玩具メーカーとIPコングロマリット――タカラトミーとバンダイナムコに見る人材戦略の違い 事業構造の違いが生む組織づくりの方向性

木村英彦 取締役 編集長
/

玩具・エンターテインメント企業にとって、人材は新たな価値を生み出す源泉だ。しかし、その育成や活用の方法は各社の事業構造によって大きく異なる。

タカラトミーとバンダイナムコホールディングスの人的資本戦略を比較すると、両社が目指す組織像の違いは、グループ構成や事業ポートフォリオの違いを色濃く反映していることが見えてくる。

 

■タカラトミーが目指す「アソビづくりに夢中になれる組織」

タカラトミーは「中長期経営戦略2030」において、人材戦略を企業価値向上を支える重要なコーポレート戦略と位置づけている。

掲げる基本方針は「アソビづくりに夢中になれる組織・環境・人財への変革」。同社は、多様な人材が共創する組織、グループ横断で協働する「ONE TAKARATOMY」、そして新しい挑戦を歓迎する風土を目指す姿として掲げている。

特徴的なのは、人事制度改革を通じて創造性を高めようとしている点だ。

同社は「タカラトミー流ジョブ型人事制度」を導入し、管理職と専門職の複線型キャリアを整備した。開発職、品質管理職、生産技術職、マーケティング職など職種ごとに専門性を高める仕組みを構築している。

評価制度も職種ごとのスキル発揮を重視する絶対評価を採用し、報酬体系についても年功的要素を縮小した。専門性を高めながらキャリアを形成できる環境づくりを進めている。

 

■玩具メーカーとしての事業構造が人材戦略を形づくる

タカラトミーのグループ企業は、玩具やベビー用品、キャラクター関連事業、小売事業など「アソビ」を中心とした比較的近接した領域で構成されている。一方で、アニメ制作やゲーム開発といった領域については、自社グループ内で完結するケースは限定的だ。人気IPの映像化やゲーム化では制作会社やゲーム会社との協業が前提となるケースも多く、自社ですべての機能を保有するモデルではない。

そのため同社が求める人材像は、単なる商品企画担当ではなく、「専門性を持ちながら社外パートナーと協働し、新しいアソビを創出できる人材」であると言える。「ONE TAKARATOMY」という考え方も、グループ内のサイロ化を防ぎ、人材や制度を共通化することで組織全体の競争力を高める狙いがある。

 

■バンダイナムコHDは「IPを動かす人材」を育てる

これに対し、バンダイナムコHDの人的資本戦略の中心にあるのは「IP軸戦略」だ。同社は「Fun for All into the Future」をパーパスとして掲げ、多様な才能や価値観を持つ人材が活躍する「同魂異才」の企業集団を目指している。

玩具、家庭用ゲーム、モバイルゲーム、アニメ、映像、音楽、ライブ、アミューズメント施設など、多様な事業をグループ内に抱える同社では、一つのIPを複数の事業へ展開することが成長の源泉となっている。

アニメ化、玩具化、ゲーム化、イベント展開、海外展開など、IPを横断的に活用するためには、事業領域をまたいで活躍できる人材が欠かせない。

そのため同社は、

・グループ横断研修
・事業会社間ローテーション
・グローバル人材育成
・ALL BANDAI NAMCOによる一体感醸成

を重視している。バンダイナムコHDが育てようとしているのは、特定領域の専門家だけではなく、「IPを軸に複数事業を結び付け、新たな価値を生み出せる人材」と言えるだろう。

 

■制度改革型のタカラトミー、IP経営型のバンダイナムコ

両社を比較すると、タカラトミーは制度設計を通じて専門性を高める「組織改革型」の人的資本経営を進めている一方、バンダイナムコHDは、IPビジネスを支えるリーダーやプロデューサー人材を育成する「IP経営型」の色彩が強い。

タカラトミーはアニメやゲームなど自社の事業領域外については積極的にパートナー企業と連携しながら事業を拡大していくモデルであり、外部との協働を前提とした専門人材が重要となる。対してバンダイナムコHDは、グループ内に多彩な事業を抱えるからこそ、事業を横断してIP価値を最大化できる人材が求められる。

人的資本開示を読み解くと、両社がどのような事業構造を持ち、どのような競争優位を築こうとしているのかが浮かび上がってくる。玩具・IP業界における競争は、コンテンツや商品だけではなく、それを生み出し展開する「人材の競争」へと移りつつあるのかもしれない。

 

株式会社タカラトミー
http://www.takaratomy.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社タカラトミー
設立
1953年1月
代表者
代表取締役会長 小島 一洋/代表取締役社長CEO 富山 彰夫
決算期
3月
直近業績
売上高2704億5500万円、営業利益242億4600万円、経常利益245億5100万円、最終利益116億7900万円(2026年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
7867
企業データを見る
株式会社バンダイナムコホールディングス
http://www.bandainamco.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社バンダイナムコホールディングス
設立
2005年9月
代表者
代表取締役社長 浅古 有寿
決算期
3月
直近業績
売上高1兆3482億4600万円、営業利益1895億1700万円、経常利益2019億2300万円、最終利益1406億5100万円(2026年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
7832
企業データを見る