【インタビュー】「ガチャなし」「スマコマ」「ハクスラ」…スクエニが放つ異色作『ラストイデア』、セールスやDL数が好調に推移するその要因と今後の展望に迫る!


スクウェア・エニックスから4月18日に配信された、スマホ向けゲームアプリ『ラストイデア』。

本作は、新米トレジャーハンターである主人公が、記憶を失った謎の少女ルクレシアや多くの仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて大きな陰謀の渦へと巻き込まれていく王道冒険ファンタジーと、「スマコマ」を搭載した爽快かつ直観的なアクションバトル(スマートフォン操作で手軽にハック&スラッシュ体験が可能なシステム)が楽しめるトレジャーハンティングRPGである(関連記事)。

その『ラストイデア』、平成最後に各社から新規良作が多くリリースされた中でも、ノンIP、「ガチャなし」のハック&スラッシュ(ハクスラ)ゲームと異彩を放っていた。

事前登録の段階から注目を集め、サービス開始後もセールスランキングの上位に滞留。ガチャがないこともあり、リセマラの要素が存在しないゲーム性ながら、100万ダウンロードを達成するなど好調に推移している印象だ。

そこで今回、その『ラストイデア』の開発陣へのインタビューを実施。プロジェクト立ち上げの経緯やリリース後の手応え、好調の要因、さらに今後の展望についてお話を伺った。
 

スクウェア・エニックス
第四開発事業本部 ディビジョン3
プロデューサー:白井 慎一

ディレクター:野久保 公朗(写真左)
プランナー:吉目木 淳司(写真右)
 

■良い意味で裏切られた配信後の反響…従来のアプリとは異なる推移を見せる


――:配信開始から1ヵ月半ほど経ちました。現状の手応えはいかがでしょうか?

白井 慎一氏(以下、白井):正直に言うと、ここまで反響があるとは思っていなかったので、良い意味で裏切られた感じです。これまでガチャありコンテンツの運用や新規タイトルの立ち上げを経験してきましたが、それらゲームとは反応が全然違いました。

運用する中で毎日の数字やお客様の反応を見るんですが、数字が今までに見たことのない動き方で推移しているので、ある意味おもしろいですね。

マネタイズが違うとこうも数字に表れるんだなと驚きましたし、運用している側として新たな発見がありました。スマホゲームのマネタイズには、まだまだ可能性があるのかなと思いましたね。


――:従来のスマホアプリとは異なる動き方で推移していると。

白井:ランキングを見られるツールをチェックしている業界の方ならわかると思うんですが、通常のアプリは目玉のコラボイベントやコラボガチャを始めると順位が上がって、落ち着いたら下がって、また別の施策で上がるという推移の仕方が多いと思うんです。

ただ『ラストイデア』の場合は、ほぼ一定のランキング圏内を動いている。だから施策の強弱というよりも、ハマってくれているお客様がずっと遊んでくださっているという印象ですね。


野久保 公朗氏(以下、野久保):KPIを見ていても、今までにあまり見たことのない不思議な感じになっていますよ。

――:今までのタイトルとは手応えの質が違うと?

白井:手応えがあるかないかで言うと、あります。ただ、今後どうなるかが予測できないので、そういう意味ではまだまだ不安もたくさんありますけど、現状はすごく好調に推移しています。

リリース直後は世間から「すぐ終了するんじゃないか」と言われていましたが、その心配は無さそうです。


野久保:セールスランキングも当初は一桁を期待されていた方もいたとは思いますが、そこまでは行っていませんでしたので、普通のガチャゲームのように後は下がっていって終わりだろうと思われた方も多かったと思うんです。

ただ、リリース初期の頃から近い順位で推移し続けていますので、セールスとしては悪くないんです。派手さはないけど安定して確実な売り上げが出ていると思います。毎日ジャブを打ち続けている感じですね。


吉目木 淳司氏(以下、吉目木):私は『ラストイデア』にジョインして間もないんですが、前に運用で携わっていたタイトルと比べても、『ラストイデア』のKPIは一般的なスマホゲームとは全然違いますね。

そのため今までの運用力で対応できる部分もあれば、逆に学ばせてもらっている所もあります。

ここからどうやって運用していくかは今後の課題にはなってくるんですけど、新たな発見も多いので、データ分析のし甲斐があるという意味ではプランナーとしても面白味を感じています。


野久保:正直、ゲームとしての粗さもまだ残っていますし、お客様が望んでいる所にも自分が望んでいる所にも達したとは思っていません。多くのお客様に認めていただけるように、運営を通じてクオリティをより一層向上させていきたいですね。
 

■配信から約2ヶ月で100万ダウンロードを突破した要因


――:『ラストイデア』と同時期に他社からも良質な新作が多数配信されました。ジャンルはタイトルごとに異なりますが、その上で他作品との差別化で意識したポイントは?

野久保:ゲームとして飛び抜けようとは常に考えていました。まず意識したのは、ハクスラとしてのキャラクタービルドです。スマホで遊ぶからといってあまり簡略化し過ぎるとゲームとしての特徴が消えてしまう。

だから、昔からあるコアなハクスラゲーム並みのキャラクタービルドの奥深さを維持しつつも、他の部分でスマホナイズして簡略化することで市場に合わせようと考えました。

 

あとは操作性です。バーチャルパッドを採用したゲームって多いですが、個人的にバーチャルパッドはあまり好きではないんです。そこに対しての回答として"スマコマ"という仕組みを考えました。

試行錯誤する中で、たまたま渦を巻くようにすると竜巻が出たり、線を引いた所にファイアーウォールが出るというモックを作ってみたら思いのほか気持ち良くて周囲の反応も良かったので、これならイケるとスマコマを搭載しました。

 

――:スマコマは実際に操作してみると確かに気持ち良いと感じました。何パターンくらい操作の種類があるんですか?

白井:現状、スマコマの操作は8パターン入れています。元々他にも数パターンあったんですが、やはりお客様の馴染みのない操作に関しては使わないようにしようと。

僕が入った当時は、「メテオは長押し操作でしか発動できない」といったような、ひとつのスキルに対してひとつの操作しか受け付けない仕様だったんです。

ですが、それだとお客様それぞれの自分なりの操作みたいな所が担保できない。そこで、この操作にこのスキルを自分であてがうという機能を追加して、今の形になりました。


野久保:僕はこのスキルはこの操作で出したいけど、白井はこの操作が良いという意見の出し合いは開発中に頻繁にありました。最初は我々からの一方的なアプローチでしたが、皆で話し合いをする中で、お客様が操作を選択できるようにしようという形に落ち着きました。

白井:これは結構リリース前の大きな改修でしたが、結果的にやって良かったと思っています。


――:本作はリセマラなしでダウンロード数が100万を突破(関連記事)しましたが、その要因はどこにあるとお考えですか?

白井:DLが好調な要因については、事前登録のタイミングで新規のノンIPでは考えられないくらいTwitterのフォロワーが獲得できまして、制作発表会を実施したタイミングで10万フォロワーになりました。

ガチャなしということに期待してくださったお客様や、過去に弊社で出したハクスラゲームをプレイされていて、当時のハクスラゲームとどう変わったのかを見に来てくれた方を、しっかり取り込めたのが、フォロワー数獲得の背景にあると考えています。

あとは、事前登録の時に普段コンシューマーをメインに遊んでいる層にも注目してもらえるような、各イデアの紹介や動画といった情報をお届けできたというところも効果的だったと思います。


PR担当:事前にメディアさんに触っていただく機会があった中で、ライターさんや業界関係者の皆様からの評判も良かったんです。皆様から「これはやばい!」、「テストプレイしたらお世辞抜きでおもしろかった」という意見をいただいたり、良い記事を出していただきました。

それらの反応を見て、ハクスラというコアなジャンルながら、事前から多くの方々に注目してもらえたことが大きな要因ではないでしょうか。


白井:知り合いを連れて来てくれるお客様の動きも見えて、口コミで回っている感もありますね。

それはどちらかというとリリース後の話ですが、遊んでみたらおもしろかったから一緒にやろうみたいな感じでお客様が知り合いに『ラストイデア』を紹介してくれるという流れができていたので、そういう意味でうまく刺さったのかなという気はしています。


――:メディアやプレイヤーの口コミで広がっていった部分もあると。

吉目木:あと、ハクスラに思い入れがある方は年齢層が高いというイメージがあったので、『ラストイデア』は30代後半~40代のお客様がプレイしてくださっていると思っていたんです。でも実際はそれ以上に10代後半~20代前半の若い層が遊んでくださっているという意外なこともわかりました。

白井:そういう意味では、ハクスラというジャンルを知らない、遊んだことがないけど、純粋にゲームとして『ラストイデア』をプレイしてくださる方が多かったことが、予想以上にDL数が伸びた要因なのかなと思います。


野久保:一般的なハクスラって、ダークファンタジーな世界観、ごついキャラクター、重めのストーリーというものが多いんです。でも、『ラストイデア』はそこに対するアンチテーゼとして、とにかくかわいい女の子を出して、受け入れられやすい雰囲気作りを企画の立ち上げ時から決めていました。
 

かわいいキャラクターが出てきたり、アニメーションを入れたりと、一見こてこての王道系RPGで若い年齢層のお客様でも入りやすいんですが、実際にプレイしてみるとガチガチのコアなハクスラゲームという。そのアンバランスさが逆に引きになると思いました。
 

■ガチャなしの本作における課金面に関する想い


――:先程セールスランキングについて、一定の順位をキープし続けるために意識していることはありますか?

白井:意識していると言うより、今プレイしてくださっている皆様のおかげで保てているのかなというのが正直な所です。

今僕らが意識していることは、せっかく『ラストイデア』を楽しみにしてDLしてくださった方々が遊んでみたら「ちょっと期待していたものと違った」という事を極力無くすというか、開発側の思いとお客様の思いが良い距離感でいられるように日々調整をかけている状況です。


色々な問題もあって、修正や調整、何かコンテンツを追加する際のスピード感が遅い部分もありますが、なるべく早く皆様にお届けできるように日々進んでいます。

コンテンツの運営で良くあるのが、こういう大目標に向かってこういう風に遊ばせてあげたいとか、それを得たら次のイベントで有利になりますよ、みたいなものが割と多いと思うんです。でも『ラストイデア』は、当たりを作らないといいますか、運営がお客様を先導しないというのを元々のコンセプトにしています。

実際にはトレンドがあって、このスキルばかり使われるということが起きることもあります。ただ想いの部分としては、お客様それぞれが「自分の考えたビルドが最高だ!」となるように、色々なパターンを追い求めて欲しいという設計思想にはなっているんです。

なので運営側が「今はこれを使えば有利ですよ」といった方向に持っていってしまうと、その可能性を潰すことになる。その可能性をなるべく潰さないようにするためにはどうしたら良いかを考えています。


――:課金面についてお聞きしたいのですが、ガチャなしの本作における課金ポイントは?

白井:正直、「スタミナはフリーにしてほしい」という意見はものすごく出ています。ただ、コンテンツとしてガチャを無くすという決断をした中で、スタミナの部分に関してはお客様にご不便をかけてしまって申し訳ないのですが、スタミナ回復で課金していただいているという形です。

――:ショップ内で売れ筋の商品は?

白井:リリースから約1ヵ月半ですが、最初の段階で反響が大きかったのはスタートダッシュパックです。やる気のある方は恐らくゲーム開始から他のお客様より先に進みたいという気持ちでやられていると思うので、そこは人気商品でした。

また、スタミナ周りも結構人気があります。直近で言うと、VIP権を追加して販売しているんですが、内容的に明らかにお得な商品でしたのでかなりの反響がありました。


――今後、ショップの品揃えは増えていくのでしょうか?

白井:どこまで追加するかはわからないですが、いくつか追加しようかなと考えているものはあります。ただ僕らとしては、買っていただいたお客様が後悔するようなものは出さないようにしようと思っています。

通常のゲームはその瞬間欲しいと思うものを買ってもらって、時間が経ったら違うものが出てきてまた買ってもらうという流れで制作していると思いますが、『ラストイデア』は一定期間遊ぶために買っていただくというイメージなんです。


ある効果が30日間付いたり、1ヵ月で自動更新のサブスクリプションであったりといった期間課金が多いので、どちらかと言うと『ラストイデア』を長く楽しんでもらうための商品がメインです。

継続的に買っていただくためにはどうしたら良いかを考えながらショップのラインナップを決めるので、お客様にとっての瞬間的な高揚よりも長く遊ぶために買って良かったと思ってもらえるような方向性にしています。


しばらく遊んでみて経験値をもう少し早く上げたいなと思ったら経験値ブーストを、集中してプレイしたいと思ったらスタミナブーストで一日に遊べる量を増やすといった、お客様のプレイスタイルやタイミングに合わせて購入できるように、商品のラインナップを意識しています。

今これが販売されているから買ってください、という風にはしていません。

 

■『ラストイデア』の今後の展望に迫る


――:プレイヤーから様々な意見や要望が寄せられていると思いますが、今後改良・改善したいところがあれば教えてください。

白井:色々とご意見をいただいている中で一番多いのはスキルの調整やバトルのバランス面ですね。このくらいの歯応えがあったほうが良いのではという意図で設置したボスが「強すぎてこんなの勝てない」というご意見をいただいたり、調整が入って流行りで使っていたスキルが使いづらくなったりしたというご意見をいただいています。

賛否両論ありますが、先ほど申し上げたとおり『ラストイデア』が目指している方向性として、「これを組んだら絶対に勝ち」、「この組み合わせが最強」というものをなるべく作りたくないし、作らないほうがお客様の個性が出てきておもしろいと思うんです。

野久保:僕はビルドのパターンだったり装備品の魅力であったり、ビルドを鍛えて戦うコンテンツが足りていないなと感じているので、それらを揃えていきたいなと考えています。


吉目木:メンテナンスで遊べないというのはすごく申し訳ないですし、僕らは遊んでほしいのに自分たちが原因でお客様に遊んでもらえる機会を減らしてしまうというのはもったいない。ですから、安定したサービスを提供できるよう改善に注力していくことを大前提として考えています。

白井:あともう1つ。予定よりもだいぶ遅れてしまっているのでお詫びしなければいけないところですが、装備&スキルシミュレーターを提供する予定です。
 

本来、先に公式ホームページ側で装備&スキルシミュレーターを実装した上で、ゲーム内で新しい装備を手に入れたら組み合わせやシナジー効果のある装備は何かをそこで探してもらって、その装備を探しにゲームをプレイする、というゲームとホームページと行き来するサイクルにしたかったんです。

そこもひっくるめた上で『ラストイデア』はスタミナ制にしたんです。

装備&スキルシミュレーターは事前登録の段階で発表していて、本来であればゲームのリリース直後くらいに提供できればなと想定していたんですが、もう1システム開発するくらい時間がかかってしまいました。

リリースがとても遅れてしまいましたが、ようやく公開されました!


――:では最後に、お話できる範囲で今後の展望についてお聞かせください。

白井:ゲーム内で自分らしさを表現してもらいたので、アバターはどんどん追加したいなと思っています。
 

詳しいことは言えませんが、いくつかコラボのお話を進めています。コラボやタイアップから色々な種類のアバターを出すことで、着飾りの選択肢を増やしたいと考えています。スキルも色々と試して自分なりの最適解を探してもらう方向性に持っていこうとしているので、コラボは多くやりたいですね。

また、ゲームの方向性で言うと、自分なりの装備を探すということで最初はソロプレイに目が行きがちになりますが、装備がある程度固まってきたお客様に対してはレリックという装備品があるんですが、そこにスキルツリーに応じて特徴を持たせていく予定です。


試練の塔というソロゲームのエンドコンテンツもございますので、試練の塔のクリアを目指す中で、皆さんがお持ちのレリックを進化させていただくことによって、より個性が出せるように持っていきたいです。

もう1つは、他のお客様と協力して何かを倒す、何かを攻略するなどマルチで遊べる内容も増やしていきたいと考えています。ソロの延長線上と、マルチで遊べるコンテンツを増やしていくというのが全体の流れとして考えている内容になります。

野久保:あと、なるべく過去の資産や費やしてきた期間が損にならないような形でシーズン機能を入れていきたいと思っています。

ハクスラ系のコンテンツだとシーズンという一定期間で遊んでもらうコンテンツを提供したりしていますが、我々としては、一般的なシーズンとは異なる形での導入を検討しています。手に入れたその期間だけ使えたり、有利になったりするのではなく、メインコンテンツでも活用できる。

そして、今までメインコンテンツで活用していたものが不必要にならない、などです。オークションが存在するゲームなので、市場の飽和、マンネリ化することはあると思うんです。

だから定期的に新たな気持ちでプレイできる環境があったほうが良いのかなと思っています。


白井:シーズン機能に関しては、時間をいただくことになると思いますが、ソロの延長線上は順次更新していきます。

マルチに関しては僕らのがんばり次第なんですが、夏から秋にかけて徐々にお出しできればという流れを考えています。そして1周年のタイミングでマルチの集大成のようなものができればなと。

現状の水準で進めば続けられるコンテンツなので、1年後までは全体のマイルストーンを組んでいます。あとはどれだけ不具合を出さずに走り続けられるか次第ですね。

吉目木:白井の話にもありましたが、最終的にはマルチを楽しんでほしいのでその準備をしていくフェーズなんですけども、ハクスラという単語って敷居が高いイメージがあるじゃないですか。

『ラストイデア』もハクスラのゲームなので、ジャンル名だけ聞いてコアなゲームというイメージを持たれるお客様も多いと思います。まずは遊びやすい環境を作って、その辺りのイメージを払拭していきたいと思っています。

その一環に不具合を減らすこともそうですし、ビルドの部分はもう少しゲーム内でガイドしてあげるなどのチャレンジもしていきたいと思っています。せっかくDLしてくれたお客様に楽しいなと思って遊んでもらいたいですし、長く続けてほしいと思っていますので、そのための環境を整えていきたいです。


――:本日はありがとうございました。

 
■『ラストイデア』
 

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設立
2008年10月
代表者
代表取締役社長 桐生 隆司
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3月
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売上高2428億2400万円、営業利益275億4800万円、経常利益389億4300万円、最終利益280億9600万円(2023年3月期)
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