【インタビュー】AIはアニメ制作をどう変えるのか――DLEが描く「次世代映像制作」の現在地

木村英彦 取締役 編集長
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生成AIを活用した映像制作が急速に進化するなか、アニメ業界でもAIへの関心が高まっている。しかし、実際の制作現場では依然として慎重な見方も根強く、「AIがアニメ制作を置き換える」という未来像は、まだ現実味を帯びているとは言い難い。

そうしたなかディー・エル・イー(DLE)<3686>は、既存のアニメ制作工程をAIで代替するのではなく、AIによって新たな映像表現を切り拓くというアプローチを模索している。

同社は『秘密結社 鷹の爪』などで知られるFlashアニメーションの先駆者だが、現在は従来のFlashアニメーションスタジオとは別にAIスタジオを立ち上げ、広告や映像制作を中心とした取り組みを進めている。

 

■Flashアニメの経験がAI時代につながった

DLEは2000年代からFlashアニメーションを武器に、少人数かつ短期間で映像を制作するスタイルを確立してきた。小野亮CEOは、DLEはもともと「アニメ会社らしくないアニメ会社」だったと振り返る。

一般的なセルアニメでは詳細な設定資料を作り込み、長い制作期間をかけて作品を完成させていく。一方でDLEが培ってきたFlashアニメーションは、アイデアを素早く形にし、小規模なチームで試行錯誤を重ねながら映像を組み上げていく手法だった。

こうした制作スタイルは、生成AIが持つ特性と高い親和性を持っていたという。

従来であればクリエイター個人の画力や技術力に依存していた表現も、生成AIを活用することで大きく拡張できるようになった。

美麗なイラストの生成だけでなく、実写風の映像、CG表現、さらにはクレイアニメーションのような質感まで再現できるようになったことで、DLEの表現領域は飛躍的に広がった。

小野氏は、「AIによって今まで作れなかったものが作れるようになる可能性を感じた」と語る。

研究を本格化させたのは2024年頃だった。当初は実験的な取り組みが中心で、SNS向けの短尺映像やデモ映像の制作が主だったが、商業作品として成立させるには技術的な課題も多かったという。

ただ、2025年頃から画像生成AIの精度が大きく向上し、キャラクターの顔やデザインの保持性能が改善されたことを受けて、本格的なAIスタジオ設立へと舵を切った。

 

■FlashアニメスタジオとAIスタジオは別組織

興味深いのは、DLEでは現在もFlashアニメーションとAI制作を明確に切り分けていることだ。

外部から見ると、Flashアニメの延長線上にAI制作があるようにも見える。しかし実際には両者は別の組織として運営されている。

Flashアニメスタジオは現在もAIをほとんど利用せず制作を続けている。むしろ近年は、短期間で高品質な作品を制作できるオルタナティブなアニメーション手法として再評価が進んでいるという。

企画立ち上げから放送まで約1年というスピード感は、3〜4年を要するケースも珍しくない現在のアニメ業界において大きな強みになっている。

一方、AIスタジオは全く異なる方向性を志向している。構成メンバーの中心はアニメーターではなく、実写映像出身のクリエイターだ。演出経験者、映像ディレクター、撮影スタッフなど、実写映像制作で培われたノウハウを持つ人材が集まり、AIを活用した新たな映像表現を模索している。

 

■AIは発想を生み出すのではなく、人間の発想を増幅する

AIによって制作工程は大きく変わりつつあるが、小野氏は「発想そのものは依然として人間の仕事」だと考えている。例えば企画のアイデアが生まれた際、その周辺情報を整理したり、市場調査を行ったり、大量のデータをまとめたりするといった作業はAIが非常に得意とする領域だ。従来であればスタッフが数時間から数日かけて調査していた作業を、AIは短時間で終わらせることができる。

企画書作成も同様である。アイデアを入力すると、AIはプレゼン資料のたたき台を瞬時に生成する。そこから人間がブラッシュアップしていくことで、従来よりも圧倒的に短い時間で企画を形にすることが可能になる。

一方で、小野氏は「AIはまだ面白いものを生み出せない」と指摘する。情報を整理し、編集し、補完する能力には優れているが、ゼロから新しい発想を生み出すことは依然として苦手だという。

たとえば、「貝社員」と女子高生を組み合わせるなど、は全く異なるジャンルを掛け合わせるといった発想はAIからは出てこないという。

そうした飛躍したアイデアは、人間の経験や感覚から生まれるものであり、AIが自律的に創出できる段階には至っていないという認識だ。

 

■AIクリエイターに求められるのは演出力

近年、「AIクリエイター」という言葉が広がり始めている。漠然とした単語だが、DLEが考えるAIクリエイター像は、単なるプロンプト作成者ではなく、むしろ映画監督や演出家に近い存在だという。シナリオを理解し、カメラアングルを決め、キャラクターの演技を設計し、照明や背景の演出を考える。撮影、美術、編集など複数の領域を横断しながら、一貫した世界観を構築できる能力が求められる。

現在のAIは依然として出力のばらつきが大きく、同じキャラクターでも表情や服装が変化してしまうことがある。短い映像であれば問題にならなくても、シリーズ作品や長編作品では一貫性の維持が重要になる。小野氏は、この一貫性をコントロールする能力こそが、AI時代のクリエイターに最も求められるスキルだと語る。

そのためDLEでは、単にAIを使いこなせる人材ではなく、映像制作の現場経験を持ち、演出やストーリーテリングを理解した人材を重視している。

 

■AIアニメはまだ発展途上の段階にある

一方で、DLEはAIによるアニメ制作そのものには否定的な姿勢を見せている。理由の一つは、世界が日本に求めているアニメ制作手法が世界最高峰の書き手による手書きであること。更には、AIアニメに対する社会的な受容性の問題も存在する。現状では、AIを全面的に活用したアニメ作品は依然として高い炎上リスクを抱えている。

日本のアニメーションは必ずしもリアルな動きを追求しているわけではない。デフォルメされた動きや、誇張された芝居、間の取り方など、日本独自の演出文法が存在している。

AIはまだそうした文法を十分理解できていない。結果として、「ぬるぬる動きすぎる」映像になり、日本のアニメらしさとは異なる印象になってしまうことも少なくないという。

小野氏は、「今の時点では無理にAIアニメよりも、Flashアニメーションで制作した方が効率的かつ個性的な表現ができるケースが多々ある」と語る。

DLEにとってAIとは、既存のアニメ制作を置き換えるための技術ではない。むしろ、新しい映像表現を生み出し、人間の創造性を拡張するための技術として捉えられている。そして現時点では、日本のアニメーションが長年培ってきた演出や作画の文法を完全に再現するには、まだ時間が必要だというのがDLEの見立てだ。

株式会社ディー・エル・イー(DLE)
https://www.dle.jp/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エル・イー(DLE)
設立
2001年12月
代表者
代表取締役社長CEO・CCO 小野 亮
決算期
3月
上場区分
東証スタンダード
証券コード
3686
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