ベクターの業績推移を振り返る-今後の立て直し策に注目

ベクター<2656>が4月15日に2011年3月期の業績予想の下方修正を行った(関連記事)。営業収益と営業利益、経常利益は前年比プラスとなるものの、当期純利益については減益となる。第3四半期まで業績が順調だったを考えると、驚いた人が多かったのではないか。今回、四半期業績の推移をグラフにし、これまでの展開を簡単に振り返りたい。 第4四半期のみの業績予想は、営業収益8億7900万円、営業利益2200万円、経常利益2300万円、四半期純損失8600万円となり、四半期ベースでは久々に四半期純損益が赤字に転落することになる。営業収益も第1四半期の実績を下回った。 2009年3月期から2011年3月期までの営業収益と各利益の推移をしめしたのが下のグラフになる。資料はいずれも会社側の発表した決算説明会資料と四半期報告諸などである。営業収益が伸びているが、それよりも営業利益、経常利益、純利益の伸びが顕著だ。 売上の伸びに対し、利益の伸びが大きくなった要因として、収益率の落ちたソフトウェア販売の売上が低下する一方、利益率の高いオンラインゲームの売上が伸びたことがある。オンラインゲーム事業の売上が全体の売上に占める比率は、2009年第1四半期で約18%だったが、2011年3月期の第3四半期には約68%にまで伸びた。収益構造が劇的に変化した。 同社は、2010年4月に、ブラウザゲームポータル「ブラゲタイム」を開設し、低コストでリリースできる「ブラウザゲーム」を他社に先駆けてリリースした。さらにクライアントダウンロード型オンラインゲームも入れ替えを積極的に行ってきた。これは推測だが、特にコストの高い韓国や国産タイトルを避け、台湾や中国で開発されたタイトルを厳選してリリースしてきたように思われる。国内のオンラインゲーム運営会社が新タイトルのリリースに消極化するなか、同社の動きはとにかく目立っていた。 それでは、第4四半期に急落した要因についてだが、まず、リリース予定であったタイトルから見ていこう。同社が発表した第3四半期までの決算説明会資料によれば、第4四半期中に6タイトルのリリースを行う計画であった。内訳は、クライアントダウンロード型1タイトル、モバイル5タイトルだったが、実際にリリースされたのは以下のとおり。 ・3月2日: 『無敵! 料理王』(ブラウザゲーム) ・2月28日: 『DEMONS CODE』(オンラインゲーム) ・2月24日: 『サイキック少女大戦!』(モバイル) ・2月15日: 『三国志牧場(さんぼく)』(ブラウザゲーム) ・1月26日: 『あるけみ!錬金術師と天の使者』(モバイル) ・1月12日: 『ブラゲウォーズ』(ブラウザゲーム) 新作タイトルのリリースは、2月の後半から3月の初旬に集中していたことから、震災によって出鼻をくじかれた格好になったようだ。震災によるユーザーの消費マインドの低下に加えて、積極的なプロモーションを実施しづらかったことの影響はかなり大きかったのかもしれない。プロモーションの影響は、新タイトルだけでなく、既存のタイトルにも影響が出たのだろう。 4月以降、新作タイトルを中心に事業の立て直しを進めていくことになるだろうが、4月後半以後に行われる決算説明会でどういったアナウンスが出てくるのかが注目される。PCオンラインゲームに引き続き注力していくのか、あるいは戦略の見直しを行い、スマートフォンや海外戦略という新機軸を打ち出していくのか。