【インタビュー】誇りを持ってユーザーと作品に向きあう開発スタジオでありたい…新生G2 Studiosが掲げる新体制 代表久保氏が語るその狙いとは

去る3月末に、スマートフォン向けゲームの開発をおこなうG2 Studiosの全株式をTHE FIRSTが取得したと発表された。

G2 Studiosと言えば、260名近い人員を擁するゲーム開発会社で、『アイドリッシュセブン』(配信元:株式会社バンダイナムコオンライン)、『僕のヒーローアカデミア ULTRA IMPACT(配信元:株式会社バンダイナムコエンターテインメント)』など、多数の開発実績がある。一方、THE FIRSTも非公開ではあるが、数々のゲーム運営実績を有しており、今回の体制変更に至ったとリリースでは説明されている。

本稿では、THE FIRSTの代表でもあり、G2 Studiosの代表も務める久保氏と、両社の取締役を兼任する佐藤氏にインタビューを実施。今後の展開や新体制の狙いについて話を聞いてみた。


――:まず初めに久保氏や、THE FIRSTの会社についてお教えいただけますでしょうか。

久保:よろしくお願いします。THE FIRSTという会社は、元々は非IT領域における請負・派遣事業をおこなうグループ会社の1つでしたが、2022年より現在のIT事業を立ち上げました。具体的にはDXコンサルティングやシステム部門のアウトソーシング、IT人材の派遣、そしてゲームをはじめとするエンターテインメント分野でのサービス開発・運営をおこなっています。

私自身は新卒でコンサルファームに入ったのち、2015年にゲーム運営に特化したスタートアップ企業にM&A担当で入社したという経緯があります。そこでは、オンラインゲームのセカンダリーという概念が一般化されていない中で、様々なゲーム会社様との運営移管やM&A、資本業務提携等のプロジェクトをおこなっていました。結果としてM&A担当役員として、数十億円規模のM&Aも含め、40タイトル以上の移管・M&Aを推進し、同社の中核人物として東証一部上場を経験することができました。

そこからしばらくはゲーム業界から離れて起業し、事業開発力とファイナンスを強みに、IT系を中心としたM&A支援や管理部門の人材紹介事業の起業、製造向け人材派遣、請負会社の承継などで事業を拡大してまいりました。

その過程で、クライアント企業様から、システム開発運用の支援について非常に多くのご相談を受けたことをきっかけに、2022年よりIT事業を本格的に立ち上げようと動き出しました。そこで過去に一緒に働いてくれていたメンバーや、お客様の応援もあり、立ち上がったのが今のTHE FIRSTです。

上述しましたが、THE FIRSTではDXコンサルティング、システム開発、ITアウトソーシング、エンターテインメントといったサービスを展開しております。

その中でも、今回のG2 Studiosに直接的に関連するエンターテインメント事業においては、非公開ではありますが、大型タイトルの国内および英語版の運営を多数おこないながら、現在も事前登録中のアニメIP作品の国内と英語版の運用案件でのリリース準備をパブリッシャー様と密接に連携しながら進行しています。

―:ありがとうございます。3月にG2 Studiosの新体制のニュースも話題になりましたが、こちらの経緯についてもお聞かせいただいてよろしいでしょうか。

佐藤:THE FIRSTは創業から2年間で70名程に成長してきました。事業別にはゲーム分野とそうでない分野でそれぞれ半々ぐらい(ゲームで40名前後)のチームで展開しています。代表の久保としても、大きな組織への拡大を目指すこともなく、よく知った仲間同士で良い仕事をしっかりしていければと考えていました。

そんな中、G2 Studiosから昨年秋に私が相談を受けたことが今回のきっかけでした。

親会社の経営陣とは旧知の仲で、どのようにゲーム事業と向きあっていくのか、また今後の体制についても悩まれていました。

G2 Studiosは我々よりもずっと規模が大きく、すでに動いているクライアントとの案件も多数あり、とても中途半端に引き受けられる相談ごとではないと認識しました。

両社が一緒になった場合は、一気に300名規模のチームになるわけで、僕らだけでどうこうではなく、G2 Studiosのメンバーと一緒になって強い組織へ変化し成長していけるのかを考えるようになりました。

――:そこから新生G2 Studiosになっていくようになったと。

佐藤: もちろん声がけがあった企業は他にもいたようでしたが、THE FIRSTが一緒になって目指していきたいことを昨年末にプレゼンし、G2 Studiosの成長にとって一番良い選択肢になるかで評価してもらった、とは伺いました。

――:どういった点が今回の体制に至ったとお考えでしょうか。

久保:THE FIRSTの特徴としては、これまでお取引させていただいている企業様からは良い伴走者として評価をいただき、ほぼ全てのお客様から継続して仕事の依頼を頂けていることです。

小回りが利いて、自分たちの仕事に誇りを持って取り組み、ロングテールで顧客とのWinWinな関係を築くことを重視してきたため、「彼らに頼めば、一緒になって伴走してくれ、絶対に期待値以上の結果を出してくれる」と信頼していただけることが多いんです。

なぜそんな評価を受けているのかというと、THE FIRSTの方針として、自分達もお客様も、関わっている人たち全てが楽しく誇りを持って仕事をできることを重視する価値観で事業に取り組んでいるからだと考えています。

当然会社としての適正な利益や財務状態を意識した経営管理はおこなっていますが、外部資本もなく未上場であるため、右肩上がりでの成長の必要性や、いくら以上の利益が絶対に必要といった制約はありません。それよりもステークホルダーに、より高い付加価値を提供するために注力する、この文化はG2 Studiosの新体制でも重視していきたいです。

――:ゲーム開発における考えにおいて、それぞれの考えがマッチしたと。

佐藤:加えて、取り組んでいる作品に対する想いでも両社は共通していました。

新規で開発している4タイトル(両社併せて)は、どれも国内外に作品のたくさんのファンがいて、ユーザーに対してより良いゲームを作っていこうと考えています。ファンの方々が求めるものを、ゲームを介して提供して満足してもらおうというのが、これまでずっとやってきたことですし、それを丁寧にやっていけば結果が伴ってくるのではないかと考え、進めています。

久保:アニメIPのゲーム化という分野で、国内No.1を目指そうと本気で考えています。

No.1というのは大ヒットタイトルで叶えるのではなく、我々が取り組むどのタイトルでも着実に結果を出して期待に応えられるスタジオになることで、信頼度をNo.1にしていきたいと考えています。THE FIRSTとG2 Studiosのそれぞれの強みや実績を活かせれば、充分に狙えるものではないかと。

佐藤: 昨今、ゲームのみでなくアニメの制作コストも上がっており、アニメの製作委員会を組成するうえで、ゲームからの収入がないと成立しない案件も少なくありません。パブリッシャー様の多くが、アニメ化の提案の際にはゲーム化も視野に、もしくはセットにした提案を版元から求められるようになったとも聞いています。

今後、良いアニメが生み出されていく傍らで、伴って良いゲームも作れるような仕組みや体制がないといけない時代になっていると思いますし、それに応えられる存在になっていきたいと考えています。

久保:仕掛型でのプロジェクト組成も当然ですが、昨今では、様々な理由で開発を中断したプロジェクトからの引き合いも多く、そういった際にお声がけをもらえるような「欠かせないポジション」を作れるんじゃないかという感触があります。

また最近では、海外のゲームデベロッパーが日本のアニメIP作品のゲームを開発することも増えてきていますが、やはり国産のゲーム会社として、よりグローバルにやっていける会社として頑張っていきたいと思います。


――:現在、G2 Studiosにて運営しているタイトルについては、どういった展開になるのでしょうか。

佐藤:大前提として、G2 Studiosで携わっている既存タイトルは、より良い運営を目指しつつ大切に継続していきます。新規タイトルを作ることももちろん大事ですが、すでにユーザーがたくさんいて、そこに対してゲーム運営という仕事ができることは貴重でありがたいことです。

新規作品を出してもユーザーが全然集まらないこともある中で、G2 Studiosの作品を長く遊んでいただいているユーザーの皆様への感謝は尽きません。関わっているメンバーに対しても、頑張った成果が反響として得られますし、より良い仕事をしたメンバーを会社としても評価したり、運営に対するポジティブな姿勢も今後強くしていきたいです。

久保:より一層お客様に対して真面目に向き合っていき、そういった想いが込められるような組織にしたいなという考えはあります。「長く続けていくことが評価される」ことが正しいという価値観も大事にしたいです。というのも、本質的には開発フェーズで利益を出そうとは思っていないんです。

――:とおっしゃいますと?

久保:開発会社というのは、依頼されて受託した成果物をきちんと開発することでその対価を受け取り、利益を出していくのが通常のビジネスです。しかし昨今のゲーム市場の状況も踏まえると、開発で利益を出すことを優先しては事業を継続する上で早々に行き詰まると思います。

極端な話、我々は開発会社でありながら開発で利益は出さず、リリース後にユーザーにプレイしてもらって初めて、利益が出るビジネス構造になっても良いと思っています。その方がパブリッシャー様と一緒に同じ方向を向くことができ、プロジェクトの成功確率がより高まると考えています。

もちろん、開発や運営で赤字になりたいわけではありません。

しかし開発で儲けようという考えではなく、良いサービスを作って長く運営を続けていくことに価値を置いていく、この意識が全社に浸透し、みんなでより良いサービス作りに向いていけるようにしていきたいです。

――:ちなみに採用強化もされているとのことですが、どういったチームにしたいとお考えでしょうか。

佐藤:常にユーザーと作品(含む原作の方々)に向き合って仕事するチームでありたいです。

キャラクターの魅せ方やストーリー表現、ゲーム全体の遊びやすさや性能、また演出やUIといった作品表現など、普遍的な開発力としてプロジェクト横断で強化していかなければならない課題は山積みです。ただそれだけでなく、ユーザーと作品の想いを常に自問しながら柔軟にアプローチできるチームになっていきたいと。

佐藤:新作のスマートフォン向けゲームを開発する会社は減ってきたと感じる一方で、G2 Studiosでは4本の新規タイトルに取り組み、たくさんのユーザーに遊んでいただいている運営タイトルも複数あり、非常に恵まれた環境にあります。一つ一つを丁寧に、2〜3年後に先ほど申したような「ここに相談したらユーザーに対して良いものを作ってくれる」スタジオになれたら良いなと思います。

久保:あとは作品に対する尊敬、ファンがゲームに期待することへの理解、自分たちの仕事に対する誇りでしょうか。その気持ちがないと、作品関係者やファンの感情を動かすことはできないと思います。 

デジタルサービスが普及し、様々な形でエンターテインメントが提供される現代では、昔に比べてユーザーの楽しみ方も多様化し、嗜好性の変化も早くなっています。必然的にゲーム単体での楽しみに閉じているユーザーはほとんどいないでしょう。

そのため、ゲームというコンテンツを成功させるためには、ゲーム以外のエンターテインメントを含め、様々なインプットを行い、ファンがどういったことで楽しんでいるか、どういったことで感動するか、の解像度を高めて続けることが重要となります。当たり前なことなんですが、成功のために必要なあらゆることをインプットし続けて、自分たちのアウトプットに生かせることが、良いゲーム会社の条件なんだろうなと思います。

――:読者に一言お願いします。

久保:G2 Studiosとして、第二の創業期のつもりで色々とチャレンジしていきますので、我々の動きを期待してもらえたら嬉しいです。

コーポレートサイトやnoteなどにも、会社のことや我々の想いなどを積極的に発信していきたいと考えています。

ちょっとでも興味を持っていただけて一緒に働けたら嬉しいので、ぜひ採用サイトもご覧ください。

我々が作るコンテンツはもちろん、我々というチームのファンも増えていくといいなと思っていますので、これからもよろしくお願いします。

――:ありがとうございました。

撮影場所:wework渋谷スクランブルスクエア

G2 Studios株式会社
https://g2-studios.net/

会社情報

会社名
G2 Studios株式会社
設立
2018年5月
代表者
代表取締役社長 桜井 敦
企業データを見る
THE FIRST株式会社
https://tf21.co.jp/

会社情報

会社名
THE FIRST株式会社
設立
2016年6月
代表者
代表取締役 福地 正幸/久保 宗大
決算期
9月
上場区分
未上場
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