KLab決算説明会 真田社長「IP獲得で外れリスクを減らす」戦略を主張 国内社員数は減少に転じる

KLab<3656>は10月15日、都内で2013年12月期第4四半期(6~8月期)の決算説明会を開いた。同日発表した6~8月期の連結売上高は45億円と3~5月期(37億円)から増え、営業利益は四半期として1年ぶりに黒字に転換した(関連記事)。ただ、他社IP(知的財産)タイトルの売上構成比が伸びたため、利益率は低下している。説明会に臨んだ真田哲弥社長は、今後の戦略として、利益率をある程度犠牲にしても「外れのリスクを減らす」ためにIP獲得に注力する姿勢を見せた。参加者からは質疑応答の時間に質問が出ず、静かに説明会は終わった。(以下、かぎ括弧内は真田社長の発言)



■IPタイトルの存在感増す、利益率は低下
6~8月期の売上高がほぼ計画通り(100万円の未達)だったにもかかわらず、営業利益は計画を1億円強下回った。売上高に比べて利益の下振れ幅が大きいのはなぜか。

真田社長は「(他社)IPタイトルの売り上げ構成比が上がったため、IPのロイヤリティ(権利使用料)が増え、利益率が下がった」と説明する。この3ヵ月は、自社オリジナルタイトルである『Lord of the Dragons』の売り上げが落ち込んだ穴を、IPタイトルである『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』や『幽☆遊☆白書-魔界統一最強バトル-』の好調が埋める形となった。またApp StoreやGoogle Play向けの売上高が増えれば、これらのアプリ配信プラットフォームを運営するアップルやグーグルに支払う手数料も増加する。6~8月期のロイヤリティなどを含む売上原価(費用)は34億円と、3~5月期(29億円)から増えた。

以下は、Klabの決算説明資料にあるゲーム事業の売上高とプラットフォーム別の売上構成比率の推移。
 


各四半期のゲーム事業の売上高と構成比率を単純に掛け合わせると、プラットフォーム別の売上高の推移は以下のようになる。
 

mobageやGREE向けの売上高が落ち込む一方、App StoreやGoogle Play向けが急拡大している。Google Play向けはAndroid版『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』の寄与が「かなり大きい」という。ブラウザゲームの売上高は緩やかな減少傾向で、全体のDAU(1日当たりアクティブユーザー数)は明確に減っているとしつつも、「高ARPU、小DAUのマニアックなユーザーに支えられているタイトルは売り上げを維持している」と話していた。


■国内社員数は減少、海外社員数は増加
採用を抑制しているため、国内社員数は減少に転じた。2013年の第3四半期末(5月末)に796人いた国内社員数は8月末時点で22人減の774人となった。一方、海外社員は208人から237人に増えた。人件費が5分の1程度のフィリピン拠点を増員し、開発ラインを確保したため。連結の社員数は1004人から1011人に増えたが、海外比率が高まったため、労務費と外注費の合計額は減った。今後、ブラウザゲームの開発者をネイティブゲームの開発者にシフトしていくという。


■海外と野球ゲームでトラブル
これまで伸びてきた海外売上高比率が減少に転じた。米kabamとの協業で9月に提供を開始した新作『Rise to the Throne』で立ち上がりのプロモーションを見送ったなか、『Lord of the Dragons』でトラブルが発生し、売上高が一時的に減少したためと説明する。新作の野球ゲーム『プロ野球グランドスラム』が9月3日から約1ヶ月間、運営を停止した理由についても説明。「写真と選手名のずれ」や「漢字間違い」を日本野球機構から指摘されたためで、ゲームシステムの問題ではないとした。


■「利益率低下してもIP獲得」「ラブライバー以外にラブライブを」
真田社長は9~12月の戦略も語った。まず、ネイティブゲームの状況について「競争激化で開発コストが大きく、開発期間が長くなるなか、タイトルが外れたときの痛手が大きくなっている」と指摘。「IPタイトルは、利益率を下げたとしても、外れのリスクを低減できるため、IPの獲得に力を入れる方向で動いている」と話した。

『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』は9~12月中にテレビCMの放映を予定しており、「ラブライバー、つまりもともとのラブライブファン以外にアピールする広告をやっていく」という。真田社長は、ユーザー数が100万人を突破した『ラブライブ!』について、他社の大ヒットタイトルと比べれば「たったの100万ユーザー」と指摘。「立ち上がりは良かったが、特にブースト(インセンティブ広告)をしておらず、マニアックなファンやもともとラブライブのファンだった人しか遊んでいない状況。ラブライブのファンではない層が遊んでも楽しいゲームであることがわかったため、もう少し広い層にアピールしていくことで、売り上げは伸ばせるとの考えに至った」と説明した。



■アクション、カジュアル、スポーツなど新作に意欲
新作をいくつか発表した。同社が得意としてきたダークファンタジー系ではなく、「キュートなビジュアル」を使ったアクション性の強い新作ゲーム『かぶりん!』をiOS/Androidで配信する予定だ。また、フィリピンの開発拠点でエンジニアの技術教育を目的したモバイルオンラインゲームのレーベル「Spicy Mangos」を立ち上げ、カジュアルゲームを開発していく。
 


熱狂的なファンのいるスポーツゲームにも力をいれる。新作タイトルである『ワールドプロサッカー ファンタジックイレブン』は、国内競合他社のサッカーゲームが日本向け版権しか獲得していなかったのとは異なり、「世界中の選手を世界中で使う権利を獲得している」点を決定的な違いと説明。「欧州や南米などサッカーの盛んな国をターゲットとしていく」と意気込んでいた。スポーツは「毎年新しいヒーローが生まれ、キャラクターがどんどん入れ替わるという、ゲームとしてはありがたい特性がある」という。
 



■事業売却、「BtoBとゲームの混在では社員教育難しい」
10月11日に発表したSI事業およびライセンス事業の売却についても説明した。「iモード」など携帯キャリア公式サイトの保守・運営を主体とするSI事業、高速メール配信エンジン「アクセルメール」や個人情報検索ツール「P- Pointer」を販売するライセンス事業のいずれも、スマートフォンの普及やクラウド化のなか、売上高も利益も縮小基調で、立て直すために経営資源を投入するかどうかという選択肢を迫られていた状況だったという。

この2事業は「BtoB(企業向け)事業で、ゲーム事業とは志向性が大きく違う」と指摘。「セキュリティ系などBtoB事業はミスをしないことが重視される一方、ゲームはミスをしないこと以上に、斬新なことをしていかないといけない。志向性が異なる事業がひとつの会社にあれば、社員教育の面で一貫性を保ちにくい」と説明していた。

 

説明会会場。説明会中は撮影が禁止された。


■関連サイト
決算説明資料
KLab株式会社
http://www.klab.com/jp/

会社情報

会社名
KLab株式会社
設立
2000年8月
代表者
代表取締役社長CEO 森田 英克/代表取締役副会長 五十嵐 洋介
決算期
12月
直近業績
売上高107億1700万円、営業損益11億2700万円の赤字、経常損益7億6100万円の赤字、最終損益17億2800万円の赤字(2023年12月期)
上場区分
東証プライム
証券コード
3656
企業データを見る