大手モバイルゲーム企業の25年7-9月決算まとめ ゲーム事業の増収増益はCAとDeNA、増益組の多くは費用圧縮 外部決済の効果は明かすも多くを語らず

主要なモバイルゲーム企業の2025年7-9月のゲーム事業の決算を振り返っていきたい。上場モバイルゲーム会社を見ると、スポーツ事業や広告事業、メディア事業、出版事業、ブロックチェーン事業など、事業の多角化を進めている会社が少なくないため、今回もゲーム関連事業の売上高と営業利益をピックアップした(※単一セグメントの場合は全社業績を使っている)。四半期売上高15億円以上の企業に絞った。集計した結果、営業増益または黒字転換を達成したのは13社中8社だった。赤字企業は2社にとどまっており、全体としては悪くない四半期だったといえるだろう。

 

【主要モバイルゲーム企業のゲーム関連事業売上高】

 

この中でも目覚ましい活躍を見せたのは、サイバーエージェント<4751>だった。売上、利益ともに他社に大差をつけている。『SDガンダム ジージェネレーション エターナル』『Shadowverse: Worlds Beyond』『ウマ娘プリティーダービー英語版』など新作が大ヒットした。モバイルゲームの会社は、特定のタイトルをメガヒットさせて収益を伸ばす『一本足打法』が多かったが、Cygamesをはじめ、アプリボット、Qualiarts、サムザップなど複数のゲーム子会社がヒット作品を続々と生み出した。

すっかりレッドオーシャンになった昨今のモバイルゲーム市場ではヒットタイトルを生み出すのは容易ではない。サイバーエージェントグループのヒットタイトルを高確率で生み出し、そして一過性の収益に終わらせず、継続的に高収益を上げる開発力と運用力の高さは業界でも飛び抜けている。マイネットを創業した上原仁氏はかつて決算説明会の場で「利益は社会からの通信簿」とたびたび話していたものだが、この言葉に照らせば、サイバーエージェントが受け取った「通信簿」は圧倒的な高評価だったと言えるだろう。

一方で、同じく社会からの評価を大きく回復させた企業として、ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>も挙げられる。『Pokémon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)』はリリース直後に比べて反動減が続いているものの、前年同期比では361.2%増と大幅な増益を達成した。『ポケポケ』は1周年を迎えており、テコ入れのためのアップデートも行ったが、その効果が今後注目される。

増益を達成しようとする場合、(1)売上を伸ばして利益を伸ばしたパターンと、(2)コストを減らして利益を伸ばしたパターンに大きく分かれる。サイバーエージェントとDeNAは前者だったが、このケースはあくまで例外だ。成熟したモバイルゲーム市場にあっては、売上を伸ばして利益を伸ばすのは簡単ではなく、後者となってしまうことが近年は特に多い。

コロプラ<3668>やAiming<3911>、グリーHD<3632>やMIXI<2121>、アエリア<3758>はいずれも費用減による増益だった。そして、バンク・オブ・イノベーション<4393>は『メメントモリ』のリリース以来、初めて売上高が前年同期比でプラスになったとのことだが、黒字転換の主な要因は広告宣伝費の削減だったという。

このほか、この四半期でも「課金」決済時にアプリストアを経由しない、アプリ外決済導入による収益改善効果を言及する一方で、導入タイトル数や収益への影響など具体的な開示を行わない会社が目立った。スマホソフトウェア競争促進法の全面施行を控えているが、世界的にも規制環境がまだ安定していないうえ、アプリの審査やストアのフィーチャーなども絡むため、プラットフォーマーとの無用な摩擦は避けたいと考える会社が少なくないようだ。外部決済は「かなりセンシティブな問題」(モバイルゲーム企業マーケター)を孕んでおり、必要以上の開示やアピールを控えているようだ(※)。

※どことはいわないが、ここに入っているモバイルゲーム企業の決算記事でこの会社はこのサービスを使っているなどと調べて記載したところ、掲載後すぐに該当箇所の削除を求めるメールが届いたほどである。

各社の動向は以下の通り。

 

【MIXI 2Q】
デジタルエンターテインメント事業の売上高は196億1500万円(前年同期比10.9%減)、EBITDAは同5.9%増の87億7000万円と減収・増益だった。主力の『モンスターストライク』は、一部コラボが想定を下回り、MAUが前年同期を下回ったことで減収となった。しかし、コスト効率化が進んだことで収益性が大きく改善し増益を達成した、としている。

 

【DeNA 2Q】
ゲーム事業の売上収益154億3900万円(前年同期比35.8%増)、69億8200万円(同361.2%増)と大幅増収増益となった。2024年10月30日に新規リリースしたタイトル『Pokémon Trading Card Game Pocket』は配信当初の初速からの反動はあったものの、引き続き大きく貢献した。第2四半期のMAU(月次アクティブユーザー数)は3000万人で、ユーザー消費額の6割は海外からだったという。継続率を引き上げるアップデートを行ったが、1周年を迎えた次の四半期からが正念場になるかもしれない。

 

【グリーHD 1Q】
ゲーム事業の売上高は75億0300万円(前年同期比13.8%減)、営業利益7億7900万円(同31.8%増)と減収増益だった。既存タイトルの周年反動減などで弱含んだものの、広告宣伝費の抑制やアプリストア外の決済を導入することで利益率が改善した。

 

【KLab 3Q】
会社全体の売上高は17億7300万円(前年同期比27.0%減)、営業損失2億1300万円(前年同期は8900万円の営業損失)と減収・赤字幅拡大となった。外注費や労務費、外部決済の導入などを抑制したものの、減収の影響はカバーできなかった。子会社だったグローバルギアがこの四半期の連結から除外されたことも響いたもようだ。

 

【コロプラ 4Q】
エンターテインメント事業の売上高は64億0800万円(前年同期比2.6%減)、営業利益6億4400万円(前年同期7億7300万円の損失計上)と減収・黒字転換を達成した。周年イベントを迎えた『ドラゴンクエストウォーク』が貢献したものの、既存タイトルが逓減した。ただ前年同期に行っていた『Brilliantcrypto』の開発や広告宣伝など先行投資が抑制されたことが黒字転換の要因となったようだ。

 

【アエリア 3Q】
コンテンツの売上高は25億8000万円(前年同期比0.9%減)、営業利益8900万円(前年同期8000万円の損失計上)と減収・黒字転換を達成した。コンテンツとグッズ販売の売上は回復傾向にあるとのこと。前年同期は新作『18TRIP』のリリースに伴う費用を計上していた。

 

【ガンホー 3Q】
会社全体の売上高は230億0700万円(前年同期比0.8%増)、営業利益8億4800万円(同76.5%減)と大幅減益となった。主力タイトル『パズル&ドラゴンズ』の7月の売上高がコラボがなかったために減収となったことに加えて、子会社Gravityにおける広告宣伝費の増加、ガンホーにおける業務委託費の増加などが響いた。

 

【ドリコム 2Q】
ゲーム事業の売上高は36億1000万円(前年同期比104.9%増)、営業損失2億3700万円(前年同期は200万円の利益計上)と大幅増収・赤字転落となった。『Wizardry Variants Daphne』の貢献が大幅な増収となったものの、『Wizardry Variants Daphne』の周年イベント前の広告宣伝の強化、他の運用タイトルにおける不正課金への対応などで一時費用が発生したとのこと。

 

【Aiming 3Q】
会社全体の売上高は36億500万円(前年同期比0.7%減)、営業利益2億5500万円(前年同期は5億5400万円の損失計上)と黒字転換を達成した。4四半期連続の黒字となった。『ドラゴンクエストタクト』の5周年イベントが収益を支えたほか、人件費や外部決済によるプラットフォーム手数料など販売管理費を抑制したことが奏功した。

 

【アカツキ 2Q】
ゲーム事業の売上高は72億4800万円(前年同期比5.9%減)、営業利益34億6700万円(同6.4%減)と減収減益だった。『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』など既存タイトルが好調だった前年同期に及ばなかったため、としている。8月には『怪獣/号 THE GAME』をリリースしたが、1か月間の課金売上は20億円以上と好調な立ち上がりとなったが、リリースに伴う減価償却費や広告宣伝費が増加した。

 

【マイネット 3Q】
ゲーム事業の売上高は15億9000万円(前年同期比16.3%減)、営業利益1億5700万円(同19.5%減)と減収減益だったが、11四半期連続の黒字を達成した。セカンダリー事業で安定した収益を生み出しつつ、人材マッチングやパートナー企業の開発をサポートする受託開発へのリソースシフトを推めているとのこと。順調に進捗しているという。

【バンク・オブ・イノベーション 4Q】
会社全体の売上高は29億3900万円(前年同期比3.6%増)、営業利益5億0900万円(前年同期は300万円の損失計上)と増収・黒字転換を達成した。主力タイトル『メメントモリ』をリリースして以来、初の前年同期比で増収となった。新作ゲームへの開発を行いつつ、広告効率の観点で広告出稿量を大きく減らしたことが収益改善につながったという。 広告宣伝費を減らす中での増収はポジティブなニュースと言えよう。

 

【サイバーエージェント 4Q】
ゲーム事業の売上高は763億4600万円(前年同期比70.0%増)、営業利益256億1000万円(同508.2%増)と大幅増収増益を達成した。売上、利益ともに2位以下を大きく引き離している。モバイルゲーム関連でも圧倒的な存在となった。『SDガンダム ジージェネレーション エターナル』と『Shadowverse: Worlds Beyond』『ウマ娘プリティーダービー英語版』など新作が立て続けに大ヒットし業績拡大をけん引した。

 

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
https://dena.com/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1639億9700万円、営業利益289億7300万円、税引前利益318億1700万円、最終利益241億9300万円(2025年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2432
企業データを見る
株式会社サイバーエージェント
http://www.cyberagent.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社サイバーエージェント
設立
1998年3月
代表者
代表取締役 藤田 晋
決算期
9月
直近業績
売上高8740億3000万円、営業利益717億0200万円、経常利益717億4300万円、最終利益316億6700万円(2025年9月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
4751
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