【インタビュー】『ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』開発者が語る ゲームブックへの恩返し――"一人で遊べるTRPG"はこうして生まれた

山岡広樹 gamebiz編集者
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1980年代に人気を博したゲームブックを、現代のデジタルゲームとしてよみがえらせた『ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』。レビュー記事でも紹介したように、本作はプレイヤーが自ら選択し、ダイスによって運命を委ねながら冒険を進める"一人で遊べるTRPG"とも言える作品だ。

今回は、本作を手掛けたジギタリス出版の西村芳雄氏にメールインタビューを実施。ゲームブックを題材に選んだ理由から、ゲームデザインの裏側、約300枚に及ぶ手描きイラストへのこだわり、そして今後の展開まで話を聞いた。


▲ゲームブックの雰囲気をそのままデジタルで再現した『ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』。本作は"ヴァーチャル・アドベンチャー・ブック"を掲げる作品だ。

【インタビュイー紹介】

■西村芳雄(にしむら よしお)
ジギタリス出版主宰。ゲーム業界で30年以上のキャリアを持つ。背景制作チームのチーフとして、カプコンでは初代『モンスターハンター』など、ヴァニラウェアでは『オーディンスフィア』『ドラゴンズクラウン』などの作品に携わる。ヴァニラウェアを「卒業」した後は奈良の山奥にある小村「曽爾村」に居を構え、畑を耕しながらゲーム制作に打ち込んでいる。



■ゲームブックを現代へ――"一人で遊べるTRPG"を目指した理由

――:『ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』は「ゲームブック」をデジタルで再現した作品ですが、そもそもゲームブックを題材にしようと思ったきっかけを教えてください。

西村芳雄氏(以下、西村):
ゲームブックを題材にしようと思ったきっかけは、2018年に株式会社アトラス様より販売された『ドラゴンズ・クラウンPRO』の、『先着購入特典DLC デジタルゲームブック「悪霊島の秘宝」』を製作した際の成功体験からです。

「悪霊島の秘宝」開発当時は会社全体が多忙を極めており、私とプログラマー1人ぐらいしか人手が割けなかったので、少人数で作れるゲームソフトとしてゲームブックを題材にしました。『ドラゴンズ・クラウン』の世界観とゲームブックは大変合っていると思います。

発売後はアトラス様からも、お客様からも、とても良い評価をいただきました。私自身「悪霊島の秘宝」の制作そのものが大変楽しかったので、その後趣味として『ヴェリタステイルズ』を製作することにしました。

また、幼い頃の私は読書が苦手だったのですが、当時人気だったゲームブックを遊んで本が読めるようになり、その挿絵を模写して絵も上手に描けるようになりました。私はゲームブックというジャンルにとても感謝しています。そして"いつか恩返しがしたい"と考えていました。それもこの題材を選んだきっかけと言えます。

――:プレイしていて「これはまさに一人で遊べるTRPGだ」という印象を受けました。特に魔法使いの老人が語り部として物語を進行する演出からは、GMが進行するTRPGセッションへ参加しているような感覚がありました。この体験は開発段階から意識されていたのでしょうか。

西村:
はい。開発を始める前から決めておりました。

私が最も影響を受けたゲームブックが、二見書房出版、J・H・ブレナン著『暗黒城の魔術師』というアーサー王物語を題材とした作品でして、このゲームブックには"マーリン"という魔法使いの老人がGMの様な役で登場します。

題名からもお分かりだと思うのですが、本作はこの作品をオマージュしたものなので、GMに魔法使いの老人を登場させました。また、ゲームブックをご存じない方もいらっしゃいますので、GM(魔法使いの老人)に本作の概要の説明をしてもらった方が伝わりやすいだろうと考えていました。


▲魔法使いの老人がGMのようにプレイヤーを物語へ導く。本作を象徴する演出の一つだ。

■「運」と「判断」が自分だけの冒険を生む ゲームデザインの裏側

――:本作では、ダイス判定やゲームオーバーも含めて「思い通りにならない」体験が印象的でした。一方で、装備やスキルの使い方といったプレイヤーの判断も結果を大きく左右します。この「運」と「判断」のバランスはどのような考えで設計されたのでしょうか。

西村:「運」の要素はプレイヤーによって違った体験が得られるように考えました。ゲームブックは非常にギャンブル性が高い性質を持っていると思います。本作はデジタル版ゲームブックとして製作しましたので、良い結果となるか、悪い結果となるかは全てプレイヤーの運しだいと考えています。

「判断」の要素はプレイヤーの個性を反映する箇所として考えました。分岐の選択、探索する場所やその順序、店での買い物は、プレイヤーが自由を感じたり、プレイの腕前が試される所だと考えています。

「運」と「判断」のバランスは、プレイヤーの「運」がどうしようもなく悪かった時に、「判断」によって良い状況に戻せる具合を探して設計しました。


▲ダイスの出目だけでなく、プレイヤー自身の選択も冒険の行方を左右する。本作ならではのゲームデザインだ。

――:プレイヤーの選択によって物語が変化する作品ですが、シナリオ制作で最も苦労した部分を教えてください。

西村:苦労した部分は大きく二つありまして、イベントの組み合わせと、分岐の管理です。

選択を楽しい体験にするため、イベントを数多く用意しようと考えました。懐かしさも感じて欲しいと思い、古典的なゲームブックから参考にさせていただいたイベントもあります。

ゲームブックを遊んでいた方も、未経験の方も飽きずに楽しめるように、違った趣向のイベントを数多く増やすのが難しかったです。

またその数多くのイベントせいで、分岐の管理が難しくなりました。デジタルデータなので検索や確認もしやすいだろうと高をくくっていました。分岐が増える度に、指数的に増えるバグチェックの数に恐怖しました。

■300枚の手描きイラストに込めた想い 続編への構想も語る

――:本作では約300枚ものイラストがすべて手描きで制作されています。この制作スタイルにこだわった理由を教えてください。

西村:元々絵を描くのが好きなので、この制作スタイルが私の性に合っていると思います。

また本作は、諸先輩方のゲームブックの挿絵を数多くオマージュしました。その様な絵を描いている間は、幼い日を思い出してとてもワクワクして筆が止まりませんでした。時間さえあれば、もっと絵の枚数を増やしていたと思います。


▲約300枚の手描きイラストを収録。ゲームブックへのリスペクトが、一枚一枚のビジュアルにも込められている。

――2人の物語をクリアした後には、ハヴェロックとパネリの物語がまだ続くことを感じさせる描写もありました。このような終わり方にはどのような意図を込められたのでしょうか。また、今後の展開について現時点でお話しできることがあれば教えてください。

西村:本作により一定の評価が得られたならば、是非続編を作りたいと考え、今回の様な終わり方にしました。

また今回登場したキャラクターのサイドストーリーも何処かでゲーム化したいという願望があります。それについては既に趣味として作り始めているのですが……開発資金次第となります。

――:最後に、本作をこれから遊ぶ読者へ、一番味わってほしい体験を教えてください。

西村:選択によってキャラクターを死なせることを何度もやって欲しい訳ではないのですが、"一寸先は闇"という体験はなかなかないので是非味わっていただきたいです。

また出来ましたら、一度遊んだ後に配信なさっている方のプレイ動画を見ていただきたいです。ご自身が経験した冒険との違いを観るのは、とても楽しいと思います。

インタビューを、ありがとうございました!


▲時には予想もしなかった結末を迎えることも。「一寸先は闇」という緊張感も、本作ならではの醍醐味だ。


今回のインタビューからは、『ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女』が単にゲームブックをデジタル化した作品ではなく、幼少期にゲームブックへ魅了された西村氏が、その文化へ"恩返し"をしたいという想いから生まれた作品であることが伝わってきた。

「一人で遊べるTRPG」という体験を目指したゲームデザイン、プレイヤーごとに異なる冒険を生み出すための「運」と「判断」のバランス、そして約300枚に及ぶ手描きイラスト。その一つひとつには、ゲームブックという文化への深いリスペクトが込められている。

レビューでも触れたように、本作はゲームブックを知る世代には懐かしく、初めて触れる人には新鮮な体験を届けてくれる作品だ。今回のインタビューを読んでからプレイすれば、ページをめくる一枚一枚や、ダイスを振る一投にも、開発者の想いをより強く感じられるのではないだろうか。

(取材・文 編集部:山岡広樹)



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ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女

ジャンル:“読書型”ファンタジーアドベンチャー
開発元:ジギタリス出版
販売元:15Industry
対応プラットフォーム:PC(Steam)
発売予定日:2026年7月9日
価格:1,980円
プレイ人数:1人
対応言語:日本語・中国語(簡体字)・英語