【決算まとめ】上場SAPの直近四半期業績…QonQでの営業増益は6社中3社
上場しているソーシャルゲームプロバイダー各社の4-6月期(もしくは3-5月期)の決算が出そろった。今回は、KLab、クルーズ、ケイブ、ドリコム、ボルテージ、アクセルマークの四半期決算をまとめた。モブキャストはプラットフォーマーでもあり、SAPとは若干違うと判断したこと、エイチームの直近決算(2-4月期)は、コンプガチャ問題の発生した時期とずれるため、比較対象に入れるのは不適当と判断した。大手ゲーム会社と異なり、比較方法は前年同期比(YonY)ではなく、前四半期比(QonQ)である。
さて、前回(1-3月期)は、6社中4社が前の四半期に比べて増収となり、6社中2社が営業増益だったのに対し、今回は、6社中2社が増収となり、6社3社が営業増益だった。増収となる企業が減った一方、収益性の改善した企業が増えた。気になるのは、売上を減らす企業が増えたことだろう。上位SAPは、これまでQonQで2ケタの伸びを連発していたことを考えると、大きな変化といえよう。
ただし、これをもって国内ソーシャルゲーム市場の伸び悩みとみるか、踊り場と見るかは判断が分かれる。この問題を考える前に、減収要因として、SAPの多くはコンプガチャ問題への対応に終われ、新作リリースが遅れた事情がある。「供給それ自体が需要を生み出す」とは少し話は違うが、新しいアイディアを持ったコンテンツが出現し、それを模倣するコンテンツが出てマーケットが拡大してきただけに、新作リリースが遅れたことは非常に痛かった。
もうひとつ、国内ソーシャルゲーム市場は、「GREE」と「Mobage」だけではないことだ。AppStoreやAndroidのアプリマーケットでもソーシャルゲームプラットフォームに依存しないソーシャルゲームが多数リリースされ、売り上げを伸ばしている。また、古豪「mixi」は復調しつつあり、「LINE」や「コロプラ」なども違った戦い方が求められるが有望な市場と聞く。「モブキャスト」もプラットフォームをオープン化する方針を明らかにしている。
この意味で、国内ソーシャルゲーム市場が成熟期に移行したと考えるのは早計だろう。成長性の高い海外市場にアプローチしておく必要はあるが、国内で減りそうな収益を海外で稼がなくてはならないという局面ではまだないとみている。SAPとしては収益の上がるプラットフォームにコンテンツを提供するのがベストであり、プラットフォームの多様化に柔軟に対応できることが重要なのではないか。
さて、各社の状況を見ていきたい。
■ボルテージ<3639>の4-6月期は、売上高21億9400万円(同3.1%増)、営業利益2億7000万円(同1.5%増)だった。ソーアプ中心に売り上げが伸びたことに加え、タイトルリリースが第2四半期、第3四半期に比べて減少したことで原価の伸びが抑えられたようだ。テレビCMの出稿や開発体制の強化などを行った。ソーアプの売上が同9%増の9億5600万円、公式サイトが同1%増の12億3800万円だった。ソーアプの売上の全体に占める比率は1Qでは37%だったが、4Qでは43%に上がった。
■KLab<3656>の3-5月期は、売上高39億8300万円(前四半期比1.9%減)、営業利益6億2200万円(同43.9%減)だった。コンプガチャ廃止とその後のガイドラインへの対応により、新作タイトルの投入ペースが鈍化したことに加え、既存のオリジナルタイトルの落ち込みが大きかったこと、計画になかったテレビCMなど広告宣伝活動も影響した。第4四半期には「幽☆遊☆白書」を投入し、9-11月期には海外を含めて30本の新作を投入する計画。
■クルーズ<2138>の4-6月期は、売上高22億5200万円(同3.0%減)、営業利益3億5100万円(同29.0%増)だった。既存タイトルの売り上げが低下したものの、「新魔×継承!ラグナブレイク」が全体を下支えした。費用面では、成長が鈍化したタイトルへの開発リソースや広告宣伝を削減する一方、新規タイトルなど成長が見込めるタイトルに経営資源を集中したため。今後は、高品質のオリジナルタイトルに注力する一方、人気キャラクターを使ったタイトルに注力する方針。
■アクセルマーク<3624>の4-6月期は、売上高9億7000万円(同1.3%減)、営業利益7200万円(同14.3%減)だった。会社全体としては減収だったが、広告や公式サイトなどが落ち込んだことによるもので、新タイトル「天空のレギオン」を中心にソーシャルゲームは伸びた。費用面では、インディソフトウェアを買収し、ソーシャルゲームの開発体制を強化したことに加え、人員拡充や広告宣伝の強化、スマートフォン向け新サービスの先行投資を実施したため、減益となった。
■ドリコム<3793>の4-6月期は、売上高20億6500万円(同115.8%減)、営業利益1億7700万円(同47.3%減)だった。ソーシャルゲームのスマートフォン対応が遅れた結果、既存タイトルで移行ユーザーを取りこぼしたことに加えて、第2四半期以降にリリースする新作ゲームの費用が先行したことが響いた。第2四半期では、「戦国フロンティア」が好調なスタートをきったほか、「ドラゴン×ドライツェン」、「聖刻のジャンヌダルク」などを「GREE」と「mixi」でリリースする計画。
■ケイブ<3760>の3-5月期は、売上高7億9800万円(同34.6%増)、営業利益5800万円(前四半期1億7800万円の赤字)となり、増収・黒字転換となった。新作「北斗の拳II 百万の覇王乱舞」が伸びたことに加え、「しろつく」ではイベントの見直しやキャンペーンで売上が回復した。「くにつく」や「真・女神転生IMAGINE」も復調したとのこと。携帯公式サイトやアーケードゲームを縮小するなど選択と集中が奏功した。
会社情報
- 会社名
- 株式会社ケイブ
- 設立
- 1994年6月
- 代表者
- 代表取締役社長 秋田 英好/代表取締役CFO 伊藤 裕章
- 決算期
- 5月
- 直近業績
- 売上高122億7400万円、営業利益18億7000万円、経常利益19億4300万円、最終利益14億4100万円(2024年5月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 3760
会社情報
- 会社名
- 株式会社ドリコム
- 設立
- 2001年11月
- 代表者
- 代表取締役社長 内藤 裕紀
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高97億7900万円、営業利益9億300万円、経常利益7億9300万円、最終利益1億400万円(2024年3月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3793
会社情報
- 会社名
- KLab株式会社
- 設立
- 2000年8月
- 代表者
- 代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
- 決算期
- 12月
- 直近業績
- 売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
- 上場区分
- 東証プライム
- 証券コード
- 3656
会社情報
- 会社名
- クルーズ株式会社
- 設立
- 2001年5月
- 代表者
- 代表取締役社長 小渕 宏二
- 決算期
- 3月
- 直近業績
- 売上高140億円、営業利益6億4400万円、経常利益6億2800万円、最終利益2億5400万円(2023年3月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 2138
会社情報
- 会社名
- 株式会社ボルテージ
- 設立
- 1999年9月
- 代表者
- 代表取締役社長 津谷 祐司
- 決算期
- 6月
- 直近業績
- 売上高34億5600万円、営業損益9400万円の赤字、経常利益1500万円、最終利益500万円(2024年6月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 3639
会社情報
- 会社名
- アクセルマーク株式会社
- 設立
- 1994年3月
- 代表者
- 代表取締役社長 松川 裕史
- 決算期
- 9月
- 直近業績
- 売上高21億4400万円、営業損益9800万円の赤字、経常損益1億円の赤字、最終損益1億200万円の赤字(2023年9月期)
- 上場区分
- 東証グロース
- 証券コード
- 3624