3月14日に東証マザーズ上場を果たしたオルトプラス。設立からわずか3年足らず。ビジョンとして掲げている「世界No.1 SAP」に向けた大きな一歩に思える中、その真意はどこにあるのだろうか。上場の狙いを切り口にしたインタビューは、同社のスタイルや方向性にも深く入り込んでいくものになった。代表取締役CEO 石井武氏のリアルな声を、ノンストップでお届けしたい。
【プロフィール】
■株式会社オルトプラス
本格RPGカードゲーム「バハムートブレイブ」、競馬シミュレーションゲーム「ダービーズキングの伝説」、テレビ朝日とタイアップで企画・開発を行った「YAVATAR」など、数多くのヒットタイトルをリリースしている。2010年の設立以降、「 GREE Platform Award 」を3年連続で受賞。2012年には「バハムートブレイブ」で総合大賞に輝いた。
──:早速ですが、上場を行った狙いを教えてください。
端的に言うと、より多くの人材を採用することです。上場していることは、就職活動をされている方たちに対する1つのアピールポイントになります。もちろん資金調達なども上場のメリットではありますが、人材採用の強化という側面がもっとも強いですね。タイトルのラインを増やしていくにしても、人材ありきですから。
──:いつ頃から計画されていたのでしょう?
創業時から検討していました。ここまでの道のりは、ほぼ最短だったと思います。ただ、勝ち残っていくのは大変でしたね。業界が伸びていったタイミングにうまく乗れたり、同業他社との競争環境の中で刺激を受けたりと、外部要因にもサポートしてもらいました。
──:傍から見ていると、順風満帆に歩んで来られたように感じられます。
私が元エンジニアでないことが、プラスに作用したのでしょう。私はあくまでも経営者としてのビジネスサイドに注力し、コンテンツに関しては現場に権限を委譲してきました。「こうしてほしい」というトップダウンではなく、ユーザー目線のゲームをボトムアップでつくってきたことが、成長の原動力になったと思っています。
──:上場してから日は経っていませんが、社内への影響はいかがですか?
まだ目に見える変化はありませんが、メンバーの意識は徐々に高くなっていくと思います。言ってみれば、これまではソーシャルゲームを遊んでいるユーザーだけにフォーカスしていればよかった。しかし上場したことで、投資家の方たちを含めたソーシャルゲームへの興味が浅い層からも、会社の一挙手一投足が注目されるようになります。アウトプットが劇的に変わるまではいかないにしても、どうすれば会社が良くなっていくのか、どうすれば業界がより発展していくのかという、大きな括りでの意識は芽生えていくのではないでしょうか。
■世界一に向けた展望
──:御社は世界No.1 SAPになることを掲げていらっしゃいます。上場はその目標への大きな一歩になるのでしょうか?
「上場している会社のアプリ」という看板があるのとないのとでは、海外マーケットにおける信頼の度合いは変わってくると思っています。数々の障壁を乗り越えていくために必要な1つのエンジンになることには間違いないでしょう。
──:海外拠点の設立なども考えていらっしゃるのですか?
すでに「バハムートブレイブ」はアメリカとカナダでテストをはじめていて、それにあたってのマーケティングなどは外部会社に依頼しています。近々での拠点の設立は考えていませんが将来に向けた採用は始めています。今は、国内でやるべきことできることを、進めていっています。
──具体的にやるべきこととは?
日本でヒットしたゲームをローカライズしたからと言って、海外でユーザーの心をつかめるとは限りません。なぜなら、国民性や地域性といった日本ならではの要素が多分に含まれているからです。当社のゲームもそう。だから、もっと深くゲームの本質を掘り下げながら、「なぜ楽しんでもらっているのか」という普遍性を追求していく必要があります。それが見えてくれば、どの国のどのユーザーでも面白いと感じてもらえるゲームがつくれると思っています。
──:確かに異文化を越えてヒットさせるのは、一筋縄ではいかない気がします。
日本であれば、売上数字が変化したときには、その背景にある程度の察しがつきます。しかし海外だと、他のエンタメとの比較やニュースを身近に感じていない為「今、中国は旧正月だから数字が上ってる?」くらいのレベルでしか分からない。そうすると、改修のスピードや精度は上がりません。ですから、その国のライフサイクルにとけ込みながら生活習慣を事細かに知ることも、成功には欠かせないでしょう。
──:ただ御社は、そういった環境の差異を超越するゲームを目指しているわけですね。
ネイティブアプリでコンシューマーライクなものをつくれば、ユーザーの声に合わせて適宜カスタマイズしなくても、純粋なアプリのクオリティだけで勝負できると思っています。と言うのも、海外のユーザーは通勤中のような細切れの時間で遊ぶというよりも、夕方や夜にまとまった時間を確保して遊ぶ傾向にあります。ですから今は、コンテンツ自体の純粋な面白さを全面的に提案していくべきか、それとも現地の意見を拾い上げながらフレキシブルに内容を可変させていくべきか、という方向性を当社の強みを活かせる方向で模索しているところです。
──:いずれにせよ、まずは足元の日本からと。
そうですね。しかも、日本におけるソーシャルアプリの課金マーケットは、世界で2番目に大きいんです。ですから、日本で一番を目指すことは、世界で一番になる上での最短ルートであるとも捉えられます。
──:石井様は家庭用ゲーム業界での経験もお持ちです。それも強みになる気がしたのですが。
ソーシャルゲームは、家庭用ゲームほどジャンルが多様化していません。成功しているジャンルを見つけていく上では、その歴史の中にもヒントはたくさんあるでしょうね。家庭用ゲームは、ソーシャルゲームの20年くらい先輩ですから。そこにソーシャルならではの特徴をミックスさせれば、新しいゲームを生み出せる可能性は大いにあると思っています。
■ゲーム業界の出身者が少ない理由
──:設立からの3年間で、かなりノウハウは溜まっていると思うのですが。
先ほど海外拠点の話が出たとき、現地のライフサイクルに身を置くことが大切だと言いましたが、実は日本のユーザーについても分からないことだらけですよ。余暇の時間を過ごす上で、比較対象は無限にありますから。同業他社のゲームはもちろん、たとえばテレビ番組の編成とも密接に関わってきます。なぜユーザーに受け入れられているのかを正確に紐解くのは、とても難しいことです。
──:そう言われてみれば、私も時間の使い方はかなり気まぐれかもしれません。
ただ、経験則はたくさん溜まっています。「3割引」と「30%OFF」と表記した場合のクリック率の違いとか、黄色と赤色ではどちらの方が反応しやすいとか。現在は400万人ほどのユーザーに遊んでいただいているので、その中での比較対象は可能なわけです。そういった方法論を当てはめてみて想定と違ったときは、前提条件の何が変わってしまったのかを分析し、ノウハウをさらに発展させています。
──:その部分は、他社との差別化にもつながっているのですか?
つながってはいるものの、あくまでも要素の1つですね。なぜなら、ノウハウに特許があるわけではないですし、それを活用すれば必ずしもヒットタイトルをつくれるというものでもありません。たとえばレストランだと、同じ食材を揃えたとしても、繁盛するかしないかは店によって分かれますから。
ではどこで大きく差別化しているかというと、細かい箇所にまで手を抜かず、徹底的につくり込んでいるところだと思っています。私たちは「ゲームづくりとはサービス業である」という理念のもと、ユーザーと一緒になって内容のブラッシュアップを図ってきました。ちょっとした色づかいや、ちょっとしたフォントの大きさ。こういった細部の飽くなき改修が、やがて大きな差になっていくのです。
──:コアなファンが多いのも、そこが由縁なのですね。
「ダービーズキングの伝説」は続編を出すことなく、2年以上にわたってヒットし続けています。こういった存在は、他には中々見当たりません。今でも開発時と同じくらい、いや、それ以上の力を注ぎながら、全力でつくり続けています。ですから内容に関しても、ローンチ後にできた部分の方が、割合としては圧倒的に多いですよ。
──:こう聞いてみると、そういった方法論はゲーム以外のジャンルでも応用していけそうですね。
中長期的な展望としては、事業の多角化も視野に入れています。先ほど例に出した割引の見せ方にしても、ECサイトで商品を売るときにも活用できますから。事業の先々の広がりはかなりあると見ています。でも今はゲームですね。ソーシャルゲームほど現場のメンバーが自由につくれるサービスはありません。価格設定1つにしても、他のどんな商品よりも自由度が高い。ですから、サービス業としての思考を持てる方であれば、この会社での日々をきっと楽しめると思いますよ。
──:そこに共感していただける人材を、より多く集めるための上場というわけですね。
そうです。だから、この会社にはゲーム業界の出身者が少ないんですよ。クリエイティブワークと同時に、KPIや売上数字といった側面も併せて考えられる方が、ここでは伸びていくタイプ。その素養がある方たちを一人でも多く採用していくことが、上場の最大の狙いです。
──:なるほど。本日はありがとうございました。
会社情報
- 会社名
- 株式会社オルトプラス
- 設立
- 2010年5月
- 代表者
- 代表取締役CEO 石井 武
- 決算期
- 9月
- 直近業績
- 売上高35億1600万円、営業損益4億5200万円の赤字、経常損益4億1600万円の赤字、最終損益4億5200万円の赤字(2024年9月期)
- 上場区分
- 東証スタンダード
- 証券コード
- 3672