と言っても多様なデータがある。これらを正確に的確に活用することがユーザーに高品質なゲームを提供する鍵になるようだ。
ゲーム外の活用にも役に立つ統計プラットフォーム
他にも、ユーザーのコメントやレビューだけではユーザーの真意は測れないとも曾祥朔氏は話す。
ゲームデザイナーは、多くのプレイヤーが感動するような思慮深いデザインを作ることが至上命題だが、実現することは容易ではない。
ユーザーのコメントだけでは偏りがある為、ここでもデータに基づいて迅速に対応し、検証する必要があると話す。
『最強でんでん』は、Thinking Data社の分析ソリューションを活用することで、ユーザー行動などを迅速にフィードバックできるように構築しているそうだ。
▲リアルタイムで確認できるのもThinking Dataの強みだそうだ。
ユーザーコメントに対しても、コメントしたプレイヤーのプロフィールや行動分析を行うことができるという。
ユーザー傾向に応じたカスタマーサービスを提供することも可能にしているのだ。
従来の判断方法だと、多くのユーザーはどのタイプ・傾向に属するのか判断しにくく、カスタマーサービスにおいてもミスコミュニケーションが起こりやすい。
結果、不満を募らせてSNSで文句を言ったりと、ゲームに悪い影響を与えることもあるが、分析に応じたユーザー接客を行うことで、ユーザーの気持ちを高めることができるという。
他にも、統計プラットフォームを活用するメリットはあるそうだ。ゲーム運営以外には財務統計でも活用できるそうだ。
QCPlay社は上場企業になるが、財務統計ではゲーム内のアイテム数や通貨なども精査しなければならない。
アイテムや無償通貨、有償通貨と会計処理は煩雑となる。決算報告に必要なデータもThinking Data社の分析ソリューションにて揃えることができるそうだ。グローバル展開においては、会計処理なども課題になることが多いので、その点も解消できることは大きなアドバンテージになると話した。
最後に曾祥朔氏からは、良いゲームを提供したいのであれば適切なデータが必要となる。邪魔なデータをいかに取り除いてゲーム運営に必要なデータを見つけるかが鍵となる。それには優れた統計プラットフォームが必要になるので、Thinking Data社はその一役を担っていると話し、講演を終えた。