AIは日本アニメを壊すのか、それとも強くするのか――DLE小野亮CEOへの全5回インタビューから見えた「AI時代のアニメ産業」

木村英彦 取締役 編集長
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「AIがアニメーターの仕事を奪う」――生成AIが急速に進化するなか、AI利活用の賛否を含めて、そんな議論を耳にする機会は少なくない。DLE代表取締役社長CEO・CCOの小野亮氏への全5回のインタビューを通じて見えてきたのは、それとは少し異なる景色だった。

小野氏はAIの可能性を高く評価する一方で、「AIでアニメを作る」という発想には一貫して慎重な姿勢を示した。代わりに繰り返し語ったのは、「AIをどこで使うべきか」という極めて現実的なテーマである。

本稿では、5回にわたるインタビューを振り返りながら、AI時代の日本アニメが向かう先について整理してみたい。

 

【バックナンバー】
(1)生成AIは日本のアニメ業界をどう変えるのか DLE小野亮CEOが語る“本当の課題"
https://gamebiz.jp/news/428659

(2)AIはアニメ制作をどう変えるのか――DLE小野亮CEOが描く「次世代映像制作」の現在地
https://gamebiz.jp/news/429086

(3)AIアニメは制作費を変えるのか――中国AI、日本アニメの価値、そしてブランド戦略 DLE小野亮CEOインタビュー
https://gamebiz.jp/news/429897

(4)「AIアニメだから安い」は危険――著作権とガイドライン、AIリスク管理 DLE小野亮CEOに聞く
https://gamebiz.jp/news/430159

(5)AIアニメは市場になるのか――DLE小野亮CEOが見据える「新しい映像産業」の姿
https://gamebiz.jp/news/430574

 

■AIが変えるのは「創作」ではなく「制作環境」

今回の取材で最も印象に残ったのは、小野氏がAIを「クリエイターを代替する存在」として語らなかったことだ。

むしろ、AIが最も効果を発揮するのは、

・情報整理
・資料作成
・製作委員会での調整
・コミュニケーション
・市場調査

といった、クリエイティブの周辺業務だった。

これらをAIが担うことで、アニメーターや演出家が本来の創作活動に集中できる。つまりAIは、作品を作る存在ではなく、「作品を作る人たちを支える存在」として位置付けられていた。これは、AI活用を「制作の自動化」と捉えがちな世間のイメージとは、大きく異なる視点だった。

 

■「効率化」だけでは日本アニメは強くならない

AIの話題になると、制作費削減や人手不足解消が語られがちだが、小野氏は「動画工程のAI化」には慎重だった。

理由は単純である。動画マンは単なる作業者ではなく、将来の作画監督や監督を育てるための入口だからだ。育成工程そのものをAIに置き換えてしまえば、日本アニメが長年積み重ねてきた人材育成の仕組みまで失われかねない。

短期的な効率化が、長期的な競争力を損なう恐れがある。この視点は、アニメ業界だけでなく、生成AIを導入するあらゆる産業に共通する課題とも言えるだろう。

 

■AI時代だからこそ、人間の価値は高まる

「AIクリエイターとは何か」。

この問いに対する小野氏の答えも興味深かった。必要なのは、プロンプトを書く技術ではない。演出力であり、構成力であり、世界観を設計する能力だという。

AIは映像を生成できるが、「何を作るべきか」を決めることはできない。だからこそ、経験を積んだクリエイターの価値は、AI時代でも失われないどころか、むしろ高まる可能性がある。

この考え方は、第1回で語られた「下積みを飛ばしてはいけない」という話とも一本の線でつながっている。

 

■日本アニメ最大の強みは「漫画文化」にある

海外勢によるAI投資についても、小野氏は強い危機感を示す一方で、日本アニメの競争力は、制作技術だけでは説明できないとも語る。

週刊漫画誌をはじめとする創作文化と、そこから絶えず新しい才能やIPが生まれる仕組み。そして、その作品を育てる編集者や制作会社、放送局、配信事業者までを含めたエコシステム。

これこそが、日本アニメの競争優位性の源泉だという指摘は、非常に示唆的だった。

AIは制作工程を変えるかもしれない。しかし、この文化的な土壌を短期間で再現することは容易ではない。

 

■AIは「新しい市場」を作る

今回のインタビューを通して、最も印象的だったのは、小野氏がAIを「代替技術」としてではなく、「市場創出の技術」として捉えていたことだ。

DLEはかつてFlashアニメーションという新しい表現を切り拓いたが、Flashアニメは、テレビアニメを置き換えたわけではない。テレビアニメでは成立しなかった広告や企業プロモーション、短編コンテンツといった新しい市場を生み出した。

小野氏は、AIも同じ道を歩む可能性があると見る。従来のアニメ制作では難しかった企画や予算や納期の制約から実現できなかった映像など、AIが新たな需要を生み出す。

AIは「既存市場を奪う」のではなく、「市場そのものを広げる」存在になり得るという考え方だ。

 

■「AIを使うか」ではなく、「どう使うか」の時代へ

5回の取材を通して感じたのは、小野氏がAIを推進する立場でも、反対する立場でもなかったことだ。一貫していたのは、「AIをどこで使うべきか」という視点だった。

・制作工程を置き換えるために使うのか
・クリエイターを支えるために使うのか
・新しい市場を作るために使うのか

同じAIでも、その使い方によって産業への影響は大きく変わる。AIを導入すること自体が目的ではない。人間がより創造的な仕事に集中できる環境をどう作るか。そのための手段としてAIを位置付ける――それが、小野氏の考え方の根底に流れていたように感じた。

 

■編集後記

取材前、私は「AIアニメ」というテーマから、制作工程の自動化やコスト削減の話が中心になると考えていたが、小野氏が繰り返し語ったのは、創作そのものよりも「人を育てること」「創作文化を守ること」、そして「AIを適切な場所で使うこと」の重要性だった。

生成AIは、今後もアニメ業界に大きな変化をもたらしていくだろう。しかし、その変化をどう受け止め、どのように活用するかは、技術ではなく人が決める。この特集が、AIとアニメの関係を「賛成か反対か」という単純な二項対立ではなく、日本のコンテンツ産業の未来を考えるきっかけになれば幸いである。

 

【バックナンバー】
(1)生成AIは日本のアニメ業界をどう変えるのか DLE小野亮CEOが語る“本当の課題"
https://gamebiz.jp/news/428659

(2)AIはアニメ制作をどう変えるのか――DLE小野亮CEOが描く「次世代映像制作」の現在地
https://gamebiz.jp/news/429086

(3)AIアニメは制作費を変えるのか――中国AI、日本アニメの価値、そしてブランド戦略 DLE小野亮CEOインタビュー
https://gamebiz.jp/news/429897

(4)「AIアニメだから安い」は危険――著作権とガイドライン、AIリスク管理 DLE小野亮CEOに聞く
https://gamebiz.jp/news/430159

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https://gamebiz.jp/news/430574

 

 

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株式会社ディー・エル・イー(DLE)
https://www.dle.jp/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エル・イー(DLE)
設立
2001年12月
代表者
代表取締役社長CEO・CCO 小野 亮
決算期
3月
上場区分
東証スタンダード
証券コード
3686
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