インディーゲームに資金はどう提供されるのか? 市場拡大の裏で国内の機会が少ない「民間投資」の課題に迫る

4月8日、東京都内にて、IGDA日本SIG-Growthは「日本のインディーゲームに対する投資・資金提供機会を創出するには」と題したセミナーを開催した。このセミナーは、インディーゲーム開発者の視点から、日本のインディーゲームに関する全体像を解説し、インディーゲーム投資の可能性と課題を探るというものだ。

セミナーの前半はヘッドハイ代表を務め、自らもインディーゲーム開発を行う一條貴彰氏が登壇。日本のインディーゲームと投資の現状を語った。

インディーゲームの現在地

一條氏はまず、「すべてのインディーゲームが事業的成功を目指すべきだとは考えていない」と前置きした。売上や収益の最大化を目的としない、アート志向、趣味や交流活動として制作されるゲームについても支持していると説明した。

そのうえで本セミナーは、あくまで「事業的な成功を志向する開発者が、機会を得られる環境をどう作るか」を主題として開催したものであると位置付けた。

最初の議題として取り上げられたのは、「インディーゲームの現在地」だ。まず前提として、本セミナーにおけるインディーゲームの定義が示された。すなわち、独立した小規模・少人数のスタジオによって開発され、オンラインストアで販売されるデジタルゲームを指す。

続いて、一條氏はインディーゲームを「ゲーム業界における働き方の一形態」として説明した。「インディーゲーム業界」という独立した領域が存在するわけではなく、あくまで既存のゲーム業界の中に内包されているものだとする。

なぜならば、大手企業との違いは規模に過ぎず、使用する技術や開発環境、さらには展開するプラットフォームも共通している。Steamや家庭用ゲーム機、スマートフォンといった市場において、インディーと企業作品は同じ土俵に立っているからである。
さらに、「プロ」と「アマチュア」といった明確な線引きは存在せず、活動形態は連続的なグラデーションとして存在している点も指摘した。

加えて、小規模な制作体制についても言及した。インディー開発における小規模性は成長途上の状態ではなく、意図的に維持される形態であるとし、上場や事業売却を前提としないケースが多いと説明した。そのあり方は、個人または少人数で創作活動を行う漫画家に近いものとして位置付けていた。

続いて、一條氏はインディーゲームを取り巻く市場環境についても説明。現在、インディーゲームはグローバルなゲーム市場の中で拡大を続けている。世界的に見たゲーム産業への投資総額は175億ドル(約2.6兆円)に達しており、前年と比較して投資額は39%、件数は16%増加している。

そのうち、2024年のグローバルゲーム投資のうち43億ドルがインディースタジオに向けられており、一定規模の資金がインディー領域にも流入している状況にある。また、ゲーム分野に特化したベンチャーキャピタル(VC)の設立も相次いでいる。

こうした動きは、日本国内のインディーゲームにも波及している。2024年には『8番出口』が140万本を超えるヒットを記録したほか、2025年の『都市伝説解体センター』、2026年の『Öoo』といったタイトルが国内外で高い評価を得ている。

さらに、日本国内のインディーゲーム展示イベントも活況を呈している。『デジゲー博』や、『BitSummit』といったイベントは、開発者とユーザー、さらには国内外の関係者を結びつける場として機能している。

こうした市場の拡大を背景に、日本国内でもインディーゲームを支援する仕組みは徐々に整備されつつある。
6年前から、産学官連携による日本のインキュベーションプログラム「iGi」がスタートしており、『8番出口』は同プログラムの採択生が、卒業後に制作した作品である。また、経済産業省が主催するインディーゲーム開発者向けアクセラレーションプログラム「創風」も2024年に開始され、500万円の補助金に加えてメンタリングを提供するなど、開発者を直接支援する取り組みが進められている。

このほかにも、開発者コミュニティやカンファレンス、地域単位での支援など、多様な形でインディーゲームを支える基盤はすでに存在している。
一方で、一條氏は現状の課題として「民間出資による支援の少なさ」を挙げた。インキュベーションプログラムや行政による支援、コミュニティといった要素は一定程度充実化されてきているものの、民間資本による投資機会は依然として限定的であると指摘する。
そのため、今後は開発者が事業的成功を目指す際に、資金面での選択肢を広げる仕組みをいかに構築していくかが重要であるとした。

インディーゲームにおける資金調達の現状は?

ここから一條氏は、本セミナーの主題であるインディーゲーム開発における「開発資金」調達の現状について解説を行った。

まず前提として、インディーゲームの販売形態は大きく2つに分けられる。ひとつは、開発者または開発チームが開発から販売までをすべて自ら行うケース。もうひとつは、販売業務を外部に委託するケースである。
本セミナーでは後者、すなわち販売業務を外部に委託するモデルを中心に議論が進められた。

近年、この領域ではインディーゲームに特化した販売事業者、いわゆる「インディーゲームパブリッシャー」が増加している。『PARCO GAMES』や『SHOCHIKU GAMES』といった、異業種からの参入も見られるようになっている。

パブリッシャーの役割は多岐にわたる。デジタルストアへの配信手続きや、家庭用ゲーム機向けの開発機材の貸し出し、ローカライズ(翻訳)、デバッグおよび品質チェック、マーケティング、発売前後のカスタマーサポートに加え、各プラットフォームへの移植やパッケージ版の展開、さらにはグッズの製造・販売までを担うケースもある。

こうしたパブリッシャーのビジネスモデルとしては、いくつかのパターンが存在する。代表的なものとしては、完成が近いゲームと販売契約を結び、売上を分配するレベニューシェア型が挙げられる。この場合、ゲーム発売後の売上から一定割合をパブリッシャーが受け取る形となる。
日本においてはこのレベニューシェア型が主流であり、開発段階から資金を提供するケースは依然として少ない状況にある。

資金提供を伴う取り組みとして、日本ではコンテスト形式のスキームも存在する。これは作品コンテストを実施し、採択されたタイトルに対して開発資金を提供するもので、進行状況に応じたマイルストーンごとに分割して支払われる。
その後、作品の販売によって得られた売上から提供した資金を回収し、回収後は一定の割合で収益を分配する仕組みとなっている。

パブリッシャーとの関係と資金調達の多様化

こうした状況を踏まえ、一條氏は「インディーゲーム開発者にとって、良いパブリッシャー探しは重要な要素」と指摘した。

パブリッシャーに配信を委託する場合、開発者は複数のパブリッシャーと交渉を行い、自身の作品や目標に合致する条件を提示するパートナーを選定する。具体的には、海外市場におけるマーケティングに強みを持つ企業や、インフルエンサーを活用したプロモーションに長けた企業、開発資金の提供が可能な企業、家庭用ゲーム機への移植に対応できる企業など、それぞれの特性を比較検討することが求められる。

パブリッシャーが提供する支援内容によって、売上の分配比率も変動する。一般的には、開発者とパブリッシャーの取り分は8対2から5対5程度のレンジで調整されるケースが多いとした。

また、日本独自の動きとして、資金提供を伴うゲーム販売型コンテストの存在にも言及した。この仕組みでは、主催企業がパブリッシャーとしてゲームの販売を担うと同時に、開発資金を提供する。開発費は発売後の売上から回収され、その後は一定割合でレベニューシェアが行われる。
具体例としては、集英社の「ゲームクリエイターズCAMP」や、講談社の「ゲームクリエイターズラボ」がある。

さらに、インディーゲーム開発者を対象とした資金援助の取り組みも存在する。ゲームプロデューサーの岡本吉起氏が関わる一般社団法人日本ゲーム文化振興財団では、「ゲームクリエイター助成制度」を設けており、35歳以下を対象に最大200万円の支援を行っている。

一方で、クラウドファンディングについて一條氏は、「マーケティング手段としては有効である」としつつも、「開発資金全体を賄う手段としては機能しにくいのではないか」とのこと。

過去には大型の資金調達を目的としたクラウドファンディングが実施された例もあるが、開発資金の流用やプラットフォーム側からの未払いといった問題が発生したケースもあり、安定的な資金調達手段としては課題が残る。

その結果、現在ではゲーム本体の開発資金を集める手段というよりも、完成見込みのある作品に対して追加要素の実装などを掲げたマーケティング施策として活用される傾向が強まっている。具体的には、追加コンテンツの制作や家庭用ゲーム機への展開などをストレッチゴールとして設定する形がある。

さらに一條氏は、海外における具体的な出資事例を紹介した。まず『Morbid Metal』は、個人開発からスタートしたプロジェクトであるが、その後Ubisoftの出資を受け、スタジオ化に至った事例だ。
同様に、『Dinkum』も個人開発作品として始まり、最終的には『PUBG』で知られるKRAFTONの出資を受けてスタジオ化している。

また、日本の事例としては、2人組開発チームmarumittu gamesによる『D-Topia』が、アメリカのAnnapurna Interactiveから出資を受けたケースが紹介された。
これらの事例が示すように、海外では個人または小規模チームのプロジェクトに対して資本が投入され、スタジオ化や事業拡大につながる流れが一定程度確立されている。

その反面、日本企業が国内のインディー開発者に出資するケースは依然として少ない。日本企業から海外スタジオへの出資は見られるものの、日本から日本への投資の流れは限定的であるのが現状のようだ。


投資目線で見るインディーゲームの難しさ

これらの状況を踏まえ、一條氏は次のテーマとして「インディーゲーム投資の難しさ」について語った。

一條氏は、「現状では、何も考えず積極的に投資をすれば良いというわけではない」としたうえで、その背景にある市場構造を説明した。
まず、Steamにおける競争環境の厳しさが挙げられる。2025年には約2万本近い新作タイトルがリリースされているが、そのうち開発資金を回収し、さらに利益を上げられている作品は全体の約10%程度にとどまるとされている。

また、売上構造にも特徴がある。2025年時点では、新作タイトルの売上が占める割合は29%に対し、過去にリリースされたタイトルが約70%を占めている。すなわち、新作が市場に参入しても、既存タイトルとの競争に直面する構造となっている。

加えて、Steamのアルゴリズムはプレイヤーの嗜好に基づいてゲームを表示する仕組みとなっており、広告枠を購入して露出を増やすといった手法は取れない。いわゆるフェアな表示環境である一方、意図的な露出拡大が難しい点も特徴だ。

こうした市場環境に加え、国内ゲーム開発者側が抱えるハードルも指摘された。一條氏は、「開発者が出資を受けることに関して、知見や経験が十分に提供されていない」点を問題として挙げる。

具体的には、ゲーム制作をきっかけにチームを組成し、法人化して事業として展開するキャリア設計が一般的ではなく、また、出資を受けることで作品の完成度を高める認識も浸透していない。背景には、成功事例の少なさがあるとした。そのため、単に投資機会を増やすだけでなく、「投資先のファイナンス面をサポートする」という視点が必要であると指摘した。

一方で、出資側のハードルもある。国内では、ゲームプロジェクトやスタジオが投資対象として認識されていないケースが多いという。

その理由のひとつとして、ゲーム作品の評価の難しさが挙げられる。たとえば、映像面として完成度が高く見える作品であっても、実際には外部アセットを組み合わせたものであるなど、開発チームの技術力を正確に反映していない場合もある。

一條氏はインキュベーターやアクセラのアドバイザーとして数多くのゲームプロジェクトの技術評価を行ってきた経験から、インディーゲームへの出資を検討している投資家には、ビジュアルのクオリティだけでなく、アセットの内製・外製の見極めや、ゲームプロジェクトファイルやコードの内容、開発者の技術力、さらには作品を最後まで完成させる能力を判断できる人材が求められると述べた。
このように、開発側と出資側の双方に越えるべきハードルが存在していることが、インディーゲーム投資の拡大を難しくしている要因ではないか、という見解を示した。

終盤では、一條氏は投資家、開発者、行政それぞれに向けた提言を行った。

まず出資側に対しては、ゲーム開発者と接点を持つ機会を意識的に増やして欲しいと述べた。具体的には、ゲーム展示会やインディーゲーム向けインキュベーション、アクセラレーションプログラムのピッチイベント参加などを通じて開発者と出会うことが重要とコメントした。また、SNSや開発者コミュニティも有効な接点となり得るが、精度の高い情報収集には業界経験者のノウハウが求められると注意もしていた。

さらに海外の事例として、欧州圏のインディーゲーム投資に特化したHiro Capitalを挙げ、日本においても地域特化型のゲームベンチャーキャピタルを設立する可能性について言及した。

一方、開発者に対しては「投資家に見せるための事業計画の作成」を求めた。投資家が理解しやすい形で、自身のゲームにおけるビジネス構造を説明できるよう整理しておくとよいそうだ。

たとえば、一般的なビジネス用語における指標や概念が、自身のプロジェクトにおいて何に相当するのかを明確にし、「グロースシナリオ」などについて問われた際にも、自らの開発プロジェクトに即した形で説明できることが肝心だという。

加えて、エンターテインメント領域のピッチイベントへの参加も推奨した。現在はゲームプロジェクトそのものへの投資に直結するケースは多くないものの、どのようなステークホルダーがいるのか、投資家がどのような観点でプロジェクトを見ているのかを知る機会になるとのこと。

最後に行政に対しては、持続可能なエコシステムの構築に向けた支援の必要性を訴えた。既存のゲーム産業の支援に加え、過去のゲーム資産の保存、そして将来の開発者を育成するための取り組みも重要と語った。

締めくくりとして一條氏は「まだまだ未解決なことがたくさんある」と述べ、今後に向けた課題についてもいくつか紹介。

まず、海外のファンドがインディーゲームスタジオへの出資を実現できている背景について言及し、その構造を分析したうえで、日本国内でも再現可能な形を模索していきたいと意欲を見せる一條氏。こうした課題について、「参加者とともに仕組みを作っていきたい」と述べた。