paiza、「プログラミング言語に関する調査(2023年版)」を実施…平均年収が高い言語、転職で企業ニーズが高い言語とは

「paiza(パイザ)」を運営するpaizaは、paiza登録者のITエンジニア、プログラミング学習者を対象に「プログラミング言語に関する調査(2023年版)」を実施した。

※調査方法:2022年および2023年の「paizaスキルチェック*」のうち、本調査ではランクが測定できるテストのみを抽出。その受験回数を言語別に算出し、ランキングを比較。(社会人2022年:N=57万2008、社会人2023年:N=61万8545、学生2022年:N=32万6107、学生2023年:N=39万6204)

 

 

■社会人の学習で人気が高い言語ランキング

社会人における学習で人気が高い言語は、Python、Java、JavaScript、C#、PHPで昨年とほぼ変化がない。Pythonは、サーバサイド言語としてシステム管理やツール・アプリケーション開発、科学技術計算、Webシステムなどで広く利用されている。特に、2010年代ごろからの機械学習ブームでは、優れた科学技術計算ツールとして評価され、大きな人気を得ている。またPythonは「読みやすさ・分かりやすさ」を重視した言語で、初学者でも学びやすく、社会人、学生ともに人気だという。

Java、PHP、C#は、いずれもサーバサイド言語で、企業の開発現場で広く用いられており求人数が多い言語。現場でのニーズの高さが社会人の学習意欲を高めていると考えられる。JavaScriptは通常フロントエンドで用いられることが多い言語だが、JavaScriptのライブラリであるNode.jsを使うことでサーバサイド言語としても利用ができる。Webサービスの開発であれば、フロントエンド側でJavaScriptはほぼ必ず使われるため、サーバサイドエンジニアにも学習ニーズが高い。

 

■学生の学習で人気が高い言語ランキング

学生の学習でも社会人同様PythonとJavaは人気が高いものの、昨年と同じく学生ではC++やC#、C言語が社会人よりも人気。Python、Java、C言語は学校の授業で使われることが多い言語。C++はゲームエンジンのUnreal Engineでの開発に使われたり、他の言語と比較して、処理速度(実行速度)が速いため競技プログラミングでよく使われる。C#はゲームエンジンのUnityでの開発で使われる。ゲーム開発や競技プログラミングを行う学生が多いなかで、こうした言語が人気を集めているよう。

 

※「転職で企業からニーズが高い言語ランキング」(言語別求人数比率)調査方法:2022年、2023年に「paiza転職」で掲載した求人票に占める各言語の割合を集計(2022年延べ求人票掲載数:3万1699件、2023年延べ求人票掲載数:2万0857件)、言語別求人数比率に従いランキングを作成

 

■転職で企業からニーズが高い言語ランキング

調査結果を見ると、企業ニーズが高い言語は1位からJavaScript、Java、PHP、Pythonで、社会人の学習における人気言語と実務で企業のニーズが高い言語はほぼ一致していることが分かる。また2022年との順位比較で企業ニーズが高まっているのが、Python(5位⇒4位)、TypeScript(8位⇒5位)。

TypeScriptは、ニーズの高いJavaScriptを拡張してつくられたプログラミング言語。JavaScriptの上位互換言語(JavaScriptにあるものを全て含んだ上で、より機能が拡張されている上位互換となる言語)。JavaScriptの知識があればそのまま利用することができ、JavaScriptの従来機能および追加機能(省略も可能な静的型付けやクラスベースオブジェクト指向など)が使える。JavaScriptで大規模アプリケーション開発するうえでの欠点を補う言語となっているため、近年、利用する企業が増えている言語。

これらの言語の人気の高まりに押され、C#は二つ順位落とし4位⇒6位、Rubyは一つ順位落とし6位⇒7位、C++は一つ順位を落とし7位⇒8位となっている。

 

※「転職における言語別の平均年収」の調査方法 :2021年~2023年のうち、2年以上「paiza転職」に掲載した企業の求人票に記載した年収を言語別に集計し、記載年収の中央の値(年収600万円~800万円と記載されている場合は700万円)に基づき平均を算出(2023年調査対象の延べ求人票数:1万3995件)
※基礎知識保有者の比率とは :paiza登録者のうち、該当する言語について実務経験もしくはpaiza内外で学習経験のある人材を各言語の基礎知識を持つ人材と設定。登録者のうち、各言語の基礎知識を持つ人材が占める割合を算出

 

■転職における言語別の平均年収ランキング

言語別の平均年収は全般的に上昇しており、全言語平均で23.2万円程上昇している。ITエンジニア不足の影響が年収高騰にも影響していることが読み取れる。なかでもGo言語(+51.5万円)、Sass(+54.8万円)、Perl(+91.5万円)の上昇が目立つ。

Go言語はシンプル、高速、メモリ効率が良い、メモリ破壊がない、並行処理が得意などの特徴を備えており、IoT、基盤技術、大規模システム、高速なキューイング処理などの開発に向く言語。そのため求人数比率(「転職で企業からニーズが高い言語ランキング」参照)が4.0%とまずまずのニーズがあるが、「各言語の基礎知識保有者の比率」を見ると分かる通り基礎知識保有者が少ない(13位2.1%)ため平均年収が高まったと考えられる。

SassはCSSを拡張して、書きやすく、見やすくしたスタイルシート言語(Sassは厳密にはプログラミング言語ではない)。従来のCSSにデザイナーやプログラマーが抱いていた不満を解消するスタイルシート言語で、主にWebサービスを手掛ける企業での導入が進んでいる。フロントエンドの技術者はニーズに対して人手が圧倒的に足りておらず(「基礎知識保有者の比率」14位1.7%)、平均年収が高騰しているとのこと。

Perlの平均年収高騰は、企業での利用が減った技術で基礎知識保有者の割合も少なく、平均年収が高騰した可能性が考えられる。ただし、Sass、Perlとも求人数比率が0.7%と極めて低く、個社の影響が大きく誤差も大きいと考えられる。

一方で、ScalaやC++は2022年と比べ平均年収が各15.0万円、10.3万円と下がっている。C++は2020年から比較すると54.8万円も下がっている。理由としては、C++の場合、基礎知識を持つ社会人の数が比較的少なく(「基礎知識保有者の比率」7位12.0%)採用が難しいものの、学習経験者は多い(学生の学習人気言語4位)ため、経験が浅い若手人材の採用が進んだ結果、平均年収が下がったのではないかと考えられる。

Scalaの平均年収が下がっている要因は、求人数比率が0.7%と極めて低いため個社ごとのブレの影響が多く出たものと思われる。

 

■調査結果の全体まとめ

・「転職における言語別の平均年収」は、全言語平均で23.2万円程上昇した。前回調査の10.6万円に引き続いてさらに上昇しており、ITエンジニア不足による年収の上昇が引き続きみられる。
・言語の平均年収については、企業から一定のニーズがあり、かつスキル保有者が少ない言語の年収が高くなる傾向がある。ITエンジニアの給与には人材の需給バランスが大きく影響していると言える。
・社会人の学習で人気が高い言語は、求人企業ニーズと合致している。有利な転職、社内での年収アップや業務上の必要性から学習に取り組んでいるものと考えられる。
・学生の言語学習では、学校で習う言語や研究で使う言語、またゲーム開発や競技プログラミングで使われる言語が学ばれる傾向にある。
・企業は、特定の言語スキルを持つ人材の採用が難しい場合、応募に必要な経験年数を3年から1年に減らすなど採用条件を広げる傾向にある。企業の採用活動は外部環境にも左右される。