【特集】AIアニメは市場になるのか――DLE小野亮CEOが見据える「新しい映像産業」の姿

木村英彦 取締役 編集長
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生成AIを巡る議論では、「AIが既存のクリエイターの仕事を奪うのではないか」という懸念がたびたび語られる。アニメ業界でも同様だ。AIによってアニメ制作コストが下がれば、従来の制作会社やクリエイターの仕事は縮小するのではないか――。

しかし、ディー・エル・イー(DLE)<3686>代表取締役社長CEO・CCOの小野亮氏はそうした見方には必ずしも賛同しない。むしろAIによって生まれるのは既存市場の置き換えではなく、「これまで存在しなかった市場」ではないかと考えている。

 

■AIは既存市場を奪うのではなく、新市場を生み出す

小野氏は、DLEがかつて切り拓いたフラッシュアニメーション市場を例に挙げる。『秘密結社 鷹の爪』が登場した当時、従来型のテレビアニメ制作とは異なる低コスト・短納期の制作スタイルは、既存のアニメ業界から見ると異質な存在だった。

しかし結果として、フラッシュアニメーションはテレビアニメを代替する存在にはならなかった。むしろ、それまで映像化されることのなかった企画や企業案件、新しい広告表現などを生み出し、新たな市場を形成した。

AIも同じことが起きるのではないか、と小野氏は見る。現在のアニメ業界は、制作期間が3~4年に及ぶことも珍しくない。

一方で、市場環境の変化はますます速くなっている。

・SNSで話題になったコンテンツを素早く映像化したい。
・企業が旬のテーマを活用した広告を展開したい。
・IPをタイムリーに映像化したい。

しかし従来のアニメ制作体制では、そうしたスピード感に対応することは容易ではない。

AIは、その隙間を埋める存在になり得るという。小野氏は、「AIアニメは『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』を作るための技術ではないかもしれないが、今まで作れなかったものを作る技術にはなる」と語る。

 

■NetflixやAmazonはAIをどう見るのか

海外ではすでにAIを活用した映像制作の動きが広がり始めている。小野氏によれば、米国のプラットフォーマーは、AIを単なる制作効率化のツールとしてではなく、新しいコンテンツ供給体制を支える技術として見ているという。

例えば、短期間で大量の映像コンテンツを制作したり、ローカライズを自動化したり、あるいはキャラクターをAIで管理し、多言語展開を行ったりといった活用方法は、今後ますます増えていく可能性が高い。

もっとも、小野氏は「現時点で大手プラットフォーマーがAIだけで長編アニメを制作する時代が来ているわけではない」とも指摘する。

現在の生成AIは15秒、30秒程度の短尺映像では大きな成果を上げているものの、シリーズ作品を成立させるために必要なキャラクターの一貫性や演出の統一性については、依然として課題を抱えているためだ。

そのため、AIは今後もしばらくは「制作を代替する技術」ではなく、「制作を補完する技術」として発展していく可能性が高い。

 

■「AI禁止」ではなく「下手なAI禁止」の時代へ

AIを巡る議論では、しばしば「AIを使うか、使わないか」という二項対立で語られることが多いが、小野氏は、今後はそうした議論そのものが意味を持たなくなると見る。かつてCGがそうであったように、AIもいずれ制作現場に浸透し、「AIを使っているかどうか」を意識する時代は終わるという。

問題はAIを使うことではなく、「どう使うか」になる。これはテレビ業界でも同様だ。AI映像が公開されるたびにSNSで議論になるケースはあるものの、視聴者が求めているのはAIかどうかではなく、作品として面白いかどうかだ。「AIだから駄目」という価値観は、今後徐々に薄れていく可能性がある。

一方で、「雑に作られたAIコンテンツ」は淘汰されていくだろう。小野氏は、将来的にはAI禁止ではなく、『下手なAIは禁止』という世界になるのではないかと考えている。つまり、視聴者が評価するのはツールではなく、最終的なクオリティなのだ。

 

■AI時代に求められるクリエイターとは

AI時代になると、クリエイターの役割も変化するが、それは創作者が不要になることを意味しない。

むしろ逆だ。AIを活用するためには、より高度な演出能力や編集能力が求められる。

・何を見せるのか。
・どう見せるのか。
・どのカットを採用するのか。
・どの演技が魅力的なのか。

AIが出力したものを評価し、取捨選択できる人材の価値は、これまで以上に高まる可能性がある。

小野氏は以前から、「AIはゼロから面白いものを作るのではなく、人間のアイデアを増幅する存在」だと語っている。この考え方は、第1回で語られた「動画マンをなくしてはいけない」という話ともつながっている。

AIは経験を代替できない。基礎を学び、創作を積み重ねてきた人間がいるからこそ、AIは有効な道具になる。逆に言えば、経験を持たない人がAIだけを使っても、本当に面白い作品を生み出すことは難しい。

だからこそ、小野氏はAI時代においても、人材育成の重要性は変わらないと考えている。AIアニメの普及は「技術」ではなく「世代交代」が決める

では、AIアニメはいつ一般化するのか。小野氏は、技術的な進歩以上に、世代交代が重要になると見ている。現在のアニメファンには、AIに対して否定的な感情を持つ層も少なくない。

若い世代ではAIに対する抵抗感は急速に薄れている。AIは特別なものではなく、スマートフォンやSNSと同じく、当たり前に存在するインフラになりつつある。そうした世代がコンテンツ消費の中心になれば、「AI作品だから見ない」という考え方は徐々に弱まっていくだろう。

小野氏は、AIアニメの普及について、「何か革命的な作品が登場する可能性もあるが、最終的には時間が解決する部分が大きい」と語る。

技術が成熟し、利用者が増え、社会の受容性が高まる。その積み重ねの先に、AIアニメが特別な存在ではなくなる時代が訪れるのかもしれない。

AIはアニメを壊すのか、それとも広げるのか、AIは日本アニメの脅威なのか。あるいは、新たな成長機会なのか。

DLEの小野氏が描く未来像は、極端な楽観論でも悲観論でもない。AIは既存のアニメ制作をすべて置き換える技術ではない。一方で、人間だけでは実現できなかった映像表現や、新たな市場を生み出す可能性を秘めている。

かつてフラッシュアニメーションがそうであったように、AIもまた、既存市場を奪うのではなく、新しい市場を創出する存在になるのかもしれない。そして、その未来を形作るのはAIそのものではなく、それを使いこなし、新しい価値へと変えていくクリエイターたちなのだろう。

 

■バックナンバー

【特集】「AIアニメだから安い」は危険――著作権とガイドライン、AIリスク管理 DLE小野亮CEOに聞く
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【特集】AIアニメは制作費を変えるのか――中国AI、日本アニメの価値、そしてブランド戦略 DLE小野亮CEOインタビュー
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【特集】AIはアニメ制作をどう変えるのか――DLE小野亮CEOが描く「次世代映像制作」の現在地
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【特集】生成AIは日本のアニメ業界をどう変えるのか DLE小野亮CEOが語る“本当の課題"
https://gamebiz.jp/news/428659

 

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会社情報

会社名
株式会社ディー・エル・イー(DLE)
設立
2001年12月
代表者
代表取締役社長CEO・CCO 小野 亮
決算期
3月
上場区分
東証スタンダード
証券コード
3686
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