コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は、9月25~28日までの期間、千葉県・幕張メッセにて「東京ゲームショウ2025(TGS2025)」を開催している。本稿では、一般来場者が注目するゲームタイトルの試遊やステージイベントだけではなく、業界関係者にとって重要な情報発信の場となる「ビジネスソリューションエリア」に焦点を当てる。
データ分析からAI活用へ
――シンキングデータの次なる一手

毎年出展を続けているシンキングデータは今回も出展。同社はユーザー行動や課金動向を可視化するデータ分析ツールで知られており、多くの国内外ゲーム企業が導入しており、その数は導入企業数は1,500社数を超え、作品数は8,000本以上となる。
今年の出展で注目を集めたのは、従来の分析サービスを基盤としつつ「AIを活用した新しい分析ソリューション」を打ち出していた点である。従来型のダッシュボードによる可視化に加え、AIがデータの傾向を読み取り、改善提案や施策シミュレーションを自動で提示する仕組みも導入されるそうだという。

ブースでは、こうした真面目な商談だけでなく、来場者向けにガチャガチャを設置。景品としてオリジナルグッズを提供するなど、フレンドリーな雰囲気を演出していた。硬派なデータ分析サービスを提供する同社が、親しみやすさを前面に押し出していたことも印象的である。
DMMGAME翻訳から進化
――AlgoGames翻訳が示すAI時代の翻訳サービス

翻訳・ローカライズ領域から注目を集めたのはAlgoGames翻訳である。同社は以前「DMMGAME翻訳」としてサービスを提供していたが、AI技術の浸透や多言語展開ニーズの増大を背景に、ブランドを刷新した。サービス名の変更は単なる看板の掛け替えではなく、事業規模とサービス内容の拡張を伴うものだった。

展示では、AIによる自動翻訳をベースにしつつ、人間の翻訳者によるチェックを組み合わせたハイブリッドなワークフローが紹介されていた。これによりコスト効率を改善しながら、クリエイターの意図を正確に伝えることが可能になるという。

担当者は「AIはクリエイターを置き換えるものではない。むしろ表現の幅を広げ、作品をより多くの国へ届けるための手助けである」と語っており、翻訳を単なる技術支援に留めず、ゲームクリエイターの可能性を拡張する存在でありたいという理念を強調していた。
需要が拡大している外部決済
――Xsollaがアピールする決済・マネタイズソリューション

決済とマネタイズの分野では、世界的なプラットフォーマーであるXsollaが前年に続いて出展していた。今回は例年よりもブースを拡大しており、注目度が高かった。その背景には、日本国内で施行されたスマホ新法の影響がある。これによりアプリストア外での決済利用や外部課金導入が注目され、ゲーム企業側のニーズが急増しているのだ。
外部決済サービスは他社からも提供されているが、Xsollaの強みは「世界各地の決済手段に幅広く対応していること」そして「税金やコンプライアンスなど国ごとに異なる法制度に適合できる体制を持つこと」にある。
グローバル市場を視野に入れる企業にとって、決済や課金の仕組みは避けて通れない課題である。そうした課題をワンストップで解決できる同社の存在は、今後ますます価値を増していくといえるだろう。
東海道新幹線がゲームに?
――JR東海エージェンシーのユニークな出展

ビジネスソリューションエリアの中で異彩を放っていたのが、JR東海エージェンシーの出展である。鉄道事業者の関連会社がゲームショウに出展することは珍しく、その狙いを尋ねると「東海道新幹線をゲームの中で活用するきっかけを作りたい」という答えが返ってきた。
展示されていたのは新幹線にとどまらない。駅名標や在来線車両、さらには車内アナウンスや走行音といったサウンド素材まで、多様なライセンス活用の可能性が紹介されていた。これまでの実績事例もパネルで提示され、ゲーム内で鉄道コンテンツを自然に組み込む方法について具体的に理解できる内容となっていた。
鉄道とゲームのコラボレーションは、シミュレーションや教育分野だけでなく、エンタメ作品としての広がりも期待される。今回の出展はその可能性を強く印象づけるものだった。
TGS2025のビジネスソリューションエリアは、例年以上に多彩な顔ぶれが揃い、データ分析からAI翻訳、グローバル決済、さらには新幹線ライセンスまで、多種多様であった。本稿で紹介した各社の取り組みは、今後のゲームビジネスに新しい展開をもたらす契機となれば幸いだ。