日本の女子プロレス界を牽引する「スターダム」。今回は、Webマーケティング業界から3部署兼務へと領域を広げた林宏信氏と、映像制作のプロとしてファンを熱狂させる映像を生み出す前島弦季氏の2名にインタビューを実施した。
年間120大会を駆け抜けるハードな日常、異業界からの転職で見えたギャップ、そして自ら手がけた仕掛けが巨大会場を揺らした瞬間の快感…。
スターダムが掲げる「東京ドーム興行」という大きな夢に向かって突き進む、裏方のリアルと求める人物像に迫る。
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「プロレスをより広い層へ」…異なるバックグラウンドを持つ2人が最前線で担うミッション

――: まず、お二人の経歴や入社の経緯、現在担当されている業務についてお聞かせいただけますか?
林: 私は現在、3つの部署を兼務しています。1つ目は「興行本部」で、主に大会運営全般、特にビッグマッチの運営統括やチケットの販売管理(票券業務)を担当しています。
2つ目は「メディアチーム」です。配信やSNS、HP更新などを手掛ける部署ですが、私の役割はメディアを活用した新しい取り組みが中心です。この夏に配信した「5★STAR GP」の生配信番組でプロデューサーを務めたほか、スターダム初となる「オンラインサイン会」の立ち上げなども担当しました。
3つ目は「ビジネス開発部」で、主に協賛営業や企業様とのタイアップ、コラボレーション案件などを担当しています。
――: 3部署の兼務は、スターダムの中でもかなり珍しいですよね?
林: 社内でもおそらく私だけだと思います。
――: 業務の切り替えも大変そうですが、現在の割合はどのようになっていますか?
林: 興行が50%、メディアとビジネス開発部がそれぞれ25%ずつといった割合です。ジャンルは異なりますが、自分の中で「スターダムという団体や選手を世の中に届けていく」という一貫した軸があるので、切り替えもスムーズに取り組めています。
――: 最初からそのように幅広く業務を担当されていたのでしょうか?
林: いえ、最初は興行部からのスタートでした。採用面接の際に「プロレス界をもっと大きくしたい」とお伝えしたところ、社長から「まずはプロレスの幹である興行を学んでほしい」と言われたのがきっかけです。
興行の売上で最も大きなウェイトを占めるチケット管理から学び始め、徐々に大会全体を統括する役割へと広がっていきました。今年1月からは、認知拡大に向けてメディアやビジネス開発も兼務するようになり、もともとやりたかった領域へ着実に近づいている実感があります。
――: 続いて、前島さんもよろしくお願いいたします。
前島: 私はコンテンツ本部の「メディアチーム」に所属しています。主な業務は映像制作で、大会開催時は配信周り全般を担当しています。Webサイトの更新なども行いますが、メインはあくまで映像制作です。現場でカメラを回す撮影から編集まで、一貫して手掛けています。
――: 入社前から映像制作のご経験があったのでしょうか?
前島: はい。スターダムに入社する前は、映像制作会社でディレクターを務めたのちフリーランスとして活動し、ずっと映像の世界で生計を立ててきました。
――: フリーランスからスターダムへ転職された決め手は何だったのですか?
前島: 一番の理由は、もともと父親の影響で大のプロレス好きだったことです。求人を見た際に「映像が作れる人、編集ソフトが使える人」とあり、自分にドンピシャな募集内容でした。
前職までは主に企業向けのBtoB動画(セミナーや講演会など)を制作していたため、一般のお客様へ直接届けるBtoCの映像制作は自分にとって新しい挑戦になると思い、入社を決めました。
――: BtoBとBtoCでは、映像制作の捉え方も大きく変わりますか?
前島: 全く違いますね。伝え方や使用する要素が大きく異なるため、現在も試行錯誤しながら学びと挑戦を続けているところです。
試合映像の配信自体は専門の委託チームが担当していますが、先日公開された選手のインタビュー動画などは、ロケハンから撮影、編集、資材手配まで全て私一人で手掛けました。前職までの経験をフル活用しながら取り組んでいます。
前職との違いとプロレス業界のスピード感
――: 林さんの前職はどのようなお仕事だったのですか?
林: Webマーケティングの会社で、主に日用品や化粧品、サプリメントといったD2C領域の広告制作や運用を行っていました。
当時はオフィスで一日中パソコンに向かう日々で、地方出張などもありませんでした。そのため、スターダムに入社して自分たちで車を運転し、全国の会場へ向かうようになった時は「働き方が大きく変わったな」と実感しましたね。
――: プロレス業界ならではのカルチャーや、ギャップを感じた部分はありますか?
林: 何より「展開の目まぐるしさ」と「スピード感」です。一般的なエンタメやスポーツであれば、数ヶ月から1年先までスケジュールや対戦カードが細かく決まっていることが多いと思います。しかしプロレスの場合、ストーリーの展開によって数日前に急遽カードが決まることも珍しくありません。
カードが決まった瞬間、3日後の大会に向けて急ピッチでポスターを制作し、煽りVTRを作り、対戦カードのビジュアルを興す……といった怒涛のスピード感で業務が回っていきます。
特に「5★STAR GP」のようなリーグ戦の期間中は、直前まで誰が決勝に勝ち進むか分かりません。そのため、自分が現場に参加していない大会も含めて全試合をチェックし、情報収集と準備を欠かさず行う必要があります。
――: 年間でどれくらいの大会を開催しているのでしょうか?
林: 年間でおよそ120大会です。単純計算で3日に1回は大会があるペースですね。そのうち月に1回ほど、大規模な「ビッグマッチ」を開催しています。2,000人以上収容できる会場を使用し、特殊な照明やレーザー演出、PPV(ペイ・パー・ビュー)配信などが入る大会です。今年4月の横浜アリーナ大会では、8,000人を超えるお客様にご来場いただきました。
女子プロレス単独の団体としてこれほどの動員規模を実現できているのは、世界的に見てもスターダム唯一無二の強みだと思います。
大会当日、1日の具体的な働き方は?
――: 読者の方が働くイメージを持ちやすいよう、具体的な1日のスケジュールを教えていただけますか?
前島さんの場合(メディアチーム:大会当日のスケジュール)

【12:00〜15:00】 出社・事前準備
大会が夜遅くまで及ぶため、時差出勤を行います。出社後、その日の配信ページの作成、サムネイル画像の制作、YouTubeの無料配信枠の設定などを行います。
【15:00〜18:00】 会場移動・現場仕込み
会場に入り、配信チームと連携して入場曲の著作権確認や音調整(ミュート処理など)、選手のコーナー位置の共有などを行います。
【18:00〜大会終了】 試合開始・リアルタイム対応
プラットフォームへの映像流し込みを行いながら、試合展開やコメント、決め技などをリアルタイムで把握します。SNS用の切り抜き動画の作成・投稿、試合結果の速報更新(Xおよび公式HP)を分担して行います。
【大会終了後】
バックステージでの選手コメントを撮影・文字起こしし、速報として展開します。撤収後も持ち帰り業務が発生することがあり、試合中の数時間は一瞬も気が抜けない怒涛の時間となります。
――: 試合のリアルタイム性に合わせた素早さと、速報の正確性が同時に求められるハードな業務ですね。
前島: 最初の頃は仕事量の多さとスピード感にとても焦りました。ただ、慣れてくると自分のルーティンとして体に落とし込めるようになります。オフィス勤務の日は、CMやYouTubeコンテンツの動画編集、地方大会での配信プラットフォーム・現地スタッフとの調整、ファンクラブや自社アプリの更新作業など、幅広いデスクワークを行っています。
林さんの場合(興行部:大会当日のスケジュール)

【前日〜当日朝】 移動・現地到着
基本的に前日のうちにスタッフ自ら車を運転して現地へ移動します。リングマット、コーナーマット、グッズ、バックステージのパネルなど、全ての機材・資材を車で搬入します。
【会場設営・準備】
まずはトラックからの荷下ろしという力仕事から始まります。何もない「箱」の状態の体育館などに、リングの設置位置を決め、客席のパイプ椅子を並べ、入場ゲートや懸垂幕、選手の導線、物販エリア、車椅子スペースなどをゼロから作り上げていきます。
【開場・運営対応】
開場後は、お客様の入場列や物販の混雑状況、お渡し会の誘導などに滞りがないか常に巡回します。お席の案内や車椅子のお客様のサポートなど、現場での臨機応変な対応が求められます。
【試合中〜撤収】
試合が始まるとバックステージへ移動し、勝利直後の選手コメントを動画撮影して広報・SNSチームへ即座に共有します。全試合終了後は撤収作業を行い、次の会場へ向かいます。
林:オフィス勤務の日は、毎朝のチケット販売状況の集計・共有から始まります。その後は興行部の定例会議、配信番組の構成打ち合わせ、協賛企業様との営業商談のほか、3ヶ月先に開催される大会の座席図面・価格設定の作成、プレイガイド様への調整業務などを行っています。

8,000人を沸かせる快感と「減点方式」のプレッシャー…裏方ならではのやりがい

――: 華やかに見えるプロレス業界ですが、裏側で意識していることや、仕事の難しさ、やりがいについて教えてください。
前島: 映像制作において意識しているのは、「ファンと同等、あるいはそれ以上の知識と熱量を持つこと」です。選手の経歴やストーリーの文脈、人間関係を理解した上で撮影・編集を行わなければ、ファンの皆様の心に響く映像は作れません。既存の情報をただなぞるのではなく、インタビューや映像を通して「こんな背景があったのか」という新しい発見やドラマを届けることを大切にしています。
やりがいを感じるのは、自分が制作した煽りVTRが横浜アリーナなどの大きな会場で流れ、8,000人のお客様から歓声や拍手が巻き起こった瞬間です。締切に追われながら魂を込めて作った分、目の前でダイレクトにお客さんのリアクションが見られる快感は、他では味わえない大きな魅力です。
林:興行運営において意識しているのは、「誰が・いつ・何をすればいいか」をクリアにし、選手・スタッフ・お客様全員がストレスなく過ごせる環境を作ることです。
運営の仕事は、うまくいって当たり前であり、失敗した時だけが目立ってしまう「減点方式」の側面があります。お客様が迷わず試合に集中でき、選手が試合だけに全力を注げる状態を裏で支え切ることが私たちのミッションです。
難しさで言えば、全国120箇所もの会場はそれぞれ構造も設備も全く異なります。中には設営の難易度が高い会場もあり、毎回その場に応じた適切なレイアウトを一から考え抜かなければなりません。ミスなく、すべての人にとって完璧な興行を目指していても、上手くいくときもあれば予期せぬトラブルに繋がってしまうことも残念ながらあります。
しかし、苦労して作り上げた会場で、何千人もの観客が熱狂している景色を見たときには、言葉にできないほどの達成感とやりがいを感じます。
目指すは「東京ドーム」。エンタメをより大きなステージへ引き上げる野心家求む

――: 最後に、これからスターダムで一緒に働きたいと考えている方へ、メッセージや期待する人物像をお聞かせください。
前島: スターダムは人手も時間も限られた中で挑戦を続けている組織です。だからこそ、やりたい企画や改善案を自分の言葉で発信すれば、年次に関わらず実現できる風土があります。
スケジュール管理能力や、最後まで仕事をやりきる責任感は求められますが、「スターダムというエンターテインメントをもっと面白くしたい、もっと多くの人に届けたい」という情熱がある方なら、間違いなく活躍できる環境です。
林: 入社時点でプロレスに詳しくなくても全く問題ありません。実際に未経験から活躍している社員もたくさんいます。大切なのは、プロレスというカルチャーに対するリスペクトと、「自分が手掛けるエンターテインメントをより大きなステージへ引き上げたい」という強い野心やガッツです。
また、現実的な面で言えば、全国を車で移動することも多いため「車の運転ができること」や、ハプニングが起きても柔軟に立て直せる「リカバリー力」、繁忙期を乗り切る「体力・精神力」も大きな強みになります。
私たちは今、社員・選手一丸となって「東京ドーム興行の実現」という大きな目標に向かって突き進んでいます。より大きな目標にたどり着くためには、私たち運営サイドも野心家で、もっともっと上を目指していきたいという強い情熱が必要だと思っています。
スターダムがさらに飛躍していくために、強い情熱と野心を持った新しい仲間とお会いできるのを楽しみにしています。
――: 本日は貴重なお話をありがとうございました!
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