【DeNA決算説明会】『マリカ』の伸長と『ポケマス』の改修が3Q以降の大きな課題に スポーツ事業は引き続き好調


ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>は、11月6日、2020年3月期の第2四半期の連結決算(IFRS)を発表するとともに、東京都内で証券アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催した。

決算説明会に臨んだ守安功社長(写真)は「主力であるゲーム事業は、既存タイトルが経年により減収減益の傾向が続いているが、新作が売上を伸ばしている」と一定の評価をしつつも、大型IPタイトル「ポケモンスターズ」の課題について語るなど、慎重な姿勢を見せた。

一方で今シーズン2位でCSの進出も果たした横浜DeNAベイスターズは好調で、Bリーグの川崎ブレイブサンダースの連結も開始、観客動員数も伸びており、今後への期待が膨らむ内容となっていた。オートモーティブなど新規事業については先行投資が続いているが、継続して投資を行っていくことも明らかになった。

同社の第2四半期累計(4~9月)の連結決算(IFRS)は、売上収益652億円(前年同期比4.3%減)、営業利益50億円(同52.7%減)、税引前利益75億円(同46.8%減)、最終利益47億円(同50.4%減)と大幅減益で着地した。

第2四半期(7~9月)の決算をみると、売上収益339億円(前年同期比8%増)、営業利益27億円(同18%増)、営業利益(Non-GAAP)25億円(同12%増)、最終利益24億円(同4%減)と増収・最終利益減だった。

本稿では決算説明会の内容と共に各セグメントの状況についてお伝えしていく。

 
■リリース時期の影響で『マリカ』と『ポケマス』寄与は限定的もグロスを伸ばす
 
主力となるゲーム事業の売上は215億円(前年同期比9%増)、今期は同社全体の売上の63%を占めた。新作の『マリオカート ツアー』と『ポケモンマスターズ』をリリースしたことで売上を伸ばしはしたものの、リリースのタイミングもあって、寄与は限定的になっている。


『マリオカート ツアー』はダウンロード数、プレイ人数とも、任天堂との協業タイトルの中で過去最高水準で推移、ワールドワイド収益の期待も高まっている。12月からは、有料会員サービスのゴールドパスの加入者を対象にマルチプレイのβテストの開始を予定するなど、機能拡張を行っていく予定だ。

一方でリリース後、瞬く間にApp Storeランキングで首位を獲得した『ポケモンマスターズ』だが、当初あった高い熱量が下がっている状況。守安社長は「『ポケモンマスターズ』はユーザーの共感ありリリース当初はとても良かった。その一方でバグやコンテンツボリュームといった面で、長く遊んでもらうために問題があった」と説明、現在はその解決のためにリソースを当てているという。離れたユーザーに対してはコミュニケーションを取ることで戻ってくるのではと話した。

既存タイトルでは『メギド72』について触れた。同タイトルはスマートフォン向けのタイトルとして本年度の日本ゲーム大賞優秀賞に選ばれており、「『メギド72』がコンソールクオリティとして認識してもらった」(守安社長)は今回の成果を強調していた。12月に2周年を迎える同タイトルだがマーケテイングを強化して売上増を狙っているとのこと。

また海外展開では『スラムダンク』を近日配信する予定だ。既に当局からの許可も出ており、クローズドβも行っている。同IPの中国の人気は高いようで大型タイトルに育てたいと意欲的だった。

 
■横浜DeNAベイスターズは右肩上がり、座席数増で今後も期待も高い。バスケットは3期目に収支均衡を狙う
 


スポーツ事業も引き続き伸長している。横浜DeNAベイスターズは引き続き好調で、主催試合の観客動員数は球団史上最高を記録、横浜スタジアムの稼働率も昨シーズンを超えるなど賑わっている。また今シーズンはCSへの進出したこともあり、増収増益の見込みだという。来季以降についてもスタジアムの拡張で座席数が増えることもあり、来年の観客数増も見込んでいる状況だ。

さらに今期からBリーグの川崎ブレイブサンダースの連結も行っている。観客動員数は伸びており、「現在は2期目、来期には赤字から収支均衡にしたい」と、守安社長は説明していた。
 
 
■オートモーティブ分野は競争激化で販促費を強化
 

新規事業については売上は順調に伸びているものの、引き続き先行投資のフェーズが続いており、赤字幅が拡大している状況だ。特にオートモーティブの分野は競争が激化していることもあり、会場からは質問が相次いでいた。守安社長は「現在同事業に対しては大きく投資を行っているが、今後も積極的に販促費を使い、シェアの獲得に注力する」とし投資を継続していくことを明かした。

また各事業に横断しているAI本部のオートモーティブ分野への取り組みも明らかにしている。タクシーという分野に関してはベテランとルーキーの間では収入が倍以上に違うのだという。この分野に同社のAIを用いることで収入が上げられないか検証している最中とのこと。
 
▲その他ソーシャルライブサービス事業では、「LIVEコミュニケーションアプリPococha」が大きく売上を伸ばしている。具体的な数値は明らかにしていないものの、グラフからは大きく伸長したのがわかる。

 
■タクシー配車アプリ「MOV」やゲーム事業で広告宣伝費を積極的に
 


費用構成では、第1四半期に比べて販促費・広告費が23%増加している。この項目については、オートモーティブ事業におけるタクシー配車アプリ「MOV」やゲーム事業での広告宣伝費が主な要因となっているとのこと。

 
■新規事業の投資には、ゲーム事業の利益増が不可欠

第3四半期では『マリオカートツアー』と『ポケモンマスターズ』がゲーム事業に本格的に寄与してくること、また『メギド72』の2周年イベントが控えていることもあり、収益の増加が期待される。特に『ポケモンマスターズ』の改修にはリソースを割いているようだ。

また『マリオカートツアー』においてもユーザーからの要望は多いマルチプレイの実装も大きなトピックになるだろう。同タイトルについては市場がワールドワイドのため、今後にゲーム事業の柱になる可能性も秘めている。

運営力に定評のあるDeNAが、これの大型IPタイトルの対して、どうアプローチしていくか注目が集まるところ。また新規事業への投資もゲーム事業基盤があってこそだ。同タイトルの今後の売上が、各事業に与える影響は非常に大きい。
 
(取材・文:編集部 和田和也)
 
 

 
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
https://dena.com/jp/

会社情報

会社名
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)
設立
1999年3月
代表者
代表取締役会長 南場 智子/代表取締役社長兼CEO 岡村 信悟
決算期
3月
直近業績
売上収益1349億1400万円、営業利益42億0200万円、税引前利益135億9500万円、最終利益88億5700万円(2023年3月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
2432
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