東宝<9602>は、グローバル展開の加速と国内顧客基盤の強化を目的に、二つの事業再編を実施することを明らかにした。一つは海外ライセンス事業の子会社への移管、もう一つは映画館会員事業の親会社への集約だ。いずれも、権限とデータを戦略的に集約することで、意思決定の迅速化と中長期的な成長を狙う。
■海外ライセンス事業をTOHO Globalへ集約
まず海外事業では、東宝本体が担ってきた海外向けライセンス事業を、100%子会社であるTOHO Globalへ移管する。再編は、東宝を分割会社、TOHO Globalを承継会社とする簡易吸収分割の形で行う。対象となるのは、東宝が利用権限を有する映像作品や各種コンテンツを、国外市場に向けて上映・頒布・利用許諾するライセンス事業だ。
近年、東宝IPの海外展開は拡大傾向にあり、国や地域ごとに異なる商習慣や法制度への対応力が重要性を増している。今回の再編により、海外事業の事業主体をTOHO Globalに一本化し、現地ニーズに即した機動的な意思決定と業務執行体制を整える。グローバル市場におけるIP価値の最大化を見据えた、体制強化の一手といえる。
■シネマイレージ事業を親会社へ統合
一方、国内では顧客基盤の再構築に向けた再編を行う。TOHOシネマズが運営してきた映画館会員カード「シネマイレージカード」に関する事業を親会社である東宝へ移管する。こちらも簡易吸収分割の方式を採り、TOHOシネマズを分割会社、東宝を承継会社とする。
狙いは、映画館会員サービスを東宝グループ全体の顧客基盤として再定義することにある。東宝は、シネマイレージと既存の「東宝ナビザーブ」などのサービスを統合し、2026年3月に新会員サービス「TOHO-ONE」を開始する計画だ。現在約400万人規模の会員基盤を起点に、創業100周年を迎える2032年には、1,000万人規模のサービスへと成長させる構想を描く。
新会員サービスでは、従来の劇場体験に加え、デジタル領域での体験提供を強化する方針だ。映画鑑賞にとどまらず、コンテンツやサービスを通じて顧客と継続的につながる関係性の構築を目指す。
今回の再編は、単なる組織整理ではなく、海外では権限を子会社に集約し、国内ではデータと顧客を親会社に集約するという、明確な戦略的意図を持つ。東宝は、グローバルIP企業としての競争力と、国内での強固な顧客基盤を両輪に、次の成長フェーズへ踏み出そうとしている。
会社情報
- 会社名
- 東宝株式会社
- 設立
- 1932年8月
- 代表者
- 取締役会長 島谷 能成 / 取締役社長 松岡 宏泰
- 決算期
- 2月
- 直近業績
- 営業収入3131億7100万円、営業利益646億8400万円、経常利益644億5500万円、最終利益433億5700万円(2025年2月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 9602