「少子化=玩具市場の縮小ではない」 バンダイ、タカラトミーが見据える“子どもの先”の市場 子供向けから全年齢向けのエンタメ企業へ

木村英彦 取締役 編集長
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少子化が進み、「玩具市場は厳しい」という声はいまも根強い。しかし、上場玩具メーカーの決算を見ると、必ずしもそうしたイメージとは一致しないようだ。

玩具業界を代表するバンダイナムコホールディングスやタカラトミー、玩具流通大手のハピネットは、この数年で"逆風"にも関わらず業績を大きく伸ばしてきた。特にバンダイナムコのトイホビー事業やタカラトミーの玩具事業は好調が続いており、「少子化=玩具市場の縮小」という単純な図式では説明できなくなっている。

その背景には、玩具メーカー各社が「子ども向け玩具メーカー」から、「全年齢向けIP・エンターテインメント企業」へと変貌を遂げつつあることがある。

キーワードとなるのが「キダルト(Kidult)」だ。これは「子ども(Kid)」と「大人(Adult)」を組み合わせた造語で、かつて子ども向けとされていた玩具、アニメ、ゲーム、ぬいぐるみなどのコンテンツや趣味を大人になってからも積極的に楽しむ人々を指す。

 

■「子どもの数」ではなく「ファンの数」を増やす

かつて玩具メーカーの主要顧客は子どもだった。出生数が減れば市場も縮小する――長らくそう考えられてきた。しかし近年の玩具メーカーは、「子どもの数を増やす」のではなく、「ファンとの接点を長く持つ」方向へと舵を切っている。

象徴的なのがバンダイナムコグループだ。同社は、『ガンダム』『ドラゴンボール』『ONE PIECE』など人気IPを軸に、

・ 玩具
・ フィギュア
・ ガシャポン
・ トレーディングカード
・ イベント
・ アニメ
・ ゲーム

を連動させることで、顧客との接触機会を増やしている。もはや玩具を売る企業というより、「IPを運営する企業」に近い。ガンプラを子どもの頃に組み立てた人が、大人になっても高価格帯商品を購入し続ける構造ができている。

 

■タカラトミーが進める全年齢戦略

タカラトミーも同様だ。かつての主力商品だった

・ トミカ
・ プラレール
・ リカちゃん

といったブランドは今も健在だが、その展開は大きく変化している。

例えばトミカでは、

・ トミカプレミアム
・ 限定モデル
・ 実車メーカーとのコラボ

など、高価格帯やコレクター向け商品を強化している。子どもが遊ぶ商品でありながら、親世代や自動車ファンも購入する。

また、『BEYBLADE X(ベイブレードX)』では競技性や大会運営を強化。単なる玩具販売ではなく、コミュニティそのものを育成する方向へ進んでいる。

これはゲーム業界におけるライブサービス型タイトルの運営にも近い。スターター商品を売って終わりではなく、

・ 大会に参加する
・ 新パーツを購入する
・ 限定商品を集める

という継続的な消費を促している。

 

■ぬいぐるみとガチャが年齢の壁を壊した

近年の玩具市場を語る上で欠かせないのが、ぬいぐるみとカプセルトイの存在だ。ぬいぐるみは、もはや子ども向け玩具という枠を超えている。現在では、

・ コレクション
・ インテリア
・ 推し活グッズ

としての需要が高まっており、購入者の年齢層は大きく広がっている。

ガチャ市場も同様だ。かつては子どもの小遣い消費の代表格だったが、

・ ミニチュア雑貨
・ 食品サンプル
・ 家電再現シリーズ
・ キャラクターグッズ
・ アクセサリー

など、大人向け商品が市場を牽引している。実際にガチャ専門店を訪れると、親子連れだけでなく学生や社会人、海外観光客まで幅広い層が利用している。少子化の影響を受けにくい市場へと変貌したと言えるだろう。

 

■女児向けアーケードゲームにも変化

タカラトミーアーツが展開するキッズ向けアミューズメントゲームにも、その変化が見て取れる。『ひみつのアイプリ』は基本的に子ども向けタイトルだが、従来の女児向けアーケードゲームとは異なる側面を持つ。

ライブ演出や楽曲、キャラクター人気、コレクション性などを重視し、

・ 現役の子どもたち
・ 過去シリーズのファン
・ アニメファン
・ キャラクターファン

を同時に取り込もうとしている。特に注目されるのが、「アイプリ」と「アイプリバース」という筐体の分化だ。

従来の女児向けアーケードゲームでは、小さな子どもと熱心な大人のファンが同じ環境で遊ぶという課題があった。

筐体を分けることで、

・ 子どもが気軽に楽しめる体験
・ コアファンがじっくり遊べる体験

を両立させようとしているように見える。これは玩具業界全体が進める「年齢による卒業」を前提としないビジネスモデルとも重なる。

 

■「遊ぶ」から「集める」「参加する」へ

玩具業界で起きている変化を一言で表せば、「モノを売るビジネス」から「体験を提供するビジネス」への転換だろう。ガシャポンやトレーディングカード、一番くじ、ベイブレードなどは、商品の機能そのものよりも、

・ 集める
・ 見せる
・ 交換する
・ 競う
・ イベントに参加する

といった体験価値が重要になっている。この構造はソーシャルゲームやオンラインゲームにもよく似ている。

 

■AIは玩具業界をどう変えるのか

近年は生成AIの導入も話題になっている。

現時点では、

・ 商品企画
・ デザイン案の作成
・ 市場分析
・ 需要予測

といった領域での活用が中心だ。ただし、玩具業界においてAIそのものが競争力になるわけではない。

各社の決算説明会などを見ても、本質的な競争力は依然としてIPやブランドにある。むしろ今後注目されるのは、「玩具そのもののAI化」かもしれない。

将来的には、

・ ユーザーごとに異なる会話をするぬいぐるみ
・ 成長する電子ペット
・ 思い出を記憶するキャラクター玩具

などが登場する可能性もある。そうなれば玩具は単なるモノではなく、長期間付き合うキャラクターサービスへと進化していくだろう。

 

■少子化を乗り越えた玩具業界

玩具業界は少子化という逆風を受けていることは間違いない。しかし、逆風への対応は単純な値上げやコスト削減ではなかった。

・ 子どもだけでなく大人も取り込む
・ IPを軸に長くファンと付き合う
・ コミュニティを育てる
・ コレクション性や体験価値を高める
・ 海外市場へ展開する

こうした取り組みによって、玩具メーカーは「子ども向け産業」から「全年齢向けエンターテインメント産業」へと姿を変えつつある。

決算を見ていると、各社が見ているのは、出生数の推移ではなく、むしろ、「一つのIPを好きになった人と、どれだけ長く関係を築けるか」という点にあるように見える。少子化時代における玩具業界の成長は、その戦略が一定の成果を上げていることを示しているのではないだろうか。

 

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株式会社タカラトミー
http://www.takaratomy.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社タカラトミー
設立
1953年1月
代表者
代表取締役会長 小島 一洋/代表取締役社長CEO 富山 彰夫
決算期
3月
直近業績
売上高2704億5500万円、営業利益242億4600万円、経常利益245億5100万円、最終利益116億7900万円(2026年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
7867
企業データを見る
株式会社バンダイ
http://www.bandai.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社バンダイ
設立
1950年7月
代表者
代表取締役社長 竹中 一博
決算期
3月
直近業績
売上高1491億5500万円、営業利益122億4100万円、経常利益134億4600万円、最終利益99億4700万円(2023年3月期)
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