インディーゲームのPRで個人的な経験や体験は強い武器になるかも 話題は"作る"だけでなく自分の中から"見つける"【クリエイターの広報術:番外編(11)】

木村英彦 編集長
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インディーゲームのプロモーションを考えるとき、避けて通れないのが「どうやって話題にするか」という問題だ。大手ゲーム会社のように大規模な広告を展開できるわけではない。人気IPやシリーズの知名度を利用できるケースも限られる。

そのため、「何かSNSでバズる企画を考えなければ」「目立つことをしなければ」と考えてしまいがちだが、話題作りは必ずしも奇抜な企画を考えることではない。

一番強いのは、言うまでもなくゲームそのものが面白く、その面白さが話題になることだ。「こんなゲーム見たことがない」「これは遊んでみたい」と思わせるゲームなら、プレイヤーや配信者、メディアが自然に紹介してくれる可能性がある。

ただし、現実には「面白いゲームを作った」だけで話題になるとは限らない。そこで考えてみたいのが、「このゲームには、ほかにどんな"話題になる理由"があるのか」ということだ。

 

■「1人で作った」「何年もかけた」だけでは弱い

インディーゲームのプレスリリースでは、「個人で開発しました」「少人数で開発しました」「○年間かけて完成させました」といった開発背景が紹介されることがある。

もちろん、本人にとっては大きな努力の結晶だろうが、インディーゲームが珍しくなくなった現在、「1人で作った」「長い時間をかけた」という事実だけでは、必ずしも強いニュースにはならない。

メディア側からすれば、重要なのは「どれだけ苦労したか」ではなく、「なぜ、そこまでして作ったのか」である。

1人で作ったことではなく、1人だからこそ実現できたことや何年もかけたことではなく、何年かけても実現したかったこと、そこまで掘り下げれば、開発背景がゲームそのものの魅力につながってくる。

 

■一般受けしなくても「ニュース」にはできる

ここで話題性を「たくさんの人が面白いと思うこと」と考えすぎないことも重要だ。メディアにとってのニュース価値は、必ずしも一般受けと一致しない。例えば、視覚や聴覚に障害のある人も楽しめるように設計したゲームがあるとする。

ゲームそのものが万人向けではなくても、「なぜ、そこまでアクセシビリティにこだわったのか」にはニュースとしての価値がある。ゲームを使った教育や人材育成、地域活性化、観光、福祉なども同じだ。

ゲームの売上規模とは別に、「この取り組みを紹介する意味がある」と思わせることができれば、記事になる可能性がある。

しかも、ゲームメディアだけではない。教育、福祉、地域、テクノロジーなど、ゲームとは異なる分野のメディアにまで情報を届けられる可能性が生まれる。「どれだけ売れそうか」と「どれだけニュースになるか」は、必ずしも同じではない。

 

■「視覚障害者も遊べるゲーム」に足りないもの

例えば、「視覚障害のある人も遊べるゲームを作りました」というプレスリリースが届いたとする。それだけでも一定のニュース性はあるが、そこで終わってしまうと、メディア側が書けるのは、「視覚障害者にも対応したゲームが発売されます」という仕様紹介にとどまってしまう。

もし「視覚障害のある家族と一緒にゲームを楽しめなかった経験から、誰でも遊べるゲームを作ろうと思った」という話があればどうだろう。

なぜ作ろうと思ったのか、どんな経験があったのか、何が問題だったのか。それをどうゲームの仕様に落とし込んだのか、実際に当事者に遊んでもらったのか…途端に聞きたいことが増えてくる。単なるゲームの紹介から、「このゲームを作った人に話を聞きたい」という取材につながっていく。

 

■本人には「当たり前」のことが、第三者には面白い

ここがインディーゲームのPRで意外と見落とされているポイントではないだろうか。個人的な経験は、自分にとっては当たり前だ。家族のことやこれまでの仕事、住んでいた街、子どもの頃の経験、ゲームを作ろうと思ったきっかけなど、本人にとっては「そんなこと、わざわざ書く必要があるのか」と思ってしまうだろうが、第三者から見ると、それこそが面白い。

例えば、「視覚障害のある家族がいるので、このゲームを作りました」という話は、開発者本人にとっては、ゲームを作った理由を説明しているだけかもしれない。しかし第三者からすれば、「それがこのゲームを作った原点なんですね」となる。

あるいは 「自分が世話になった渋谷という街に恩返しがしたいので、ゲームが一定数ダウンロードされたら、渋谷で清掃活動をします」という話ならどうだろう。「何万DL達成したらボランティア活動をする」という企画だけなら、少し唐突に感じるかもしれない。ここで「なぜ渋谷なのか」という個人的な背景があれば、そこに物語が生まれる。企画そのものより、その企画をする理由のほうが面白いことがある。

 

■「なぜ」があれば、ゲームと社会がつながる

社会的な取り組みをゲームに組み込む場合も同じだ。例えば、「10万DLを達成したら地域の清掃活動を行います」という企画。単純に売上の一部を寄付する方法もあるが、DL数や販売本数と実際の行動を結びつければ、ゲームの成長そのものが次のニュースを生む。

ゲームが売れる。

目標を達成する。

実際に活動する。

その活動が新たなニュースになる。

という流れだ。

さらに 「なぜ、その活動をするのか」がゲームや開発者自身の経験と結びついていれば、より強い物語になる。地域を舞台にしたゲームだから、その地域に貢献する。環境問題をテーマにしたゲームだから、環境保全活動をする。自分自身がお世話になった街だから、恩返しをする。こうした「理由」があることで、単なるキャンペーンではなくなる。

 

■話題を「作る」より「見つける」

時事ネタやイベントにゲームを結びつけるのも一つの方法だ。大規模なスポーツ大会、季節イベント、記念日、新しい技術、社会的な出来事など、すでに世の中で関心を集めているものとゲームとの接点を探す。

ただ、これも無理に便乗する必要はない。重要なのは、「このゲームには、世の中の話題とつながるところがないか」と考えることだ。つまり、話題をゼロから作り出す必要はない。

ゲームそのものの特徴、開発者の経験、開発した理由、社会との接点などを一度掘り下げてみる。すると、本人たちが「普通のこと」と思っていた中に、第三者から見ると面白い話が見つかることがある。

 

■「それ、面白いですね」と言ってくれる人を探す

では、どうやってそれを見つけるのか。一つの方法は、第三者に話してみることだ。プレスリリースを書く前に、友人、家族、共同開発者、PR担当者などに、「どうして、このゲームを作ったの?」と聞いてもらう。

さらに「何かきっかけがあった?」「なぜ、あなたが作ろうと思ったの?」「その経験はゲームの内容にどう影響している?」「このゲームを作るうえで、一番こだわったのはなぜ?」と掘り下げていく。

そこで、「それ、面白いですね」と言われたなら、そこにはニュースになる可能性がある。本人にとっては当たり前でも、第三者には当たり前ではない。だからこそ、自分一人でPRの材料を探さないことも大切なのだ。

 

■「記事にしたい」から「話を聞きたい」へ

良いゲームなら、「このゲームを紹介したい」と思ってもらえる。ニュース性のある情報があれば、「この記事を掲載したい」と思ってもらえる。そして、そこに強い物語が加わると、「このゲームを作った人に話を聞きたい」に変わる。

これはインディーゲームにとって非常に大きい。大手企業には、知名度の高いIPや大規模な広告展開がある。一方、インディーには、「このゲームを作ったのは、この人だから」という武器がある。それは、大手企業が広告費を使って簡単に作れるものではない。

だから、話題作りを考えるときに、いきなり「バズる企画」を考える必要はない。

まず考えてみたいのは、「なぜ、このゲームを作ったのか?」という問いだ。ゲームそのものの面白さやそこに込めた個人的な経験、社会的な意味、開発者だからこそ実現したかったことなどを掘り下げていけば、すでに自分たちの中にある「話題」が見つかるかもしれない。

話題は、必ずしも作るものではない。自分たちが気づいていないだけで、すでに持っているものを見つけることも、インディーゲームのPRになる。

 

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