【ハイカジ道】タツマキゲームズ代表・畑佐氏の特別連載「全米一位への道」…第6回テーマは「CPIテスト通過のボーダーラインと判断基準」、『Draw Creatures』のCPIテスト結果も大公開!

畑佐雄大 タツマキゲームズ代表取締役
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第6回:CPIテスト通過のボーダーラインと判断基準

 ハイパーカジュアルゲームを中心に開発やパブリッシングをしている「タツマキゲームズ株式会社」代表の畑佐(はたさ)と申します。さて、全12回の折返しとなる6回目の今回は、これまでお話してきたことの軽いまとめ的な内容で、最初にして最大のハードルでもある「CPIテスト」について、整理していこうと思います!

これまでの内容を踏まえて

 これまでの記事では大きく分けて「企画の出し方」「プロトタイプの作り方」「広告動画の作り方」と、それぞれをつくるうえで気をつけるポイントをご紹介してきました。そしてここまでの内容を踏まえることで、ハイパーカジュアルゲームづくりで最も大切であり、難しいポイントでもある「CPIテスト」を行うための準備が整ったことになります。

 そもそも、ハイカジが革新的な開発手法である理由の1つがこの「CPIテスト」だと思っています。このCPIテストは、またの呼び名を「スケーラビリティテスト」と言ったりもしますが、つまりはこのゲームがスケールするポテンシャルがあるかどうかヒットの可能性が高いかどうかを測ることが目的なわけです。

 これまでのゲーム開発ではプレイヤー向けにオープンテストを行うことはもちろんありますが、基本的にはイケる・イケないの判断をディレクターやプロデューサーといった「人間」が、最終的にはその「感性」で行なっていました。ハイパーカジュアルではそのイケる・イケないを少ないコスト(プロトタイプ)で、ほぼ正確に測る(CPIテスト)ことによってイケるタイトルだけをきちんとつくり込むという開発の進め方ができるようになりました。逆にいえばこのCPIテストを正しく行えていないのであれば、ハイカジのメリットをうまく享受できていないともいえるのです。

なぜCPIを低くしないといけないのか?

 ハイカジでは低いCPIを出すことが最重要だとよく言われますが、なぜそもそもそれを出さなければならないのでしょうか?前提としてCPIが低くないと、広告収益との釣り合いが取れないというのも、もちろん理由としてあります。ですが最初のテストで低いCPIを出すことの本質は少し違っていると思っていて、実際に測っているのはどれだけ多くの人にウケるかどうか?なのではないかと考えています。その「ウケるかどうか」を数字で表したものが、CPIテストにおける「CPI」なのです。

 少しだけざっくりと仕組みの話しに触れると、Meta(Facebook)広告では広告のパフォーマンス(クリック率など)によってCPIが自動的に決まってきます。つまり良い広告、沢山の人が興味を持ってクリックやインストールしてくれた広告であればあるほどCPIが下がっていくのです。言い換えれば低いCPIが出るタイトルは多くの人が反応してくれる広告ということになるので、大々的に回したときに大きくスケールする可能性がある、ということであり、本質的にはそれを測っているのがCPIテストになります。

 意識の違いではありますがこれを認識しておくと、機械的に低いCPIを目指し続けるという無味乾燥なものではなく、その先には反応してくれるプレイヤーがいるという、血の通っている感覚を感じられるかもしれません。

目指すべきCPIの基準は?

 パブリッシャーによって少し異なりますが、AndroidでUSマーケットであれば$0.4というのが1つの基準になってくるかと思います。もちろんこれよりさらに低いCPIがいきなりでることもありますし、低いに越したことはないのですが、逆にこれよりやや高い場合でもタイトルによってはイケたりします(といっても$0.6くらいまで)。

 可能性の有りそうなCPIが出たら、その後は継続率やプレイ時間なども含めてローンチするかどうかを決めていくのですが、まずはとにかくCPIがある程度低くないとスタートラインにすら立てないので、とにかく最初のうちは最速でCPIだけにフォーカスして、テストを回し続けることを意識しましょう。


▲とにかく最速でつくり続けるのみ!

他に気にしたほうが良い指標はある?

 あるにはあるのですが、大前提として最終判断はCPIで行うということを認識しておいてください。「CPIはそんなに良くなかったけどクリック率が他より良かったからもう少しやってみよう…」などと判断の軸を増やしてしまうと、基準がボヤけて可能性のないタイトルに時間を浪費してしまうことになりかねませんので…。

 タツマキゲームズでは「媒体ごとのクリック率(CTR)」と「ストアコンバージョン率(CVR)」をCPIの他にチェックするようにしています。CTRは広告界隈ではよく出てくる指標の1つですが、注意してほしいこととしては「媒体によってクリック率が全く異なる」ということです。Meta広告では自動配信にすると、主に「Facebookニュースフィード」「Instagram」「Audience Network」の3つの媒体に広告が振り分けられて配信されるのですが、それぞれでCTRが大きく異なるので、CTRをチェックする際は必ず媒体別にデータを分けて確認するようにしましょう。ちなみにそれぞれの媒体の特性と、このくらいのCTRがでると、比較的良いCPIもでやすいな〜という値は以下のようなところかなと思います。

●Meta Audience Network
L 他のゲーム内に出る広告面
L ゲームを遊んでいる人に主に見られることになる
L CTRは13~15%くらいあると良い

●Facebookニュースフィード
L Facebookのタイムラインに出てくる広告面
L Facebookユーザーが見ることになる
L CTRは8~10%くらいあると良い

●Instagram
L Instagramのタイムラインに出てくる広告面
L Instagramユーザーが見ることになる
L CTRは3~4%くらいあると良い

 2つ目のストアCVRはデフォルトでは設定されていない指標になるのですが「インストール数/クリック数」から求められる数字になります。噛み砕いていえば「広告をクリックしてストアに飛んだあと、どれだけの人がインストールしてくれたか」というものですね。これはなにかの基準として使うというよりは、テスト中のアプリに不具合がないかどうかを見ているという側面が大きいです。この値は大体40~70%ほどに落ち着くのですが、まれに10%のような極端に低い数字がでることがあり、そういったときはアプリが起動時にクラッシュしてしまっていてインストールの計測ができていないような不具合が発生していたりします。ストアのスクリーンショットや説明文を変えてこの値を何とか上げよう、というものではなく、そういった不具合検知のために参考としてみているようなものになりますので、よかったら使ってみてください。(この段階でストアをあまりイジってもほぼ効果がないんです…。)

追うか追わないか、自分ルールを決めておこう

 CPIテストをやっていると必ず直面する問題。もう少し追うか、ここで止めるか。見込みの薄いものをきっぱり止める!というのがハイカジの開発手法で大切なところというのはお話しましたが、とはいえ気合を入れてつくったプロトタイプですしもう少し粘りたいなという気持ちも痛いほどよくわかります。

 タツマキゲームズではCPIテストの基準は$0.4ですが、それよりももう少し幅を広げた独自ルールを設定しています。大まかにお伝えすると「CPIが$0.7以下なら最大2回まで再テスト」「$0.7以上ならきっぱり諦める!」というものです。これまでの経験上、プロトタイプの段階で広告動画を作り変えることによって最大で20~30%ほどCPIが改善したことがあったため、$0.7以下であればもう少し見せ方を工夫することで基準値を目指せる可能性があると思っているからです。ただし再トライも2回まで。2回やってもダメならきっぱりと止めて次に進みます。

 逆に言うとCPIの8割はプロトタイプのもつコンセプトで決まっていて、いくら広告動画でこねくり回してもどうしようもならないとも考えています。$0.7以上の結果が出たプロトタイプでどうしても諦めきれない場合は、芯となるコンセプトは維持したまま、別のプロトタイプとして作り変えて再テストをしたほうが効率的です。

 このように明確な数値でボーダーラインを設定しておくことによって、ズルズルと可能性の薄いタイトルに時間とコストを注いでしまうということを防ぐことができるのでオススメです。


▲実現性のない指標を追い続けないようにしよう。

弊社タイトルのテスト結果を大公開!

 最後に、せっかく私が書かせて頂いている記事なので、弊社でローンチしている「Draw Creatures」についてCPIテストを行なった際のデータを大公開しちゃいたいと思います。

テスト期間 4日間
動画の本数 7本
テスト予算 1日 $80
CPI推移 初日 $0.56 → 2日目 $0.34 → 3日目 $0.27 → 4日目 $0.27
インストール率 9.15%
ストアCVR 69.33%
CTR 13.13%(Audience Network)

今回のまとめ

 すでにCPIテストを行われている方なら感じていると思いますが、最初は「おいおいホントに$0.4とか出るのか!?」って感じですよね(笑)ものすごく分かります、その気持ち!最初は私自身もそうでした。

 でも大丈夫です。良いプロトタイプ、良い広告動画は必ず良い結果がついてきますし、諦めないでしっかりと考えながらサイクルを回し続けることで、一歩ずつ確実にテスト通過に近づいていきますので、頑張っていきましょう!私自身もまだ色々な情報を集めて、模索している真っ只中ですので、引き続きハイカジに興味を持っていただいている皆様に有益かつテンションの上がる情報をお届けしていきます!

メールやDMはお気軽に!

 タツマキゲームズではハイパーカジュアルのあらゆるご相談をお受けしております! ハイカジに興味を持ったり始めてみようかなという人を増やしたいと思っていますので、まずはお気軽にメールやTwitterでご連絡ください。この連載で書いてほしい内容なども大歓迎です。ホントに何でも聞いてください、包み隠さずお伝えします(笑)

メール:info@tatsumaki.games 
Twitter:ハタサ@タツマキゲームズ(@noots_87

次回予告

 次回はまだ内容未定なのですが、少しこれまでと変わった内容で掲載したいなと考えております。お楽しみに!

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