インフォコム、「めちゃコミ」広告強化で2ケタ減益も過去最高売上 注力中のオリジナル作品のIP化と運用次第で"踊り場"からの脱出も

木村英彦 編集長
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インフォコム<4348>の2023年3月期の連結決算は、売上高703億4200万円(前の期比8.9%増)、営業利益85億2600万円(同15.6%減)、経常利益85億9500万円(同15.7%減)、最終利益35億7200万円(同48.3%減)だった。過去最高の売上を記録したにも関わらず2ケタの減益着地となったが、これは稼ぎ頭である電子コミック配信サービス「めちゃコミック」関連のマーケティング費用などが影響したとのことだった。広告投資を増やしたことでユーザーを増やし、売上を増やしたわけだ。

 

■収益成長を牽引した「めちゃコミック」

「めちゃコミック」は、ガラケー時代の2006年11月より提供している電子コミックサービスの老舗だ。スマートフォンの普及を背景に電子書籍・電子コミックス市場が大きく成長したが、その市場成長に対応するかのように「めちゃコミック」も売上・利益ともに大きく伸びた。「漫画村」騒動など海賊版サイトの影響も少なからず受けた時期もあったが、ここ数年の売上・利益拡大の牽引役になった。

 

「めちゃコミック」は、他社の作品の配信を行ってきたが、ここ最近は、他社サービスとの差別化や海賊版サイトへの対応、他社作品よりも高い採算性などから、オリジナルコミックを強化している。オリジナルコミックで複数のヒットが生まれ、売上アップにつながった。さらに作品のドラマ化などコンテンツの横展開も行った。自前の「IP」の保有・運用という点からも大きな意味を持つ取り組みだ。

さらに、料金体系も大きな変更を加えた。従来の月額課金に加えて、利用料に応じて料金を徴収する従量課金制も導入した。これは利用した分だけ支払いたいというニーズに対応したものといえ、売上の拡大に貢献するものになったようだ。サービスが気に入り、ヘビーユーザーになれば、月額課金への移行を促す考え。

 

このほか、海外市場を取り込むため、韓国においてはウェブトゥーンプラットフォーム「Peanutoon」に加えて、米国電子コミック配信サービスも開始した。海外事業の売上は順調に拡大しているものの、国内の売上にくらべると収益貢献はまだまだ小さい。

 

 

■システム開発は医療向け苦戦も企業向けが堅調

同社は、帝人のグループ会社なのだが、帝人グループを中心に企業向けのシステム開発も行っている。コロナ禍の影響により投資マインドの冷え込みやハードウェアの納入遅延が発生し、病院向けは案件の期ずれが発生したものの、企業向けが堅調に推移し、増収増益を達成したという。

医療機関向けでは、2024年度から適用する「医師の時間外労働規制」に対応したオプション機能を追加した病院向けの就業管理システムの販売が堅調だった。海外展開ではマレーシアのヘルステック企業HealthMetricsと戦略的資本・業務提携契約を締結し、同社と共同でマレーシア・インドネシア国内の医療機関等に対し、薬剤情報システムの営業・販売活動を開始した。

他方、企業向けでは、統合業務ソフトウェアパッケージ「GRANDIT」のクラウドサービス「GRANDIT miraimil」の販売パートナーの増強を行い、幅広い業種に対する販売・サポート体制を構築した。

 

■2024年3月期の業績見通し

2024年3月期の業績は、売上高780億円(前期比10.9%増)、営業利益95億円(同11.4%増)、経常利益95億円(同10.5%増)、最終利益64億円(同79.2%増)、EPS116.82円と増収増益を見込む。電子コミックと、ヘルスケア領域を中心に拡大を想定しているそうだ。

電子コミック領域については、以前のような大きな成長は見込めないものの、市場環境としては緩やかな成長が続くと見ている。利益は増益を見込んでいるが、業績推移を見る限り、これまでの継続的な成長局面から"踊り場"に入ったように見える。

   

■IP創出の取り組みとしてのオリジナル作品

今後の成長を左右する要素として、電子コミックに関しては、自社オリジナル作品を「IP」としてどれだけ運用できるかどうかがポイントになるだろう。同社も「めちゃコミック」においてオリジナルコミックスの制作・配信を強化するだけでなく、その運用に注力するなど、IP創出により意識的に取り組んでいるようにみえる。

ドラマ化などの横展開が大きな例だが、さらにアニメ制作会社ツインエンジンとの資本業務提携も発表した。当面はオリジナルコミックスのアニメ化がメインになるだろうが、いずれは実写映画化やゲーム化も視野に入ってくることだろう。海外市場での取り組みと合わせてIP化への取り組み次第では、中長期的にも大きく伸びる可能性がある。

ここ数年、一部ゲーム各社は、自前のIPを創出し、ゲームをはじめとする各メディアで展開することで収益拡大を図る戦略だが、その出発点として取り組んでいるのがライトノベルやコミックなどいわゆる出版領域だ。ガラケー時代から取り組む同社にはこの領域で一日の長がある。

インフォコム株式会社
https://www.infocom.co.jp/ja/index.html

会社情報

会社名
インフォコム株式会社
設立
1983年2月
代表者
代表取締役社長CEO 黒田 淳/代表取締役 竹原 教博
決算期
3月
上場区分
東証プライム
証券コード
4348
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