主要モバイルゲーム企業の25年4~6月決算まとめ サイバーエージェントが業績突出 『ポケポケ』のDeNA急回復 外部決済による収益改善もトピックスに

 

主要なモバイルゲーム企業の2025年4-6月のゲーム事業の決算を振り返っていきたい。上場モバイルゲーム会社を見ると、スポーツ事業や広告事業、メディア事業、出版事業、ブロックチェーン事業など、事業の多角化を進めている会社が少なくないため、今回は、ゲーム関連事業の売上高と営業利益をピックアップした(※セグメント区分がない場合は全社業績を使っている)。今回試験的な掲載のため、四半期売上高15億円以上の企業に絞ったが、集計した結果、営業増益または黒字転換を達成したのは13社中5社だった。

 

【主要モバイルゲーム企業のゲーム関連事業売上高】

 

この中でも目覚ましい活躍を見せたのは、サイバーエージェント<4751>だった。新作『SDガンダム ジージェネレーション エターナル』と『Shadowverse: Worlds Beyond』が大ヒットし業績拡大をけん引した。Cygamesがグループの売上と利益の多くを稼ぐ状況から、アプリボット、Qualiarts、サムザップなど他のゲーム子会社もヒット作品を生み出すなど続々と成長を見せており、売上、利益ともに一歩抜けた存在となっている。

業績回復という面で最も目立ったのは、ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>も無視できないだろう。『Pokémon Trading Card Game Pocket』はリリース直後に比べて一定の反動減があり、テコ入れを進めているというものの、引き続き業績に大きく貢献し、営業利益は1061%増を達成した。モバイルゲーム業界では1本ヒットタイトルが出て業績が様変わりする光景は何度もみられたことだが、今回はDeNAが演出した。

これ以外に、グリーホールディング<3632>やバンク・オブ・イノベーション<4393>、Aiming<3911>も増益または黒字転換となったが、こちらはヒットタイトルを創出して売上と利益を大きく伸ばすというものではなく、主にコスト削減による影響が大きかった。

一方、目立った新作のリリースは行わず、既存タイトル中心の収益だったMIXI<2121>や、ガンホー・オンライン・エンターテイメント<3765>、新規領域へのリソースシフトを行ったマイネット<3928>が減収減益となった。主力タイトルの10周年大型イベントの端境期にあったアカツキ<3932>、既存タイトルが振るわなかったKLab<3656>、コロプラ<3668>は赤字だった。

この四半期のトピックスとして目立ったのは、アプリ外の決済導入による収益改善効果が見えてきたことだろう。決済手数料は、売上変動の影響があることを留意する必要があるが、開示されている限り、バンク・オブ・イノベーションは決済手数料が前年同期8億8900万円から7億9800円に、Aimingも8億2900万円から6億7800万円にそれぞれ減らした。グリーホールディングスも減収の影響があったとはいえ、決済手数料を前年同期比で5億4000万円減らしており、増益要因になったという。

売上に占める外部決済の比率にもよるが、粗利益におおよそ10~20%のプラスの影響が出るため、営業利益や経常利益に与える影響は小さくない。当初は決済はクレジットカードのみというケースが散見されたため、利用者は限定的だったが、決済手段が充実し手軽に利用できる状況にある。アプリストアに比べて、同一課金額で入手できる有料アイテムが多くなるなどユーザーにもメリットが大きいため、これから本格的に普及しそうだ。

各社の動向は以下の通り。

【MIXI 1Q】
デジタルエンターテインメント事業の売上高は160億7600万円(前年同期比11.4%減)、セグメント利益は78億0100万円(同1.1%減)と減収減益だった。スマートデバイス向けゲーム「モンスターストライク」は、MAUが減少したことにより、前年同期と比較して売上高が減少した。ただ、コスト効率化等により、セグメント利益は微減にとどまった。

 

【DeNA 1Q】
ゲーム事業の売上収益は181億3500万円(前年同期比61.7%増)、セグメント利益は100億5700万円(同1,061.1%増)と大幅増収増益となった。2024年10月30日に新規リリースしたタイトル『Pokémon Trading Card Game Pocket』は配信当初の初速からの反動はあったものの、引き続き大きく貢献した。

 

【グリーHD 4Q】
ゲーム事業の売上高は90億6000万円(前年同期比4.0%減)、営業利益は16億3000万円(同20.0%増)と減収増益だった。既存タイトルの周年反動減などで弱含んだものの、アプリストア外の決済を導入することで利益率が改善した。

 

【KLab 2Q】
会社全体の売上高は15億2500万円(前年同期比6.7%減)、営業損失は3億5900万円(前年同期は2億8800万円の損失計上)と減収・赤字幅拡大となった。『キャプテン翼 ~たたかえドリームチーム~』が軟調だった。費用抑制を行ったものの、減収をカバーできなかったという。

 

【アエリア 2Q】
コンテンツの売上高は20億8600万円(前年同期比25.8%減)、営業損失5200万円(前年同期は1億3400万円の損失計上)と減収・赤字幅縮小となった。コンテンツとグッズ販売の売上は回復傾向にあるものの、収益認識の遅れが発生したという。前年同期は新作『18TRIP』の開発など先行投資を行ったため、赤字が膨らんでいた。

 

【コロプラ 3Q】
エンターテインメント事業の売上高は48億4700万円(前年同期比12.6%減)、営業損失は6億5800万円(前年同期10億0800万円の損失計上)だった。新作や主力タイトルの「ドラゴンクエストウォーク」が貢献したものの、既存タイトルの逓減が影響し減収となった。ただ、コストの見直しを行い、赤字幅は縮小した。『Brilliantcrypto』については費用が先行しているようだ。

 

【ガンホー 2Q】
会社全体の売上高は268億1200万円(前年同期比4.0%減)、営業利益は21億8900万円(同63.2%減)だった。『パズル&ドラゴンズ』などモバイルタイトルが減収となったことに加え、Gravityにおける広告宣伝費、ガンホーにおける業務委託費の増加など販売管理費の増加が収益を圧迫した。

 

【ドリコム 1Q】
ゲーム事業の売上高は43億2700万円(前年同期比112.7%増)、セグメント利益は1億2200万円(同51.6%減)と増収減益だった。『Wizardry Variant Daphne』の貢献が大幅な増収となったものの、自社配信タイトルの増加に伴う支払手数料の増加、新規タイトルのリリースに伴うソフトウェア償却費と広告宣伝費の増加が減益要因となった。

 

【Aiming 2Q】
会社全体の売上高は38億2000万円(前年同期比9.5%増)、営業利益4億9100万円(前年同期5億9900万円の損失計上)と増収・黒字転換を達成した。増収効果に加えて、アプリストア外の決済の導入による収益改善、新作開発の落ち着きによる売上原価、外注費の抑制で収益が大きく改善した。

 

【アカツキ 1Q】
ゲーム事業の売上高は17億8200万円(前年同期比52.3%減)、営業損失16億4300万円(前年同期6億2700万円の損失計上)と大幅減収・赤字幅拡大となった。『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』における10周年イベントの端境期だったことに加え、既存タイトルのポートフォリオの見直しが響いたという。『TRIBE NINE』については人件費や外注費などが減らなかったこと、『怪獣8号 THE GAME』のリリースに向けた開発費の増加も響いた。

 

【マイネット 2Q】
ゲーム事業の売上高は16億5500万円(前年同期比20.0%減)、営業利益1億9100万円(同18.0%減)と減収減益だった。既存タイトルは引き続き好調に推移した一方、受託開発など新領域におけるパイプラインの拡充を図った。「Jリーグ公式トレーディングカード × ファンタジースポーツゲーム」の開発・運営を担当することも決定した。

※セグメント変更を行ったためグラフは作成できなかった

 

【バンク・オブ・イノベーション 3Q】
会社全体の売上高は28億4300万円(前年同期比6.8%減)、営業利益は6億2700万円(同245.3%増)と大幅増益となった。減収となったものの、広告効率の観点で広告出稿量を大きく減少させたことが奏功した。広告宣伝費は前年同期10億1400万円から5億1400万円に減った。アプリストア外の決済の導入による改善も効いた。新作開発費も計上したが、費用削減による効果で吸収した。

 

【サイバーエージェント 3Q】
ゲーム事業の売上高は506億5100万円(前年同期比30.4%増)、営業利益は164億5400万円(同220.7%増)と大幅増益を達成した。『SDガンダム ジージェネレーション エターナル』と『Shadowverse: Worlds Beyond』が大ヒットし、売上、利益ともに大きく伸びた。Cygames以外のゲーム子会社もヒットタイトルを生み出せるようになっており、他社とは一線を画す重層的な事業、収益構造になっている。

 

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
https://dena.com/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1639億9700万円、営業利益289億7300万円、税引前利益318億1700万円、最終利益241億9300万円(2025年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2432
企業データを見る
株式会社MIXI
https://mixi.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社MIXI
設立
1997年11月
代表者
代表取締役社長 木村 弘毅
決算期
3月
直近業績
売上高1548億4700万円、営業利益266億円、経常利益265億1100万円、最終利益176億100万円(2025年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2121
企業データを見る
グリーホールディングス株式会社
https://hd.gree.net/

会社情報

会社名
グリーホールディングス株式会社
設立
2004年12月
代表者
代表取締役会長兼社長 田中 良和
決算期
6月
直近業績
売上高571億1100万円、営業利益48億6000万円、経常利益37億6000万円、最終利益11億9400万円(2025年6月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3632
企業データを見る
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
http://www.gungho.co.jp/

会社情報

会社名
ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
設立
1998年7月
代表者
代表取締役社長CEO 森下 一喜
決算期
12月
直近業績
売上高1036億円、営業利益174億9100万円、経常利益200億1300万円、最終利益111億7100万円(2024年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3765
企業データを見る
株式会社アエリア
http://www.aeria.jp/

会社情報

会社名
株式会社アエリア
設立
2002年10月
代表者
代表取締役会長 長嶋 貴之/代表取締役社長 小林 祐介
決算期
12月
直近業績
売上高191億5500万円、営業損益4200万円の赤字、経常損益5200万円の赤字、最終損益:7億3900万円の赤字(2024年12月期)
上場区分
東証スタンダード
証券コード
3758
企業データを見る
株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高8029億9600万円、営業利益418億4300万円、経常利益414億7500万円、最終利益162億4600万円(2024年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
企業データを見る
株式会社ドリコム
http://www.drecom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ドリコム
設立
2001年11月
代表者
代表取締役社長 内藤 裕紀
決算期
3月
直近業績
売上高126億5500万円、営業利益1億1200万円、経常利益5300万円、最終損益10億3500万円の赤字(2025年3月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3793
企業データを見る
KLab株式会社
https://www.klab.com/jp/

会社情報

会社名
KLab株式会社
設立
2000年8月
代表者
代表取締役社長CEO 真田 哲弥
決算期
12月
直近業績
売上高83億600万円、営業損益13億4200万円の赤字、経常損益12億8000万円の赤字、最終損益27億8200万円の赤字(2024年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3656
企業データを見る
株式会社アカツキ
https://aktsk.jp/

会社情報

会社名
株式会社アカツキ
設立
2010年6月
代表者
代表取締役CEO 香田 哲朗
決算期
3月
直近業績
売上高236億5200万円、営業利益39億1500万円、経常利益42億3300万円、最終利益16億4600万円(2025年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3932
企業データを見る
株式会社コロプラ
https://colopl.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社コロプラ
設立
2008年10月
代表者
代表取締役社長 宮本 貴志
決算期
9月
直近業績
売上高259億7500万円、営業損益12億800万円の赤字、経常損益9億4700万円の赤字、最終損益18億6600万円の赤字(2024年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3668
企業データを見る
株式会社バンク・オブ・イノベーション(BOI)
http://www.boi.jp/

会社情報

会社名
株式会社バンク・オブ・イノベーション(BOI)
設立
2006年1月
代表者
代表取締役社長 樋口 智裕
決算期
9月
直近業績
売上高136億1500万円、営業利益13億2900万円、経常利益13億6200万円、最終利益8億9500万円(2024年9月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
4393
企業データを見る