【特集】AIアニメは制作費を変えるのか――中国AI、日本アニメの価値、そしてブランド戦略 DLE小野亮CEOインタビュー

木村英彦 取締役 編集長
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AIはアニメ制作コストを劇的に下げるのか。生成AIの進化によってアニメ制作のあり方は大きく変わろうとしているが、DLE代表取締役社長CEO・CCOの小野亮氏は「現時点でAIを制作現場へ投入することには否定的だ」と語る。

一方で、中国企業によるアニメ生成AIは急速に進化しており、日本のコンテンツ産業に新たな競争環境をもたらしつつある。日本アニメは今後、AIによる大量生産とどう向き合うべきなのか。小野氏は「手描き」という価値そのものをブランドとして高めていくべきだと指摘する。

 

■AIアニメの技術水準は想像以上に高い

小野氏によれば、中国ではすでに高品質なアニメーション生成ツールが登場しているという。

実際にDLEにも営業提案があり、デモを確認したところ、その完成度は「かなりレベルが高かった」と評価する。特定作品のキャラクター設定を学習したLoRAモデルを構築することで、作品固有の表現を再現できる段階まで来ているという。

しかし現時点では、日本市場への導入には課題も多い。

中国企業のサービスは中国国内サーバーの利用を前提とするケースが多く、権利者側からするとIPデータを国外サーバーへ投入することへの抵抗感が大きい。大型IPのデータを海外事業者に預けることは、コンテンツ管理や安全保障の観点から慎重にならざるを得ないという。

また、導入コストも依然として高く、「フラッシュアニメをAIに置き替えるメリットを感じない」というのが現時点での判断だ。

 

■AI時代だからこそ「手描き」の価値は高まる

小野氏は、AI技術そのものを否定しているわけではない。むしろAIの進化は不可避であり、映像制作そのものは今後誰でもできるようになる可能性が高いと見る。

ただ、その状況だからこそ、日本アニメが競争力を維持するためには「誰が作ったのか」というブランド性が重要になるという。

スタジオ、作画監督、演出家、声優といったクリエイター個人の価値を高め、「日本でしか生まれない作品」であることを差別化要因として打ち出す必要があるという考えだ。

小野氏はこれを高級フランス料理に例える。大量生産された料理でも人は満足できるが、ミシュラン三つ星の名店には依然として高い価値が存在する。

同様に、AIによってアニメ制作が民主化されたとしても、「本当に優れたアニメは日本から生まれる」というポジションを維持できれば、日本アニメの優位性は保たれるという見方だ。

 

■日本アニメの強みは「川上から川下まで」の生態系

小野氏は、日本アニメの競争力は制作工程だけにあるわけではないと指摘する。週刊漫画を中心とした原作供給力、アニメ制作、ライセンス展開、配信、海外販売までを含めたエコシステム全体こそが日本の最大の資産だという。

そのため、日本が本当に注力すべきなのは制作工程のAI化ではなく、ビジネス面への投資だと語る。

「AIの問題は制作現場にはない。むしろアニメビジネスの部分にAIをどれだけ投入できるかが重要だ」

小野氏は、制作現場は厳しい条件下でも創作を続ける人材が存在する一方で、流通や販売の領域ではまだ十分な整備が進んでいないと見る。そこへAIや資本を投入することこそが、日本アニメ産業全体の競争力向上につながるという考えを示した。

 

■中国AIは「コスト削減」ではなく「産業育成」の発想

興味深いのは、中国企業のAI導入に対する考え方だ。小野氏によれば、中国側は必ずしもコスト削減を第一目的としているわけではない。

むしろ、まずは日本型アニメ制作システムをAIで再現する。その後で普及とマネタイズによってコストを下げていく…という産業育成型の発想で取り組んでいるものもあるという。

さらに現在では、中国アニメーターの報酬水準が日本を上回るケースも出てきている。円安の影響もあり、「海外へ発注するより国内人材の方が安い」という逆転現象も起きているそうだ。

 

■バックナンバー

【特集】AIアニメは制作費を変えるのか――中国AI、日本アニメの価値、そしてブランド戦略 DLE小野亮CEOインタビュー(本記事)
https://gamebiz.jp/news/429897

【特集】AIはアニメ制作をどう変えるのか――DLE小野亮CEOが描く「次世代映像制作」の現在地
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【特集】生成AIは日本のアニメ業界をどう変えるのか DLE小野亮CEOが語る“本当の課題"
https://gamebiz.jp/news/428659

 

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株式会社ディー・エル・イー(DLE)
https://www.dle.jp/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エル・イー(DLE)
設立
2001年12月
代表者
代表取締役社長CEO・CCO 小野 亮
決算期
3月
上場区分
東証スタンダード
証券コード
3686
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