
松竹<9601>がインディーゲームパブリッシャーとして存在感を急速に高めている。映画・演劇の老舗である松竹がここ数年でゲーム領域、とりわけインディー市場に本格参入し、短期間で一定のポジションを築きつつある。
■インディーゲーム事業を急拡大、「松竹ゲームズ」始動
同社は2024年にゲーム事業ブランド「松竹ゲームズ」を立ち上げ、PC(Steam)向けタイトルを中心にパブリッシング事業を本格化させた。
2024年6月にはゲーム事業室を立ち上げ、海外インディー作品の日本展開や、開発支援を含めた包括的な取り組みをスタートしている。
従来の映画配給・興行で培った宣伝力やIP展開ノウハウを活かしつつ、ローカライズ、プロモーション、グッズ展開まで一体で手がける点が特徴だ。
■イベント出展と海外展開で認知を拡大
松竹は認知拡大のため、ゲームイベントへの積極参加も進めている。
国内では東京ゲームショウやBitSummitに出展。さらに2026年にはTOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2026にも参加し、最新タイトルのデモを公開した。
加えて、2025年には中国・上海のWePlayへ初出展するなど、早い段階から海外市場も視野に入れた展開を進めている。
■アクセラレーターで“エコシステム"構築へ
単なるパブリッシャーにとどまらず、開発者支援にも踏み込んでいる点も注目される。グループの投資部門を通じ、ゲーム特化のグローバルアクセラレータープログラムを実施。約200社の応募の中から選抜したスタートアップを支援するなど、インディーゲームのエコシステム構築にも力を入れている。
これは、単発のヒット創出ではなく、継続的に有望タイトルを生み出す“土壌"づくりを意図した動きといえる。

■ヒット作も登場、短期間で実績を積み上げ
参入から間もないながら、すでに複数のヒット・注目作を抱えている。
代表例のひとつが、インベントリ管理を軸にした対戦ゲーム『バックパック・バトル』。シンプルながら中毒性の高いゲーム性で世界的なヒットを記録し、松竹のゲーム事業における“初速"を象徴するタイトルとなった。
また、『MiSide』はSteamで10万件を超えるレビューを集めるなど高評価を獲得。
さらに、『ヨグ=ソトースの庭』はホテル経営と恋愛ADVを組み合わせたユニークな作品として人気を集めている。
■多ジャンル展開でポートフォリオを拡充
現在、松竹ゲームズが関与するタイトルは10本前後に拡大。ジャンルも幅広い。
たとえば、
・『夢幻桜楼閣』:ローグライト3Dアクション
・『BrokenLore: UNFOLLOW』:SNSをテーマにした心理ホラー
・『リターン・フロム・コア』:地下世界の探索×自動化
・『ガスステーションシミュレーター』:海外人気作のローカライズ
・『Preserve』:自然構築型パズル
・『Craftrium』:アクアリウム構築シム
など、アクション、ホラー、シミュレーション、サンドボックスまで多岐にわたる。
さらに『Below the Crown』のような戦略ローグライク作品も控えており、ラインアップは拡充を続けている。

■“宣伝×IP展開"で差別化できるか
松竹の強みは、単なるゲームパブリッシャーではなく、映画・演劇で培った“見せ方"と“広げ方"にある。実際、公式サイトやSNSの整備、ポップアップストア開催など、コンテンツ横断的なプロモーションもすでに実施している。
インディーゲーム市場は競争が激しく、優れた作品でも埋もれがちだ。参加する開発者が年々増えており、インディーゲームのレベルが近年急速に上がるなか、「良いゲームを作る」だけではユーザーに手に取ってもらうことが難しくなっている。
その中で、同社の宣伝力やIP展開力がどこまで差別化要因になるかが今後の焦点となるだろう。
■短期の成果から中長期の柱へ
参入から約1~2年でヒット作を複数創出し、イベント・海外展開・開発支援まで一気に広げた松竹の動きは、国内大手としては異例のスピード感だ。
映画会社としての歴史を持つ松竹が、インディーゲームという成長領域でどこまで存在感を高められるか。同社のゲーム事業は、単なる新規事業を超え、次の収益の柱へと進化できるかどうかのフェーズに入りつつある。
会社情報
- 会社名
- 松竹株式会社
- 設立
- 1920年11月
- 代表者
- 代表取締役会長 会長執行役員 迫本 淳一/代表取締役社長 社長執行役員 髙𣘺 敏弘/代表取締役 副社長執行役員 武中 雅人
- 決算期
- 2月
- 直近業績
- 売上高982億4900万円、営業利益61億7300万円、経常利益63億4500万円、最終利益52億3600万円(2026年2月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 9601