アニメビジネスインサイト『データで見る2024年夏アニメの人気維持率』…「負けヒロインが多すぎる!」や「2.5次元の誘惑」の話題急上昇作品は放送中のプロモーション戦略が鍵に

 

 

■はじめに

2024年の夏アニメシーズンが終わりを迎えようとしています。多くの新作アニメが放送され、それぞれの評価が分かれる中、ゲームビズでは株式会社SevenDayDreamersと共同で調査を行い、客観的なデータを基にした各作品の注目度の変化を分析しました。特に、放送開始時点と現時点での注目度の違いに焦点を当て、作品の人気がどのように推移したか、そしてその背景にある要因を探ります。

 

■分析方法

1. 対象作品 : シリーズ作品(第2期など)を除いた新作アニメ42作品
2. 使用データ : Googleトレンドの検索量データ(週次)
3. 分析指標 : 「注目度維持率」=(放送週の注目度)/(初回放送週の注目度)× 100
4. 集計期間 : 放送開始週を1週目として10週目までを集計

 

■データの解釈に関する注意事項

本記事で提示されているデータは、各アニメタイトルの放送1週目を100%とした相対的な変化を示しています。これは絶対的な人気や視聴率を表すものではなく、各作品が初回放送時の注目度をどの程度維持できているかを示す指標です。

高い維持率は、その作品が初期の注目度を継続して保っていることを意味します。一方、低い維持率は、必ずしもその作品の人気が低いことを意味するわけではなく、初期の高い注目度と比較して相対的に低下していることを示しています。作品間の直接比較は、この相対的な変化のみに基づいており、絶対的な人気度を反映するものではありません。

 

■全体傾向

2024年夏アニメの平均注目度維持率は、放送開始から急激に低下し、その後緩やかな減少傾向を示しています。1週目を100%とした場合、2週目には78.23%まで低下し、4週目には48.09%まで落ち込んでいます。その後、わずかに回復する傾向が見られますが、10週目には37.50%まで減少しています。

 

 

この傾向は、多くのアニメが放送開始時に最も注目を集め、その後徐々に注目度が低下していくという一般的なパターンを反映しています。しかし、中には独自の推移を示す作品も存在し、それらが全体の平均に影響を与えています。

 

■注目作品の分析

各作品の注目度維持率を詳しく見ると、興味深い傾向が浮かび上がります。特に注目すべきは、平均を大きく上回る維持率を示した作品です。

【注目度維持率上位5作品(10週目時点)】
「2.5次元の誘惑」: 125.64%
「負けヒロインが多すぎる!」: 101.82%
「杖と剣のウィストリア」: 85.00%
「ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで」: 78.05%
「俺は全てを【パリイ】する〜逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい〜」: 68.75%

 

 

上位5作品の注目度維持率の推移を詳細に分析すると、一部の作品で放送途中に注目度が急上昇する現象が見られます。特に注目すべき事例として、「負けヒロインが多すぎる!」と「2.5次元の誘惑」が挙げられます。

「負けヒロインが多すぎる!」は4-6週目にかけて注目度が急上昇しています(114.55%から181.82%へ)。5-6週目はそれぞれ、8月11日週と8月18日週ですが、考えられる要因の一例を挙げると、ちょうどそのタイミングで、ニッポン放送のラジオ番組『ANIMEコンシェルジュ』でゲストのSnow Man佐久間大介さんが、「負けヒロインが多すぎる!」を紹介しています。X上の反応を見ると、佐久間さんがきっかけで同アニメを見始めた人が一定数存在しているようです。

「2.5次元の誘惑」は9-10週目にかけて大幅な注目度の回復をしています(73.08%から125.64%へ)。10週目は9月1日週ですが、ちょうどそのタイミングで、ゲーム『2.5次元の誘惑(リリサ)天使たちのステージ』が正式リリースされています。アニメではなくゲームの注目度も含まれていますが、同IPに対する注目度の上昇という意味ではポジティブと捉えられます。

これらの急上昇は、放送途中で実施された効果的なプロモーション戦略が有効に働いていると考えられます。上位作品のほとんどが放送途中に注目度が上昇しているのが特徴的です。

 

■放送中に注目度が上昇しなかった4作品(10週目時点)

一方で、放送中に注目度がほとんど上昇しなかったタイトルも存在します。

「先輩はおとこのこ」: 43.00%
「逃げ上手の若君」: 29.00%
「多数欠」: 19.00%
「しかのこのこのここしたんたん」:15.00%

 

 

「先輩はおとこのこ」は平均より高い水準ではありますが、放送途中で上がることがなく、結果的に平均的な注目度維持率で落ち着いています。

「しかのこのこのここしたんたん」や「逃げ上手の若君」は、放送前の注目度は非常に高かったように思いますが、10週目時点では放送中の上昇はなく注目度維持率は平均よりも低い水準で落ち着いています。放送開始前に大きな注目を集めた作品ほど、注目度を維持することの難易度は高いのかもしれません。

 

■放送中プロモーションの強化による注目度向上の可能性

作品別の分析を踏まえると、アニメ放送中のプロモーション戦略の重要性が示唆されています。「負けヒロインが多すぎる」の例では、有名人による紹介が大きな影響を与えています。これは、適切なタイミングでの外部メディアの活用が注目度を大きく上げる可能性を示しています。また、「2.5次元の誘惑」のケースのように、アニメ放映中のクロスメディア展開が相乗効果を生み出す方法も有効だと考えられます。

近年では、VOD(ビデオ・オン・デマンド)の普及により、放送中であっても視聴者は容易に最新話まで追いつくことができるようになりました。放送前のプロモーションだけではなく、放送中に継続的なプロモーションを実施することで、放送途中からでもさらに多くの視聴者を引き込み、注目度を高めることが可能です。

放送中に注目度が上昇しなかった作品も、放送中のプロモーションを強化することで、より高い注目を集める可能性が秘められています。

 

■放送中のプロモーション戦略が注目度維持の鍵に

2024年夏アニメの注目度推移分析から、放送中の効果的なプロモーション戦略が作品の注目度を大きく左右する可能性があることがわかりました。

テレビアニメの注目度を高めるためには、放送前だけでなく放送中の継続的なプロモーション施策が重要となります。今後のアニメ制作・放送では、企画段階から放送終了まで一貫したプロモーション戦略を立て、視聴者の反応を見ながら柔軟に調整していくことが成功への鍵となるかもしれません。

放送中の継続的なプロモーションを実施することで、より多くの作品が長期的な人気と成功を獲得できる可能性が高まります。変化し続けるアニメ視聴環境に適応するためにも、今後より一層このようなデータ分析を通じたプロモーション戦略の開発が求められるはずです。

【参考:注目度維持率上位10作品(10週目時点)】
1位 :「2.5次元の誘惑」
2位 :「負けヒロインが多すぎる!」
3位 :「杖と剣のウィストリア」
4位 :「ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで」
5位 :「俺は全てを【パリイ】する〜逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい〜」
6位 :「ラーメン赤猫」
7位 :「義妹生活」
8位 :「かつて魔法少女と悪は敵対していた。」
9位 :「ダンジョンの中のひと」
10位:「時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん」

・レポート著者
株式会社SevenDayDreamers
湯通堂 圭祐

株式会社マクロミルでデータサイエンティストとして複数の新規事業を立ち上げ、その後、FiNC Technologiesにてデータ分析、グロースハック、プロダクト開発、経営企画、人事の責任者を歴任。現在は、株式会社SevenDayDreamersを創業し、データとAIを活用してコンテンツIPの価値最大化に取り組む。

・レポート編集
株式会社ゲームビズ


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