
ブシロード<7803>のグループ分析組織にあたるアニメデータインサイトラボは、2026年春アニメ全72作品のデータを分析し、どの作品が視聴者の関心を維持し続けているのか、またどのような変化が生じているのかを分析したレポートを公開した。
■はじめに
この連載では、アニメの盛り上がりを「いつ」という時間軸で分析してきた。今回はそこに「どこで」「どう測るか」という視点を加える。
対象は2026年春アニメのフルシーズン。Google検索量を映すトレンドスコア、Xの投稿量を映すファンスコア、そして今回新たに加えたYouTube Shortsの再生データ(国内約1.4万本、MV・主題歌クリップは除外)の3つを用いる。
検索・Xでは目立たないのにYouTubeで数千万回再生された作品もあれば、Xでだけ上位に入った作品もある。単一の指標・単一の測り方による評価は、作品の実態を見誤るリスクがある。
■分析概要
【分析対象】
2026年春アニメ 全72作品(新作53作品、続編19作品)
【使用データ】
・トレンドスコア(Google検索量)= 一般認知度
・ファンスコア(X投稿量)= ファンの熱量
・YouTube Shorts再生データ(国内約1.4万本、MV・主題歌クリップ除外)= 動画での到達
【分析期間】
放送1週目〜最終週(最大13週)
■3つの指標は、3つの観客を映す
▼検索:調べられた作品の王、Re:ゼロ
トレンドスコアの1位はRe:ゼロ(100.0)。2位は転スラ、3位は同値(52.6)でジョジョSBRとDr.STONE、5位に黄泉のツガイと、知名度の高いIPが上位を占めた。続編だけでなく、ジョジョSBRや黄泉のツガイのように広く知られた原作を持つ新作も入っている。新作に限定すると、ジョジョSBR、黄泉のツガイ、日本三國(全体6位)、氷の城壁が上位に並ぶ。


▼X:語られた作品の王は、検索の王とは違った
ファンスコアの1位はDr.STONE(100.0)で、トレンドスコア1位のRe:ゼロは2位だった。3位には新作のガンバレ!中村くん!!、5位には上伊那ぼたんと、トレンドスコアでは圏外の新作が上位に入っている。認知の広がりと、語りたくなる熱量は、別物といえる。


▼YouTube:見られた作品と、検索にいない観客
国内YouTube Shorts再生数の1位もRe:ゼロ。2位は北斗の拳で、以下ジョジョSBR、転スラ、日本三國と続く。
北斗の拳はトレンドスコアでは52位だが、YouTubeでは2位に入った。原作40周年を記念したリメイクで、広く知られた名場面や名台詞が、ファンによる切り抜きや紹介動画を多数生んだためとみられる。おねがいアイプリもトレンドスコア43位・ファンスコア30位に対し、YouTubeでは8位だった。キッズ層のようにXをほとんど利用しない視聴者層の動きは、検索やXの数字には表れない。


▼同じ作品でも、指標ごとに立ち位置はバラバラだった
※各スコアは全72作品の最大値を100とした相対値。YouTubeスコアは国内Shorts再生の最大(Re:ゼロ)を100とした。
Re:ゼロはトレンドスコア1位・ファンスコア2位・YouTube再生1位、Dr.STONEはトレンドスコア3位タイ・ファンスコア1位・YouTube再生7位と、複数の指標で上位に入る。
新作では日本三國がトレンドスコア6位・ファンスコア11位・YouTube再生5位と、3指標すべてで上位圏に入った。
一方、ガンバレ!中村くん!!はファンスコア3位に対してトレンドスコア27位・YouTube再生23位、黄泉のツガイはトレンドスコア5位に対してファンスコア15位と、指標間で順位が大きく異なる作品も多い。どの指標で評価するかによって、これらの作品の評価は変わる。


■見られ方の中身も、作品で違う
YouTubeの再生は、公式・配給が自らShortsを供給する「公式型」と、ファンが切り抜き・解説・考察などの動画を投稿する「UGC型」に分かれる。
公式型は、Dr.STONE(TOHO animationチャンネルが再生の99%)、NEEDY GIRL OVERDOSE(アニプレックスが93%)、魔入りました!入間くん(公式チャンネルが85%)、日本三國(公式系チャンネルが76%。中心は制作のTWIN ENGINE)。いずれも公式がShortsを継続供給しており、ファン発の動画の比率は小さい。
UGC型は、Re:ゼロ(UGC88%)、北斗の拳(99%)、転スラ(98%)、よう実(79%)。UGCの内訳は作品ごとに異なり、北斗の拳やRe:ゼロは名場面の切り抜き、転スラは考察・解説系、よう実は声優・キャラクター紹介系のチャンネルが再生の中心である。KADOKAWA系のライトノベル原作は公式の供給が少なく、ファン発チャンネルが再生を分け合う傾向がある。

■3つの作品で見る、指標の顔の違い
ここからは、指標ごとの動きが対照的な3作品を掘り下げていく。
【Re:ゼロ:全部で強い、でも動きはずれる】
第4期を迎えた長期の人気シリーズ。トレンドスコア1位・YouTube再生1位・ファンスコア2位と、ほぼ全方位で上位に立った。ファンスコアはシーズンを通して高い水準を保ち、コンスタントに語られ続けた。ただし週ごとに追うと、2つのスコアは別々に動いている。トレンドスコアは物語が動く中盤の8週目にピークを打ち、ファンスコアはクライマックスへ向かう終盤の11週目に最高潮を迎えた。まず調べられ、それから語られる。強い作品でも、指標は同時には動かないといえる。

【日本三國:新作で、全方位に届いた 】
トレンドスコア6位・ファンスコア11位・国内YouTube再生5位と、長く続くシリーズものでない新作ながら、3つすべてで上位に入った今季屈指の健闘作。放送開始からPrime Videoの新作アニメで国内視聴1位を獲得し、原作は1ヶ月で発行部数を倍増させた。週ごとに見ると、トレンドスコアは初週から高く、ファンスコアは終盤で最大の山を迎えている。認知・熱量・動画のすべてで上位に届いた新作は、今季では数えるほどしかない。

【ガンバレ!中村くん!!:Xだけで、じわじわ育った 】
トレンドスコア27位・YouTube再生23位と、認知でも動画でも目立たない新作アニメ。ところがファンスコアでは3位まで駆け上がった。毎話ちがう懐メロをエンディングに据える構成が「次はどの曲か」という週替わりの話題を生み、感想を語り合うBLラブコメというジャンルの相性も後押しした。週ごとに見ると、トレンドスコアは終始低いままなのに、ファンスコアは回を追うごとに伸び、終盤にかけて最高潮に達している。

なお、このX投稿には序盤の炎上も含まれることだけ留意したい。原作の一部描写をめぐって論争がSNSで広がった。ファンスコアは投稿量を測る指標であり、内容が好意か批判かは区別しない。スコアが大きく伸びたのは炎上のあった序盤ではなく終盤だったが、投稿量を評価に使う際は、その内訳まで確認する必要がある。
■前回予想の答え合わせ
放送前の予想記事では、データ視点の私と現場視点の大貫とで、完全新作から注目作を3つずつ選んでいた。「無痛」「安心(最強)」「推せる」がSNSの熱量を生む、という読みだった。フルシーズンを終えて検証してみたい。
いちばんの的中は日本三國だった。大貫が「コア層の共感と切り抜き映えでライト層に波及する」と見た通り、トレンドスコア6位・ファンスコア11位・国内YouTube再生5位と、長く続くシリーズものでない新作ながら3つすべてで上位に入った。
あかね噺も好結果だった。私が「放送前から検索が多く、王道枠として終盤まで語られる」と見た通り、トレンドスコア10位タイ・ファンスコア10位と、認知でも熱量でもしっかり上位に残っている。
一方、両者が推したニワトリ・ファイターや、霧尾ファンクラブと左ききのエレンなどの作品も、狙ったコミュニティの共感がSNS全体には広がらなかった。
すべてを当てたわけではないが、それでも日本三國とあかね噺の的中は、検索や国内SNSだけでは測れない作品の芽を、放送前に言い当てることができた。
【関連記事】
『Re:ゼロ』が検索を制し、『上伊那ぼたん』が口コミを制す―データで読む2026年春アニメ人気動向
■まとめ
検索・X・YouTubeでは、上位に入る作品が異なる。トレンドスコア1位はRe:ゼロ、ファンスコア1位はDr.STONE、YouTubeではトレンドスコア52位の北斗の拳が2位に入った。ガンバレ!中村くん!!のようにXでのみ上位の作品もある。また、ファンスコアは投稿量を測る指標であり、内容が好意か批判かは区別しない。
作品評価やKPI設計への示唆は明確で、単一のプラットフォーム・単一の指標・単一の時点で「話題になっていないから失敗」と判断すると、別の場所で数千万回再生されている作品や、終盤にかけて伸びた作品を見落とす。どの指標を、どの測り方で追うかの設計によって、評価は変わる。
【レポート著者】
株式会社SevenDayDreamers
湯通堂 圭祐
株式会社マクロミルでデータサイエンティストとして複数の新規事業を立ち上げ、その後、FiNC Technologiesにてデータ分析、グロースハック、プロダクト開発、経営企画、人事の責任者を歴任。現在は、株式会社SevenDayDreamersを創業し、データとAIを活用してコンテンツIPの価値最大化に取り組む。
・レポート編集
アニメデータインサイトラボ
代表:大貫 佑介
またアニメデータインサイトラボでは、今後もアニメビジネスに携わる人々に役立つ情報やサービスも提供していきます。アニメデータインサイトラボは、アニメ業界のビジネスニュースの発信や情報交換の場を提供していくこととで、アニメ業界のさらなる発展に寄与できるよう目指していきます。ニュースやレポートのほか、採用や転職支援も行っているので、ゲーム・アニメのビジネスにお悩みがあればご相談ください。
©長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活4製作委員会
©米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会
©塀(秋田書店)/上伊那ぼたん製作委員会
©松木いっか/小学館/日本三國製作委員会
© 武論尊・原哲夫/コアミックス, 「北斗の拳」製作委員会
©Nakamura-kun!! Animation Project
©前屋進・講談社/食べるだけを見てるだけの製作委員会
©️Anime Data Insight Lab
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会社情報
- 会社名
- 株式会社ブシロード
- 設立
- 2007年5月
- 代表者
- 代表取締役社長 木谷 高明
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 売上高561億7500万円、営業利益48億6800万円、経常利益48億4400万円、最終利益34億1800万円(2025年6月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 7803
