人的資本開示から読み解くドリコムとアカツキの未来像――「脱モバイルゲーム」の先にあるもの

木村英彦 取締役 編集長
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モバイルゲーム市場の成熟が進むなか、ゲーム会社各社は事業モデルの転換を迫られている。その有力な選択肢となっているのがIPビジネスへの進出だ。

こうしたなか、ドリコム<3793>とアカツキ<3932>はともに「モバイルゲーム会社」からの脱却を模索し、IPを軸とした事業展開を進めている。ただ、人的資本開示を詳細に読み解くと、両社が目指す将来像は必ずしも同じではないことが見えてくる。

 

■ドリコムが求めるのは「IPプロデューサー」

ドリコムは人的資本戦略において、「IPの創出・育成・収益化を一気通貫でプロデュースできる組織の構築」を掲げている。

加えて、

・ 人材ポートフォリオの再設計
・ プロデュース人材の採用・育成
・ コアコンピタンスの明確化
・ 戦略的人材配置

といった施策を打ち出している。

ゲーム企業の人的資本開示では、エンジニアやクリエイターの採用、開発力の強化が中心となるケースが少なくない。しかしドリコムが前面に据えるのは「プロデュース人材」だ。これは単なるゲーム開発人材の育成ではなく、IPを発掘し、育成し、最適なメディアへ展開する人材を組織の中核に据えようとしていることを示している。

実際、ドリコムは出版、ライトノベル、Webtoon、アニメなど周辺領域への投資を進めているが、その戦略は特定メディアを起点とするものではない。出版発のIPをゲーム化することもあれば、ゲームを起点としてコミカライズやアニメ化へつなげることもある。ウィザードリィのようにIPそのものを買い付ける可能性もある。

さらに近年の動きを見ると、インディーゲームをIP創出の入口として捉えている可能性もある。小規模な投資で作品性やコミュニティ形成を検証し、成功したIPを複数メディアへ展開する手法は、現在のエンターテインメント市場とも親和性が高い。

つまりドリコムは、「ゲーム会社がIPビジネスを始める」のではなく、「IPを生み出し、最適なメディアを選択する会社」への転換を進めていると考えられる。

また、2025年4月に導入した新人事評価報酬制度では、「会社のコアコンピタンスに資する付加価値の発揮」を評価基準として掲げた。業績連動賞与や株式報酬制度も導入しており、人材戦略を経営戦略と直結させる姿勢がうかがえる。

 

■アカツキは「IP企業」より「事業ポートフォリオ企業」に近い

一方、アカツキの人的資本開示から見えてくるのは異なる方向性だ。

同社は現在、

・ ゲーム・コミック事業
・ エンタメ・ライフスタイル事業
・ AI・DXソリューション事業

という三つの事業を展開している。

人的資本戦略では、「各社求められる専門性が異なるため、各社毎に人事制度を定めている」と明記している。ドリコムが全社共通のコアコンピタンスを定義しようとしているのに対し、アカツキは事業ごとに最適化された制度設計を行う考え方だ。

また、

・ 書籍購入補助制度
・ 外部研修・カンファレンス参加支援
・ チームランチ・チームディナー
・ コミュニケーション施策

などを通じて、「働く幸福」「インスピレーショナルなものづくり」を実現する組織づくりを重視している。給与テーブル「カラフルステージ」を公開し、必要なスキルや現在の位置づけを従業員自身が把握できる仕組みも整えている。こうした施策は、IP創出企業というより、多様な専門組織を抱える事業グループとしての色彩を感じさせる。

さらにアカツキは、サニーサイドアップとの経営統合を予定している(そして将来的に株式会社サニーズホールディングスに社名変更する意向も示している)。

サニーサイドアップはPRやマーケティング、イベント、ブランドプロデュースなどの機能を持つ企業であり、統合後はコンテンツ開発だけでなく、コミュニティ形成や体験価値創出まで含めた事業展開が期待される。

その意味ではアカツキが目指しているのは、「IPを創る会社」というより、「IPやブランドを中心に多様な事業を組み合わせるエンターテインメントグループ」に近い姿なのかもしれない。

 

■人材戦略が示す「脱モバイルゲーム」の違い

両社ともモバイルゲーム依存からの脱却を掲げているが、人的資本開示からは異なる未来像が浮かび上がる。

ドリコムは、「IPをどう生み出し、どう育てるか」を重視している。出版、ゲーム、アニメ、あるいはインディーゲームといった複数の入口を想定しながら、IPを事業へ転換できるプロデューサーを育成しようとしている。

対してアカツキは、「多様な事業をどう束ねるか」に重点を置いている。ゲーム事業の枠を超え、ライフスタイルやPR、AI領域まで含めた事業ポートフォリオを運営するための人的基盤を整備している段階と言えるだろう。

同じ「脱モバイルゲーム」を掲げる企業であっても、その先に描く姿は異なる。

人的資本開示は単なる人事制度の説明ではなく、企業が将来どのような組織へ進化しようとしているのかを映し出す経営戦略そのものになりつつある。ドリコムとアカツキの比較は、そのことを象徴する事例と言えそうだ。

 

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株式会社ドリコム
https://drecom.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ドリコム
設立
2001年11月
代表者
代表取締役社長 内藤 裕紀
決算期
3月
直近業績
売上高175億4700万円、営業利益4億800万円、経常利益3億1800万円、最終利益2億1300万円(2026年3月期)
上場区分
東証グロース
証券コード
3793
企業データを見る
株式会社アカツキ
https://aktsk.jp/

会社情報

会社名
株式会社アカツキ
設立
2010年6月
代表者
代表取締役CEO 香田 哲朗
決算期
3月
直近業績
売上高258億5600万円、営業利益74億4400万円、経常利益76億1800万円、最終利益56億5200万円(2026年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3932
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