老舗の成長企業コーエーテクモ、わずか4年で売上2.1倍、営業利益3.2倍増を達成 パッケージからモバイル展開まで高収益を生み出す好循環

木村英彦 編集長
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コーエーテクモホールディングス<3635>の2023年3月期の連結決算は、売上高が前の期比7.8%増の784億円、営業利益が同13.3%増の391億円と、いずれも過去最高を更新した。クレディ・スイス・グループの永久劣後債などで損失計上した影響で経常利益と最終利益はそれぞれ減益となったものの、売上・利益の多くを稼ぐ本業のエンタテインメント事業(ゲーム事業)が引き続き好調だった。

 

■大型タイトル好調、モバイルも高収益を獲得

看板のパッケージゲームをみると、売上高が15.7%増の375億円と2ケタの伸びだった。エレクトロニック・アーツ社と共同で開発・販売を行った『WILD HEARTS』や、「三国志」をテーマにしたダークアクションRPG『Wo Long: Fallen Dynasty』といった大型タイトルが好調だった。『Wo Long: Fallen Dynasty』については先に出荷本数100万本を突破したとのアナウンスが出されている。

このほか、『ライザのアトリエ3 〜終わりの錬金術士と秘密の鍵〜』が全世界29万本の販売、『零 ~月蝕の仮面~』が12万本、『Winning Post10』が10万本を販売し、それぞれ貢献した。バンダイナムコエンターテインメントとの協業タイトルとして『ウルトラ怪獣モンスターファーム』なども発売となった。

 

地域別のパッケージゲームの販売本数を見ていくと、同社の海外での強さが目立つ。売上については、日本と海外はほぼ同水準だが、販売本数で見ると国内が微増の295万本だったのに対して、海外が27.9%増の669万本と倍以上だった。海外の地域別内訳は、北米が285万本、欧州が157万本、アジアが227万本とバランスの取れた売上構成となっている。

 

また、パッケージゲームと並ぶ収益規模に成長したモバイルゲームは、同0.5%減の352億円とほぼ横ばい(微減)だった。アリババにライセンス供与した『三国志・戦略版』が中国本土を中心にアジアで引き続き人気を博したほか、『信長の野望 覇道』がApp Storeトップセールスで5位に入るなど新作が貢献し、第4四半期では初の四半期100億円の大台に到達した。ここ最近は停滞感が出ていたが、再び大きな伸びを見せた。

  

■パッケージからモバイル・コラボタイトルまで好循環を生む重層的展開

ここで少し視点を変えると、2019年3月期との比較でみると、同社の高い成長ぶりがうかがえる。売上高は389億円から784億円と2.1倍、営業利益は120億円から391億円と3.2倍に驚異的な伸びを見せた。SwitchやSteamなどの世界的な普及・拡大や巣ごもり需要といった市場環境に加えて、同社のライセンス供与したモバイルゲームが中国を中心としたアジア圏で大ヒットしたことが大きい。

 

モバイルを中心とするオンラインゲームの収益は、2019年3月期で109億円だった売上が2023年3月期では352億円まで伸び、パッケージと並ぶ規模に成長した。アリババにライセンス供与した『三国志・戦略版』が中国本土を中心にアジアで大ヒットしたことが大きい。自社開発に比べて採算性が高い上、市場規模が大きいこともあって収益に与えた影響は絶大だった。

他方、パッケージゲームも大きく成長した。2019年3月期において227億円だった売上高は375億円と1.6倍に伸びた。信長の野望や三國志、Winning Post、真・三國無双、戦国無双、アトリエなど人気シリーズ作品の展開に加えて、無双シリーズと他社IPとのコラボ展開、仁王シリーズなどの新規IPの創出も行うなど大きな成功を収めている。

 

パッケージゲームで創出・育成したシリーズ作品をヒットさせるだけでなく、それらを「IP」として、モバイルゲーム展開や、他社IPとのコラボタイトルなどで大きな収益を生む好循環ができている。出発点となるパッケージゲームの開発力強化に加えて、IP事業部や中国上海の拠点設立などライセンスビジネスの強化も進めており、この好循環をさらに磨いていく考えだ。

  

■2024年3月期は新作開発などで営業減益を見込む

続く2024年3月期の業績は、売上高950億円(前期比21.1%増)、営業利益375億円(同4.2%減)、経常利益405億円(同1.5%増)、最終利益310億円(同0.2%増)、EPS98.40円と増収・営業減益を見込む。営業外損益が改善するため、経常利益と最終利益はプラスを見込む。営業外収支については30億円程度のプラスになると見込んでいるそうだ。中間期の見通しと比較すると、下期に寄った予算となっている。

 

同社では、協業タイトルや自社モバイルゲームの開発費やマーケティング費用、サーバー費用の増加などが響く、としている。またIP許諾に関連したライセンス収益はほぼ前年並みを見込んでいるとのこと。

現時点で発表されている新作タイトルは以下のとおり。

・『信長の野望 出陣』
・『ドラゴンクエスト チャンピオンズ』
・『マリーのアトリエ Remake~ザールブルグの錬金術士~』(2023年7月発売予定)
・『信長の野望・新生 with パワーアップキット』(2023年7月20日発売予定)
・『Fate/Samurai Remnant』(2023年発売予定)
・『Rise of the Ronin』(2024年発売予定)

 

コーエーテクモホールディングス株式会社
http://www.koeitecmo.co.jp/

会社情報

会社名
コーエーテクモホールディングス株式会社
設立
2009年4月
代表者
代表取締役会長 襟川 恵子/代表取締役社長 襟川 陽一
決算期
3月
直近業績
売上高784億1700万円、・営業利益391億3300万円、経常利益398億9900万円、最終利益309億3500万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3635
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