
東宝<9602>のゲーム事業が着実に拡大している。2027年2月期第2四半期累計のTOHO animationのゲーム関連営業収入は12億8300万円となり、前年同期の8億1300万円から57.9%増加した。『呪術廻戦 ファントムパレード』など既存タイトルが貢献したほか、『ハイキュー!!』や『薬屋のひとりごと』といった有力IPのゲーム展開も進む。映画やアニメで培ったIPをゲームでも活用し、ファンとの接点を増やすとともに、IP全体の収益機会を広げる狙いだ。

■『呪術廻戦 ファントムパレード』などが貢献、ゲーム関連収入は57.9%増
東宝の2027年2月期第2四半期累計の決算説明資料によると、TOHO animationのソース別営業収入におけるゲームは12億8300万円となり、前年同期の8億1300万円から4億7000万円増加した。増収率は57.9%に達している。
同社は増収要因として、『呪術廻戦 ファントムパレード』などの貢献を挙げている。同タイトルはサムザップとの共同事業として展開しており、東宝がすべてを自社開発するのではなく、外部パートナーと連携してゲームを企画・運営する形を採っている。
なお、この数字はTOHO animationのソース別営業収入におけるゲーム関連収入であり、ゲーム事業単独の利益を示すものではない。それでも、アニメや映画の映像利用、キャラクターライセンス、商品販売などと並ぶ収益源として、ゲーム関連収入が伸びていることが確認できる。
■2021年に「TOHO Games」始動、IPを生かしたゲーム展開を強化
東宝は2021年にゲームレーベル「TOHO Games」を立ち上げ、映画やアニメで培ったIPをゲームでもファンに届ける取り組みを進めてきた。
2026年8月時点のゲーム事業室は17人で、企画・開発・運営を担う企画グループと、マーケティング・プロモーションを担うデジタルマーケティンググループで構成する。各部署と連携しながら、企画内容に応じて適したパートナーと組み、開発・運営を行う体制だ。
ゲーム事業の戦略では、『ゴジラ』やアニメのヒットIPを生かしながら企画の精度を高める方針を掲げる。ゴジラ部やTOHO animationとの連携を通じて、IPへの理解に基づく企画・運営・宣伝を行うほか、ゲームの品質を高めるため、細かなチェックを重ねる取り組みも進めている。
また、ヒット確率の高いタイトルを投入し、IPゲームブランドとして確立することも目指す。国内外のパートナー企業との連携を強化するほか、TOHO Globalなどの海外拠点とも協力し、ゲームの運営・宣伝力を高める考えだ。
■ゲーム単体にとどまらず、IP全体の収益拡大につなげる
東宝のゲーム事業で注目したいのは、ゲーム単体の収益だけでなく、IP全体のファン拡大やマネタイズにつなげる考えを示している点だ。
決算説明資料では、会員サービス「TOHO-ONE」との連携によってファンダムを深化・拡大し、ユーザーへのリーチやマネタイズを強化する方針を示している。ゲームをIPとの継続的な接点の一つと位置付け、マーチャンダイジングなど関連事業の収益拡大にもつなげようとしている。
映画やアニメは、作品の公開・放送時に大きな注目を集める一方、ゲームはプレイを通じてファンと継続的に接点を持てる。ゲームをきっかけに作品やキャラクターへの関心を深めてもらい、商品販売やほかのコンテンツ展開にもつなげられれば、IP全体の価値を高めることができる。
東宝は海外でも配給、映像ライセンス、商品販売などの機能を拡充している。ゲームについても海外拠点との連携を進めることで、日本発IPを海外のファンに届ける手段を増やす考えだ。ゲーム事業を、IPを多面的に活用するための機能の一つとして育てようとしている。
■『ハイキュー!!』は自社パブリッシング、『薬屋のひとりごと』はガストブランドと共同開発
今後の展開では、新作タイトルも注目される。
スマートフォン向け育成シミュレーションゲーム『ハイキュー!! ALL Challengers』は、TOHO Gamesが企画・制作・配信を手掛けるタイトルだ。アニメ『ハイキュー!!』初の本格的な育成シミュレーションゲームとして、選手の育成方針やチーム編成を通じて、自分だけのチームで試合に挑む内容となっている。開発・運営はG2 Studiosが担う。
同作は東宝がパブリッシングを手掛けるタイトルとして、ゲーム事業の取り組みを広げるものとなる。IPのゲーム化に加え、企画やプロモーション、配信などに主体的に関与することで、ゲーム事業のノウハウを蓄積する意味もある。現在は配信中であり、今後、ユーザーの獲得や運営を通じてどのように収益を積み上げていくかが注目される。
一方、『薬屋のひとりごと ~偽りの皇弟~』は、2027年初頭の発売を予定するミステリーアドベンチャーゲームだ。Nintendo Switch 2、Nintendo Switch、PlayStation 5、Steamに対応し、原作者の日向夏氏が原案を手掛ける完全新作ストーリーを描く。
本作では、東宝のTOHO Gamesが企画・制作を担当し、コーエーテクモゲームスのガストブランドが開発を手掛ける。『アトリエ』シリーズなどで知られるガストブランドの開発ノウハウを活用しながら、『薬屋のひとりごと』の世界をゲームならではの形で表現する。
東宝側が企画を考え、ガストブランドに提案したことが開発のきっかけの一つになったとされる。既存のゲーム企画をIPに当てはめるだけでなく、作品の特徴を生かせるゲーム体験を考え、適した開発パートナーと組む事例としても興味深い。
『ハイキュー!! ALL Challengers』では東宝がパブリッシングを担い、『薬屋のひとりごと ~偽りの皇弟~』では企画・制作と開発を分担する。IPやゲームの内容に応じて外部パートナーと連携しながら、ゲーム事業の展開を広げている。
■既存タイトルの成長を新作につなげられるか
東宝のゲーム関連営業収入は、2027年2月期第2四半期累計で前年同期比57.9%増となった。『呪術廻戦 ファントムパレード』など既存タイトルの貢献に加え、TOHO Gamesを軸にした企画・開発・運営体制の整備や、有力IPのゲーム化が進んでいる。
ゲーム事業は、映画やアニメに比べればまだ小規模な収益源だが、IPを活用する手段を増やし、ファンとの接点を継続的に作る役割を担う。ゲームそのものの収益に加え、商品販売や海外展開など、IP全体への波及効果も期待できる。
今後は『ハイキュー!! ALL Challengers』の運営や、『薬屋のひとりごと ~偽りの皇弟~』の発売などを通じて、既存タイトルに続く収益源を育てられるかが焦点となる。既存IPのゲーム化と外部パートナーとの協業を組み合わせ、ゲームをIP戦略の一角としてどこまで成長させられるか。東宝のゲーム事業は、今後のIPビジネスを考えるうえでも注目される。
【PR】業界未経験からゲーム・エンタメ業界へ!あなたの経験を活かせる求人あります
会社情報
- 会社名
- 東宝株式会社
- 設立
- 1932年8月
- 代表者
- 取締役会長 島谷 能成 / 取締役社長 松岡 宏泰
- 決算期
- 2月
- 直近業績
- 営業収入3606億6300万円、営業利益678億8900万円、経常利益701億4000万円、最終利益517億6900万円(2026年2月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 9602