【インディーゲームの現在地】ジー・モードに聞く、開発者の「困り事」に寄り添うパブリッシングのかたち

岸由真 gamebiz編集部
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近年、数多くのインディーゲームが市場に登場し、埋もれてしまうタイトルも少なくない。そんな中、『みんなで空気読み。』シリーズや『OU(オーユー)』、『にほんの田舎ぐらし』など、幅広いジャンルのタイトルを世に送り出してきたのがジー・モードだ。
開発から移植、宣伝までを一気通貫で引き受ける「丸投げで大丈夫」な体制や、クリエイターとの地道なコミュニケーションを重視する姿勢は、他のパブリッシャーとは一線を画す。

連載「インディーゲームの現在地」第2回では、同社プロデューサーの竹下功一氏に、パブリッシングタイトルの選定基準から、クリエイターとの出会い方、そして数多のインディーゲームが埋もれてしまう現状への向き合い方まで、じっくりと話を聞いた。

まず「面白そう」そして「面白い」へ――ジー・モードのタイトル選び


――:本日はよろしくお願いします。まず、ジー・モードさんがインディーゲームのパブリッシングをし始める経緯から教えていただけますか?

竹下氏:弊社としては、インディーゲームかどうかは区別していなくて、インディーゲームのパブリッシャーという位置づけではなく、広く様々なゲームのパブリッシングをしています。自分たちで開発もやっているので、ゲームメーカーであると考えています。

コンシューマータイトルのパブリッシャーとしては、2018年が始まりでした。この年にNintendo Switch向けに第1弾の『みんなで空気読み。』を発売しまして、おかげさまでそれなりにヒットして、Nintendo Switchを始めとしたコンシューマー向けのゲームタイトルの開発やパブリッシングを続けていこうとなりました。

https://kuukiyomi.com/

その後、自社開発以外のタイトルとしては、『ぐんまのやぼう』などを作られているRucKyGAMESさんのタイトルを最初にお預かりしました。その後、インディーゲームとの関わりとしてひとつの転機となったのが『OU』というゲームですね。

――:『OU』もかなり評価が高いゲームだったと記憶しています。

https://info.gmodecorp.com/cs/ou/

竹下氏:ありがとうございます。それまでは『みんなで空気読み。』など自社開発がメインでしたし、『G-MODEアーカイブス』もすべて自社で手掛けていました。そんな中で『OU』が外部のクリエイターさんと協力して新しい何かを作ろうとした、最初のプロジェクトなんです。
2021年の4月にプロジェクトを発表してから発売まで約2年かかりましたが、そのぶん手応えも大きかったです。

それ以来、私たちが自社で開発するタイトルもあるのですが、いろんなクリエイターさんのタイトルを見て、「これいいな」「ジー・モードから出したいな」と思うタイトルにお声がけをしていく事も増えてきました。

――:声をかける基準といいますか、パブリッシングタイトルの選定はどのように考えているのでしょうか。

竹下氏:やはりパッと見て目が止まる、立ち止まりたくなるキービジュアルのインパクトや、ゲームのことを説明している1~2行のテキストですね。それだけで「なんだろうこれ」とか「面白そう」と思わせるインパクトやユニークさがあるかどうかはひとつの基準になっています。

プレイしたら「面白い」事はもちろん大事で、大前提なのですが、まずは「面白そう」と思ってもらえないと、そもそもゲームを手にとってもらえません。私たちも「こうすれば、より面白そうと思ってもらえるんじゃないかな?」という点は意識しています。

――:ジー・モードさんの場合、やはり販売・宣伝に特に力を入れている。

竹下氏:販売・宣伝ももちろんですが、タイトルごとで様々な取り組みのパターンがあります。例えば2026年3月にNintendo Switch/Steamで発売した『にほんの田舎ぐらし』は、移植開発を丸ごと弊社で引き受けているんですね。
プロモーションやパブリッシングのみを担当するものもあれば、コンシューマー向けの開発を丸っと引き受けるパターンも結構あって。社内に開発がいますので、『みんなで空気読み。』シリーズや『G-MODEアーカイブス』などで培ったノウハウを生かして、基本もう丸ごとお任せいただける、「丸投げで大丈夫ですよ」という体制です。

――:そこは他のパブリッシャーとはかなり違うところですね。

竹下氏:うちのようなパブリッシャーさんもあるかもしれませんが、パブリッシャー専業のところとは違いますね。そんな中で宣伝やプロモーションで意識していることというと、バランスを取りながらやっていくことかなと思います。ゲームメディアさんにしっかり情報をお届けすることは、すごく重要だと思っています。あとは自社でのSNSでの発信などですね。
配信者の方たちへ、ゲームをリリースした際にお知らせしたり、キーを渡したりとか。配信者さん、メディアさん、あと自社のSNSという基本的なことをコツコツやるのがすごく大事だと思っていて、自社の取り組みとして力を入れています。


――:SNSではVTuberやストリーマーの方が配信して、それが売り上げに繋がるのか否かという論争がよくあると思います。ジー・モードさんとしてはどのようにお考えですか?

竹下氏:特に『みんなで空気読み。』シリーズは配信でプレイされていて、そこから直接的にうちには収益が入ってこないので、なんとかしたいと思うことは過去にもありました。
それよりも広く遊んでもらって、いろんな人に見てもらう宣伝効果や認知拡大力はあるよねということで、今はそこから直接的な収益は上がっていなくても、配信や実況による広がりや販売向上効果はあるだろうと思っています。

この夏Nintendo Switch版をパブリッシングした『日本事故物件監視協会 -Japan Stigmatized Property-(JSP)』。これはPC版(Steam)の最新作がリリースされたタイミングで過去のシリーズを弊社から出したのですが、最新作での実況配信が盛り上がっているタイミングにあわせてSwitch版の販売数もグッと伸びました。配信されることによる宣伝効果は十分にあったなというのが、つい最近の実感ですかね。

――:確かに特にSwitch版ですと、PCを持っていない人も大勢いるわけで、そういった中で配信者の配信を見て「あ、Switch版あるじゃん」ってなる流れはありそうですね。

竹下氏:そうなんですよね。僕らはゲーム業界にいるんで、SteamがあるんだったらPCで全部やれるからそれでいいじゃん、と思っちゃいますけど(笑)。やはりゲームができるPC環境がない方も多いですし、「Steamってなに?」くらいの方がいるのも実情です。
実況で見ていたあれが遊べるようになったんだ、という流れでお買い求めいただけているんだろうなと思います。

パッケージ化、Switch移植を実現…『にほんの田舎ぐらし』から見える開発力


https://gmodecorp.com/cs/jrla

――:『にほんの田舎ぐらし』に関していえば、パッケージ版の発売も決まりました。この「パッケージ版」については改めてどう重要なのか、どのように考えているのでしょうか?

竹下氏:私自身そうなのですが、やっぱり自分のゲームがパッケージになるというのは、クリエイターとして嬉しいものだと思います。そしてプレイヤーにとっても、手元に形のあるもので持っておきたい、残しておきたいという思いはあるかと。ダウンロードが主流ではありますが、やはり手元に残しておきたいのでパッケージ版がほしいというリクエストも結構ありますし。

――:30代、40代のクリエイターだと、パッケージ版に対する、ある種の憧れみたいなものもあるのかなと思います。

竹下氏:それは感じます。最初に出したパッケージが『みんなで空気読み。』の『1・2・3+』なんですけど、「1本500円で買えるからダウンロードで買えばいいし、パッケージ版を出して売れるだろうか?」とはじめは半信半疑だったのですが、実際に出してみたらちゃんと売れてくれて。

長い目で見ればパッケージは徐々に減っていくかもしれません。でも物理的なアイテムのニーズってずっとあるんじゃないかとも思うんです。Nintendo Switch 2ではキーカードという、物理の形でありつつダウンロードとのハイブリッドでもある方法が生まれましたね。

――:「パッケージに憧れ」という話がありましたが、世代によっては「任天堂ハードに憧れを持っている世代」も多そうだなと思います。その辺りの声はいかがですか?

竹下氏:確かに「任天堂さんのゲーム機でゲームを出したい」という声は聞きます。『にほんの田舎ぐらし』を手掛けたクリエイターさんも熱烈な任天堂ファンでしたから、すごく喜ばれていました。
Nintendo Switch向けにゲームを出したいという方がいらっしゃったら、ぜひジー・モードにお声がけいただければと思います。

――:そういえば、『にほんの田舎ぐらし』は元々Apple Arcade(スマートフォン)向けですよね。移植の面で苦労はありませんでしたか?

竹下氏:最初に「やりましょうか」と話してから発売までが6ヶ月と、かなりのスピードで移植開発をして、任天堂さんの番組「Indie World 2026.3.3」にも紹介していただいて。

やると決める意思決定の早さ、判断の早さが我々の強みでもありますが、その後、移植開発するスピードも、弊社のエンジニアリングの力かなと思います。

――:元々はスマートフォン向けで、ボタン操作やインターフェースが全く違うなか、かなりスピーディーに決まっていったんですね。

竹下氏:クリエイターさんからは「任せるんで、コントローラーでいい感じにしてください」と(笑)。そのコントローラーの「いい感じ」っていうのが結構大変だったんですけど、そこを最適化するのが我々の腕の見せどころです。もともとタッチ操作でやっていたものをコントローラーの方向キーでクイックに操作できるようにするなど、細かいところですがいろいろな工夫をしています。特に『にほんの田舎ぐらし』は、操作系が異なるミニゲーム的なものも沢山入っていて。プランナーもプログラマーも実際にゲームを隅から隅までプレイし尽くして、各シーンでのコントローラー最適化を行ったりしていましたね。

「これは絶対試遊しに行かねば」――『コメンテーター』のパブリッシング決定までの2年間

――:ここからは個々の施策についてもお聞きできればと思います。先日「G-MODE NEXT PREVIEW(ジー・モード ネクスト プレビュー)」が配信されましたが、こちらはどういった狙いが?

竹下氏:ありがたいことに、弊社は『G-MODEアーカイブス』を月に1~2本リリースして、さらにインディーゲームも含めた通常のゲームタイトルも月に1~2本あると、毎週なにか1本発売していることになるんですね。
1タイトルごとのリリースをしっかり出すことはもちろんなのですが、発表前の情報や、お預かりしているタイトルをまとめて特別放送というかたちで一度に届けることで、相乗効果でより話題作りができ、多くの人に知ってもらうことができるんじゃないかなと考えまして。それで今回の番組を初めてやってみたんです。

「G-MODE NEXT PREVIEW」という番組の名前を何にするか最初いろいろ議論がありました。最初は「G-MODE NEXT GAME PREVIEW」と、ゲームという文言を入れる案もあったのですが、長くなるなというのと、ゲームのリリース情報以外のこと…例えばゲーム以外のイベントや展開などをお知らせすることも今後この番組名でやりたいなと思ったので、あえて「ゲーム」を外したんです。広い意味でジー・モードの「次」をお届けしますということで。

あと、弊社の場合は『みんなで空気読み。』もあれば『にほんの田舎ぐらし』も、『OU』のようなシリアスなゲームも出て、かたやホラーものもあると。
自分としては、色々なおもちゃが入っている、みているだけでワクワクするおもちゃ箱とか、駄菓子屋さんの軒先にいろんなお菓子が並んでいるカラフルで楽しい店先のような、そんな場所にしたいという思いがあります。
多彩なゲームが出ること、どんなタイトルが来ても「ジー・モードらしいよね」と思ってもらえるような、そんなゲームメーカーでありたいと思っています。

――:8月には「東京ゲームダンジョン13」にも出展されていましたが、リアルイベントの重要性はどのように捉えていますか?


竹下氏:まずお客様ですね。長年の中でジー・モードのタイトルを好きだと言ってくださる方も増えてきて、そういった方たちとのコミュニケーションの場にしたい思いがまず一つ。
もう一つは、そこにいらっしゃるクリエイターの方たちとリアルで会って話をすることです。お客様とクリエイターの両方の方との出会いとコミュニケーションの場として貴重だと思っています。



――:ネット上やアンケートでの声と、実際に面と向かっての会話とでクリエイターさんとの感触に違いはあるのですか?

竹下氏:やっぱり違いますね。ネットやSNSだけだと、クリエイターさんの表情や感情がどうしても分からないんですよね。直接会って話さないと分からないことがたくさんあります。
テキストだけだと事務的になりがちなのですが、実際会って話してみるとテキストだけではわからないニュアンスや、また皆さん高い熱量でゲームと向き合っていることがよく分かります。

――:デベロッパーや開発者とのコミュニケーションで意識していることはありますか?

竹下氏:人によって困っていることはバラバラで、例えばプログラムは全部できるけど、絵を描ける人がいないとなれば、弊社のデザイナーが協力したり。
逆に企画や絵はできるけど、移植開発はできないという場合は、弊社のエンジニアが担当したり。開発者さんのお困り事ポイントに応じて、それぞれのプロジェクトで役割分担しています。

あとは、Nintendo Switch向けのタイトルは長年手掛けているので、引っかかりやすいポイントとかをアドバイスさせていただいたりもしてます。

――:例えば「このゲームいいな」と思うゲームを見つけたときは、リアルイベントで声をかけるのでしょうか?それともSNSなどでメッセージを送る?

竹下氏:両方ありますね。リアルイベントで直接お声がけすることもあれば、SNSでの連絡からはじまる場合もあります。
ゲームメディアさんの記事で「え、何これ!?」と惹かれたものはチェックしてて、イベントに出展されるというのを見つけたらお会いしに行くとか。
イベントごとに何度も同じ開発者さんのところに行って、通っているうちに仲良くなっていって…ということもありますね。

――:やっぱりコミュニケーションは大切なんですね。

竹下氏:そうですね、特に『コメンテーター』は、もともと別の形でリリースされる予定と聞いていたのですが、当社パブリッシングでなくても面白いゲームだし、なにより私自身が、デベロッパーであるテバサキゲームズさんのファンになったので、ずっと応援しますよと言っていて、イベントの度に試遊にいったり、飲みにいったりしていました。
それから…確か2年ほど経ってから、私たちにパブリッシングをしてほしいという話が来た、という流れです。テバサキゲームズのヒヅメさんからは「一番最初からずっと応援してくれてたジー・モードさんに決まりました、これは幼なじみエンドです」と言われました(笑)。 

――:『コメンテーター』も、キービジュアルのインパクトからして、ちょっと異質というか…。「面白そう」と思わせる力がありますよね。



竹下氏:そうですね。私も「あなたは自分のコメントに責任を持てるか」というキャッチコピーと、おじさんの1枚絵で「これはいったい何なんだ!」って思っちゃいましたね。
初めて見かけたのは東京ゲームショウに出展されているときで、「これは絶対試遊しに行かねば」と思って。それが最初でした。

埋もれる時代だからこそ、“何これ!面白そう!”を拾い上げる

――:ちなみに、ジー・モードさんの中で「年間何本出そう」といったノルマはあるのでしょうか?それとも時期によって増減する?

竹下氏:何本といったノルマは特にないですね。全社としての事業計画や予算はあるのですが、そのためにタイトルの数を集めようという発想はないですね。
なので「時期によって増減」が正しいのですが…”減”はないと思います。常に「いいな」と思えるものを探し続けていて、途切れることはないので。逆に時間も手も足りないくらいです。

――:インディーゲームの今の課題として「数が増えすぎて埋もれてしまう」問題はあると思います。この現状についてどう見ているか、あるいは対策などは考えているのでしょうか。

竹下氏:おっしゃる通り、以前ニュースで「年に1万本以上のインディーゲームが出ている」というのを見て、あらためてこれは大変なことになっているなと…
しかし、ゲームを作っているクリエイターさんにとっては、1000分の1や1万分の1ではなく、その人にとって「1分の1」の作品です。1分の1の大事な作品なんだという考え方で、私たちも向き合わせていただいています。

自分たちが好きになってパブリッシングをするタイトルなので、売るためには何でもやりたいし、やります。しかし、時間や予算は無限ではないので、バランスを考えながら、自分たちでできることをしっかりやることが大事だと考えています。

ニュースリリースをしっかり出すこともそうですし、プラットフォーマーさんや配信者の方たちとのリレーションもそうです。そういったことをしっかりやることで、まずは表に出られるように、埋もれることがないように努力しています。

――:配信番組などもまさにその一環ですよね。

竹下氏:そうですね。「東京ゲームダンジョン13」でお会いした方にも「最近ジー・モードさん、すごいいっぱいゲーム出してますね」「勢いありますね」といった言葉をいただきました。私たちとしては、そう思ってもらえるように取り組んでいるので、効果はでているのかなと思います。

「G-MODE NEXT PREVIEW」を放送した直後のイベントということもあり、「ニュースでめっちゃジー・モードさんの名前を見ますよ」と。勢いを醸し出すためにも、やっぱりああいった番組を放送したり、ニュースリリースを出したりすることは大切なのだと思います。

――:今後も定期的にやっていくお考えはありますか?

竹下氏:やりたいなと思っています。これまでジー・モードは基本すべて生放送だったのですが、生放送って中々大変で(笑)。
生放送は年に1度、『G-MODEアーカイブス』の周年に行い、「G-MODE NEXT PREVIEW」は数カ月に1度のペースでやる、というサイクルがいいのかなと今は考えています。例えば前回が8月だったので次は12月ぐらいになれば、また皆さんにお伝えしたい「次」が溜まってきていると思うんですよね。

――:そのためにも、引き続きデベロッパーとコミュニケーションを取り、良いゲームを探していくと。

竹下氏:そうですね。私もそうなのですが、うちのメンバーも開発者でありクリエイターなので、熱い思いや「なんだこれは!?」という企画や、クリエイターさんがすごく好きです。普通の会社だと企画会議を通らないようなものでも、私たちは注目したいと思っています。

熱い思いを持った方で、「自分のゲームをSwitchに移植したり出したい」という方がいらっしゃったら、ぜひジー・モードへご相談いただければと思います。世の中にたくさん素敵なゲーム、面白いものを一緒に届けていきたいなと思っています。

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株式会社ジー・モード
http://www.g-mode.co.jp/

会社情報

会社名
株式会社ジー・モード
設立
2006年6月
代表者
代表取締役社長 加藤 征一郎
決算期
12月
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