【決算レポ】BOIは周年の『メメントモリ』の広告費抑制で増益確保 今後の影響と可能性に注目 大型RPGの開発は進捗と明かすもリリース時期は…

バンク・オブ・イノベーション(BOI)<4393>の2025年9月期 第1四半期(2024年10月~12月)の決算は、売上高35億3400万円(前年同期比15.4%減)、営業利益8億3500万円(同43.3%増)、経常利益8億4000万円(同44.5%増)、最終利益5億3700万円(同39.6%増)となり、減収となったものの、各利益項目が大きく伸びた。

・売上高:35億3400万円(同15.4%減)
・営業利益:8億3500万円(同43.3%増)
・経常利益:8億4000万円(同44.5%増)
・最終利益:5億3700万円(同39.6%増)

 

売上・利益の大半を稼ぐ『メメントモリ』においては、リリース2周年イベント・キャンペーンを実施した。App StoreとGoogle PlayでもTOP10に接近したものの、経年による売上低下を避けることができず2桁の減収となった。

【App Storeセールスランキングの推移(ゲームカテゴリー)】

 

【Google Playセールスランキングの推移(ゲームカテゴリー)】

 出所:Sensor Tower(センサータワー) 

 

利益面では、テレビCMを中心とする広告宣伝費を抑えたことで大幅な増益を達成した。前年同期は14億5400万円の広告宣伝費を投じたが、この期は8億7800万円まで抑えたことが大きい。一般的に周年にあわせて広告費を増やすものだが、そういった選択は取らなかった。

以前、名前は出さないが、あるモバイルゲーム会社が新株予約権の行使を促すため、広告費を強引に減らして黒字化したケースがあった。結果として株価が上がって権利行使が進み資金調達できたものの、肝心のゲームの方は急速に人気を落としていった。

同社の場合、テレビCMの回収可能性を検討・判断した結果であるとし、目先の収益を狙ったものではないとのことだが、次の四半期の収益はチェックしておきたいところだろう。周年の次の四半期となるため、見極めるのが難しいかもしれないが。

なお、次の担い手となる新作大型RPGの開発にも取り組み、開発費2億5900万円を計上したが、費用の抑制効果で吸収した。新作大型RPGとは「リリースから30日間で全世界100~200億円の課金高、その後全世界月額課金高40億円以上の規模を1年以上推移させる」タイトル。

 

この四半期では、第2弾タイトルの本開発を行っているが、リリース時期は開示していない。第3弾タイトルは企画中。このほか、『恋庭』改良版/海外版とゲーム以外の新サービスの本開発に入っている。こちらもリリース時期は非開示としている。

 

『メメントモリ』で収益を稼ぎつつ、新作開発に投資してヒットタイトルを生み出し、高い成長を狙っていく戦略だ。新作のリリース予定時期は見えていないため、当面は周年の有無で収益を上下させながらも一定の収益を生み出していくのではないか。

 

問題になるのは、強気にも思える新作の目標を達成できるかどうかだ。BOI自身、『メメントモリ』で実績を残しただけに目標達成の確度についても一定の説得力が感じられるが、とはいえこの業界の誰に聞いても「どんな実績のある会社でも新作は世に出してみないとわからない」と答えるのではないか。

『メメントモリ』は「日本国内のみで月額課金高5億円以上の規模を1年以上」を目指した。当時、記者も実現可能なのか半信半疑であったが、蓋を開けてみると30日間で55億円の課金高、そして1年以上10億円以上を維持するなど想定を大きく上回る実績を残し、市場や業界の関係者を大いに驚かせたものだった。

 

モバイルゲーム市場では、大ヒットタイトルを生み出す難易度が年々上がっているといわれる。掲げた目標達成はもちろん、『メメントモリ』を超えるタイトルを生み出すことは簡単ではないだろうが、新作に関する情報開示が待たれる。

最後に『メメントモリ』についても言及しておきたい。新たにSteam版を配信する予定だが、運営面ではアニメや他社ゲームなどIPコラボをほとんど行っていない、稀有なタイトルだ。独特の世界観との相性を考える必要はあるが、施策上でも打ち手があるため、まだ収益を伸ばしていく余地はあるのではないか。

株式会社バンク・オブ・イノベーション(BOI)
http://www.boi.jp/

会社情報

会社名
株式会社バンク・オブ・イノベーション(BOI)
設立
2006年1月
代表者
代表取締役社長 樋口 智裕
決算期
9月
直近業績
売上高136億1500万円、営業利益13億2900万円、経常利益13億6200万円、最終利益8億9500万円(2024年9月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
4393
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