【Xiimoon楊氏×パールアビス李氏対談】弾丸スケジュールの枷が生んだシナジー重視のプロモーション

木村英彦 編集長
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和風アドベンチャーRPG『剣が刻』は、2019年10月にリリースされ、アプリストアのセールスランキングで上位に入るなど大ヒットした女性向けのコンテンツである。本作は、中国XiimoonとRejetが協業し、Xiimoonがパブリッシングを担当している。

今回、Xiimoon日本責任者で、『剣が刻』プロジェクトディレクターである楊仲軒氏と、『黒い砂漠』シリーズを日本国内で大ヒットに導いたパールアビスジャパンの李正攝社長に対談形式でインタビューを行い、両タイトルのプロモーションやユーザーとのコミュニケーション、アプリ市場の見方についてざっくばらんに語ってもらった。

※新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点からインタビューは、「リモートインタビュー」となっています。


──:よろしくお願いいたします。まずは、李さんの経歴についてお聞かせください。

李氏:私は大学生のころから創業することを考えており、入学してからはずっとインターンをしていました。ちょうど韓流ブームの頃合いで、勢いのあるエンタメ業界で仕事をしながら、2回ほど創業しているのですが、あまり上手くいきませんでした。その後、KOTRAという韓国貿易協会の紹介でゲームオンに入社することができました。これがゲーム業界との初めての接触になります。

その頃はゲームのことはあまり詳しくなかったので、通訳や翻訳をメインにするブリッジングチームに所属していました。ゲームオン の上場の準備の際、社長室に移動し、より会社の内部を知ったことで、創業の意志が強くなったように思います。

その後はDeNAでデラックスゲーム(有料ゲーム)全般のチームリーダーをしたり、ガンホーの子会社のグラビティで駐在員として韓国に派遣されたり、グラビティの子会社のネオサイオンでCOOも務めたりと、色々なことを経験してから独立して、5年ほど自分の会社を経営しました。



──:楊さんはいかがですか?

楊氏:ゲーム業界とは無縁だと思っていましたね。大学在学中にウェディング関連サービスの会社を立ち上げたこともあり、軍役が終わったあと、日本の総合商社の台湾子会社に勤めていたのです。その後、教職を目指すために日本の大学院で修士号、博士課程後期課程までいきました。しかし、ゲームが好きだった私は、職業としてゲームに関わってみたいという想いが昔からあり、教職ではなくゲーム業界に転身することを決めました。

ただし、ゲーム業界との関わりはもう少し早かったですね。大学1回生の時、人気MMORPGでPVP大会1位やギルトマスターとして世界最速ダンジョン攻略などの実績を達成したことがありました。そのとき、有名な雑誌の編集者がギルドメンバーにおり、彼女の誘いで攻略などの記事執筆の仕事を受けていました。今はもうそんな体力はないですが。自己最高記録は3日間寝ずに、ファイナルファンタジーX-2をクリアして、最速攻略とレビューをしたことです。

そのため、ゲーム業界は李さんと比べるとまだ初心者村から出たばかりのルーキーですが、エンドユーザーの視点からゲームを運営することを自然に身に着けました。もちろん大変ですが、毎日楽しくやっております。

 



──:李さんとはどこで知り合われたんですか?

楊氏:前職ですね。

李氏:私が経営していた会社を売却した際に、会社を売却したグループの日本支社を立ち上げることになったんです。4年前の話になりますね。

楊氏:ブライブで李さんと出会えたのは、私にとって非常に大きな意味を持っています。李さんは私にとって、兄貴分であり師匠であって、今でも李さんの教えを守って、社員には自分の家族として接するようにしています。仕事のやり方からコミュニケーションまで、あらゆることを李さんから学んだと言っても過言ではないです。

李氏:もう立派な経営者になられた楊さんに言うのは失礼かもしれませんが、当時の楊さんとお会いしたとき、ゲームに関する業務の経験が少ないとしても、仕事ができる人だなと感じました。ジョインしてから3ヶ月ほどコーディネーターをしたあとは、プロデューサーを任せられるぐらいでしたので、本当に優秀な方だと思っています。

 


──:お互いにゲームジャンルもターゲットも違いますが、お互いのゲームをどのように評価していますか?

李氏:正直なところ、私は乙女系のジャンルには詳しくはありませんが、前職でスマホゲームも検討する際、『刀剣乱舞』を深く分析しましたので、サクセスポイントはある程度は踏まえています。

その観点からいくと、『剣が刻』はシナリオが素晴らしいですし、歴史観をしっかり盛り込んでいるのが魅力的です。イラストのテイストがかなり洗練されていて、クオリティが高いのも、お客さんから愛されるポイントになっていると思います。

楊氏:『黒い砂漠』は、私もプレイしていました。美しいグラフィックも魅力的ですが、何よりキャラクターカスタマイズの自由度の高さが特徴だと思います。個人的にはプロモーションが上手いタイトルという印象もあります。『剣が刻』のプロモーションを考えるときには、『黒い砂漠』を参考にさせていただきました。



──:どのようなところを参考にしたのでしょうか?

楊氏:強気なプロモーションで一気に知名度を上げていくのが印象的でした。Rejetさんとの共同制作ということで、コアファンは付いてくれていましたが、もっと知名度を上げないとブランディングは難しいと感じていました。なので、リリース前からファンミーティングや生放送によるプロモーションを積極的に実施していきました。

あとは、『黒い砂漠』はしっかりと日本に合わせた運営をしているという印象を受けます。そこも影響を受けていて、『剣が刻』の開発メンバーにも、日本のユーザーさんの立場になって考えるように意識してもらっています。

 



──:確かに『黒い砂漠』はリリース直後から勢いがありましたね。

李氏:我々も様々な試行錯誤を積み重ねていました。そもそも、私がパールアビスにジョインしたのが2018年の10月15日なんですが、2019年2月26日にローンチに漕ぎつけなくてはいけないという弾丸スケジュールだったんです。

最初はしっかりとメンバー内で戦略をたてていくつもりでしたが、韓国での経験をベースに作ったプランニングストラテジーが日本で一部通用しないのではないかと懸念を抱くメンバーがいて、そこの吟味に時間がかかってしまったんです。その結果、議論をしている時間も惜しくなり、とりあえずやってみようという方針になったんです。

かなりアグレッシブでチャレンジングなやり方で、上手くいかなかったところもありましたが、良いところもありました。あらゆる手段、あらゆる方面からアプローチしたことで、大きなインパクトを与えられたんだと思います。ひとつのプランのなかでは、そうした相乗効果は望めなかったかもしれません。


 

▲リリース前となる2019年1月には発表会が行われた。


──:がむしゃらにプロモーションを打っているような印象もありましたが、そういった事情があったんですね。

楊氏:何でも挑戦してみて、やりながら改善していくというのも、前職で教わった通りですね。Xiimoonも12月5日に承認が下りてから、2か月で会社を設立し、3ヶ月目には事務所を借りて人材も採用し始めていました。この時期は苦しいことも多かったですが、李さんの言葉を思い出しながら、とにかくチャレンジする姿勢で臨んでいました。

李氏:楊さんの相談を受けていましたが、逆に、私の悩みも聞いてくれたので、力になっていたのはお互い様です。社員に提示した方針通りにいかないときはどうしても出てきてしまうもので、そんなときに社員に相談するというわけにもいかないので、たまに連絡を取り合ってお互いに話を聞いてもらっていました。

 

▲『黒い砂漠』は2019年2月にはローンチ発表会を開催。


──:あとこれは個人的な関心ですが、『黒い砂漠』は、日本でもPC版がすでに人気を博していましたが、モバイル版のリリースに影響はありましたか?

李氏:日本のMMORPGを好む層にかなり浸透していたことで、すでにかなり有名なタイトルになっていましたが、スマホゲームのユーザー層とPCのユーザー層は完全に別物だと考えています。『黒い砂漠』はスマホユーザーは全く知らないものとしてプロモーションを打ち出していきました。

スマホユーザーにMMORPGというところを押し出しても、あまり理解を得られなさそうだったので、キャッチコピーも「想像を超える次世代のRPG」と打ち出して、見たことのないクオリティのアクションRPGだという風にアピールしました。そのTVCMのインパクトが良かったのか、PCの方にも伸びがあり、2019年度は継続的に売上が伸びる年となりました。

なので、どちらかと言うとモバイルのプロモーションでPCとコンソールに好影響が出たとみています。より広範囲なスマホユーザーに対して『黒い砂漠』が認知度を上げた結果、PCへの流入が得られたという形です。


PCユーザーのコアファンもモバイル版を遊んでくれていますが、やはりPC版とは違うという印象を持たれる方が多かったです。モバイルではどうしても表現の限界がありますので、こちらもあらゆる工夫はしていますが、しょうがない部分なんです。そこは違うものとして、PC版やコンソール版を楽しんでいただきたいです。


 

日本ゲーム市場特有の優しさに応えるユーザーファースト


──:日本市場でリリースする際に、力を入れた点や、難しいと感じた点があれば教えてください。

李氏:日本に限った話ではなく、基本的な部分が充実したサービスを生み出すことが重要です。良いコンテンツを提供するのは前提であって、そのコンテンツの良さを伝えるプロモーションが必要になります。パールアビスの掲げる指針は、ユーザーコミュニケーションを強くすることです。

そのために、我々はユーザーの動向を綿密にチェックし、それを翻訳して開発チームと共有し、日本のユーザーが何を考えているのかを共有しています。日本のユーザーは優しい人が多く、応援や感謝のメッセージをいただけるので、開発チームもさらに面白いものを仕上げようという意思が湧くようです。

楊氏:弊社でもユーザーファーストであることを重要視しています。とくに、女性向けゲームのユーザーは感度が高い人が多いので、どんなことが喜ばれるのかに注意しました。

女性向けゲームのユーザーは、SNS上でそういったコンテンツに触れていることを公表していない傾向があります。なので、こちらから積極的に発信していくことで反応を得ています。事前登録も長い時間をかけて、その間に得られた反響をフィードバックして、リリース前から見直していきました。

難しいと思ったのは、オフラインでのプロモーション方法です。女性向けユーザーは手に取れるもの、持って帰れるものを好むことをピールオフイベントで知ることができたので、今後はそちらの方向で還元していきたいと思っています。

他にも、ユーザーファーストを考えすぎるあまり、開発に負荷がかかってしまう点も考慮しないといけません。運営陣としては、ユーザーに優しく、長くプレイしてもらえるものを目指しながら、マネタイズも回せるような環境を作っていかないといけない。両方のバランスを取らないといけないのも難しい点ではあると思います。

 

▲『剣が刻』では、公式番組の配信や、ファンミーティングなど積極的に行っている。


 

グローバル戦略は地域に合わせるのではなく自らの良さを主張する


──:ご自身のプロジェクトのマーケティング戦略、プロモーション戦略で重視していることをお聞かせください。

楊氏:『剣が刻』のプロモーションですと、他社と比べて1.5倍ほどの予算を使い、事前登録を長期間実施したことが挙げられます。これは、ビジュアルのクオリティはひと目見ればわかりますが、シナリオやゲーム性といった、プレイするほど理解が深まるようなサプライズ部分が伝わりにくいことが要因となっています。

それを拡散するためには、とにかく面白さや深みにつながる素材をたくさん提供していくしかありません。オフラインイベントや雑誌も使ってユーザーに素材を提供したことで、二次創作も盛んになりました。それによって盛り上がっていったので、『剣が刻』はユーザーさんと一緒に作り上げたコンテンツだと思っています。

 



李氏:我々としては、2019年はモバイル版をメインに展開して、認知度を高めていくことでインパクトを与えることに重点を置きました。今年はユーザーとのコミュニケーションを強化するフェーズにするつもりです。生放送などを通じてインタラクションを取り、ユーザーとの距離感を縮めることを心がけていきます。

2020年の4月24日は、PC版を移管しましたので、すべての『黒い砂漠』を我々の名義でサービスできるようになりました。それぞれ単体の動きだけでなく、『黒い砂漠』というIPで全体感を持ってサービスを展開していけるように、プロモーションも紐づけていきます。

オフライン展開にも力を入れるため、予算も組んでいたのですが、コロナウィルスの影響でオフラインイベントの展開は難しいので、オンラインでできることも考えなくてはいけません。オンラインで補完できるものとできないものがありますので、そこを探っている状態です。

お客様への感謝を伝えるための1周年イベントでは、ホテルも予約していたのですが、開催できなくなってしまいました。この気持ちを伝えるために、お招きしていたユーザー向けのパッケージを作って、発送させていただいたりしました。今後も、我々の気持ちがお客様に伝わるようなサービスに注力していきます。



 

MMORPGが優勢なアジア市場に新たな風を起こすには優良なコンテンツが不可欠


──:ここで少し視点を変えて、現在の中国および韓国ゲーム業界についてはそれぞれどのようにお考えですか?

楊氏:中国は、ブラウザのMMORPGが生まれてから、ずっとMMORPGが流行っています。なかでも、課金によって強くなるようなタイトルが広州と北京で流行していました。

ですが、10年ほど前から上海で二次元の分野に強い会社が集結し始め、状況が少しずつ変わっていきました。Xiimoonも上海本社には二次元に明るいメンバーが集っています。Yostarさんもそういった会社のひとつですね。

ただ、しばらくは日本のカルチャーへの理解がそこまで進んでいませんでしたし、イラストレーターも日本のコンテンツに匹敵するクオリティを出すのは難しい状態でしたので、イラストやシナリオ関係は外注で賄っているような状況でした。

急激に成長したのはここ2、3年です。日本のトップのイラストレーターにも劣らないクオリティがでるようになりましたし、シナリオも独自の方向性が出てきているように感じています。徐々に日本産ではないゲームが増えてきているという印象があります。

 



──:李さんは韓国の市場をどうみておられますか?

李氏:韓国はご存知の通り、トップ30のうち10本以上をMMORPGが占めていて、非常にジャンルが偏っている状況です。それに対して日本は、IPを使ったタイトルが多くランクインしています。

人気があるからこそ、韓国の開発会社のほとんどがMMORPGを作っているという状況が続いています。去年は『リネージュ2M』が年末の市場を占領していましたし、その直前にはカカオゲームスがリリースした『月光彫刻師』もいい結果を残していました。あとは『V4』もMMORPGですね。

すべてのMMORPGが良い結果を出しているため、MMORPGがメインジャンルになっています。中国のゲームもランクインしていますが、日本のゲームのなかでは『FGO』と『プリコネ』が上位に入っています。MMOだけがヒットするというわけではなく、ユーザー目線でサービスをしている優良なコンテンツであれば、どの国でも愛されるコンテンツに仕上がるはずです。



──:中国では、女性向けゲーム業界は力を入れている企業が少ないので、開拓しやすいといった話を耳にしましたが、その点はいかがですか?

楊氏:おっしゃる通りで、大手の企業さんだと一般向けのジャンルを攻めていきます。今の中国市場は大企業でないと失敗しやすい傾向があるので、我々のような会社が生き残る手段として、狭い分野を攻めていくというのが唯一の手だと思っています。

さらに、『剣が刻』は女性向けゲームのなかでもゲーム性を高めることで差別化を図っています。女性向けとしてのクオリティだけでなく、RPGとしても完成度が高いので、その点は今後も注力していくつもりです。



──:韓国は昔からMMORPGが強いですね

李氏:それは社会的な背景も関係していると思います。日本は、コンソールゲームからスタートして、家にゲーム機があるのが珍しくはありません。対して韓国では、家にゲーム機はないですが、PCの普及率は高かったんです。そこで、PCでもできるゲームとしてMMORPGが生まれたんです。その背景の違いが今も残っているのではないでしょうか。

もう1点、これはとても恥ずかしい歴史ですが、韓国では海賊版が出回っていた影響で、コンソールマーケットは大きくなかったのも、韓国メーカーがコンソールに集中できなかった要因かもしれません。



 

日本ゲーム市場におけるインディーズの台頭とジャンルの多様化


──:今の日本のスマホゲーム市場をどうご覧になっていて、どのように展開していくのか、今後のビジョンについてもお聞かせください。

楊氏:業界では未熟者なので、こんなことを言うのも恐縮ではありますが、小さな会社やインディーズの活躍が期待できると思っています。昔は、国内のメジャーな企業が作るビッグタイトルが強いイメージでした。

最近は、中国の会社やインディーズのメーカーのタイトルも増えてきました。それが本当に面白いものであれば、必ず人気はでるといった傾向を、ここ数年は感じています。

これはスマホに限った話でもなく、メジャー企業の作品=品質保証という考え方はもう古く、インディーズでも良いものがたくさん作れる時代になってきています。steamのようなプラットフォームもありますし、今後もインディーズゲームの動向は楽しみにしています。

我々の今後の展開については2軸で考えています。まずはIPを延長させるもの作りをすることが縦軸です。売れているタイトルは、IPの力を大事にしているタイトルが多いですし、女性向けゲームのユーザーは、一度IPを好きになると定着し続けてくれます。Twitterでもそういった反応はすでに見られるので、今後もIPとしての展開に注力していきたいです。

横軸は、会社とタイトルのブランディングです。こちらは、オフラインイベント、商品化、コラボでの展開を考えています。2020年末までに、すでにキャラクターソング、舞台、アートブックといった計画が進んでいます。ユーザーの皆さんには是非楽しみにしていてください。



──:李さんはいかがですか?

李氏:日本のスマホゲーム市場は、ソーシャルゲームが長く続いていたのが今でも印象に残っています。同じエンジンで側だけが違うみたいなタイトルですね。収益性はあったと思いますが、この傾向が業界的かつ世界的な競争力のところで足を引っ張っていると個人的には思っています。

最先端の技術、凝った表現にこだわらなくても収益を得られるために、チャレンジしなくても食べていけるという時期が長かったんです。今はそれも通用しにくくなってきましたが、『FINAL FANTASY VII REMAKE』や『BLUE PROTCOL』のように、PC向けでもコンソール向けでもしっかりしたゲームが出てきているのは、ゲーム王国の底力を感じます。

スマホゲームでも、『ドラゴンクエストウォーク』や『ディズニー ツイステッドワンダーランド』など、色々なジャンルのタイトルが出てきているのは、本当に良い傾向だと思っています。

こうしたIPでスマホゲームを作るとなると、成功が証明されたエンジンでないと、相手を説得できないという側面もあり、革新的な発想からは離れてしまいがちです。そんなIPタイトルのなかで、色々なジャンルが出ているというのが、良い傾向であると感じる要因です。

トップタイトルの売り上げは年々減ってきていますが、市場全体としては大きくなってきているので、まだまだチャンスはあるのではないでしょうか。面白いゲームが正しく評価される、健全なマーケットになっていくと私は期待しています。

弊社の今後の展開に関しては、すでに新作が4タイトル控えています。PCとコンソールがメインのバトルロワイヤルアクションの『シャドウアリーナ』が今年の5月21日Steamにてリリースされました。次に『DokeV』という、『妖怪ウォッチ』のようなカジュアル向けのゲーム。FPSの『Plan 8』。あとはフラグシップとなる『紅の砂漠』です。全てがMMOタイトルなので、非常にハードルは高いですが。挑戦し甲斐があります。



──:それぞれ日本でリリースされて、すでに実績が残されていますが、海外展開したい会社に向けて、ご意見やアドバイスを伺ってもよろしいですか?

李氏:『黒い砂漠』は去年グローバル展開もしましたが、どの国でも共通しているのは、ゲームとしての面白さは担保されてないと話になりません。すでに良いものはあふれていますので、まずは良いものをしっかり作ったうえで、自分のゲームの面白さを押し出せるような座組が必要です。

この国に対してどうアプローチすべきかといったミクロの視点ではなく、我々が作っているものをよく理解している人を担当者にして、我々のゲームの面白さを広げていくことが大事です。

私も前職でパブリッシングがメインで事業展開をしていたときは、その国に合わせた何かをやらないといけない、特性に合わせて付けたり削ったりする作業をしてきましたが、パールアビスに入社してグローバル展開を考えるようになってからは、今のような考え方にシフトしていきました。

海外に進出を考えているのであれば、すでに自国である程度の実績を残しているコンテンツであるはずです。であれば、ヒットしたポイントをしっかり見極めて、どの国に挑むにあたっても、自分たちの作品の良さを尖らせていくほうが効果的であると私は思います。



──:自分たちのゲームの面白さを注視して、その国の特性に振り回されてはいけないということですね。日本市場への参入を考えている企業に向けたアドバイスはありますか?

李氏:あえて、日本市場の特徴をあげるとすれば、先ほども言ったようにユーザーが優しいことが挙げられます。問題があったときは偽ることなく、正直に状況をお伝えして謝罪の気持ちを伝えることが大事です。これは、どの国でも大事なことではありますが、日本は特にそういった傾向が強いです。

これができないと一気にユーザーが離れてしまう危険性があります。ユーザーは大人が多いですから、こちらの事情も理解してくれています。我々だってサービスを提供する側ではありますが、サービスを楽しんでいる立場でもあります。同じ感覚で楽しんでいるはずなのに、ユーザーの立場になれないのはいけません。正直に話して、足りなかった部分は助言をいただくぐらいの方が健全なサービスに仕上がります。



──:楊さんはいかがですか?

楊氏:以前は日本がゲーム業界の先進国であり、日本のユーザー目線に合わせないといけないと思っていましたが、最近は日本のユーザーさんも海外のものを、積極的に受け入れてくれるようになったと感じています。

モバイルゲームにおける月額課金制もそうですね。李さんも言ったようにユーザーさんは大人ですので、ゲームを作ることも商売であることを認識してくれています。良いものを作り、それに合わせたマネタイズを展開すれば、必ず理解を得られます。

ユーザーが喜ぶことに重点を置きながら、2番目にマネタイズを考えていく。良いコンテンツを作る際も、ユーザーさんに喜んでもらうものを追い求めていけば、自然と良いコンテンツに仕上がっていくはずです。

例を挙げると、YouTuberやStreamerの皆さんは、どうすれば皆が見てくれるのかということを日々考えていらっしゃると思います。それを見て楽しい、応援しようという気持ちは自然に湧いて来るんですね。その応援の形式は、視聴、グッズを購入、ドネーションなどがありますが、それはクリエイターたちの原動力になり、さらに良いコンテンツを作る土台となります。我々ゲームを作っている、運営している会社はユーザーに無理やり課金させることより、いいものを作ってそれでユーザーに評価していただかないと、どのタイトルや会社も長く続かないと思います。

簡単にまとめると、「ユーザーとの共生関係」をどうやって築くかということですね。

 



──:最後に、読者へのメッセージをお願いします。

李氏:『黒い砂漠』がこれだけたくさんの方々に愛されるコンテンツになれたのも、ユーザーの皆さんのおかげです。皆さんが『黒い砂漠』をプレイしながらどう感じて、何を必要としているのかに重点を置いて展開していきますので、今後も温かく見守っていただきたいです。

オンラインゲームはメーカーとユーザーが一緒に作り上げていくものです。なので、忌憚なくご意見をいただきたいとも思っています。読者のみなさんはゲームに詳しい方だと思いますし、ゲーム業界の方からもアドバイスがあれば、弊社はオープンにしていますので、是非ともご連絡ください。

楊氏:私のこれまでの人生における一番大きな夢であった、ゲーム業界で働くことは達成できたので、これからは誰のためにゲームを作り、運営していくのかを考えていきます。国境を越える良いコンテンツを作っていくために、上海のメンバーとしっかりコミュニケーションを取りながら進めていきたいと思っています。

良いコンテンツを仕上げたいという気持ちは、誰でも一緒だと思います。ユーザーさんからもご意見をいただきたいですし、業界の先輩方からのアドバイスもいただきたいと思っています。ご連絡いただければこちらからうかがわせていただきますので、是非コンタクトをください。



 

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